JPH05305381A - 一端閉鎖型二重筒の製造方法 - Google Patents

一端閉鎖型二重筒の製造方法

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JPH05305381A
JPH05305381A JP4109641A JP10964192A JPH05305381A JP H05305381 A JPH05305381 A JP H05305381A JP 4109641 A JP4109641 A JP 4109641A JP 10964192 A JP10964192 A JP 10964192A JP H05305381 A JPH05305381 A JP H05305381A
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誠治 宇都宮
Toshihiro Imai
敏博 今井
Tokuo Shirai
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 一端閉鎖型二重筒を鍛造により一体に形成す
る際に、外筒と内筒との長さ比を所望に設定できるよう
にする。 【構成】 成形凹部39に収納した金属材料35を筒状
パンチ42で加圧することにより、成形凹部39と筒状
パンチ42との間の隙間及び筒状パンチ42とセンタピ
ン40との間の隙間に金属材料35を塑性流動させて外
筒32と内筒33を形成する。この場合、筒状パンチ4
2の先端加圧部には、所定位置に頂点45のある所定勾
配のテーパ面46,47を形成し、且つ先端側の内周面
及び外周面に所定の長さ比のランド43,44を形成し
ている。これにより、金属材料35が外筒32側と内筒
33側とに塑性流動する際の分水嶺の位置を、テーパ面
46,47の頂点45の位置や勾配角度若しくはランド
43,44の長さ比によって規制して、外筒32と内筒
33との長さ比を所望に設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、外筒と内筒との間をそ
の一端で閉鎖した一端閉鎖型二重筒を鍛造により一体成
形する一端閉鎖型二重筒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、冷凍サイクルのレシーバの本体
を構成する部品として、図16に示すような一端閉鎖型
二重筒21が用いられている。従来の一端閉鎖型二重筒
21は、外筒22の底23に別ピースの内筒24をかし
め付けて固定していた。
【0003】この構成では、外筒22と内筒24とのか
しめ付け作業に手間がかかり、生産性の低下を招くだけ
でなく、かしめ付け不良が発生するおそれがあり、外筒
22と内筒24との結合強度の信頼性にも悪影響を及ぼ
していた。
【0004】そこで、実開昭64−5067号公報に示
すように、外筒と内筒とを一体成形することが考えられ
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、外筒と内筒
とを金属材料により一体成形する方法として、鋳造(鋳
込み成形)と鍛造の2通りの方法が考えられるが、鋳造
では製品の機械的性質(強度等)が劣化するため、薄肉
の二重筒の製造には適さない。
【0006】これに対し、鍛造は、鋳造と比較して製品
の機械的性質(強度等)が優れているので、本発明者
は、鍛造が薄肉の二重筒の製造に適すると考えている
が、1つの金属材料から外筒と内筒とを一体に鍛造する
技術や金型は現存していない。
【0007】そこで、本発明者は、1つの金属材料から
外筒と内筒とを一体に鍛造する技術を開発するために数
多くの実験を繰り返しているが、本発明がなされる以前
は、1つの金属材料から外筒と内筒とを一体に鍛造しよ
うとしても、鍛造時の金属材料の塑性流動方向が内筒側
と外筒側のいずれか一方に偏ってしまい、外筒と内筒と
の長さ比が設計寸法通りにはならない。このため、従来
は、せいぜい、外筒のみを単品として鍛造することしか
できず、この外筒に別ピースの内筒をかしめ付けていた
ものである。この構成では、生産性低下及び内筒と外筒
との結合強度低下を招くことは前述した通りである。
【0008】本発明は、この様な事情を考慮してなされ
たもので、その目的は、1つの金属材料から一端閉鎖型
二重筒を鍛造により能率良く製造できると共に、外筒と
内筒との長さ比を所望に設定することができる一端閉鎖
型二重筒の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による一端閉鎖型
二重筒の製造方法は、外筒とその内側に位置する内筒と
の間をその一端で閉鎖した一端閉鎖型二重筒を鍛造によ
り一体成形するに際して、成形凹部を有するダイと、筒
状パンチと、この筒状パンチの中心線上に配置されるセ
ンタピンとを使用し、前記ダイの成形凹部に金属材料を
収納し、この金属材料を前記筒状パンチで加圧すること
により、前記ダイの成形凹部と前記筒状パンチとの間の
隙間及び前記筒状パンチと前記センタピンとの間の隙間
に前記金属材料を塑性流動させて前記外筒及び前記内筒
を形成する方法であって、前記筒状パンチとして、その
先端加圧部の所定位置に頂点のある所定勾配のテーパ面
が形成された筒状パンチを用いることにより、前記金属
材料が前記外筒側と前記内筒側とに塑性流動する際の分
水嶺の位置を前記テーパ面の頂点又は勾配角度で規制し
て前記内筒と前記外筒との長さ比を所望に設定するよう
にしたものである(請求項1)。
【0010】この場合、筒状パンチとして、先端側の内
周面及び外周面に所定の長さ比のランドが形成された筒
状パンチを用いることにより、前記分水嶺の位置を前記
ランドの長さ比で規制して前記内筒と前記外筒との長さ
比を所望に設定するようにしても良い(請求項2)。
【0011】
【作用】本発明の製造方法によれば、ダイの成形凹部に
収納した金属材料を筒状パンチで加圧することにより、
ダイの成形凹部と筒状パンチとの間の隙間及び筒状パン
チとセンタピンとの間の隙間に金属材料を塑性流動させ
て外筒及び内筒を形成する。
【0012】この際、請求項1のように、筒状パンチと
して、その先端加圧部の所定位置に頂点のある所定勾配
のテーパ面が形成された筒状パンチを用いて鍛造加工す
ると、金属材料が外筒側と内筒側とに塑性流動する際の
分水嶺の位置が前記テーパ面の頂点又は勾配角度で規制
される。この分水嶺の位置により内筒と外筒との長さ比
が決まるので、外筒と内筒との長さ比が所望の値となる
ように、分水嶺の位置を規制するテーパ面の頂点の位置
又は勾配角度を決めれば良い。
【0013】また、請求項2のように、筒状パンチとし
て、その先端側の内周面及び外周面に所定の長さ比のラ
ンドが形成された筒状パンチを用いて鍛造加工すると、
分水嶺の位置が前記ランドの長さ比(摩擦面積比)で規
制される。この場合も、内筒と外筒との長さ比が所望の
値となるように、分水嶺の位置を規制するランドの長さ
比を決めれば良い。
【0014】尚、一つの筒状パンチにテーパ面とランド
の双方を設けて、テーパ面の頂点の位置とランドの長さ
比との組み合わせにより、分水嶺の位置(外筒と内筒と
の長さ比)を規制するようにしても良いことは言うまで
もない。
【0015】
【実施例】以下、本発明の第1実施例を図1乃至図8に
基づいて説明する。まず、図4に基づいて、第1実施例
の製造方法により製造される一端閉鎖型二重筒31の構
成を説明する。一端閉鎖型二重筒31は、薄肉の外筒3
2と、その中心に位置する薄肉の内筒33とを閉鎖部3
4を介して一体に鍛造したものである。この場合、内筒
33の両端は開口されている(閉鎖部34に内筒33に
貫通する貫通孔33aが形成されている)が、外筒32
と内筒33との間の隙間は、その一端で閉鎖部34によ
り閉鎖されている。
【0016】この一端閉鎖型二重筒31を鍛造する原材
料としては、例えばアルミ合金(A3004)等の塑性
変形性(鍛造加工性)に優れた金属材料35(図3参
照)を使用する。この金属材料35の形状は、例えば厚
肉の短円筒形状であり、その中心に内筒33の内径と同
径の貫通孔35aが形成されている。
【0017】次に、この金属材料35から一端閉鎖型二
重筒31を冷間鍛造する鍛造装置36の構成を図1に基
づいて説明する。上ダイ37と下ダイ38との組み合わ
せにより厚肉短円筒形状の金属材料35を収納する成形
凹部39が構成されている。この成形凹部39の高さ
は、金属材料35の高さよりも高くなっている。
【0018】そして、下ダイ38にはセンタピン40が
上向きに固定され、このセンタピン40が成形凹部39
の中心に上向きに突出している。このセンタピン40の
突出部分の外径は、内筒33の内径と同一である。この
センタピン40の突出部分に金属材料35の貫通孔35
aを嵌入するために、この貫通孔35aの内径は、セン
タピン40の突出部分の外径よりも僅かに大きく形成さ
れている。更に、センタピン40の突出高さは、金属材
料35の高さよりも高くなっている。また、下ダイ38
には、鍛造完了後の鍛造品を成形凹部39から押し出す
ためのノックアウトピン41が設けられている。
【0019】一方、筒状パンチ42は、プレス機(図示
せず)により上下動可能に支持され、センタピン40と
同軸上に配置されている。この筒状パンチ42の先端側
(下端側)の内周面及び外周面には、図2に示すよう
に、それぞれ所定の長さ比のランド43,44が形成さ
れ、更に、筒状パンチ42の先端加圧部には、所定位置
に頂点45のあるテーパ面46,47が形成されてい
る。
【0020】この場合、外周側のランド44と成形凹部
39との間の隙間は、外筒32の肉厚と同一に設定さ
れ、内周側のランド43とセンタピン40との間の隙間
は、内筒33の肉厚と同一に設定されている。冷間鍛造
時には、成形凹部39に収納した金属材料35を筒状パ
ンチ42で加圧することにより、成形凹部39と筒状パ
ンチ42のランド43との間の隙間及び筒状パンチ42
のランド44とセンタピン40との間の隙間に金属材料
35を図2に白抜き矢印で示すように塑性流動させて外
筒32及び内筒33を形成するようになっている。
【0021】ところで、本実施例のような一端閉鎖型二
重筒31を冷間鍛造する際に、内筒33と外筒32との
間の閉鎖部34に分水嶺48が必ず発生する。ここで、
分水嶺48とは、金属材料35が図2に白抜き矢印で示
すように外筒32側と内筒33側とに塑性流動する際の
流動方向の分岐点であり、径方向の流動速度又は変位が
零になる点である。
【0022】この分水嶺48の位置によって内筒33と
外筒32との長さ比(Hin/Hout)が変化する(図4
参照)。即ち、分水嶺48の位置が内周側にずれるほ
ど、外筒32側へ塑性流動する材料量が多くなって、外
筒32の高さが高くなる(Hin/Hout が小さくな
る)。反対に、分水嶺48の位置が外周側にずれるほ
ど、内筒33側へ塑性流動する材料量が多くなって、内
筒33の高さが高くなる(Hin/Hout が大きくな
る)。
【0023】この場合、内筒33と外筒32との長さ比
は、金属材料35の横断面積Aallに対する内筒33の
横断面積Ainと外筒32の横断面積Aout との比率(A
in/Aall ,Aout /Aall ),肉厚比によっても変化
するが、一般に、内筒33と外筒32との長さ比が所望
になるような面積比率,肉厚比を見出だすことは容易で
はない。しかも、面積比率,肉厚比を変えてしまったの
では、鍛造品の機械的特性(強度,伝熱特性等)が変化
してしまう欠点があり、また、余肉により鍛造品重量が
増す欠点もある。
【0024】そこで、本実施例では、内筒33と外筒3
2との長さ比の設定を、面積比率,肉厚比を変更せず
に、分水嶺48の位置の調整により行うものである。こ
の場合、分水嶺48の位置を予め決められた位置に規制
する方法として、テーパ面46,47の頂点45の位置
又は勾配角度を調整する方法と、内周側のランド43の
長さLinと外周側のランド44の長さLout との比(L
in/Lout )を調整する方法の2通りの方法があるが、
本実施例では、これら2通りの方法を組み合わせて分水
嶺48の位置を予め決められた位置に規制するものであ
る。
【0025】即ち、本実施例では、テーパ面46,47
の頂点45の位置又は勾配角度とランド43,44の長
さ比(Lin/Lout )とを、予め実験や計算等により決
められた条件に設定することによって、分水嶺48の位
置を規制して内筒33と外筒32との長さ比(Hin/H
out )を所望に設定するようにしたものである(これに
関する実験データについては後述する)。
【0026】例えば、内筒33と外筒32との高さを同
一にする場合には、 Ain/Ar1=Aout /Ar2-r1 となる半径r1 に分水嶺48が位置する必要がある。こ
こで、Ar1は半径r1 以内の領域における閉鎖部34の
断面積であり、Ar2-r1 は半径r1 より外側の領域にお
ける閉鎖部34の断面積である。
【0027】また、内筒33を外筒32よりも高くする
場合には、分水嶺48の位置を半径r1 よりも外側にず
らし、反対に、外筒32を内筒33よりも高くする場合
には、分水嶺48の位置を半径r1 よりも内側にずらせ
ば良い。
【0028】一方、内筒33の横断面積Ainと外筒32
の横断面積Aout との面積比率Ain/Aout を小さくす
ると、分水嶺48が内側に移動し、反対に、Ain/Aou
t を大きくすると、分水嶺48が外側に移動する。
【0029】また、ランド43,44の長さ比(Lin/
Lout )を変えると、冷間鍛造時に金属材料35が外筒
32側と内筒33側とに塑性流動する際の材料とランド
43,44との接触面積(摩擦力)の比が変化して、塑
性流動の抵抗力が変化し、分水嶺48の位置が移動す
る。この場合、Lin/Lout を小さくするほど、内筒3
3側への塑性流動が増加して、分水嶺48が外側に移動
し、反対に、Lin/Lout を大きくするほど、外筒32
側への塑性流動が増加して、分水嶺48が内側に移動す
る傾向がある。
【0030】この関係を説明する実験データを図5に示
している。この実験データは、外周側のランド44の長
さLout を1.7mmに固定して、内周側のランド43の
長さLinを変化させたときの内筒33と外筒32との長
さ比(Hin/Hout )の変化を示している。この実験に
使用した筒状パンチは、図11に示すようにテーパ面が
無いものを使用している(この筒状パンチの内径,外径
はそれぞれ7.5mm,56.8mmであり、センタピン4
0の外径が7.5mm,ダイ37,38の成形凹部39の
内径が60mmである)。
【0031】一般に、分水嶺48の位置は、テーパ面4
6,47の頂点45と同じ位置若しくはその近傍にある
ことが望ましいが、前述したランド43,44の長さ比
やテーパ面46,47の勾配角度の調整によって意図的
にずらせることも可能である。例えば、内周側のテーパ
面46の勾配角度を大きくするほど、内筒33側への塑
性流動が増加して分水嶺48が外側に移動し、反対に、
外周側のテーパ面47の勾配角度を大きくするほど、外
筒32側への塑性流動が増加して分水嶺48が内側に移
動する傾向がある。
【0032】この関係を説明する実験データを図6に示
している。この実験データは、外周側のテーパ面47の
勾配角度を変化させたときの内筒33と外筒32との長
さ比(Hin/Hout )の変化を示している。この実験に
使用した筒状パンチは、図9に示すように内周側のテー
パ面が無いものを使用し、内周側のランド43の長さL
inが20mmで、外周側のランド44の長さLout が1.
7mmであり、外周側のテーパ面47の頂点45の位置が
中心から半径8.8mmの位置にあるものを使用してい
る。また、この実験に使用した金属材料35は、高さが
39mmと35mmの2種類である(直径はいずれも59m
m)。この図6の実験データから、内筒33と外筒32
との長さ比(Hin/Hout )は、テーパ面47の勾配角
度や金属材料35の高さによっても変化することが分か
る。
【0033】次に、この鍛造装置36を用いて一端閉鎖
型二重筒31を冷間鍛造する手順を説明する。まず、図
1(a)に示すように、成形凹部39内に金属材料35
を収納し、この金属材料35の貫通孔35aをセンタピ
ン40に嵌入した状態にセットする。この後、プレス機
(図示せず)により筒状パンチ42を下降させて、この
筒状パンチ42の先端加圧部(テーパ面46,47)を
金属材料35に押し付けて、この金属材料35を成形凹
部39内で押し潰すように圧縮する。これにより、成形
凹部39内で金属材料35が分水嶺48を境にして図2
に白抜き矢印で示すように互いに反対方向に塑性流動し
て、成形凹部39と筒状パンチ42のランド43との間
の隙間及び筒状パンチ42のランド44とセンタピン4
0との間の隙間に金属材料35が押し出され、外筒32
と内筒33が閉鎖部34に一体に形成される。この鍛造
品(一端閉鎖型二重筒31)は、鍛造完了後にノックア
ウトピン41により成形凹部39から突き出される。
尚、鍛造品が筒状パンチ42にくっついて成形凹部39
から取り出されることもあるが、この場合には、取外し
手段(図示せず)により鍛造品を筒状パンチ42から取
り外すことになる。
【0034】この様にして冷間鍛造した一端閉鎖型二重
筒31を図7及び図8に示すレシーバ本体49(冷凍サ
イクルの構成部品)として使用する場合には、内筒33
の長さHinを外筒32の長さHout よりも0〜20mm程
度低くして、Hin/Hout =0.9〜1.0とする必要
がある。
【0035】例えば、内筒33と外筒32との横断面積
比(Ain/Aout )が0.091となるものを鍛造する
場合、先端にテーパ面の無い筒状パンチ(ランドの長さ
比=1.0)を用いて加工すると、Hin/Hout =1.
4〜1.6となってしまい、所望の寸法の鍛造品が得ら
れない。
【0036】これに対し、例えば図9に示す本発明の第
2実施例の筒状パンチ50を用いた場合、テーパ面47
の頂点45の位置を中心から半径8.8mmの位置に設定
し、テーパ面47の勾配角度が7°で、内周側のランド
43の長さLinが20mmで、外周側のランド44の長さ
Lout が1.7mmであるものを用いて加工すると、Hin
/Hout =0.9〜1.0となる所望の寸法の鍛造品が
得られた。但し、これはHin=235mmの場合である。
また、Hin=195mmの場合にはテーパ面47の勾配角
度を13°に設定するのが適切である。
【0037】図9の筒状パンチ50は、内周側のテーパ
面が無く、頂点45より内周側が平坦になっているが、
図2のように、頂点45より内周側にもテーパ面46が
形成された筒状パンチ42を用いて加工しても、頂点4
5の位置や勾配角度を予め実験や計算等により決められ
た条件に設定すれば、同様に、所望の寸法の鍛造品が得
られる。
【0038】また、図10に示す本発明の第3実施例の
ように、外周側のテーパ面が無く、頂点45より外周側
が平坦になっている筒状パンチ51を用いて加工しても
良いことは言うまでもない。
【0039】更には、図11及び図12に示す本発明の
第4及び第5の両実施例のように、先端加圧部が平坦な
筒状パンチ52,53を用いて加工しても良い。この場
合でも、ランド43,44の長さ比(Lin/Lout )
を、予め実験や計算等により決められた条件に設定する
ことによって、分水嶺48の位置を規制して内筒33と
外筒32との長さ比(Hin/Hout )を所望に設定する
ことは可能である。尚、図11の筒状パンチ52は、内
周側のランド43が外周側のランド44よりも長く、図
12の筒状パンチ53は、外周側のランド44が内周側
のランド43よりも長くなっている。
【0040】以上述べた筒状パンチ42,50〜53の
いずれかを用いて冷間鍛造した一端閉鎖型二重筒31
は、例えば、図7及び図8に示すレシーバ本体49(冷
凍サイクルの構成部品)として使用される。このレシー
バ本体49は、外筒32の開口端側が小径に絞り成形さ
れて、その開口端にドーム状の蓋54が溶接されてい
る。この蓋54と内筒33の先端との間には冷媒流通用
の隙間が確保されている。そして、レシーバ本体49内
には、乾燥剤55がフィルタの役目をするフェルト5
6,57と多孔板58,59とによって挟み込まれてい
る。各多孔板58,59は内筒33と外筒32とにかし
め付けられている。尚、図8に示すように、レシーバ本
体49の閉鎖部34には、後加工により、冷媒流入口6
0、ねじ穴61,62及び位置決め穴63,64が穿設
されている。
【0041】尚、前述した第1実施例の鍛造装置36
は、センタピン40を下ダイ38に固定しているが、図
13に示す本発明の第6実施例の鍛造装置65のよう
に、センタピン66を筒状パンチ42内に固定するよう
にしても良い。この場合には、センタピン66の長さ
は、筒状パンチ42の下端よりも金属材料35の高さ以
上に長くする必要がある。従って、鍛造加工時には、セ
ンタピン66の下端部分が、下ダイ38の中心に形成さ
れた嵌入穴38a内に嵌入された状態となる。
【0042】また、これらの実施例のセンタピン40,
66は、いずれも、金属材料35の貫通孔35aを貫通
する構成となっているが、図14及び図15に示す本発
明の第7実施例の鍛造装置67のように、センタピン6
8が金属材料69を貫通しない構成としても良い。この
場合も、センタピン68は筒状パンチ42内に固定され
ている。このセンタピン68の長さ(下端位置)は筒状
パンチ42の長さ(下端位置)とほぼ同一となってお
り、鍛造加工時にはこのセンタピン68の下端部と筒状
パンチ42の双方で金属材料69を押し潰すように圧縮
することになる。この鍛造装置67の成形凹部39に収
納する金属材料69は、図15に示すように短円柱形状
のもので良く、中心の貫通孔は不要である。
【0043】この鍛造装置67により鍛造された一端閉
鎖型二重筒70は、内筒33の下端も閉鎖部71で閉鎖
された形状となる。従って、この一端閉鎖型二重筒70
を図7及び図8に示すレシーバ本体49として使用する
場合には、閉鎖部71の中心部に孔明け加工を施して、
内筒33の下端に貫通する貫通孔を形成することにな
る。
【0044】以上説明した各実施例に用いる金属材料3
5,69としては、アルミ合金に限られず、銅、低炭素
鋼等の塑性変形性(鍛造加工性)に優れた他の金属材料
を用いても良い。また、第1乃至第3の各実施例のよう
に、筒状パンチ42,50,51の先端加圧部にテーパ
面46,47が形成されている場合には、ランド43,
44の長さ比(Lin/Lout )は1.0であっても良
い。これは、テーパ面46,47の頂点45の位置とそ
の勾配角度により分水嶺48の位置を規制できるからで
ある。
【0045】その他、本発明は、鍛造した一端閉鎖型二
重筒31,70の用途もレシーバ本体49に限定されな
い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形して実施で
きることは言うまでもない。
【0046】
【発明の効果】本発明は以上の説明から明らかなよう
に、鍛造加工に用いる筒状パンチとして、その先端加圧
部の所定位置に頂点のある所定勾配のテーパ面が形成さ
れた筒状パンチ、若しくは先端側の内周面及び外周面に
所定の長さ比のランドが形成された筒状パンチを用いて
一端閉鎖型二重筒を鍛造加工するようにしたので、1つ
の金属材料から一端閉鎖型二重筒を鍛造により能率良く
製造できると共に、前記テーパ面の頂点の位置又は勾配
角度若しくは前記ランドの長さ比によって分水嶺の位置
を規制することができて、外筒と内筒との長さ比を所望
に設定することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の鍛造装置を示すもので、
(a)は鍛造前の金属材料の収納状態を示す縦断面図、
(b)は鍛造時の状態を示す縦断面図
【図2】筒状パンチの先端加圧部周辺の縦断面図
【図3】金属材料の斜視図
【図4】鍛造された一端閉鎖型二重筒の縦断面図
【図5】内筒側のランドの長さに対する内筒と外筒の長
さ比の変化特性図
【図6】テーパ面の勾配角度に対する内筒と外筒の長さ
比の変化特性図
【図7】図8のVII −VII 線に沿って示すレシーバの縦
断面図
【図8】レシーバの上面図
【図9】本発明の第2実施例を示す筒状パンチの先端加
圧部周辺の縦断面図
【図10】本発明の第3実施例を示す筒状パンチの先端
加圧部周辺の縦断面図
【図11】本発明の第4実施例を示す筒状パンチの先端
加圧部周辺の縦断面図
【図12】本発明の第5実施例を示す筒状パンチの先端
加圧部周辺の縦断面図
【図13】本発明の第6実施例を示す鍛造装置の縦断面
【図14】本発明の第7実施例を示す筒状パンチの先端
加圧部周辺の縦断面図
【図15】本発明の第7実施例で使用する金属材料の斜
視図
【図16】従来の一端閉鎖型二重筒の縦断面図
【符号の説明】
31は一端閉鎖型二重筒、32は外筒、33は内筒、3
4は閉鎖部、35は金属材料、36は鍛造装置、37は
上ダイ、38は下ダイ、39は成形凹部、40はセンタ
ピン、41はノックアウトピン、42は筒状パンチ、4
3及び44はランド、45は頂点、46及び47はテー
パ面、48は分水嶺、49はレシーバ本体、50〜53
は筒状パンチ、65は鍛造装置、66はセンタピン、6
7は鍛造装置、68はセンタピン、69は金属材料、7
0は一端閉鎖型二重筒、71は閉鎖部である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 白井 徳雄 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本電 装株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外筒とその内側に位置する内筒との間を
    その一端で閉鎖した一端閉鎖型二重筒を鍛造により一体
    成形するに際して、 成形凹部を有するダイと、筒状パンチと、この筒状パン
    チの中心線上に配置されるセンタピンとを使用し、 前記ダイの成形凹部に金属材料を収納し、この金属材料
    を前記筒状パンチで加圧することにより、前記ダイの成
    形凹部と前記筒状パンチとの間の隙間及び前記筒状パン
    チと前記センタピンとの間の隙間に前記金属材料を塑性
    流動させて前記外筒及び前記内筒を形成する方法であっ
    て、 前記筒状パンチとして、その先端加圧部の所定位置に頂
    点のある所定勾配のテーパ面が形成された筒状パンチを
    用いることにより、前記金属材料が前記外筒側と前記内
    筒側とに塑性流動する際の分水嶺の位置を前記テーパ面
    の頂点又は勾配角度で規制して前記内筒と前記外筒との
    長さ比を所望に設定するようにしたことを特徴とする一
    端閉鎖型二重筒の製造方法。
  2. 【請求項2】 外筒とその内側に位置する内筒との間を
    その一端で閉鎖した一端閉鎖型二重筒を鍛造により一体
    成形するに際して、 成形凹部を有するダイと、筒状パンチと、この筒状パン
    チの中心線上に配置されるセンタピンとを使用し、 前記ダイの成形凹部に金属材料を収納し、この金属材料
    を前記筒状パンチで加圧することにより、前記ダイの成
    形凹部と前記筒状パンチとの間の隙間及び前記筒状パン
    チと前記センタピンとの間の隙間に前記金属材料を塑性
    流動させて前記外筒及び前記内筒を形成する方法であっ
    て、 前記筒状パンチとして、その先端側の内周面及び外周面
    に所定の長さ比のランドが形成された筒状パンチを用い
    ることにより、前記金属材料が前記外筒側と前記内筒側
    とに塑性流動する際の分水嶺の位置を前記ランドの長さ
    比で規制して前記内筒と前記外筒との長さ比を所望に設
    定するようにしたことを特徴とする一端閉鎖型二重筒の
    製造方法。
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