JPH05306732A - 免震装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 装置自体の高さを高くすることなく、水平方
向及び鉛直方向の振動を有効に減衰し得る３次元的な免
震装置を提供することを目的とするものである。 【構成】 免震装置は、被免震支持体Ｗを設置する上部
ベッド１と、床面Ｇ上に設置された下部ベッド２との間
に、水平方向の振動を減衰させる複数個の弾性部材３を
水平方向に直列に連結した復元ばね装置４と、鉛直方向
の振動を減衰させる複数の空気ばね体５とが並列に配設
されている。前記上部ベッド１と下部ベッド２との間に
配設された復元ばね装置４は、上述したように少なくと
も２個以上の弾性部材３と、この複数個の弾性部材３を
水平方向に配設して直列に連結する鉄板等により構成さ
れた略十字状の上部締結部材６及び略方形状の下部締結
部材７とで構成され、前記弾性部材３の内側に位置する
４個の弾性部材３ａの上下端は、上部締結部材６と下部
締結部材７とに締結され、外側に位置する４個の弾性部
材３ｂの上下端は、上部締結部材６と下部ベッド２とに
締結されて配設されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、免震装置にかかわ
り、更に詳しくは地震等による水平方向の振動及び鉛直
方向の振動の伝達を有効に減衰させ得る免震装置に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、地震等の震動の伝達を減衰させる
装置として、構造物の床下に設置して構造物や構造物内
の内装物に伝達される振動エネルギーを減少させる免震
装置が知られている。この免震装置の免震性能（水平方
向の振動）は、一般に水平ばね定数を小さくするほど良
くなる反面、水平方向の相対変位は大きくなることは公
知である。このような機能を有するばね部材として、例
えば、特開昭６１−１４３４０号公報及び図１０，図１
１に開示されている積層ゴムを利用した免震支持装置が
あり、この免震支持装置は、複数位置で積層ゴム２１を
上下に複数個積み重ねると共に、各段の積層ゴム２１の
上下端面を安定板２２で互いに連結した構造の多段積層
ゴム組立体２３により支持体２０を支持している。

【０００３】また、この他に例えば、特開平２−１９９
３３８号公報に開示されているように上記多段積層ゴム
組立体２３の上部に、ベローズタイプの空気ばねを積み
重ね、高荷重から軽荷重まで広い範囲の荷重に対して免
震性能を発揮させ得るように構成した免震支持装置も知
られている。ところで、上記のような免震装置における
免震性能の特性を得るためには、積層ゴム２１の積層数
を多くする必要がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする問題点】然しながら、上記の
ような免震支持装置の場合には、装置としての高さが高
くなり、既設の床下等に利用することは難しく、また座
屈変形の影響があって実際には使用できず、また上記の
従来例のような鉛直方向に積層ゴムを配列した多段積層
ゴム組立体２３及び多段積層ゴム組立体２３に空気ばね
を積み重ねた装置の場合には、製品高さが高くなるた
め、安定感がなく、設置スペース上に問題があった。

【０００５】この発明は、かかる従来の課題に着目して
案出されたもので、装置自体の高さを高くすることな
く、水平方向及び鉛直方向の振動を有効に減衰し得る３
次元的な免震装置を提供することを目的とするものであ
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】この発明は上記目的を達
成するため、上部ベッドと下部ベッドとの間に、復元ば
ね装置と、空気ばね体とを並列に配設し、前記復元ばね
装置は、少なくとも２個以上の弾性部材と、この複数個
の弾性部材を水平方向に配設して直列に連結する上部締
結部材及び下部締結部材とで構成すると共に、弾性部材
の一部を下部ベッドに締結し、前記空気ばね体は、その
上端部を上部ベッドに固定すると共に、空気ばね体の下
端部と下部ベッドとの間に、スライド部材を設けたこと
を要旨とするものである。

【０００７】

【発明の作用】この発明は、上記のように構成され、上
部ベッドと下部ベッドとの間に、複数個の弾性部材を水
平方向に直列に連結した復元ばね装置と、空気ばね体と
を並列に配設することで、免震装置自体の高さを低く構
成でき、水平方向の振動に対しては復元ばね装置により
減衰させることが出来ると共に、要求剪断免震性能を得
ることが出来、また鉛直方向の振動に対しては、荷重を
支持する空気ばね体で減衰させることにより、３次元的
な免震性能を得ることが出来、更に空気ばね体と下部ベ
ッドとの間に、被免震支持体の荷重を支持するスライド
部材を設けることで、復元装置の座屈を回避し、水平変
形能力の増大を図ることが出来るものである。

【０００８】

【発明の実施例】以下、添附図面に基づいて、この発明
の実施例を説明する。図１は、この発明を実施した免震
装置の第１実施例を示す平面図、図２は図１のＡーＡ矢
視断面図、図３は免震装置に水平方向からの震動が加わ
った場合の作用説明図であって、前記免震装置は、被免
震支持体Ｗを設置する上部ベッド１と、床面Ｇ上に設置
された下部ベッド２との間に、水平方向の振動を減衰さ
せる複数個の弾性部材３を水平方向に直列に連結した復
元ばね装置４と、鉛直方向の振動を減衰させる複数の空
気ばね体５とが並列に配設されている。

【０００９】前記上部ベッド１と下部ベッド２との間に
配設された復元ばね装置４は、上述したように少なくと
も２個以上の弾性部材３と、この複数個の弾性部材３を
水平方向に配設して直列に連結する鉄板等により構成さ
れた略十字状の上部締結部材６及び略方形状の下部締結
部材７とで構成され、前記弾性部材３の内側に位置する
４個の弾性部材３ａの上下端は、上部締結部材６と下部
締結部材７とに締結され、外側に位置する４個の弾性部
材３ｂの上下端は、上部締結部材６と下部ベッド２とに
締結されて配設されている。

【００１０】なお、弾性部材３の数及び配置について
は、特に上記の実施例に限定するものではなく、目的と
する免震性能に対応させて任意に設定することが出来る
ものであり、弾性部材３に高減衰ゴムを使用することに
よって、ダンパー機能を具備させることも出来る。ま
た、被免震支持体Ｗは、空気ばね体５を介してスライド
部材８で支持するように構成されているため、復元ばね
装置４は座屈することなく変形される。

【００１１】また、前記鉛直方向の振動を減衰させる複
数の空気ばね体５は、下部締結部材７上の四隅に設置さ
れ、その上端部は上部ベッド１に固定され、下端部は下
部締結部材７上に締結され、更に空気ばね体５の中心軸
線上には、下部ベッド２上をスライドするボールベアリ
ングや、ＰＴＦＥ材（Polytetrafluoroethylene)等のス
ライド部材８が設けられている。このスライド部材８
は、空気ばね体５を介して被免震支持体Ｗの荷重を支持
し、地震時の水平力により応答滑動するものであり、上
部ベッド１上に設置する被免震支持体Ｗの要求特性によ
って摩擦係数の異なるものを使用する。

【００１２】例えば、半導体製造装置，電子顕微鏡，計
測加工機器類等の精密機械関係においては、微弱振動か
ら機能を有効に発揮出来るように摩擦係数が、０．０５
以下のボールベアリング等のスライド部材８を使用し、
また陶器類，美術品等のように、微弱振動では滑動する
ことなく（トリガー機能）、大地震で免震機能を有効に
発揮出来れば良い対象については、摩擦係数が、０．０
５以上のＰＴＦＥ材等のスライド部材８を使用するもの
である。

【００１３】前記空気ばね体５としては、図４に示すよ
うに、ベローズタイプのものを使用しているが、ダイヤ
フラム型やローリングシール型のものでも使用出来る。
また、上部ベッド１の中央下面には、上部締結部材６の
中心部に設けた中空部１２を貫通し、下部締結部材７に
設けた貫通穴１３に昇降可能に挿通する滑り部材１４が
吊設されている。従って、水平方向の振動があった場
合、上部ベッド１と下部締結部材７とは滑り部材１４を
介して一体的に作用し、また上下方向の振動に対して
は、滑り部材１４が貫通穴１３内を上下にスライドする
ようになっている。また、図において１５は、空気ばね
体５の補助タンクを示し、この補助タンク１５は空気ば
ね体５と連通されているが、その間に適切な絞り弁１５
ａを設けて絞ることにより、減衰機能を持たせている。

【００１４】このように、上記の実施例では、被免震支
持体Ｗを設置する上部ベッド１と、床面Ｇ上に設置され
た下部ベッド２との間に、復元ばね装置４と、空気ばね
体５とが並列に配設されているので、免震装置の高さを
従来装置に比べて著しく低く構成でき、従って、床面Ｇ
と上部ベッド１との間隔が狭い既設の床にも有効に利用
できるものである。また、図３に示すように復元ばね装
置４に水平方向の振動が作用した場合にも、復元ばね装
置４の複数個の弾性部材３は、水平方向に大きな変位能
力を得ることが出来ると共に、水平方向のばね定数を小
さく出来るので、系の固有振動数を低くできる結果、免
震性能を向上させることが出来、またこの時の空気ばね
体５は、下部ベッド２が図３のように右水平方向に移動
しても、空気ばね体５の上部及び下部を締結してある上
部ベッド１と下部締結材７が滑り部材１４により水平方
向にガイドされた状態で、その上面をスライド部材８が
滑るので、何ら水平方向の作用力を受けることなく垂直
な姿勢を維持することが出来るものである。

【００１５】また免震装置に鉛直方向の振動が作用した
場合、空気ばね体５の変形により減衰でき、従って、上
下免震性能を得ることが出来、この空気ばね体５と上記
の復元ばね装置４とで、三次元的（上下方向，水平方
向）な免震性能を得ることが出来るものである。図５〜
図７は、免震装置の第２実施例を示し、この実施例は、
上部ベッド１と下部ベッド２との間に配設された復元ば
ね装置４の周囲に、複数の空気ばね体５を配置し、前記
復元ばね装置４は、上記実施例と同様に、少なくとも２
個以上の弾性部材３と、この複数個の弾性部材３を水平
方向に配設して直列に連結する円形状の上部締結部材６
ａ及びドーナツ状の下部締結部材７ａとで構成され、中
心側に位置する４個の弾性部材３ａの上下端は、上部締
結部材６ａと下部ベッド２とに締結され、またその外周
に配設される４個の弾性部材３ｂの上下端は、上部締結
部材６ａと下部締結部材７ａとに締結されている。

【００１６】また、復元ばね装置４の周囲に配設される
複数の空気ばね体５は、下部締結部材７上の四隅に設置
され、その上端部は上部ベッド１に固定され、下端部は
下部締結部材７上に締結され、更に空気ばね体５の中心
軸線上には、被免震支持体Ｗの荷重を支持し、下部ベッ
ド２上をスライドするボールベアリング，ＰＴＦＥ等の
スライド部材８が設けられている。

【００１７】なお、その他の構成及び作用は、上記第１
実施例と同様なので、同一符号を付して説明は省略す
る。また、上記の各実施例は、復元ばね装置４と空気ば
ね体５とを円形状に配設したが、上記の実施例に限定さ
れず、例えば、図８に示すように直線的に配設しても同
様な機能を有するものである。

【００１８】即ち、復元ばね装置４の弾性部材１６を６
個使用し、両端側に位置する弾性部材１６ａ，１６ｆの
上下端を上部締結部材６ａと下部ベッド２とに締結し、
その間の弾性部材１６ｂ，１６ｃ，１６ｄ，１６ｅは、
下部締結部材７ａと上部締結部材６ａとに交互に締結し
て構成したものである。また、弾性部材１６ｂと１６ｃ
との間及び弾性部材１６ｄと１６ｅとの間には、空気ば
ね体５が配設され、この空気ばね体５は、上記第１実施
例及び第２実施例と同様に、その上端部は上部ベッド１
に固定され、下端部は下部締結部材７上に締結され、更
に空気ばね体５の中心軸線上には、図示しないが下部ベ
ッド２上をスライドするボールベアリング等のスライド
部材８が設けられている。

【００１９】また、図９は、免震装置の第４実施例を示
し、この実施例は、１個の空気ばね体５の周囲に復元ば
ね装置４を設け、空気ばね体５の内部には、空気ばね体
５の水平方向を拘束するガイド機構１８を設けた免震ユ
ニット１９であって、この免震ユニット１９を、被免震
支持体Ｗに対して少なくとも３点以上設置して構成した
ものである。なお、その他の構成及び作用は、上記第１
実施例と同様なので、同一符号を付して説明は省略す
る。

【００２０】以上のように構成することで、上部ベッド
１と下部ベッド２との間に、複数個の弾性部材３を水平
方向に直列に連結した復元ばね装置４と、複数の空気ば
ね体５とを並列に配設することで、免震装置自体の高さ
を低く構成でき、また水平方向の振動に対しては復元ば
ね装置４により減衰させることが出来ると共に、要求剪
断免震性能を得ることが出来、また鉛直方向の振動に対
しては、荷重を支持する複数の空気ばね体５で減衰させ
ることにより、３次元的な免震性能を得ることが出来、
更に空気ばね体５と下部ベッド２との間に、被免震支持
体Ｗの荷重を支持するスライド部材８を設けることで、
復元ばね装置４の座屈を回避し、水平変形能力の増大を
図ることが出来るものである。

【００２１】

【発明の効果】この発明は、上記のように上部ベッドと
下部ベッドとの間に、復元ばね装置と、空気ばね体とを
並列に配設し、前記復元ばね装置は、少なくとも２個以
上の弾性部材と、この複数個の弾性部材を水平方向に配
設して直列に連結する上部締結部材及び下部締結部材と
で構成すると共に、弾性部材の一部を下部ベッドに締結
し、前記空気ばね体は、その上端部を上部ベッドに固定
すると共に、空気ばね体の下端部と下部ベッドとの間
に、スライド部材を設けたので、以下のような優れた効
果を奏するものである。 （ａ）．免震装置の高さを従来装置に比べて著しく低く
構成でき、従って、床面と上部ベッドとの間隔が狭い既
設の床にも有効に利用できる。 （ｂ）．復元ばね装置に水平方向の振動が作用した場合
にも、復元ばね装置の複数個の弾性部材は、水平方向に
大きな変位能力を得ることが出来ると共に、水平方向の
ばね定数を小さく出来るので、系の固有振動数を低くで
きる結果、要求の剪断変位を得ることが出来、剪断変形
能力を向上させて座屈変形を有効に防止して免震性能を
向上させることが出来る。

【００２２】またこの時の空気ばね体は、下部ベッドが
右水平方向に移動しても、空気ばね体の締結部材をガイ
ド機構により水平方向に拘束しているため、スライド部
材の滑動により、何ら水平方向の作用力を受けることな
く垂直な姿勢を維持することが出来る。 （ｃ）．更に免震装置に鉛直方向の振動が作用した場
合、空気ばね体の変形により減衰でき、従って、上下免
震性能を得ることが出来、この空気ばね体と復元ばね装
置とで、三次元的（上下方向，水平方向）な免震性能を
得ることが出来る効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明を実施した免震装置の平面図である。

【図２】図１のＡーＡ矢視断面図である。

【図３】免震装置に水平方向からの震動が加わった場合
の作用説明図である。

【図４】空気ばね体の断面図である。

【図５】この発明の第２実施例を示す免震装置の平面図
である。

【図６】図５のＢーＢ矢視断面図である。

【図７】図５の免震装置に水平方向からの震動が加わっ
た場合の作用説明図である。

【図８】免震装置の第３実施例を示す平面図である。

【図９】免震装置の第４実施例を示す平面図である。

【図１０】従来の免震支持装置の正面図である。

【図１１】従来の免震支持装置の作用状態を示す説明図
である。

【符号の説明】

１ 上部ベッド ２ 下部ベッド ３ 弾性部材 ４ 復元ばね装
置 ５ 空気ばね体 ６ 上部締結部
材 ７ 下部締結部材 ８ スライド部
材 Ｇ 床面 Ｗ 被免震支持
体

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】上部ベッドと下部ベッドとの間に、復元ば
   ね装置と、空気ばね体とを介設して成る免震装置におい
   て、前記上部ベッドと下部ベッドとの間に、復元ばね装
   置と、空気ばね体とを並列に配設し、前記復元ばね装置
   は、少なくとも２個以上の弾性部材と、この複数個の弾
   性部材を水平方向に配設して直列に連結する上部締結部
   材及び下部締結部材とで構成すると共に、弾性部材の一
   部を下部ベッドに締結し、前記空気ばね体は、その上端
   部を上部ベッドに固定すると共に、空気ばね体の下端部
   と下部ベッドとの間に、スライド部材を設けたことを特
   徴とする免震装置。
2. 【請求項２】 前記スライド部材は、上部ベット上に載
   置する被免震支持体の要求特性に対応して摩擦係数の大
   小を設定する請求項１に記載の免震装置。