JPH0538519Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は電磁波を増幅するクライストロンの同
調機構の改良に関する。

〔従来の技術〕

クライストロンは、電子ビームを射出・形成す
る電子銃と、高周波電力を電子ビームと相互作用
させる高周波回路部と、電子を捕捉するコレクタ
と、電子ビーム集束装置とから成つている。これ
らのうち高周波回路は空胴共振器と、この空胴共
振器の共振周波数を変化させるための同調子と、
この同調子に接続され、これを支持している同調
機構とで構成されている。

ところで、増幅する高周波電磁波の周波数を変
える場合、クライストロンではその都度出力波形
を観測しながら複数の空胴共振器の共振周波数を
適切な値に調整する必要がある。この調整をする
ために、予め設定した特定の周波数では周波数切
替操作だけ行なえば規定の帯域幅を容易に得られ
るプリセツト機構を有する同調機構を具備するク
ライストロンが用いられる。

このようなプリセツト機能を具備した従来のク
ライストロンは、第２図に示す如き構造となつて
いた。第２図に於て、クライストロンの高周波回
路は、空胴共振器１と、この空胴共振器１の体積
を変化させて共振周波数を変える同調子３と、こ
の同調子３と空胴共振器１とに接続しクライスト
ロンの真空を保持しつつ機械的変形により同調子
３の出し入れを可能にしているベローズ４とで構
成されている。また、同調機構５は、同調子３に
接続しかつ常に同調子３の軸に沿つて一定方向の
力を同調子３に加えている同調子支持機構６と、
複数個の調整ねじ１５を有し、かつこの調整ねじ
１５が同調子３に接続しているチユーナシヤフト
１０に押し当てられて同調子３に機械的変位を与
えるプリセツト部８と、同調子支持機構６とプリ
セツト部８の接触を接続あるいは切り離したりす
る駆動機構７とで構成されている。

この構造で空胴共振器１の共振周波数は以下の
方法で調整される。同調子３が接続・固定されて
いるチユーナシヤフト１０にはスプリング機構１
１の復元力により常に同調子３を外側（図中右方
向）に引き出そうとする力が加わつている。この
チユーナシヤフト１０の一端には、プリセツト部
８を構成している複数の調整ねじ１５が押し当て
られており、この調整ねじ１５のねじ込みの程度
により同調子３の出し入れが可能となつている。
空胴共振器１の共振周波数は、空胴共振器１の１
つの壁を構成している同調子３の端面に結合され
た空胴可動板２の位置により一義的に決定され
る。従つて、調整ねじ１５のねじ込みの程度によ
り共振周波数を可変調整することができる。

また、プリセツトした異なる周波数に切り替え
る際は、まず駆動機構７に設けられたロツキング
シヤフト１８を回転し、ロツキングシヤフト１８
とねじにより、はまりあつた同調子支持機構６を
内側（図中左方向）に押し込んでやる。その結
果、同調子３も内側に押し込まれ、調整ねじ１５
との接触が解放される。ここでチエンジ歯車１７
を廻すと、これにかみ合つた歯車１６も回転し、
異なつた調整ねじ１５が、チユーナシヤフト１０
と正対するようになる。次いで同調子支持機構６
を先とは逆の方向に移動させてやれば、チユーナ
シヤフト１０は調整ねじ１５と再び接触し、結果
的に同調子３の位置が変わり、所要の周波数に切
り替えることができる。

〔考案が解決しようとする問題点〕

上述の調整により設定されたプリセツト機能を
有する同調機構では、周波数変更時に同調子支持
機構６が、駆動機構７に対して動く構造となつて
いるため、各同調子３が固定されているチユーナ
シヤフト１０と空胴共振器１との間で、同調子の
軸に対して垂直の方向に変動を受け易くなつてい
た。また、同調機構が一体形のため（空胴共振器
１がTU支持体１２を介して同調機構全体をささ
えていた）同調子３に外部から無理な力がかかり
易くなつていた。このため従来構造の同調機構を
使用しているクライストロンでは、各同調子３の
軸に対して垂直の方向への振動や、各同調子３へ
の外部からの無理な力により、空胴共振器内に異
常共振モードの発生や共振モードの遷移が発生し
易いという欠点があつた。他の欠点として、従来
構造の同調機構は、１体形のため、設定可能なチ
ヤンネル数を変えるたびに（たとえば、チヤンネ
ル数６とか、12）同調機構を製作するためコスト
が高いという欠点があつた。

本考案の目的は、このような従来の欠点を除去
し、同調子にかかる外部からの変動を少なくし、
信頼性を高め、かつコストの安いクライストロン
の同調機構を提供することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案は、クライストロンの同調子と接続し、
かつ常にこの同調子の軸に沿つて一定方向の力を
同調子に加える同調子支持機構と、複数個の凸部
を有し、かつ凸部が同調子支持機構の一部に機械
的変位を与えるプリセツト部と、同調子支持機構
とプリセツト部の接触を接続・切断する駆動機構
とで構成されたクライストロンの同調機構におい
て、同調子支持機構は、空胴共振器に固定された
第１の支持体に支持され、一端が同調子支持機構
に接触し、他端がプリセツト部に接触する伝導シ
ヤフトを備え、伝導シヤフトとプリセツト部との
接触を接続・切断する駆動機構及びプリセツト部
は、空胴共振器以外に固定された第２の支持体に
支持されていることを特徴とする。

〔実施例〕

以下に本考案について図面を参照して説明す
る。第１図は本考案の一実施例の同調機構の断面
図である。同調機構５は、同調子支持機構６とプ
リセツト駆動機構９から構成されている。同調子
支持機構６は、空胴共振器１の共振周波数を変化
させる同調子３に接続しているチユーナシヤフト
１０とスプリングの復元力により常に大気圧と逆
方向の力を同調子３に加えているスプリング機構
１１を持ち、かつ空胴共振器１にTU支持体１２
を介して固定されている。一方、プリセツト駆動
機構９は、大電力クライストロンの電子銃から射
出された電子ビームを集束するための磁気回路部
１９にプリセツト支持体２０を介して固定され、
円周方向に複数の調整ねじ１５が設けられている
歯車１６を有し、かつこの調整ねじ１５が伝導シ
ヤフト１４及びチユーナシヤフト１０を介して同
調子３に変位を与えているプリセツト部８、及び
伝導シヤフト１４を動かしてプリセツト部８の調
整ねじ１５の接続を切断する駆動機構７からな
る。

この同調機構５の周波数変更は、ロツキングシ
ヤフト１８を回し、伝導シヤフト１４を有する駆
動機構７を矢印２１の方向に移動させて調整ねじ
１５を伝導シヤフト１４から切り離し、チエンジ
歯車１７を他の動作周波数に設定されるようにね
じ込まれている調整ねじ１５が、伝導シヤフト１
４の中心軸と一致する位置まで回し、この後、再
びロツキングシヤフト１８を回して調整ねじ１５
が伝導シヤフト１４に押し当てられた状態にする
ことで行なわれる。

〔考案の効果〕

以上の説明から明らかなように、本考案に於て
は同調子支持機構が、空胴共振器に固定された支
持体に支持されかつ、プリセツト駆動機構が、同
調子支持機構と一体になつていないので周波数変
更時等に同調子に同調子の軸に対して垂直の方向
に働く好ましからざる振動や力を受けなくなり、
異常共振モードの発生及び共振モードの遷移の発
生を防ぐことができる効果がある。また、プリセ
ツト駆動機構部を取りかえるだけですきなチヤン
ネル数の設定ができるので、たとえばチヤンネル
数を増減する際に作業時間を短縮でき、部品の共
通化によりコストが下がるという利点もある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例である大電力クライ
ストロンの同調機構を示す断面図、第２図は従来
の大電力クライストロンの同調機構を示す断面図
である。 １……空胴共振器、２……空胴可動板、３……
同調子、４……ベローズ、５……同調機構、６…
…同調子支持機構、７……駆動機構、８……プリ
セツト部、９……プリツト駆動機構、１０……チ
ユーナシヤフト、１１……スプリング機構、１２
……TU支持体、１３……スライド軸、１４……
伝導シヤフト、１５……調整ねじ、１６……歯
車、１７……チエンジ歯車、１８……ロツキン
グ・シヤフト、１９……磁気回路部、２０……プ
リセツト支持体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クライストロン空胴共振器の同調子に接続し、
   かつ常に該同調子の軸に沿つて一定方向の力を該
   同調子に加える同調子支持機構と、複数個の凸部
   を有し、かつ該凸部が前記支持機構の一部に機械
   的変位を与えるプリセツト部と、前記支持機構軸
   と前記プリセツト部の接触を接続・切断する駆動
   機構とで構成されたクライストロンの同調機構に
   おいて、同調子支持機構は、空胴共振器に固定さ
   れた第１の支持体に支持され、一端が該同調子支
   持機構に接触し、他端が前記プリセツト部に接触
   する伝導シヤフトを備え、該伝導シヤフトと前記
   プリセツトとの接触を接続・切断する駆動機構及
   び前記プリセツト部は空胴共振器以外に固定され
   た第２の支持体に支持されていることを特徴とす
   るクライストロンの同調機構。