JPH0538304U

JPH0538304U - アルミニウム合金製タペツト

Info

Publication number: JPH0538304U
Application number: JP096780U
Authority: JP
Inventors: 信雄原
Original assignee: フジオーゼツクス株式会社
Priority date: 1991-10-30
Filing date: 1991-10-30
Publication date: 1993-05-25

Abstract

(57)【要約】【目的】タペット本体の外周面の耐摩耗性を向上し、
耐久性に優れるアルミニウム合金製タペットを得る。【構成】アルミニウム合金製のタペット本体(１)の外
周面に、陽極酸化、溶射、又はメッキ等の手段により、
硬化膜層(５)を形成したことにより、外周面の耐摩耗
性、耐かじり性、耐焼付性等が著しく向上する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、内燃機関の動弁機構に用いられるアルミニウム合金製のタペットに係り、特に、耐摩耗性を向上させたタペットに関する。

【０００２】

【従来の技術】

図５は、ＤＯＨＣ式エンジンに多用されている直動型の動弁機構を略示するもので、(01)はエンジンバルブ、(02)(02)は、エンジンバルブ(01)の軸端部に形成した環状溝に嵌着された１対のコッタ、(03)は、コッタ(02)に外嵌されたスプリングリテーナ、(04)は、シリンダヘッド(05)とスプリングリテーナ(03)との間に縮設されたバルブスプリングである。

【０００３】エンジンバルブ(01)の上端部には、上面が閉塞された円筒形のタペット本体(0 6)が、その内底面の中央をエンジンバルブ(01)の軸端と当接させるようにして、上方より嵌挿されている。

【０００４】タペット本体(06)の上端に形成された有底の円皿状の凹所(07)には、バルブクリアランス調整用のシム(08)が着脱可能に嵌合されている。エンジンバルブ(01)は、シリンダヘッド(05)にガイドされたタペット本体(06) が、シム(08)の上面と当接する回転カム(09)をもって押動されることにより、開閉させられる。

【０００５】このような直動型の動弁機構に用いられるタペットは、これまで、その本体を鋼又は鋳鉄等により成形するのが一般的であったが、最近では、エンジンの高回転、高出力化の要求と動弁系をより一層軽量化する目的から、タペット本体を鉄製からアルミニウム合金製へと移行する傾向にある。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】しかし、アルミニウム合金製のタペットは、鉄製に比べて機械的強度が小さく、かつ耐摩耗性も劣るため、特に、互いに同材質のアルミニウム合金製のシリンダヘッドに組込んだ際、互いの摺動面が早期に摩耗してガタが発生したり、かじり現象や焼付きが発生したりするなど、耐久性が著しく低下する。

【０００７】本考案は、上記問題点を解決するためになされたもので、タペット本体とシリンダヘッドとの互いの摺動面の耐摩耗性等を向上させることの可能な耐久性に優れるアルミニウム合金製タペットを提供することを目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

上記目的は、上面が閉塞された円筒形をなすアルミニウム合金製のタペット本体の少なくとも外周面に、その表面を陽極酸化して潤滑性材料を含浸させることにより、硬化膜層を形成するか、セラミックス系の化合物を溶射することにより、硬化膜層を形成するか、Ｎi、Ｎi-Ｐ複合メッキ、又はＮi-Ｐのメッキ浴中にセラミックス系化合物を添加させてメッキすることにより、硬化膜層を形成するか、又は硬質材料により硬化膜層を形成するとともに、その表面を前記硬化膜層よりも薄厚の軟質材料により被覆することにより、達成することができる。

【０００９】

【作用】

アルミニウム合金製のタペット本体の外周面に、陽極酸化、溶射、又はメッキ等の手段により硬化膜層を形成したことにより、外周面の耐摩耗性、耐かじり性、耐焼付性等が著しく向上する。

【００１０】タペット本体の外周面に硬化膜層を形成し、これを軟質材料により被覆して２層構造とすると、エンジン作動時の初期なじみ性が向上し、タペット自身やシリンダヘッドの摺動面の焼付き、かじり等を防止することができる(請求項４)。

【００１１】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。図１は、本考案の第１実施例を示すもので、(１)は、アルミニウム合金により一体成形された、上面を閉塞してなる円筒形のタペット本体、(２)は、上端の円皿状の凹所(３)に着脱可能として嵌合された耐摩耗性金属材料製のシムである。

【００１２】タペット本体(１)の内底面中央には、エンジンバルブ(図示略)の軸端と当接する耐摩耗性金属材料製のチップ(４)が嵌着されている。タペット本体(１)の外周面には、次の(ａ)〜(ｃ)のような各種の表面処理手段及び材料により硬化膜層(５)が形成されている。

【００１３】 (ａ) 陽極酸化処理硫酸又はシュウ酸浴中にタペット本体(１)を浸漬し、これを陽極として電解を行ない、外周面にＡl₂Ｏ₃の多孔性の酸化膜を形成したのち、その酸化膜層の無数の孔に、四フッ化エチレン樹脂(テフロン)又はＭoＳ₂等の潤滑性材料を含浸させて封孔し、潤滑性を有する硬化膜層(５)を形成する。

【００１４】 (ｂ) 溶射処理タペット本体(１)の外周面に、例えばプラズマ溶射法等により、ＦeやＭo、又はセラミックス系の化合物であるＡl₂Ｏ₃、Ｃr₂Ｏ₃、ＺrＯ₃などの酸化物、Ｃr₃ Ｃ₂、ＮbＣ、ＷＣ、ＴiＣ、ＴaＣ、ＳiＣなどの炭化物、ＴiＮ、ＴaＮ、ＮbＮ、Ｓi₃Ｎ₄などの窒化物、ＴiＢ₂、ＺrＢ₂などの硼化物、ＭoＳｉ₂、ＴiＳi₂などの硅化物、あるいはそれらの複合物、Ａl₂Ｏ₃とＴiＯ₂との複合物、アルミブロンズ等を溶射して硬化膜層(５)を形成する。

【００１５】 (ｃ) メッキ処理タペット本体(１)の外周面に、Ｎi単体又はＮi-Ｐの複合メッキを施すか、Ｎi 又はＮi-Ｐよりなるメッキ浴中にＳiＣ、Ａl₂Ｏ₃、ＢＮ等の微粒子を分散させ、タペット本体(１)の外周面に、Ｎi又はＮi-Ｐとともに上記微粒子を電着して10 〜50μm程度の硬化膜層(５)を形成する。

【００１６】なお、硬化膜層(５)は上述した(ａ)〜(ｃ)の外、ポリイミド又はポリアミド樹脂とカーボングラファイトとの混合物をコーティングしたり、ＣＶＤ法、ＰＶＤ法等の気相析出法により、ＴiＣやＴiＮ等を蒸着することによっても形成することができる。また、タペット本体(１)の組成成分であるＳiの含有量を増加させてシリコンの過共晶化を図ったり、炭素繊維又はセラミックス繊維等を混入した繊維強化アルミニウム合金を使用するなどして、タペット本体(１)自身を硬化させてもよい。

【００１７】このような各種の表面処理手段により、タペット本体(１)の外周面に硬化膜層 (５)を形成すると、シリンダヘッド(図示略)との摺動時における耐摩耗性が著しく向上し、かつアルミニウム合金製のシリンダヘッドに組付けた際でも、焼付きやかじり現象等を生じる恐れがない。

【００１８】特に、(ａ)のように陽極酸化処理したのち、四フッ化エチレン樹脂やＭoＳ₂を含浸させると、潤滑性をも向上させることができ、摺動摩擦抵抗が小さくなって耐摩耗性が一層向上する。

【００１９】次に、本考案の第２実施例を図２及び図３に基づいて説明する。この実施例では、上記(ａ)〜(ｃ)において説明した硬化膜層(５)の表面を、比較的軟質の被膜(６)により被覆したものである。

【００２０】被膜(６)は、Ｆe、Ｓn、Ｚn等をメッキにより電着して形成するか、もしくはＭoＳ₂と四フッ化エチレン樹脂との混合物、又はポリイミド、ポリアミド樹脂等の摩擦抵抗が小さくかつ潤滑性を有する材料をコーティングすることにより形成する。なお、被膜(６)の厚さは、図３に示すように硬化膜層(５)よりもはるかに薄く(例えば0.5〜1.0μm)するのがよい。

【００２１】このように、タペット本体(１)の外周面を、硬化膜層(５)とそれよりも軟質の被膜(６)との２層により被覆すると、初期なじみ性が向上するため、エンジンのならし運転等の初期段階において、シリンダヘッドの摺動面の焼付きやかじり等の発生を抑えることができる。また、被膜(６)が早期に摩耗しても硬化膜層(５)が出現するので、その後の耐摩耗性が損なわれる恐れはない。

【００２２】図４は、本考案の第３実施例を示すもので、この実施例では、タペット本体( １)における外周面の上下部、すなわちエンジンバルブ駆動時において摩耗が発生し易い個所に、上述したような硬化膜層(５)を、また比較的摩耗の少ない中間部に、上記第２実施例と同様の軟質材料による被膜層(７)をそれぞれ形成したものである。

【００２３】このようにすると、耐摩耗性を損なうことなく、初期なじみ性を向上させることができる。なお、この第３実施例において、所要幅の硬化膜層(５)と被膜層(７)とを、タペット本体(１)の外周面全体に交互に帯状に形成してもよい。また、第１実施例における硬化膜層を、タペット本体(１)の凹所(３)にも形成してもよい。

【００２４】

【考案の効果】

本考案によれば、タペット本体の外周面に硬化膜層を形成したことにより、タペット本体はもとより、シリンダヘッドの摺動面の耐摩耗性や耐かじり性、耐焼付性等を大幅に向上させることができる。

【００２５】また、タペット本体の外周面に硬化膜層を形成し、これを軟質材料により被覆すると、エンジン作動時の初期なじみ性が向上し、タペット自身やシリンダヘッドの摺動面の焼付き、かじり等を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第１実施例を示すタペットの中央縦断
正面図である。

【図２】本考案の第２実施例を示すタペットの中央縦断
正面図である。

【図３】図２におけるＡ部の拡大図である。

【図４】本考案の第３実施例を示すタペットの中央縦断
正面図である。

【図５】直動型の動弁機構とそれに用いられるタペット
の説明図である。

【符号の説明】

(１)タペット本体 (２)シム (３)凹所 (４)チップ (５)硬化膜層 (６)被膜 (７)被膜層

Claims

【実用新案登録請求の範囲】

【請求項１】上面が閉塞された円筒形をなすアルミニ
ウム合金製のタペット本体の少なくとも外周面に、その
表面を陽極酸化して潤滑性材料を含浸させることによ
り、硬化膜層を形成したことを特徴とするアルミニウム
合金製タペット。
【請求項２】上面が閉塞された円筒形をなすアルミニ
ウム合金製のタペット本体の少なくとも外周面に、セラ
ミックス系の化合物を溶射することにより、硬化膜層を
形成したことを特徴とするアルミニウム合金製タペッ
ト。
【請求項３】上面が閉塞された円筒形をなすアルミニ
ウム合金製のタペット本体の少なくとも外周面に、Ｎ
i、Ｎi-Ｐ複合メッキ、又はＮi-Ｐのメッキ浴中にセラ
ミックス系化合物を添加させてメッキすることにより、
硬化膜層を形成したことを特徴とするアルミニウム合金
製タペット。
【請求項４】上面が閉塞された円筒形をなすアルミニ
ウム合金製のタペット本体の少なくとも外周面に、硬質
材料により硬化膜層を形成するとともに、その表面を前
記硬化膜層よりも薄厚の軟質材料により被覆したことを
特徴とするアルミニウム合金製タペット。