JPH05311444A - 硬質カーボン膜の構造 - Google Patents
硬質カーボン膜の構造Info
- Publication number
- JPH05311444A JPH05311444A JP4141931A JP14193192A JPH05311444A JP H05311444 A JPH05311444 A JP H05311444A JP 4141931 A JP4141931 A JP 4141931A JP 14193192 A JP14193192 A JP 14193192A JP H05311444 A JPH05311444 A JP H05311444A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- film
- layer
- hard carbon
- coated
- base material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Carbon And Carbon Compounds (AREA)
- Chemical Vapour Deposition (AREA)
- Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】ステンレス鋼、軟鉄鋼系材料、銅合金材料など
からなる軟質基材表面に、基材硬度の影響を受けずに密
着性良く硬質カ−ボン膜を被覆するための膜構造を得る
ため。 【構成】軟質基材であるステンレス鋼基材1の表面に被
覆した硬質化合物膜である窒化チタン層2と、該層の表
面に被覆したシリコン膜のシリコン層3と、該層の表面
に、炭化水素を含むガス雰囲気中で被覆した硬質カ−ボ
ン膜の硬質カ−ボン層4とからなる。 【効果】ステンレス鋼、軟鉄鋼系材料、銅合金材料など
からなる軟質基材表面に対する硬質カ−ボン膜の耐スク
ラッチ性、密着性が飛躍的に向上し、これらが要求され
る機械部品などに施される膜の構造として格別の効果が
ある。
からなる軟質基材表面に、基材硬度の影響を受けずに密
着性良く硬質カ−ボン膜を被覆するための膜構造を得る
ため。 【構成】軟質基材であるステンレス鋼基材1の表面に被
覆した硬質化合物膜である窒化チタン層2と、該層の表
面に被覆したシリコン膜のシリコン層3と、該層の表面
に、炭化水素を含むガス雰囲気中で被覆した硬質カ−ボ
ン膜の硬質カ−ボン層4とからなる。 【効果】ステンレス鋼、軟鉄鋼系材料、銅合金材料など
からなる軟質基材表面に対する硬質カ−ボン膜の耐スク
ラッチ性、密着性が飛躍的に向上し、これらが要求され
る機械部品などに施される膜の構造として格別の効果が
ある。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はステンレス鋼、軟鉄鋼系
材料、銅合金材料などからなる軟質基材表面に被覆した
硬質カ−ボン膜の構造に関するものである。
材料、銅合金材料などからなる軟質基材表面に被覆した
硬質カ−ボン膜の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼、軟鉄鋼系材料、銅合金材
料などからなる軟質基材表面に直接硬質カ−ボン膜を被
覆形成することは困難で、密着不良から剥離が生ずる。
このため、基材と硬質カ−ボン膜との密着性を向上させ
ることとして、チタンあるいはクロムからなる第1中間
層とシリコンあるいはゲルマニウムからなる第2中間層
の2層構造の中間層を導入することが提案されている。
このような中間層を被覆した後に、炭化水素ガスを導入
し硬質カ−ボン膜を被覆形成するが、マイクロビッカ−
ス硬度が4000以上のため内部応力が高く、厚さ5μ
m以上にした場合には膜にクラックが発生したり、基材
との膜界面に応力が集中し剥離が生じるなどの欠点があ
るため、通常は5μm以下の厚さの硬質カ−ボン膜を成
膜することが多い。このためマイクロビッカ−ス硬度が
100から400程度の上記のような軟質基材では、硬
質カ−ボン膜を5μm程度形成しても基材硬度の影響を
受けてしまい、衝撃により陥没したり傷が入りやすいな
どの欠点がある。引っかき試験などの摩耗テストでも基
材変形による影響で耐摩耗特性が劣化したり、ときには
剥離が生ずることがある。
料などからなる軟質基材表面に直接硬質カ−ボン膜を被
覆形成することは困難で、密着不良から剥離が生ずる。
このため、基材と硬質カ−ボン膜との密着性を向上させ
ることとして、チタンあるいはクロムからなる第1中間
層とシリコンあるいはゲルマニウムからなる第2中間層
の2層構造の中間層を導入することが提案されている。
このような中間層を被覆した後に、炭化水素ガスを導入
し硬質カ−ボン膜を被覆形成するが、マイクロビッカ−
ス硬度が4000以上のため内部応力が高く、厚さ5μ
m以上にした場合には膜にクラックが発生したり、基材
との膜界面に応力が集中し剥離が生じるなどの欠点があ
るため、通常は5μm以下の厚さの硬質カ−ボン膜を成
膜することが多い。このためマイクロビッカ−ス硬度が
100から400程度の上記のような軟質基材では、硬
質カ−ボン膜を5μm程度形成しても基材硬度の影響を
受けてしまい、衝撃により陥没したり傷が入りやすいな
どの欠点がある。引っかき試験などの摩耗テストでも基
材変形による影響で耐摩耗特性が劣化したり、ときには
剥離が生ずることがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そのため基材の硬度の
影響を受けないようにした硬質カ−ボン膜の構造は、基
材の熱処理による時効硬化処理を行った後あるいは基材
表面に高膜厚の湿式メッキ処理を行った後、前記表面に
形成したシリコン膜あるいはゲルマニウム膜からなる層
と、該層の表面に形成した硬質カ−ボン膜の層とからな
るものがある。しかし熱処理による時効硬化処理を行う
場合には基材材質が限定されてしまうこと、熱処理によ
り基材表面に酸化物などが形成され、耐蝕性を劣化させ
る原因となることがあげられる。また高膜厚の湿式メッ
キでは基材とメッキ膜界面でメッキ浴中の不純物による
腐蝕が発生すること、メッキ膜表面に酸化物層が形成さ
れシリコン膜あるいはゲルマニウム膜からなる層との密
着性を低下させること、膜形成に湿式と乾式の2工程を
通すため連続処理ができないなどの難点がある。
影響を受けないようにした硬質カ−ボン膜の構造は、基
材の熱処理による時効硬化処理を行った後あるいは基材
表面に高膜厚の湿式メッキ処理を行った後、前記表面に
形成したシリコン膜あるいはゲルマニウム膜からなる層
と、該層の表面に形成した硬質カ−ボン膜の層とからな
るものがある。しかし熱処理による時効硬化処理を行う
場合には基材材質が限定されてしまうこと、熱処理によ
り基材表面に酸化物などが形成され、耐蝕性を劣化させ
る原因となることがあげられる。また高膜厚の湿式メッ
キでは基材とメッキ膜界面でメッキ浴中の不純物による
腐蝕が発生すること、メッキ膜表面に酸化物層が形成さ
れシリコン膜あるいはゲルマニウム膜からなる層との密
着性を低下させること、膜形成に湿式と乾式の2工程を
通すため連続処理ができないなどの難点がある。
【0004】本発明の目的は、上記問題点を解決し、ス
テンレス鋼、軟鉄鋼系材料、銅合金材料などからなる軟
質基材表面に、耐摩耗性に優れた硬質カ−ボン膜を密着
性良く被覆するための膜構造を提供することにある。
テンレス鋼、軟鉄鋼系材料、銅合金材料などからなる軟
質基材表面に、耐摩耗性に優れた硬質カ−ボン膜を密着
性良く被覆するための膜構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的のため本発明に
おいては、ステンレス鋼、軟鉄鋼系材料、銅合金材料な
どからなる軟質基材表面に被覆した周期律表第IVa,
Va,VIa族に属する金属の炭化物、窒化物あるいは
窒炭化物からなる硬質化合物膜の層と、該硬質化合物膜
の層の表面に被覆したシリコン膜またはゲルマニウム膜
からなる層と、該シリコン膜またはゲルマニウム膜から
なる層の表面に、炭化水素を含むガス雰囲気中で被覆し
た硬質カ−ボン膜の層とからなるものである。また軟質
基材表面と硬質化合物膜の層との間に、金属膜または金
属合金膜の層を設けても良い。
おいては、ステンレス鋼、軟鉄鋼系材料、銅合金材料な
どからなる軟質基材表面に被覆した周期律表第IVa,
Va,VIa族に属する金属の炭化物、窒化物あるいは
窒炭化物からなる硬質化合物膜の層と、該硬質化合物膜
の層の表面に被覆したシリコン膜またはゲルマニウム膜
からなる層と、該シリコン膜またはゲルマニウム膜から
なる層の表面に、炭化水素を含むガス雰囲気中で被覆し
た硬質カ−ボン膜の層とからなるものである。また軟質
基材表面と硬質化合物膜の層との間に、金属膜または金
属合金膜の層を設けても良い。
【0006】窒化チタン、炭化タンタル、炭化タングス
テンなどの周期律表第IVa,Va,VIa族に属する
金属の炭化物あるいは窒化物あるいは窒炭化物からなる
硬質化合物膜は、いずれも2000から3000程度の
マイクロビッカ−ス硬度を有する高硬度な膜である。ま
た軟質基材とこれら硬質化合物膜との密着は非常に強固
であり、引き続きマイクロビッカ−ス硬度が700前後
のシリコン膜あるいはゲルマニウム膜からなる軟質の層
を積層することにより、応力を緩和しながら密着性良く
高硬度の硬質カ−ボン膜を被覆することが可能である。
テンなどの周期律表第IVa,Va,VIa族に属する
金属の炭化物あるいは窒化物あるいは窒炭化物からなる
硬質化合物膜は、いずれも2000から3000程度の
マイクロビッカ−ス硬度を有する高硬度な膜である。ま
た軟質基材とこれら硬質化合物膜との密着は非常に強固
であり、引き続きマイクロビッカ−ス硬度が700前後
のシリコン膜あるいはゲルマニウム膜からなる軟質の層
を積層することにより、応力を緩和しながら密着性良く
高硬度の硬質カ−ボン膜を被覆することが可能である。
【0007】他にもマイクロビッカ−ス硬度2000以
上の硬度を有する硬質化合物膜には酸化チタン、酸化タ
ンタルなどの周期律表第IVa,Va,VIa族に属す
る金属の酸化物などがあるが、これらを第1中間層とし
て採用して被覆した場合には第2中間層であるシリコン
膜あるいはゲルマニウム膜からなる層との膜界面での密
着性が極端に低下し、硬質カ−ボン膜被覆後に密着性を
テストする引っかき試験を行っても良好な結果は得られ
ず、実際の表面硬化処理の膜構造としての使用には耐え
ない。
上の硬度を有する硬質化合物膜には酸化チタン、酸化タ
ンタルなどの周期律表第IVa,Va,VIa族に属す
る金属の酸化物などがあるが、これらを第1中間層とし
て採用して被覆した場合には第2中間層であるシリコン
膜あるいはゲルマニウム膜からなる層との膜界面での密
着性が極端に低下し、硬質カ−ボン膜被覆後に密着性を
テストする引っかき試験を行っても良好な結果は得られ
ず、実際の表面硬化処理の膜構造としての使用には耐え
ない。
【0008】
【作用】軟質基材との密着性が強固でマイクロビッカ−
ス硬度が2000から3000程度の炭化物、窒化物、
窒炭化物からなる硬質化合物膜を、軟質基材と硬質カー
ボン膜との間に介在させることにより、見かけ上の基材
硬度が上昇し陥没や傷などの基材変形による影響を防止
することが可能である。さらに高硬度の硬質化合物膜に
密着性良く低硬度のシリコン膜あるいはゲルマニウム膜
を積層することで硬質カ−ボン膜の応力を緩和しながら
の被覆が可能で、基材硬度と硬質カ−ボン膜の硬度差が
縮まり、耐スクラッチ性、耐摩耗性が飛躍的に向上し
た。また軟質基材と硬質化合物膜との間に金属膜または
金属合金膜の層を設けることで、更に強固な密着性や耐
蝕性等を得ることできる。このような炭化物、窒化物、
窒炭化物からなる硬質化合物膜を中間層として被覆した
構造により本発明の目的とする機能を果たすものであ
る。
ス硬度が2000から3000程度の炭化物、窒化物、
窒炭化物からなる硬質化合物膜を、軟質基材と硬質カー
ボン膜との間に介在させることにより、見かけ上の基材
硬度が上昇し陥没や傷などの基材変形による影響を防止
することが可能である。さらに高硬度の硬質化合物膜に
密着性良く低硬度のシリコン膜あるいはゲルマニウム膜
を積層することで硬質カ−ボン膜の応力を緩和しながら
の被覆が可能で、基材硬度と硬質カ−ボン膜の硬度差が
縮まり、耐スクラッチ性、耐摩耗性が飛躍的に向上し
た。また軟質基材と硬質化合物膜との間に金属膜または
金属合金膜の層を設けることで、更に強固な密着性や耐
蝕性等を得ることできる。このような炭化物、窒化物、
窒炭化物からなる硬質化合物膜を中間層として被覆した
構造により本発明の目的とする機能を果たすものであ
る。
【0009】
【実施例1】以下図面を参照して本発明の実施例を説明
する。図1は本発明の実施例における層構造を模式的に
示す断面図である。軟質基材であるステンレス鋼基材1
を取り付けた真空装置内に純アルゴンガスを導入して圧
力を2×10-3Torrに保持した雰囲気中で、チタン
材を電子ビ−ムで溶解して蒸発させ、それと同時に窒素
ガスを導入し厚さ1μm以上の硬質化合物膜である窒化
チタン層2をステンレス鋼基材1の表面に被覆する。
(反応性イオンプレ−ティング法)次いで、モノシラン
10%、アルゴン90%からなる混合ガスを導入した雰
囲気中でガス圧力を1×10-1Torrに保持し、1
3.56MHzの高周波電力を300W程度印加しプラ
ズマCVD法により、シリコン膜からなるシリコン層3
を前記窒化チタン層2の表面に厚さ0.2μm以上被覆
し、引き続き純メタンガスを導入した雰囲気中でガス圧
力を1×10-1Torrに保持し、同様に13.56M
Hzの高周波電力を300W程度印加しプラズマCVD
法により、硬質カ−ボン膜からなる硬質カ−ボン層4を
厚さ1μm以上被覆形成した。
する。図1は本発明の実施例における層構造を模式的に
示す断面図である。軟質基材であるステンレス鋼基材1
を取り付けた真空装置内に純アルゴンガスを導入して圧
力を2×10-3Torrに保持した雰囲気中で、チタン
材を電子ビ−ムで溶解して蒸発させ、それと同時に窒素
ガスを導入し厚さ1μm以上の硬質化合物膜である窒化
チタン層2をステンレス鋼基材1の表面に被覆する。
(反応性イオンプレ−ティング法)次いで、モノシラン
10%、アルゴン90%からなる混合ガスを導入した雰
囲気中でガス圧力を1×10-1Torrに保持し、1
3.56MHzの高周波電力を300W程度印加しプラ
ズマCVD法により、シリコン膜からなるシリコン層3
を前記窒化チタン層2の表面に厚さ0.2μm以上被覆
し、引き続き純メタンガスを導入した雰囲気中でガス圧
力を1×10-1Torrに保持し、同様に13.56M
Hzの高周波電力を300W程度印加しプラズマCVD
法により、硬質カ−ボン膜からなる硬質カ−ボン層4を
厚さ1μm以上被覆形成した。
【0010】
【比較例1】実施例1と同様に、軟質基材であるステン
レス鋼基材を取り付けた真空装置内に純アルゴンガスを
導入した雰囲気中で、ステンレス鋼基材表面に厚さ0.
1μm以上の金属チタン層を被覆する。次いでモノシラ
ン10%、アルゴン90%からなる混合ガスを導入した
雰囲気中でシリコン膜からなるシリコン層を厚さ0.2
μm以上被覆し、引き続き純メタンガスを導入した雰囲
気中で硬質カ−ボン膜からなる硬質カ−ボン層を厚さ1
μm以上被覆形成した。
レス鋼基材を取り付けた真空装置内に純アルゴンガスを
導入した雰囲気中で、ステンレス鋼基材表面に厚さ0.
1μm以上の金属チタン層を被覆する。次いでモノシラ
ン10%、アルゴン90%からなる混合ガスを導入した
雰囲気中でシリコン膜からなるシリコン層を厚さ0.2
μm以上被覆し、引き続き純メタンガスを導入した雰囲
気中で硬質カ−ボン膜からなる硬質カ−ボン層を厚さ1
μm以上被覆形成した。
【0011】
【比較例2】軟質基材であるステンレス鋼基材表面に予
め下地メッキ処理として厚さ5μm以上のニッケルメッ
キ膜を湿式無電解メッキ法により施す。続いて比較例1
と同様にシリコン層を厚さ0.2μm以上と被覆し、引
き続き純メタンガスを導入した雰囲気中で硬質カ−ボン
層を厚さ1μm以上被覆形成した。
め下地メッキ処理として厚さ5μm以上のニッケルメッ
キ膜を湿式無電解メッキ法により施す。続いて比較例1
と同様にシリコン層を厚さ0.2μm以上と被覆し、引
き続き純メタンガスを導入した雰囲気中で硬質カ−ボン
層を厚さ1μm以上被覆形成した。
【0012】実施例1、比較例1、比較例2、で得られ
た硬質カ−ボン膜の密着性、耐スクラッチ性、耐摩耗性
の試験結果を下記表1に示す。密着性は引っかき試験を
行い、剥離開始荷重を測定した。耐スクラッチ性は圧痕
試験を行い、先端角50μmの曲率半径を有するスタイ
ラスに荷重を印加して膜表面に当て、圧痕が観察され始
める開始荷重を測定した。耐摩耗性は摩耗試験機で荷重
300gfを印加した炭化けい素#600の研磨紙によ
る200回往復テストにより摩耗した膜厚を測定した。
硬質カ−ボン膜の膜陥没による耐スクラッチ性と耐摩耗
性を改善する上で、従来膜(比較例1)は効果が無く、
無電解ニッケルメッキ膜の介在(比較例2)では、耐ス
クラッチ性および耐摩耗性が窒化物の硬質化合物膜を介
在(実施例1)させた場合と同様に著しく改善される
が、硬質カ−ボン膜の密着性が従来膜(比較例1)より
も低下することが認められる。無電解ニッケルメッキ膜
を第1中間層として被覆し、シリコン膜を第2中間層と
し、その表面に硬質カ−ボン膜を被覆形成した後の引っ
かき試験による剥離界面を測定したところ、第1中間層
である無電解ニッケルメッキ膜と第2中間層であるシリ
コン層の膜界面であることが判明した。本発明の方法に
より耐スクラッチ性、耐摩耗性、密着性ともに飛躍的に
向上することが明らかに認められる。
た硬質カ−ボン膜の密着性、耐スクラッチ性、耐摩耗性
の試験結果を下記表1に示す。密着性は引っかき試験を
行い、剥離開始荷重を測定した。耐スクラッチ性は圧痕
試験を行い、先端角50μmの曲率半径を有するスタイ
ラスに荷重を印加して膜表面に当て、圧痕が観察され始
める開始荷重を測定した。耐摩耗性は摩耗試験機で荷重
300gfを印加した炭化けい素#600の研磨紙によ
る200回往復テストにより摩耗した膜厚を測定した。
硬質カ−ボン膜の膜陥没による耐スクラッチ性と耐摩耗
性を改善する上で、従来膜(比較例1)は効果が無く、
無電解ニッケルメッキ膜の介在(比較例2)では、耐ス
クラッチ性および耐摩耗性が窒化物の硬質化合物膜を介
在(実施例1)させた場合と同様に著しく改善される
が、硬質カ−ボン膜の密着性が従来膜(比較例1)より
も低下することが認められる。無電解ニッケルメッキ膜
を第1中間層として被覆し、シリコン膜を第2中間層と
し、その表面に硬質カ−ボン膜を被覆形成した後の引っ
かき試験による剥離界面を測定したところ、第1中間層
である無電解ニッケルメッキ膜と第2中間層であるシリ
コン層の膜界面であることが判明した。本発明の方法に
より耐スクラッチ性、耐摩耗性、密着性ともに飛躍的に
向上することが明らかに認められる。
【0013】また、硬質化合物膜として炭化タンタル膜
を被覆し、他は実施例1と同様に膜を積層した場合も、
同様に極めて強固な密着性と飛躍的な耐スクラッチ性の
向上が認められた。また、上記実施例中では硬質化合物
膜の層の表面にシリコン膜の層を設けたが、ゲルマニウ
ム膜の層を設けても同様の効果が得られることは言うま
でもない。
を被覆し、他は実施例1と同様に膜を積層した場合も、
同様に極めて強固な密着性と飛躍的な耐スクラッチ性の
向上が認められた。また、上記実施例中では硬質化合物
膜の層の表面にシリコン膜の層を設けたが、ゲルマニウ
ム膜の層を設けても同様の効果が得られることは言うま
でもない。
【0014】また、上記実施例中では基材表面上に直接
金属の炭化物、窒化物、窒炭化物の硬質化合物膜を被覆
したが、軟質基材の材質によっては例えば、軟質基材が
銅合金材料である黄銅の場合、軟質基材表面と硬質化合
物膜との間に、金属膜または金属合金膜であるニッケル
層またはニッケル−リン層を設けることにより、より強
固な密着性,耐蝕性等を得ることができる。また、その
他の金属膜または金属合金膜として、チタン、チタン合
金等がある。
金属の炭化物、窒化物、窒炭化物の硬質化合物膜を被覆
したが、軟質基材の材質によっては例えば、軟質基材が
銅合金材料である黄銅の場合、軟質基材表面と硬質化合
物膜との間に、金属膜または金属合金膜であるニッケル
層またはニッケル−リン層を設けることにより、より強
固な密着性,耐蝕性等を得ることができる。また、その
他の金属膜または金属合金膜として、チタン、チタン合
金等がある。
【0015】
【表1】
【0016】以上の実施例は硬質化合物膜として窒化チ
タンあるいは炭化チタンを被覆した後、シリコン膜を主
体とする層を被覆し、その表面に硬質カ−ボン膜を被覆
形成したものであるが、本発明の方法は周期律表第IV
a,Va,VIa族に属する金属の炭化物あるいは窒化
物あるいは窒炭化物被膜に対して有効である。硬質化合
物膜の厚みは1μm以上あれば効果が現われるが、2μ
mから10μmの範囲が望ましい。
タンあるいは炭化チタンを被覆した後、シリコン膜を主
体とする層を被覆し、その表面に硬質カ−ボン膜を被覆
形成したものであるが、本発明の方法は周期律表第IV
a,Va,VIa族に属する金属の炭化物あるいは窒化
物あるいは窒炭化物被膜に対して有効である。硬質化合
物膜の厚みは1μm以上あれば効果が現われるが、2μ
mから10μmの範囲が望ましい。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば見かけ上の下地硬度を上
昇させるために硬質化合物膜を介在させてシリコン膜ま
たはゲルマニウム膜からなる層と硬質カ−ボン膜を被覆
形成することにより耐スクラッチ性、密着性が飛躍的に
向上し、これらが要求される機械部品などに施される膜
の構造として格別の効果がある。また一連の工程を同一
の真空装置を用いて連続的に処理することが可能であ
る。
昇させるために硬質化合物膜を介在させてシリコン膜ま
たはゲルマニウム膜からなる層と硬質カ−ボン膜を被覆
形成することにより耐スクラッチ性、密着性が飛躍的に
向上し、これらが要求される機械部品などに施される膜
の構造として格別の効果がある。また一連の工程を同一
の真空装置を用いて連続的に処理することが可能であ
る。
【図1】本発明の実施例における層構造を示す模式的断
面図である。
面図である。
1 ステンレス鋼基材 2 窒化チタン層 3 シリコン層 4 硬質カ−ボン層
Claims (2)
- 【請求項1】 ステンレス鋼、軟鉄鋼系材料、銅合金材
料などからなる軟質基材表面に被覆した周期律表第IV
a,Va,VIa族に属する金属の炭化物、窒化物ある
いは窒炭化物からなる硬質化合物膜の層と、該硬質化合
物膜の層の表面に被覆したシリコン膜またはゲルマニウ
ム膜からなる層と、該シリコン膜またはゲルマニウム膜
からなる層の表面に、炭化水素を含むガス雰囲気中で被
覆した硬質カ−ボン膜の層とからなることを特徴とする
硬質カ−ボン膜の構造。 - 【請求項2】 軟質基材表面と硬質化合物膜の層との間
に形成した、金属膜または金属合金膜の層とからなるこ
とを特徴とする請求項1記載の硬質カ−ボン膜の構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4141931A JPH05311444A (ja) | 1992-05-08 | 1992-05-08 | 硬質カーボン膜の構造 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4141931A JPH05311444A (ja) | 1992-05-08 | 1992-05-08 | 硬質カーボン膜の構造 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05311444A true JPH05311444A (ja) | 1993-11-22 |
Family
ID=15303485
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4141931A Pending JPH05311444A (ja) | 1992-05-08 | 1992-05-08 | 硬質カーボン膜の構造 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05311444A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008010747A1 (en) * | 2006-07-19 | 2008-01-24 | Sandvik Intellectual Property Ab | Method of producing a rough surface on a substrate |
JP2012121786A (ja) * | 2010-12-07 | 2012-06-28 | Samsung Electronics Co Ltd | グラフェン構造物及びその製造方法 |
-
1992
- 1992-05-08 JP JP4141931A patent/JPH05311444A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008010747A1 (en) * | 2006-07-19 | 2008-01-24 | Sandvik Intellectual Property Ab | Method of producing a rough surface on a substrate |
JP2012121786A (ja) * | 2010-12-07 | 2012-06-28 | Samsung Electronics Co Ltd | グラフェン構造物及びその製造方法 |
US9230801B2 (en) | 2010-12-07 | 2016-01-05 | Samsung Electronics Co., Ltd. | Graphene structure and method of fabricating the same |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US5368939A (en) | Hard multilayer coated product and process for producing same | |
EP3287544A1 (en) | Coated metal mold and method for manufacturing same | |
JPH0578821A (ja) | ピストンリング及びその製造法 | |
EP2083095A2 (en) | Diamond-like carbon film for sliding parts and method for production thereof | |
JP2771947B2 (ja) | 摺動部材 | |
JP2004169137A (ja) | 摺動部材 | |
JP2003026414A (ja) | 非晶質炭素被膜と非晶質炭素被膜の製造方法および非晶質炭素被膜の被覆部材 | |
US6214479B1 (en) | Covered member and method of producing the same | |
JPS62120471A (ja) | ピストンリング | |
JP4360082B2 (ja) | 非晶質炭素被膜の製造方法及び非晶質炭素被覆摺動部品 | |
JPH05311444A (ja) | 硬質カーボン膜の構造 | |
JP2823169B2 (ja) | コイルばねとその製造方法 | |
JP4612147B2 (ja) | 非晶質硬質炭素膜及びその製造方法 | |
JPH11318520A (ja) | チタン金属製腕時計用外装部品およびその表面処理方法 | |
WO2004085705A1 (ja) | 摺動材料 | |
JP3693316B2 (ja) | 被覆部材の製造方法 | |
JPS6326210A (ja) | 冷間圧延用ワ−クロ−ル | |
JP2003014121A (ja) | ピストンリング | |
JPH0525636A (ja) | 装飾用乾式TiNめつきステンレス鋼材の製造方法 | |
JP2885087B2 (ja) | 耐剥離性に優れた硬質皮膜を有する押出し加工用ダイスとその製造方法及び表面性状に優れたアルミニウム押出し形材 | |
JP4858507B2 (ja) | 被研磨物保持用キャリア | |
JP2003014122A (ja) | ピストンリング | |
JPH0586482A (ja) | 摺動材料 | |
JP3236636B2 (ja) | ステンレス鋼基材の表面に硬質化合物膜を被覆する方法 | |
JP2977105B2 (ja) | 耐摩耗性に優れた摺動部材の製造方法 |