JPH053697U - 遊星差動式減速機のバツクラツシユ低減構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 遊星差動式減速機のバックラッシュを低減す
るための構造を提供すること。 【構成】 バックラッシュ低減構造は、ケーシングの内
周に具えられた内歯歯車に、前記内歯歯車と同心の入力
軸に偏心回転自在に具えられた偏心歯車を偏心回転させ
ながら噛合させ、前記内歯歯車の歯数と前記偏心歯車の
歯数との差によって出力軸が前記入力軸より遅く回転す
る遊星差動減速機において、前記内歯歯車は可撓性を有
し、前記偏心歯車は前記内歯歯車に対し正規の噛合より
深く噛合する位置に具えられている。偏心歯車は、内歯
歯車に対し正規の噛合より深く噛合している。このた
め、偏心歯車は、バックラッシュが低減されているか、
或いは、除去された状態で、内歯歯車に対し回転する。
内歯歯車は可撓性を有しているため、偏心歯車が噛合す
るとき撓み、偏心歯車との噛合を円滑にする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、遊星差動式減速機のバックラッシュを低減するための構造に関する 。

【０００２】

【従来の技術】

従来、遊星差動式減速機（図示省略）は、ケーシングの内周に具えられた内歯 歯車と、内歯歯車と同心の入力軸に偏心回転自在に具えられた偏心歯車と、偏心 歯車に偏心歯車と同心に具えられた偏心内歯歯車と、入力軸と同心にケーシング に具えられ偏心内歯歯車に噛合する出力歯車とを有している。 入力軸を回転させると、偏心歯車が偏心回転（公転）しながら内歯歯車内を転 がるようにして自転する。これと同時に偏心歯車と一体の偏心内歯歯車も同様に 偏心回転（公転）しながら自転する。この偏心歯車の公転と自転によって、偏心 歯車に噛合している出力歯車が入力軸より遅く回転させられる。 このようにして、遊星差動式減速機は、入力軸に接続された駆動装置（図示省 略）の回転速度を減速して、出力軸に接続された従動装置（図示省略）に回転力 を伝達するようになっている。 減速比は、内歯歯車、偏心歯車、偏心内歯歯車、出力歯車の各歯数によって設 定される。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

ところが、このような遊星差動式減速機は、通常、内歯歯車と偏心歯車との噛 合にバックラッシュがあるため、次のような問題点を有している。 (1)仮に、歯車噛合にバックラッシュがないと、図４に示すように、出力軸の 負荷トルクの変化に対する出力軸の捻れ角は、連続したヒステリシス曲線を描く ような値になるが、バックラッシュがあるため、負荷トルクが略々０になると、 図５に示すように、ヒステリシス曲線に段差が生じる値になる。このため、負荷 トルクが０に近いときの出力軸の捻れ角が定まらず、出力軸の回転制御精度を低 下させる原因になっている。 (2)入力軸が頻繁に正逆回転する場合や、入力トルクが変動する場合、振動が 生じやすい。 (3)歯車は弾性変形しないため、仮に、バックラッシュが生じないように、歯 車同士を噛合させると、噛合部における歯の両面が相手の歯と逃げのない状態で 接触し、振動や騒音の原因となる。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

本考案は、ケーシングの内周に具えられた内歯歯車に、前記内歯歯車と同心の 入力軸に偏心回転自在に具えられた偏心歯車を偏心回転させながら噛合させ、前 記内歯歯車の歯数と前記偏心歯車の歯数との差によって出力軸が前記入力軸より 遅く回転する遊星差動減速機において、前記内歯歯車は可撓性を有し、前記偏心 歯車は前記内歯歯車に対し正規の噛合より深く噛合する位置に具えられたバック ラッシュ低減構造により、前記の課題を解決したものである。

【０００５】

【作用】

偏心歯車は、内歯歯車に対し正規の噛合より深く噛合している。このため、偏 心歯車は、バックラッシュが低減されるか、或いは、除去された状態で、内歯歯 車に対し回転する。内歯歯車は可撓性を有しているため、偏心歯車が噛合すると き撓み、偏心歯車との噛合を円滑にする。

【０００６】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。 遊星差動式減速機１１の入力軸１２は偏心距離Ｅ１のカム１３を一体に有して いる。カム１３にはベアリング１４によって偏心歯車１５が回転自在に具えられ ている。 内歯歯車１６は、図２に示すように、鍔状部３１，３１と歯３２とで構成され た可撓性を有する断面チャンネル形状をしている。内歯歯車１６の内周には、歯 ３２の部分が、鍔状部３１，３１に対して撓み易くするための２本の溝１９，１ ９が形成されている。この内歯歯車１６は、例えば、炭素鋼（ＳＣ）、クロムモ リブデン鋼（ＳＣＭ）、炭素工具鋼（ＳＫ）等の比較的靱性の優れた強靱鋼で作 られており、全体的に肉厚を薄くし、材質と厚みと形状とによって可撓性を有す るものになっている。 内歯歯車１６は、ボルト２０，２０によって内歯歯車支持リング１７に設けら れている。内歯歯車支持リング１７はボルト２１，２１によってケーシング１８ に設けられている。これによって、内歯歯車１６は、ケーシング１８の内周に設 けられている。

【０００７】 偏心歯車１５は、インボリュート歯形をしており、上記偏心距離Ｅ１に応じた 偏心回転運動を行いながら内歯歯車１６に噛合するようになっている。又、入力 軸１２には、偏心歯車１５の偏心運動による重量バランスをとるバランサー３０ が設けられている。 偏心距離Ｅ１は、偏心歯車１５と内歯歯車１６との正規の噛合（両方の歯車の ピッチ円が接する噛合）より、深く噛合（両方の歯車のピッチ円が交差する噛合 ）するように設定されている。

【０００８】 すなわち、図３において、偏心歯車１５と内歯歯車１６とが正規の噛合状態に おける内歯歯車の中心Ｃ１と偏心歯車の中心Ｃ２との正規の偏心距離をＥ２とし た場合、この正規の偏心距離Ｅ２よりも偏心距離が長い位置Ａに偏心歯車の中心 Ｃ２がくるように偏心距離Ｅ１を設定する。 このように、偏心歯車１５は偏心距離Ｅ１が正規の偏心距離Ｅ２より長くなる ように形成されているため、内歯歯車１６に偏心歯車１５が組込まれ、両方の歯 車１５，１７が噛合状態になると、内歯歯車１６は、図３において、実線の形状 から想像線の形状に撓むことになる。

【０００９】 かくして、噛合する歯同士は密着し、僅かな予圧が発生する。しかし、この予 圧は、内歯歯車１６の弾性によって生じるものであるから、偏心歯車１５の回転 に支障を与える程、大きくはない。 この密着によって、バックラッシュを低減或いは除去することができ、歯の加 工誤差による振動や騒音の発生を防止することができる。

【００１０】 偏心歯車１５の側面には、偏心内歯歯車２２が一体に形成されている。偏心歯 車１５と偏心内歯歯車２２は薄肉円筒部２３によって連結され、互いに直径方向 に撓みやすくなっている。 偏心内歯歯車２２には、出力歯車２４が噛合している。出力歯車２４は、入力 軸１２と同心の出力軸２５に具えられている。この偏心内歯歯車２２と出力歯車 ２４とによって差動機構２６が構成されている。

【００１１】 この差動機構２６において、偏心内歯歯車２２と出力歯車２４との噛合におけ るバックラッシュを少なくするため、薄肉円筒部２３に撓みを生じさせ、偏心内 歯歯車２２を出力歯車２４に噛合させている。 このため、偏心内歯歯車２２は偏心歯車１５に対し、バックラッシュを少なく する分だけ軸心がずれて設けられている。 なお、内歯歯車１６の歯数は、偏心歯車１５の歯数より多く、偏心内歯歯車の 歯数は、出力歯車より歯数が多くしてある。遊星差動式減速機１１は、これらの 歯数の差に応じた減速を行なうようになっている。

【００１２】 次に遊星差動減速機の動作を説明する 遊星差動減速機１１は、入力軸１２を回転させると、偏心歯車１５が偏心回転 （公転）しながら内歯歯車１６内を転がるようにして回転（自転）する。 このとき、偏心歯車１５は、内歯歯車１６の歯数と偏心歯車１５の歯数との差 によって、入力軸１２より遅く回転する。偏心歯車１５の回転は、偏心内歯歯車 ２２と出力歯車２４との噛合によって出力軸２５に伝達される。 これによって、入力軸１２の回転速度は減速されて出力軸２５から出力される 。

【００１３】

【考案の効果】 本考案の遊星差動式減速機のバックラッシュ低減構造は、次のような効果を奏 する。 (1)内歯歯車に弾性をもたせ、内歯歯車と偏心歯車の噛合を正規の噛合より深 い噛合にしたので、内歯歯車と偏心歯車とのバックラッシュを少なくすることが できるか、或いは、除去することができる。 (2)内歯歯車を弾性変形可能にしたので、歯車の加工誤差を吸収することがで き、歯の加工誤差による振動や騒音の発生を防止することができる。 (3)バックラッシュがなくなると、図４に示すように、出力軸の負荷トルクの 変化に対する出力軸の捻れ角は、連続したヒステリシス曲線を描くような値にな り、出力軸の回転制御精度を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案のバックラッシュ低減構造を具えた遊星
差動式減速機の正面断面図である。

【図２】偏心歯車が組込まれていないときの内歯歯車の
部分拡大断面図である。

【図３】偏心歯車の偏心距離の説明図である。

【図４】歯車噛合にバックラッシュがない場合の出力軸
の負荷トルクの変化に対する出力軸の捻れ角との関係を
示す図である。

【図５】歯車噛合にバックラッシュがある場合の出力軸
の負荷トルクの変化に対する出力軸の捻れ角との関係を
示す図である。

【符号の説明】

１１ 遊星差動式減速機 １２ 入力軸 １５ 偏心歯車 １６ 内歯歯車 １８ ケーシング ２５ 出力軸

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項１】 ケーシングの内周に具えられた内歯歯車
   に、前記内歯歯車と同心の入力軸に偏心回転自在に具え
   られた偏心歯車を偏心回転させながら噛合させ、前記内
   歯歯車の歯数と前記偏心歯車の歯数との差によって出力
   軸が前記入力軸より遅く回転する遊星差動減速機におい
   て、前記内歯歯車は可撓性を有し、前記偏心歯車は前記
   内歯歯車に対し正規の噛合より深く噛合する位置に具え
   られたことを特徴とする、遊星差動式減速機のバックラ
   ッシュ低減構造。