JPH05345110A - 排ガス浄化用フィルター - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、耐久性が高く、フィルター再生に要
する電気容量が少なくてすむディーゼルエンジン等の排
ガスに含まれるスス状の炭素質微粒子を捕集するフィル
ターを提供することを目的とする。 【構成】一つ以上の開口部を設け、導電性があり、通電
加熱用の電極を取り付けた多孔体を直列に配置すること
により構成されるフィルターである。スス状の微粒子は
多孔体の前後の面の差圧により、多段式に捕集される。
導電性の多孔体に直接通電して加熱することにより、捕
集した微粒子を着火し燃焼・除去する。 【効果】フィルターの再生に必要な電気容量を過大にす
る必要がない。フィルターが閉塞することへの対策が不
要である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】ディーゼルエンジンを搭載した自
動車等から排出されるガスはスス状の炭素質の微粒子
（以下「微粒子」と略称）を含んでおり、これが大気汚
染の重大な問題の一つとなっている。本発明は、これら
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出されるガスに
含まれる微粒子を除去するためのフィルターに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ディーゼルエンジンを搭載した自
動車から排出されるガス中の微粒子を除去するフィルタ
ーとしてはコージェライト等のセラミックス製のハニカ
ム構造体が主として検討されている（特公昭６２−４１
０５４、特開平３−２５８９１１）。ここでハニカム構
造体とは、図５、６に示したように隔壁により区分され
た複数の貫通孔を有し、単位容積あたりに濾過面積を多
くとることができる構造体である。ディーゼル車排ガス
の微粒子除去用としては、例えば全体の容積が１〜４リ
ッターで、セル密度が１平方センチ当たり１０〜１５セ
ル、総セル数１５００〜２５００、隔壁厚０．３〜０．
５mmが例示されている。

【０００３】微粒子を捕集したフィルターの再生は、ハ
ニカム構造体の全体に６００℃以上の高熱を加えて微粒
子を燃焼除去する方式が主に検討されており、捕集・再
生を繰り返すことにより、継続して排ガスが処理され
る。即ちこの方式では、上記のような隔壁の厚さが極め
て薄く、セル数の多いハニカム構造体が、微粒子を燃焼
除去する際の耐熱性と、繰り返しの温度変化に耐える耐
熱衝撃性とを有することが必要である。しかしながら、
耐熱性及び耐熱衝撃性を備え、かつ加工精度が高く、ピ
ンホールなどの欠陥がなく、しかも容積の大きいハニカ
ム構造体を製造することは極めて困難であり、更に長期
の使用の過程でハニカム構造体の隔壁に割れが生じ、捕
集効率が格段に低下するといった耐久性に著しく欠ける
問題があった。またハニカム構造体を加熱するには、そ
の周囲にヒーターを設置して通電加熱する方式が簡便で
あるとして提案されているが、電源には２ＫＷ程度の容
量を必要とするため、バッテリーの容量が不足するとい
った問題もあった。

【０００４】更にフィルターを再生するにおいて、排ガ
スを流通させて微粒子を捕集しながらハニカム構造体を
加熱することは、排ガス温度が約２００〜３００℃と微
粒子の着火温度よりもかなり低いため、周囲のヒーター
加熱によって着火温度の６００℃以上に保つことが不可
能である。このため、フィルターを二系列設け、再生時
には一方のフィルターで捕集するといった、交互に捕集
と再生を繰り返す方式とならざるを得ないという問題も
あった。更にまた、微粒子が異常に蓄積してフィルター
が閉塞し、排ガスの流路が遮断されるという場合の対策
も設備の中に取り入れておく必要もあった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明はこれらの従来
技術の欠点を解決することを目的として、耐久性が高
く、フィルター加熱に必要な電気容量も少なくてすむ排
ガス浄化用のフィルターを提供するものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、一つ以上の開
口部を設けた多孔板を直列に配置してなるフィルターで
あって、多孔板が導電性であり、多孔板の中央部に通電
加熱用の電極を取り付けたことを特徴とするフィルター
であり、多孔板が導電性の外筒に設置されていることを
特徴とするフィルタである。本発明のフィルターは、図
１のように一つ以上の開口部を設けた多孔板を用いて、
これを図２のように外筒内（排ガス流路）に直列に設置
して構成される。ここで多孔板の形状は円板、三角板、
四角板状等より広い範囲で選定される。多孔板の面積は
処理する排ガス量により選定されるが、ディーゼル車用
においては、排ガスの流路に垂直な片側面積で、１〜１
０００ｃｍ² が好ましく、より好ましくは５〜５００ｃ
ｍ² である。多孔板は通気性を有することが必要で、空
隙率は３０〜７０％が適切であり、また平均細孔径は１
〜５０μが適切である。

【０００７】多孔板には開口部（オリフィス）を設ける
が、この開口部の面積は、多孔板の排ガスの流路に垂直
な面積に対して１〜５０％が好ましく、開口部の形状は
円、三角、四角形等より広い範囲で選定される。開口部
の位置は多孔板の中心部であってもよいが、図１（ｄ）
のように中心より外れた位置や図１（ｇ）、（ｈ）のよ
うに外周部を切り欠いた位置や、図１（ｉ）のように多
孔板を配置する外筒との間隙であってもよい。また開口
部は図１（ｅ）、（ｆ）のように複数であってもよい。
また多孔板の厚みは空隙率や強度により選定されるが、
０．１〜５mmが好ましい。

【０００８】本発明のフィルターはこのような通気性の
ある多孔板に開口部を設けたものをユニットとして、図
２のように間隔を設けて直列に、即ち排ガスの流路に添
って配置する。なお捕集効率の面からは、図１（ｄ）、
（ｇ）、（ｈ）、（ｉ）のように開口部が多孔板の中心
にないものを、例えば一枚毎に１８０度回転して、開口
部を流路の方向に重ならない状態で設置するほうが好ま
しい。また配置の間隔は１〜９０mmが好ましい。このユ
ニットの数を増すことにより微粒子の捕集効率を上げる
ことができるが、この数は目的とする捕集効率より選定
すればよく、通常５〜２００である。

【０００９】本発明で用いる多孔板は導電性であること
が必要であるが、これはフィルターを再生するにおい
て、多孔板をヒーターとして用いて直接通電し、多孔板
に付着した微粒子を燃焼除去するといった簡便な再生方
式を可能にするためである。従って多孔板には耐熱性及
び耐酸化性も必要である。このような性質を有する素材
としては、ＳＵＳ３１０、インコネル、ハステロイ、二
ケイ化モリブデン、二ケイ化タングステンなどの耐熱合
金や、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ランタンクロマイトな
どの導電性セラミックスなどがある。

【００１０】このような導電性の多孔板の中央部に図１
のように、通電加熱用の電極を取り付ける。ここで電極
の材質としては特に限定する必要はなく、通常電極に使
用されるニッケル、クロム、銅、銀、鉄、パラジウム等
あるいはこれらの合金を用いることができるが、ヒータ
ーに接触する部分は６００℃以上の耐熱性を有する材質
を選ぶべきである。もう一方の電極は多孔板の周囲に取
り付けられるが、多孔板を設置する支持体である外筒そ
のものが電極となるように、外筒を導電性の金属等の材
料とし、多孔板の中央部と外筒とを導通させる方式が装
置として簡便になる。

【００１１】

【作用】本発明は、一つ以上の開口部（オリフィス）を
設けた多孔板を直列に配置してなるフィルターにおい
て、再生が容易となるように多孔板に導電性の材料を選
定し、それぞれの多孔板の中央部に通電加熱用の電極を
取り付けた構造のフィルターであり、更に外筒を導電性
の材料としたものである。本発明のフィルターの捕集機
構は、図３のように排ガスの流路をオリフィスで絞るこ
とにより、オリフィスの前後で生じた差圧を利用するも
のである。この差圧によって、一部の排ガスを多孔板を
通過させて、一枚の多孔板においては一部の排ガスを処
理することを多数回繰り返す方式である。この方式にお
いて例えば、一枚の多孔板のオリフィスを８０％の排ガ
スが通過し、２０％の排ガスが多孔板を通過して微粒子
が捕集されたとした場合、ｎ枚の多孔板を直列に配置し
たフィルターにおいて、理想的には未処理の排ガスは
０．８のｎ乗となり、ｎが１０であれば未処理の排ガス
は１１％であり、ｎが２０であれば１％である。

【００１２】このフィルターで捕集した微粒子は、酸素
の存在下で６００℃以上に加熱することにより燃焼除去
できるが、多孔板を導電性の材料としておけば、多孔板
を直接通電加熱して微粒子を燃焼させる方式が採用でき
る。即ち、ヒーターをフィルターの周囲に設置してフィ
ルターの全体を加熱する方式も考えられるが、この場合
にはヒーター、その周囲の断熱材及びフィルターを加熱
することになり、直接通電加熱する方が被加熱物の熱容
量を著しく少なくする長所がある。加えて多孔板の再生
は、複数枚の全てを同時に通電加熱して行う必要はな
く、一枚の多孔板ごと、あるいは電気容量に応じて２〜
３枚ごとの間欠的な通電加熱、即ちフィルター全体に対
して熱容量の少ない部分的な加熱・再生が可能となり、
所定の温度の加熱に要する時間あたりの電気容量を著し
く低く抑えることが可能となる。従って電気容量をさ程
増加することなく、排ガスを処理しながら再生すること
も可能となるのである。

【００１３】通電加熱する電流は多孔板の中央部に取り
付けた電極と多孔板の周囲の電極との間を流れる。中央
部に一方の電極を取り付ける理由は、微粒子が若干の導
電性を有するために漏電して多孔板が短絡することを避
けるためである。即ち、外筒の近辺は排ガスの流れが淀
んで微粒子が堆積し、外筒の近辺の二箇所に電極を取り
付けると多孔板の間が短絡して通電加熱が不調になるこ
とがあり、中央部は排ガスの流れは絶えずあり、微粒子
の堆積が生じにくいという本発明者らの実験的知見に基
づくものである。なおこの漏電は、多孔板中央部の電極
に正の直流電圧を印加することでより確実に避けること
ができる。

【００１４】

【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。 実施例１ 導電性の多孔板として、図１（ｄ）のような形状の直径
１２cmで厚さ１mmの円板状であって、その中心より３cm
に直径２cmの開口部を設けた炭化ケイ素成形体（気孔率
５２％、平均細孔径２５μ）を用い、中心部に直径１cm
厚さ１mmのパラジウム製の電極を取り付けたものをユニ
ットとして、この２０枚を図４のように、３cmの間隔で
ＳＵＳ３１０製の円菅（外筒）内に設置してフィルター
を構成した。ここで多孔板は開口部を一枚ごとに１８０
度回転し、開口部を流路の方向に重ならない状態に設置
した。また中心部の電極のそれぞれに銅線をリード線と
して取り付け、それぞれを外筒に開けた穴を通して電源
に接続し、外筒はアースに接続した。なお銅線と外筒と
の隙間は絶縁材で封止した。

【００１５】このフィルターに約３００℃のディーゼル
エンジン排ガスを５００ｍ³ ／Ｈの流量で導き、ガス中
の微粒子を捕集した。捕集開始直後のフィルター差圧は
０．５Ｋｇ／ｃｍ² であり，捕集効率は９６％であっ
た。捕集は５時間継続しておこなった。その間フィルタ
ー差圧は徐々に増加し、５時間の経過時には０．７８Ｋ
ｇ／ｃｍ² であった。また終了直前の捕集効率は８１％
であった。またフィルターに付着した微粒子は捕集前後
の重量で２８ｇと測定された。

【００１６】次にこのフィルターに１ｍ³ ／Ｈの空気を
流しながら、多孔板の一枚ごとを通電加熱した。加熱は
直流電源を使って中央部の電極に１００Ｖの電圧を印加
して０．５ＫＷの電力を１０分間供給することで行い、
合計２０枚の多孔板を順次加熱した。その後、上記と全
く同様にして微粒子の捕集と再生を１０回繰り返した
が、初期の捕集効率、差圧の経時変化、終了までの捕集
効率には１回目と比較して有意差はみられなかった。

【００１７】実施例２ 実施例１と同じ２０枚の炭化ケイ素多孔板よりなるフィ
ルターに、実施例１と同様に約３００℃のディーゼルエ
ンジン排ガスを５００ｍ³ ／Ｈの流量で導きながら、多
孔板の一枚ごとに順次１．０ＫＷの電力を１０分間供給
し、間欠的にフィルターを加熱・再生しながら排ガスを
５０時間連続して流し、微粒子を捕集した。捕集開始よ
り１時間経過後のフィルター差圧は、０．４６Ｋｇ／ｃ
ｍ² 、捕集効率は９５％で、５時間経過後のフィルター
差圧は、０．４８Ｋｇ／ｃｍ² 、捕集効率は９０％で、
その後５０時間まではフィルター差圧は、０．４６〜
０．５１Ｋｇ／ｃｍ² 、捕集効率は８２〜９０％の範囲
に安定していた。

【００１８】

【発明の効果】形状が簡単な多孔板よりフィルターが構
成されるため、耐熱衝撃性が高く、従ってフィルターの
性能として信頼性が高い。多孔板に導電性の素材を用い
ることにより、多孔板の一枚ごとの再生が可能となっ
た。このためバッテリーの容量が小さくてよい。更にこ
のため、排ガスを浄化処理しながら再生することが可能
であり、フィルターを一系列だけにすることも可能であ
る。フィルターは多孔板の開口部からの流路が保証され
ているため、フィルターが閉塞して排ガスの流路がなく
なるといった異常時の対策が不要である。

【図面の簡単な説明】

【図１】開口部と電極を備えた多孔板を例示した平面図
である。

【図２】多孔板を直列に配置してなるフィルターの一部
切り欠き断面図である。

【図３】開口部を設けた多孔板における排ガスの流れの
説明図である。

【図４】実施例で用いたフィルターの一部切り欠き断面
図である。

【図５】ハニカム構造体の端面図である。

【図６】ハニカム構造体の一部切り欠き断面図である。

【符号の説明】

１ 多孔板 ２ 開口部 ３ 電極 ４ リード線 ５ 外筒

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一つ以上の開口部を設けた多孔板を直列
   に配置してなるフィルターであって、多孔板が導電性で
   あり、多孔板の中央部に通電加熱用の電極を取り付けた
   ことを特徴とするフィルター。
2. 【請求項２】 多孔板が導電性の外筒に設置されている
   ことを特徴とする請求項１記載のフィルター。