JPH05329575A - 多層構造鋳型の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 多層構造鋳型を製造するに際して、外側の補
強シェル用のスラリーが内側の耐火シェル用の層の内部
に浸透することのない鋳型製造方法を提供する。 【構成】 耐火シェル用材料の層を形成した後その空孔
をステアリン酸，パラフィン，ワセリン，グリセリン等
の炭化水素類にて封孔する処理を施し、しかる後前記補
強シェル用の材料の層を積層形成する。また炭化水素類
による封孔処理を施した後、エタノール，アセトン，ヘ
キサン，キシレン等の洗浄剤にて表面洗浄処理を施し、
耐火シェル用材料の層の表面部位の前記炭化水素類を除
去する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は多層構造鋳型の製造方
法に関する。

【０００２】

【従来の技術】鋳造用鋳型の一種に、鋳型内面を構成す
る耐火シェルとその外側においてこれを補強する補強シ
ェルとを含む多層構造鋳型があり、従来この種多層構造
鋳型は次のようにして製造していた。

【０００３】即ち図１に示しているように先ず耐火性バ
インダと耐火物微細粒子等を混合して成るセラミックス
スラリー中にワックス等から成る模型１０を浸漬して模
型１０表面にスラリー１２を塗り付け、そしてスラリー
１２が乾かないうちに耐火性セラミックス粒子１４を吹
き付けて乾燥し、これらの操作を２〜適数回繰返して耐
火シェル層、厳密には耐火シェル用材料の層１６を形成
する。

【０００４】以上の操作を終えたら次に補強シェル形成
のためのセラミックススラリー１８を上記と同様の手法
で耐火シェル用材料の層１６の外側に塗布し、そして補
強シェル用のセラミックス粒子２０をその上側に吹き付
けた後これを乾燥する。

【０００５】この後同様の操作を繰返し行い、補強シェ
ル用材料の層２２を積層形成する。そしてその後加熱に
より脱模型、セラミックス材料層の焼成を行うことによ
って、耐火シェルと補強シェルとを含む鋳型を製造す
る。

【０００６】この構造の鋳型にあっては、耐火シェルで
は耐火度や表面粗さが重要である一方補強シェルでは強
度が重要である等、本来必要とされる特性が各シェルで
異なっており、そこで従来は各シェルのセラミックス材
料，その粒度等を変える等して対応している。

【０００７】また当然に各シェル形成のためのセラミッ
クススラリーとして異なったものを用いている。例えば
耐火シェル用には耐火性に優れた高価なジルコニアスラ
リー，イットリアスラリー等を用い、補強シェル用には
シリカスラリー等を用いている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながらこの構造
の鋳型を上記手法にて製造する際、補強シェル用のスラ
リーが耐火シェル用の層１６の粒子と粒子との間の空孔
を通じて同層１６内に浸透し、更にはその内面まで滲み
出してしまうといった問題が生じていた。

【０００９】而してこのような現象が生じると、耐火シ
ェル層の本来の耐火性能が損われるとともに、かかる鋳
型を用いて鋳造を行ったとき、鋳造品の特性にも悪影響
が及ぶ問題が生じる。

【００１０】そこでこれを防止するため、鋳型製造時に
耐火シェル材料層１６と補強シェル材料層２２との間に
フィルムを挟み込み、このフィルムによって各層が相互
に干渉するのを防止する方法が提案されている。

【００１１】しかしながらこの方法の場合、鋳型構成時
に耐火シェル層と補強シェル層との間に空隙が生じてし
まい、各層が有すべき本来の特性が損なわれてしまう問
題がある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明はこのような課題
を解決するためになされたものであり、その要旨は、鋳
型内面を構成する耐火シェル用の材料の層を形成すると
ともにこれを補強する補強シェル用の材料の層を該耐火
シェル用の材料の層に積層形成し、しかる後それらを焼
成して多層構造の鋳造用鋳型を製造するに際し、前記耐
火シェル用材料の層を形成した後その空孔をステアリン
酸，パラフィン，ワセリン，グリセリン等の炭化水素類
にて封孔する処理を施し、しかる後前記補強シェル用の
材料の層を積層形成することにある（請求項１）。

【００１３】本願の別の発明は、前記炭化水素類による
封孔処理を施した後、エタノール，アセトン，ヘキサ
ン，キシレン等の洗浄剤にて表面洗浄処理を施し、前記
耐火シェル用材料の層の表面部位の前記炭化水素類を除
去することを特徴とする（請求項２）。

【００１４】

【作用及び発明の効果】上記のように本発明は、耐火シ
ェル材料の層を形成した後、その空孔を所定の炭化水素
類にて封孔処理するものである。

【００１５】封孔処理の仕方には各種考えられるが、か
かる炭化水素類をエタノール，アセトン，ヘキサン，キ
シレン等の有機溶剤に所定温度で溶かし込み、その液中
に模型表面に形成した上記耐火シェル材料の層を浸漬す
るのが好適である。

【００１６】このようにすると、耐火シェル材料の空孔
内に炭化水素類が有機溶剤とともに容易に浸入し、その
後有機溶剤の乾燥・揮発に伴って空孔内に炭化水素類が
残り、空孔を良好に閉塞する。

【００１７】本発明では、このようにして空孔を封孔処
理した後、その外側に補強シェル材料の層を形成し、そ
の後これを焼成処理する。その際空孔を閉塞している炭
化水素類は、加熱により消失してそこに鋳型に必要な空
孔を残す。

【００１８】本発明によれば、補強シェル材料の層を形
成する際にスラリーが既に形成されている耐火シェル材
料の層内に浸透したり、その内面に滲み出してしまうと
いったことを防止できる。

【００１９】従ってこのようなスラリーの滲出しに起因
して鋳造の際に鋳造品の特性が損われたりするのを防止
でき、鋳造品の特性を高めることが可能である。

【００２０】また耐火シェル，補強シェル相互の干渉を
防止でき、各シェルの材料選択の自由度も高まる。

【００２１】更に補強シェル形成時のスラリーとして安
価なものを用い得るから、鋳型自体のコストも安価とな
し得る。

【００２２】請求項２の発明は、前記封孔処理を行った
後洗浄剤にて耐火シェル材料層の表面を洗浄処理するも
ので、このようにすれば引き続いて補強シェル材料層を
積層形成したとき、それら両層の間に炭化水素類が介在
した状態となるのを防止でき、従ってこれを焼成したと
き両層の界面に隙間が生じるのを回避できる。これによ
り耐火シェルと補強シェルとを十分に密着させることが
でき、各層の本来の特性を十分に発揮させることができ
る。

【００２３】

【実施例】次に本発明の特徴を更に明確にすべく以下に
その実施例を詳述する。先ず内側の耐火シェル用材料と
して下記のジルコニア系スラリー（ａ），カルシア安定
化ジルコニア（ｂ）を、外側の補強シェル用としてシリ
カ系スラリー（ｃ），アルミナ粉末（ｄ）をそれぞれ用
意するとともに、封孔処理用の液（ｅ）を用意した。

【００２４】 （ａ）ジルコニア系スラリー： アルカリ性ジルコニアゾル（ジルコニア：３０重量％） １５０ｇ 純水 １００ｇ イットリア粉末 ５００ｇ の混合スラリー （ｂ）カルシア安定化ジルコニア： 粒度 １５〜１００メッシュ （ｃ）シリカ系スラリー： 粒度３２５メッシュ以下のシリカ粉末 ６００ｇ コロイダルシリカ ２００ｇ の混合スラリー （ｄ）アルミナ粉末： 粒度 １５〜１００メッシュ （ｅ）封孔処理液： １８％パラフィンのヘキサン溶液

【００２５】次にφ１３×５０ｍｍの寸法を有する円柱
状モデル（模型）を上記（ａ）のジルコニア系スラリー
中に浸漬して引き上げ、これに上記（ｂ）のジルコニア
粉末を一様にまぶして２３℃，湿度５０％で４時間乾燥
を行い、再度上記（ａ）のジルコニア系スラリー中に浸
漬して引き上げ、上記（ｂ）のジルコニア粉末を一様に
まぶし、２時間同じ条件で乾燥した。

【００２６】その後（ｅ）の封孔処理液中に浸漬して引
き上げ、３０分間乾燥した後、アセトン液中に３０秒間
漬けて表面洗浄を行い、これを引き上げて乾燥した。

【００２７】しかる後（ｃ）のシリカ系スラリーに浸漬
して引き上げた後、（ｄ）のアルミナ粉末を一様にまぶ
し、２時間乾燥を行った。この工程を４回繰り返した
後、４８時間かけてこれを乾燥し、その後オートクレー
ブ中で温度１５０℃，圧力８気圧の条件の下で脱モデル
を行った。その後大気中１２００℃×３時間の条件で焼
成を行い、多層鋳型を製造した。

【００２８】またこれと併せて上記アセトンによる洗浄
を行わない方法、及び従来法にて夫々多層鋳型を製造し
た。

【００２９】次にこれら三種類の多層鋳型を用いてＴｉ
Ａｌ合金を鋳造し、得られた鋳造物のＳｉ量を測定し
た。その結果が表１に示してある。

【００３０】

【表１】

【００３１】表１の結果から、本発明の鋳型の場合、そ
の製造時におけるシリカ系スラリーの浸透に基づいて鋳
造物中にＳｉ成分が入り込むことがないこと、また表面
洗浄を行った方がこれを行わない場合に比べて良好な鋳
型ができることが分かる。

【００３２】尚本発明に従う鋳型を用いて得た鋳造品
は、鋳型の成分が鋳造物中に入り込むのが有効に防止さ
れることから、その強度等の特性も良好であった。

【００３３】以上本発明の実施例を詳述したがこれはあ
くまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない範
囲において、当業者の知識に基づき様々な変更を加えた
態様で実施可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の背景説明のための説明図である。

【符号の説明】

１０ 模型 １２，１８ スラリー １４，２０ セラミックス粒子 １６ 耐火シェル材料層 ２２ 補強シェル材料層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阪口 康司 愛知県名古屋市千種区北千種三丁目２番４ 号 千種東住宅17棟201番地 (72)発明者 三輪 謙治 愛知県名古屋市名東区梅森坂二丁目1030番 地 (72)発明者 二宮 三男 愛知県名古屋市守山区弁天が丘701号 大 森台住宅２棟102号 (72)発明者 出向井 登 岐阜県海津郡南濃町境2562−９

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鋳型内面を構成する耐火シェル用の材料
   の層を形成するとともにこれを補強する補強シェル用の
   材料の層を該耐火シェル用の材料の層に積層形成し、し
   かる後それらを焼成して多層構造の鋳造用鋳型を製造す
   るに際し、 前記耐火シェル用材料の層を形成した後その空孔をステ
   アリン酸，パラフィン，ワセリン，グリセリン等の炭化
   水素類にて封孔する処理を施し、しかる後前記補強シェ
   ル用の材料の層を積層形成することを特徴とする多層構
   造鋳型の製造方法。
2. 【請求項２】 前記炭化水素類による封孔処理を施した
   後、エタノール，アセトン，ヘキサン，キシレン等の洗
   浄剤にて表面洗浄処理を施し、前記耐火シェル用材料の
   層の表面部位の前記炭化水素類を除去することを特徴と
   する請求項１に記載の多層構造鋳型の製造方法。