JPH05304951A - 初期胚及び胚性幹細胞の培養液 - Google Patents

初期胚及び胚性幹細胞の培養液

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JPH05304951A
JPH05304951A JP4083867A JP8386792A JPH05304951A JP H05304951 A JPH05304951 A JP H05304951A JP 4083867 A JP4083867 A JP 4083867A JP 8386792 A JP8386792 A JP 8386792A JP H05304951 A JPH05304951 A JP H05304951A
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JP
Japan
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cells
insulin
growth factor
culture
cell
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JP4083867A
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Yumi Takahashi
由美 高橋
Akio Takahashi
明男 高橋
Kazuya Matsumoto
和也 松本
Kenji Miyata
堅司 宮田
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N T SCI KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 限定されない動物種及び/又は系統における
未分化細胞特に動物胚の培養ならびに動物胚に由来する
ES細胞(株)及び/又はEC細胞(株)の樹立、樹立
効率の向上、増殖促進及び培養維持の安定化を図るため
の培養液を提供する。 【構成】 インシュリン様成長因子II型、もしくはイン
シュリン様成長因子II型及び白血病抑制因子を含む培養
液で未分化細胞特に動物胚及び動物胚に由来する細胞を
培養することで、現在までにES細胞(株)及びEC細
胞(株)の樹立が困難であった動物種及び/又は系統に
おけるES細胞(株)及びEC細胞(株)の樹立を可能
とする。また、既にES細胞(株)及びEC細胞(株)
が樹立されている動物種及び/又は系統においても、同
様の培養液を用いることによりES細胞(株)及びEC
細胞(株)樹立効率の向上及び培養維持の安定化を図
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、未分化細胞特に動物胚
の培養並びに動物胚に由来する胚性幹細胞(株)及び/
又は胚性奇形腫細胞(株)の樹立及び胚性幹細胞(株)
の増殖・維持を行うために使用される培養液に関するも
のである。
【0002】
【発明の背景と従来の技術】近年、発生工学並びに分子
生物学における知識の蓄積と技術の発展に伴い、人為的
に調製された外来遺伝子を初期胚に導入し、さらに個体
に発生させるトランスジェニック動物(以下TG動物)
の作製が可能となった(Gordon,J.W.et
al.,Proc.Natl.Acad.Sci.US
A,77:7380−7384,1980)。このよう
なTG動物の作製は、遺伝子工学的手法でクローン化さ
れた遺伝子を実際に生体内において発現させることによ
り、導入された遺伝子の機能・作用を個体レベルで検討
する以外に、疾病モデルTG動物や有用物質産生TG動
物が開発されるにおよび医学分野及び産業分野において
もTG動物の有用性が認識されつつある。
【0003】TG動物の作製方法としては、前核期胚に
外来遺伝子断片を極微ピペットで直接注入するマイクロ
インジェクション法、外来遺伝子を組込んだレトロウィ
ルスを初期胚に感染させるレトロウィルス法等が確立さ
れている。しかしこれらの方法ではいずれも宿主染色体
に対し外来遺伝子がランダムに組込まれるため、外来遺
伝子の組込み部位を制御することは不可能である。この
ため再現性や外来遺伝子の効率的な発現等に問題を残し
ている。
【0004】一方、発生工学上の新たな分野として、各
種個体形成組織への分化能を保持しながら未分化状態の
まま試験管内で培養可能な株化細胞、すなわち胚性奇形
腫細胞(Embryonal carcinoma c
ell;EC細胞)並びに胚性幹細胞(Embryon
ic stem cell;ES細胞)が樹立された。
ES/EC細胞は正常初期胚に移植することにより、初
期胚由来の細胞とES/EC細胞由来細胞が混在したま
ま一つの個体すなわちキメラ動物を形成することが確認
された(Brinster,R.L.,J.Exp.M
ed.,140:1949−1956,1974)。ま
たこのようなキメラ動物のうち精巣や卵巣の生殖細胞に
ES/EC細胞由来細胞が導入された動物は生殖系列キ
メラと呼ばれ、この動物を親として交配を継続すること
でES/EC細胞由来の細胞のみで構成される子孫を得
ることができる。このことは遺伝学的に十分制御された
人為的素質を持つ動物を獲得できるということであり、
試験管内に限らず個体レベルにおいても発生や分化のメ
カニズムの検討を可能にした。
【0005】EC細胞の研究は奇形腫(teratom
a)並びに悪性奇形腫(teratocarcinom
a)の組織学的解析が発端となった。奇形腫はその腫瘍
組織内に特定の固有組織又は固有細胞に分化した形態を
示す構造が認められることから、正常細胞が腫瘍化しつ
つも一定の分化能を保持していると考えられ、また悪性
奇形腫では同様な腫瘍組織中に増殖力が旺盛で未分化な
幹細胞を含んでいることが観察された。これらの考察か
ら、悪性奇形腫由来の幹細胞を分離することで、分化能
を有したまま無限増殖可能な株化細胞樹立の可能性が示
唆された。その後、正常胚盤胞を腎臓被膜下や精巣に移
植することで人為的に奇形腫を作製できることが報告さ
れ(Stevens L.C.,Develop.Bi
ol.,21:364−382,1970)、その後腎
臓被膜下で人為的に発生させた奇形腫細胞をさらに試験
管内で培養することにより多系統のEC細胞が樹立され
た(Silver,L.M.et al,Terato
carcinoma Stem Cells,Cold
Spring Harbor Lab.,N.Y.,
USA.,1983)。しかし、EC細胞を用いたキメ
ラ動物の作製において、キメラ形成率や生殖系列への寄
与の低さ、キメラ個体でのEC細胞に由来すると推察さ
れる腫瘍の発生などが指摘され(Papaioanno
u,V.E.et al,J.Embryol.Ex
p.Morph.,44:93−104,1978)、
現在その原因はEC細胞が本来腫瘍由来であるために染
色体異常やなんらかの遺伝子制御機能の異常が存在する
ためであると考えられている。
【0006】ES細胞はEC細胞とは異なり正常胚盤胞
を直接試験管内培養することにより樹立された(Eva
nce M.J.& Kaufman K.H.,NA
TURE 292:7634−7638,1981)。
ES細胞は、形態的にも、また、試験管内及び生体内に
おける振る舞い方もEC細胞に酷似している。しかしE
C細胞が本来腫瘍細胞であるのと比較しES細胞はその
多くが正常二倍体の核型を保持した正常細胞であり、キ
メラ形成率、生殖系列への寄与ともに高率であることが
明らかになっており(Bredley A.et a
l,NATURE309:255−256,198
6)、そのため発生学分野以外にもES細胞の利用範囲
は広がりつつある。
【0007】ES/EC細胞に対しては他の株化細胞と
同様に従来法を用いて外来遺伝子を導入することがで
き、また外来遺伝子導入細胞の集団の中から後述するよ
うに相同組換え体のみを選別できるようになったこと
で、マイクロインジェクション法等とは異なるTG動物
作製における特徴を確立した。
【0008】従来法による外来遺伝子の細胞への導入で
は外来遺伝子は宿主染色体上のランダムな位置に組込ま
れるが、ある一定の確率で外来遺伝子と相同な宿主染色
体上の内在性遺伝子との間で相同組換えと呼ばれる染色
体変異を起こすことが知られている。すなわち目的とす
る内在性遺伝子と相同な配列部位を持つ外来遺伝子を導
入すれば、ランダムな組換え体と同時に、標的とした内
在性遺伝子配列に対して相同組換えを起こした相同組換
え体をも生じさせることが可能である。またこのような
相同組換え体を選別するために考案された外来遺伝子を
導入することにより全組換え細胞集団より相同組換え体
のみを選別し、最終的に宿主染色体上の任意の遺伝子を
標的として変異を組込んだ相同組換え細胞クローンを獲
得することができる(Mansour,S.L.et
al,NATURE,336:348−352,198
8)。このような方法は導入遺伝子の構造や相同組換え
体の選抜方法などにより数種考案されているが(Cap
ecchi,M.R.,TIG,5:70−76,19
89)、一般にジーンターゲッティングと総称されてい
る。ジーンターゲッティングの方法を相同組換えES/
EC細胞の選抜に応用することで、マイクロインジェク
ション法など従来のTG動物作製方法では不可能であっ
た、任意の位置に外来遺伝子を挿入した相同組換えTG
動物作製の可能性が示された。現在、キメラ動物を介し
たTG動物作製のためのES/EC細胞に対する期待が
高まっている。
【0009】従来法によるES細胞(株)の樹立におい
ては支持細胞層として胎仔線維芽細胞を使用し、以下の
過程により行われる。まず支持細胞層上で初期胚特に胚
盤胞もしくは着床遅延胚盤胞を培養することで初期胚が
支持細胞層に定着した後、胚外周の栄養芽細胞の伸展成
長が始まる。さらに初期胚内部に存在する内部細胞塊
(Inner cell mass:ICM)が伸展し
た栄養芽細胞上でドーム状に増殖を開始、十分にICM
が増殖した時点でICMのみを分離・分散して新たな支
持細胞層上に継代する。継代されたICM由来細胞の
内、未分化形態を維持したまま増殖を続けるものがごく
わずかに出現するようになる。この未分化細胞をさらに
継代・増殖していくことでES細胞(株)が樹立される
(Robertson,E.J.,Teratocar
cinomas and embryonic ste
m cells,pp71−112,Robertso
n,E.J.ed.,IRL Press Lim.,
Oxford.,1987)。
【0010】ES細胞株を樹立、維持、増殖するための
培養液としてはDME培養液を基礎培養液とし、これに
非必須アミノ酸混合液・核酸混合液・メルカプトエタノ
ール・新生児牛血清及び/又は牛胎児血清を加えたもの
が利用されている(Doetschman,T.C.,
J.Embryol.exp.Morph.,87:2
7−45,1985)。またマウスES/EC細胞
(株)を樹立・維持するさいにEC細胞培養上清(Ma
rtin,G.R.,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA,78:7634−7638,198
1)またはバッファローラット肝臓細胞培養上清(BR
L−CM)を一定量上記培養液に添加することで分化抑
制及び増殖が同時に促進されることが報告され(Smi
th,A.G.& Hooper,M.L.,Dev.
Biol.,121:1−9,1987)、これらの培
養上清に含まれる活性は分化抑制因子(differe
ntiation−inhibiting activ
ity:DIA)と呼ばれた。さらにその後DIAは白
血病抑制因子(leukemia inhibitin
gfactor:LIF)という一種のサイトカインで
あることが判明した(Williams,R.L.et
al,NATURE,336:684−687,19
88)。LIFは特定なマウスの系統においてはLIF
無添加の場合に比較してES細胞(株)の樹立効率を向
上させ、また既に樹立されているES/EC細胞(株)
に対しても分化抑制活性及び増殖促進活性を示す(Pe
ase,S.et al.,Dev.Biol.,14
4:344−352,1990)。しかし他のマウスの
系統や他種動物においては顕著な効果は見られない。こ
のため現在に至る研究においてもLIF添加、無添加に
関わらず従来の培養液によるES細胞(株)の樹立は1
29/sv系(Handyside,A.et al,
Roux’s Arch.Dev.Biol.,19
8:48−56,1989)、C57BL/6系(Do
etschman,T.C.et al,J.Embr
yol.Exp.Morph.,87:27−45,1
985)といったマウスの特定系統におけるものが主で
あり、他種動物ではES様細胞として牛(Schell
ander,K.et al,Theriogenol
ogy,31:15−17,1989)、豚(Stro
jek,R.M.et al,Theriogenol
ogy,33:901−914,1990)、羊(Ha
ndyside,A.,Roux’s Arch.De
v.Biol.,196:185−190,198
7)、ハムスター(Doetschman,T.et
al,Dev.Biol.,127:224−227,
1988)におけるごくわずかな報告があるだけであ
る。さらに、同一動物種かつ同一系統で樹立されたES
/EC細胞(株)であっても、異なるES/EC細胞ク
ローン間では外来遺伝子の導入効率、導入遺伝子の発現
効率、キメラ動物形成能及びキメラ動物におけるES細
胞由来細胞の組織分布、特に生殖系列へのES細胞由来
細胞の導入効率に相違があるということが報告されてお
り、同一系統であっても多くのES/EC細胞クローン
を樹立しておく必要がある。このような現状から、動物
種/系統を問わず樹立効率が高く、維持・増殖を容易に
する培養液の開発が待たれている。インシュリン様成長
因子(insulin−like growth fa
ctor;IGF)は、最初、ヒト血清中において抗イ
ンシュリン抗体により抑制されないインシュリン様作用
を示す物質として報告され(Froesh E.R.e
t al.,J.Clin.Invest.,42:1
816,1963)、non−suppressibl
e insulin−like activity s
oluble(NSILA−S)と呼ばれた。さらに,
NSILA−SはIとIIに純化され、そのアミノ酸配列
も確定された(Rinderknecht E.& H
umbel R.E., J.Biol.Chem.,
253:2769,1978)。その後、確定されたア
ミノ酸配列がインシュリンに類似であること、インシュ
リン様作用がみられることなどから、NSILA−S
は、IGF−I、IGF−IIと改名されている。さら
に、IGFはその立体構造においてもインシュリンと類
似しているため、同じようにアミノ酸配列、立体構造が
インシュリンと類似しているリラキシンとともにインシ
ュリン・ファミリ−として分類されている。ヒトの場合
IGF−IIは酸性のポリペプチドで67個のアミノ酸よ
り構成され、IGF−Iと約60%の相同性を持つ分子
量約7000のペプチドである。また、IGF−II遺伝
子は第11染色体の短腕に局在しインシュリン遺伝子に
近接していることが明らかになっており(Brisse
nden,J.E.et al.,NATURE,31
0:781−784,1984,Tricoli,J.
V.et al.,NATURE,310:784−7
86,1984)、そのcDNAは180個からなる前
駆体プレプロIGF−IIをコードしていることから、I
GF−IIもインシュリンと同様にプレプロペプチド・ホ
ルモンとして生合成され、プロセッシングを受けること
により最終的にIGF−IIが生成されることが報告され
ている(Bell,G.I.et al.,NATUR
E,310:775−777,1984)。
【0011】IGF−Iについてはインシュリン様作用
以外にも生体内において成長ホルモンの持つ成長促進作
用を仲介していることが実証されており(Schoen
le,E.et al.,NATURE,296:25
2,1982)、また、試験管内においても各種動物の
軟骨細胞の増殖、DNA/RNA合成、タンパク合成、
プロテオグリカン/コラ−ゲン合成、グリコ−ゲン合成
を促進することが報告されている(Zapf,J.et
al.,Eur.J.Biochem.,87:28
5,1978)。さらに、アガロ−スゲル内での軟骨細
胞コロニ−形成の刺激作用(Lindahl,A.et
al.,Endocrinology,121:10
61−1069,1987)、骨芽細胞の増殖促進・コ
ラ−ゲン合成の促進作用も示すが、骨芽細胞の分化指標
のひとつであるアルカリフォスファタ−ゼ活性を誘導す
る作用も持つことが報告されている(Zapf,J.e
tal.,Clin.Endocrinol.Meta
b.,13:3,1984)。このように作用が解明さ
れているIGF−Iに対し、IGF−IIには生体内での
明確な作用が認められないため、その生理学的意義は未
だ不明である。ラットでは胎児期に血清中IGF−II濃
度が高値を示し、出生後に次第に減少することから、胎
児期の主要な成長因子はIGF−IIであると考えられて
いる。また、試験管内ではIGF−Iとほぼ同様な作用
を示すが、IGF−Iと比較してその活性は低い。しか
し、IGF−IIは培養細胞に対しては明確な増殖促進作
用を有しているため(Rechler,M.M.&Ni
ssley,S.P.,Annu.Rev.Physi
ol.,47:425−442,1985)、その作用
は主に培養細胞を用いて調べられてきた。IGF−IIに
応答性の細胞は線維芽細胞や血球系細胞が多い。また、
褐色細胞腫でNGF様作用がみられることは神経芽細胞
での神経突起伸長作用の報告や脳脊髄液中に見いだされ
るIGF−IIの主要な産生部位が脈絡叢と考えられるこ
とと共に、脳神経系におけるIGF−IIの作用をも示唆
している。
【0012】一方、IGF受容体に関する研究の進展に
伴い、インシュリンとIGF−Iの受容体がα2 β2
サブユニット構造からなる四量体であり、また細胞内ド
メインにチロシンキナーゼ活性部位が存在する類似構造
を持つことが明かとなった。しかし、IGF−II受容体
(以下IGF−IIR)は上記受容体とはまったく異なる
構造を持つことが解明されている。すなわちIGF−II
Rは分子量220〜270Kのサブユニット構造を持た
ない単一タンパク質の受容体で、細胞内ドメインも短く
チロシンキナーゼ活性部位も存在しない。IGF−IIR
細胞内ドメインに細胞内伝達機構に関連するような酵素
活性が認められないことで、一時期IGF−IIRはIG
F−IIと結合はするが情報の伝達には関与しておらず、
IGF−IIで認められる作用は全てインシュリン及びI
GF−I受容体への交差結合によるものであると考えら
れていた。その後、IGF−IIRがIGF−II及びマン
ノース−6−リン酸(Man−6−P)両者に対する結
合部位を持ち、さらにIGF−IIに対しては細胞内ドメ
インがGTP結合G蛋白質との共役によりCa2+チャン
ネルを活性化することが示された。また、Ca2+チャン
ネルをIGF−II以外の他の物質で活性化することによ
っても細胞の増殖が刺激されることから、IGF−IIの
増殖刺激作用は最終的に細胞外Ca2+の細胞内への流入
によって引き起こされることが実験的に証明された(N
ishimoto,I.,J.Biol.Chem.,
262:12120−12126,1987/西本育
夫、蛋白質核酸酵素;臨時増刊、細胞増殖因子の基礎と
臨床、pp52−60、清水信義、高久史麿編、共立出
版、1991)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、限定
されない動物種及び/又は系統における未分化細胞特に
動物胚の培養並びに動物胚に由来するES細胞(株)及
び/又はEC細胞(株)の樹立、樹立効率の向上、増殖
促進及び培養維持の安定化を図るために使用される培養
液に関するものである。
【0014】
【課題を解決する手段及び作用】本発明者は上記の目的
を達成するために特許請求の範囲の各請求項に記載の発
明を完成した。
【0015】本発明におけるIGF−IIはいかなる動物
種由来のものでもよく、また自然界に存在する材料より
精製・抽出される天然型、遺伝子工学的に生産される組
換え型いずれでもよい。またラットIGF−IIとも呼ば
れる multiplication−stimula
ting activity(MSA)(Moses
A.C.et al,Eur.J.Biochem.,
103:387,1980)のようなヒト以外の動物種
におけるIGF−IIの相同物質(homologue)
でもよい。さらにIGF−IIの基本構造及び/又はアミ
ノ酸配列を基礎とするいかなる部分ペプチド、変異体及
び修飾体をも使用することができる。
【0016】本発明における培養液はES/EC細胞
(株)の樹立及びES/EC細胞(株)の維持・増殖の
ためにIGF−IIもしくはIGF−II及びLIFを含む
ことを特徴とする。該培養液の基礎培養液は既知の組成
からなるどのような培養液の選択も可能である。例えば
199、NTCT135,CMRL1066,BME,
MEM,DME,MB752/1,5A,RITC80
−7,F−10,F−12,L−15,MCDB104
等の各種培養液及びその変法による培養液があげられ、
好ましくは高グルコ−ス含有培養液、さらに好ましくは
非必須アミノ酸混合液(NEAA)・核酸混合液(NM
S)・メルカプトエタノール・セレン化合物・副腎皮質
ホルモン及びその化合物・トランスフェリン・インシュ
リンの内から選ばれる添加物を添加した高グルコ−ス含
有培養液を用いる。このような培養液にさらに新生児牛
血清(NCS)及び/又は牛胎児血清(FCS)を1〜
50%、好ましくは5〜30%添加する。IGF−IIは
1〜1000000ng/ml、好ましくは5〜100
0ng/ml、さらに好ましくは10〜200ng/m
lの濃度で使用され、LIFを使用する場合には1〜1
000000unit/ml、好ましくは100〜10
0000unit/ml、さらに好ましくは1000〜
10000unit/mlの濃度が用いられる。
【0017】本発明によれば、該培養液を使用する動物
胚及び動物胚に由来する細胞(株)の培養は既知のいか
なる培養方法をも用いることができる。また現在までに
ES/EC細胞(株)が樹立されていない動物種及び/
又は系統においてもES/EC細胞(株)の樹立が可能
となる。また既にES/EC細胞(株)が樹立されてい
る動物種及び/又は系統においても新規なES/EC細
胞(株)樹立効率の向上、培養維持の安定化及び増殖の
促進を図ることができる。このようにして多種多様なE
S/EC細胞(株)及びES/EC細胞クロ−ンを容易
に提供できるような培養液の開発は、ES/EC細胞を
用いたキメラ動物の作製及びキメラ動物を介するTG動
物の作製を大きく進展させることが期待される。
【0018】
【発明の効果】本発明によれば、従来特定の動物種及び
/又は系統のみに限定されていた未分化細胞特に動物胚
の培養並びに動物胚に由来するES/EC細胞(株)の
樹立が、多種多様な動物種及び/又は系統において可能
となり、また既にES/EC細胞(株)が樹立されてい
る動物種及び/又は系統においても新規なES/EC細
胞(株)樹立効率の向上並びに培養維持の安定化及び増
殖の促進を図ることができるようになるという効果があ
る。
【0019】
【実施例】以下に実施例を示す。但し、以下の実施例
は、上記の特許の請求範囲を制限するものではない。
【0020】実施例1:初期胚及び/又はES細胞培養液の調製 高グルコ−ス含有DME培養液(DME;GIBCO,
320−1965PJ)を基礎培養液とし、これに表1
に示す組成の核酸混合液(NMS)、非必須アミノ酸溶
液(NEAA;SIGMA,M7145)、牛胎児血清
(FCS;CCT)、組換えマウスLIF(rmLI
F;和光純薬)をそれぞれ表2及び表3に示す量・濃度
で加えて調製した。なお培養液に添加される天然型ラッ
トIGF−II(nrIGF−II;SIGMA,I−26
39)濃度によって、100ng/mlとしたESM/
NR1(表2)並びに50ng/mlとしたESM/N
R2(表3)に示す二種類の培養液を調製した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】実施例2:支持細胞層の調製 Wistar系ラットとACI系ラットを交配して得ら
れる妊娠15日齢胎仔を摘出、試験管内で細切し、さら
にトリプシン−EDTA処理により消化・分散した後、
10%牛新生児血清(NCS;GIBCO)添加DME
培養液に浮遊させた。次に細胞浮遊液をプラスティック
ディッシュに分注し、37℃、5%CO2 の環境下で1
時間培養した。培養1時間後ディッシュをCa2+/Mg
2+不含ダルベッコ変法リン酸緩衝液(D−PBS
(−))で洗浄して浮遊細胞を除去、底面に付着した線
維芽細胞のみを培養した。
【0025】胎仔線維芽細胞を支持細胞層として使用す
るためマイトマイシンC処理を行った。線維芽細胞が十
分に増殖し単層シートを形成したディッシュに、10u
g/mlのマイトマイシンCを含む10%NCS添加D
ME培養液を分注し、2〜3時間、37℃、5%CO2
の環境下に放置した後、D−PBS(−)で3回洗浄、
次にトリプシン−EDTA処理により細胞を分散した。
分散した細胞を遠心により沈澱回収後、10%NCS添
加DME培養液に再浮遊し、この細胞浮遊液を6穴プレ
ートの各ウェルに分注して支持細胞層とした。
【0026】実施例3:ESM/NRによるWistar系ES細胞株の樹立 Wistar系ラット同士を交配し、交配確認翌日をd
ay1としてday4に子宮潅流によって脱出胚盤胞を
得た(図1)。脱出胚盤胞を上記の支持細胞層上でES
M/NR1を用いて培養することにより、培養開始後3
〜4日目に全ての胚盤胞においてICMの増殖が観察さ
れ(図2)、増殖したICMをマイクロピペットで分離
して新たな支持細胞層上に移した(図3)。分離ICM
以降の培養にはESM/NR2を使用し、未分化形態を
示すコロニーを1〜3回クローニングすることにより未
分化形態を示す細胞のみからなる細胞集団を得た(図
4)。
【0027】実施例4:ESM/NRによるACI系ES細胞株の樹立 上記Wistar系ラットの場合と同様に、ACI系ラ
ット同士を交配し、交配確認翌日をday1としてda
y4に子宮潅流によって胚盤胞を得た。胚盤胞を上記の
支持細胞層上でESM/NR1を用いて培養することに
より、培養開始後3〜4日目に全ての胚盤胞においてI
CMの増殖が観察され、増殖したICMをマイクロピペ
ットで分離して新たな支持細胞層上に移した。分離IC
M以降の培養にはESM/NR2を使用し、未分化形態
を示すコロニーを1〜3回クローニングすることにより
未分化形態を示す細胞のみからなる細胞集団を得た。E
SM/NRを使用したACI系ES細胞株の樹立結果を
表4に示す。
【0028】
【表4】
【0029】実施例5:ESM/NRによるラットES細胞の維持及び増殖 ESM/NR2及びESM/NR2からnrIGF−II
を除いたESM/NR2I(-) を使用し、それぞれ6穴
プレ−トに作製した支持細胞層上でACI系ES細胞を
培養した。培養2日目においてESM/NR2を使用し
た培養ではES細胞は未分化形態を保持したまま増殖し
たが(図5)、ESM/NR2I(-) を使用した培養で
は大部分の細胞が分化した(図6)。以上の比較培養の
結果から、ES細胞の維持・増殖にはIGF−IIが不可
欠であることが判明した。
【0030】実施例6:ラットES細胞の分化誘導培養 ESM/NRで樹立した Wistar系ES細胞を浮
遊培養することにより、分化能保持の指標となる胚様体
(embryoid body)の形成について検討し
た。
【0031】未分化コロニーが十分に増殖しているwe
llをトリプシン−EDTA処理により支持細胞層と共
に消化・分散し、さらに遠心によって細胞を沈澱・回
収、10%NCS添加DME培養液に再浮遊した。細胞
浮遊液をプラスティックディッシュに分注し、37℃,
5%CO2 の環境下で1時間培養し、次にディッシュを
D−PBS(−)で洗浄、非付着細胞のみを回収した。
洗浄液を遠心して浮遊細胞を沈澱・回収、10%NCS
添加DME培養液に再浮遊、この細胞浮遊液を浮遊培養
用ディッシュに分注することにより、ES細胞のみを浮
遊培養した。
【0032】以上の操作により、Wistar系ES細
胞を浮遊培養した結果、培養開始後1〜2日目に分散し
ていた細胞が凝集し始め、さらに5〜7日目には球形で
内部が中空の胚様体へと分化した(図7)。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、Wistar系ラットより採取した脱
出胚盤胞を示す。
【図2】図2は、支持細胞層上で胚盤胞より増殖してい
る内部細胞塊(ICM)を示す。
【図3】図3は、新たな支持細胞層上に移された内部細
胞塊(ICM)を示す。
【図4】図4は、コロニークローニングにより得られた
未分化形態細胞コロニーを示す。
【図5】図5は、IGF−II添加培養液(ESM/NR
2)により増殖した未分化形態コロニーを示す。
【図6】図6は、IGF−II未添加培養液(ESM/N
R2I(-) )により出現した分化形態コロニーを示す。
【図7】図7は、浮遊培養により形成された胚様体を示
す。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多能性及び/又は全能性分化能を持つ未
    分化細胞に対して分化抑制及び/又は増殖促進効果を有
    するインシュリン様成長因子II型。
  2. 【請求項2】 請求項1において、未分化細胞である動
    物胚に対して分化抑制及び/又は増殖促進効果を有する
    インシュリン様成長因子II型。
  3. 【請求項3】 請求項1において、動物胚に由来する未
    分化細胞に対して分化抑制及び/又は増殖促進効果を有
    するインシュリン様成長因子II型。
  4. 【請求項4】 請求項3において、動物胚に由来する細
    胞が胚性奇形腫細胞(株)である、未分化細胞に対して
    分化抑制及び/又は増殖促進効果を有するインシュリン
    様成長因子II型。
  5. 【請求項5】 請求項3において、動物胚に由来する細
    胞が胚性幹細胞(株)である、未分化細胞に対して分化
    抑制及び/又は増殖促進効果を有するインシュリン様成
    長因子II型。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかのインシュ
    リン様成長因子II型、又はこれに加えて白血病抑制因子
    を有効成分として含有することを特徴とする試験管内培
    養において動物胚より胚性奇形腫細胞を樹立するために
    用いる培養液。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし5のいずれかのインシュ
    リン様成長因子II型、又はこれに加えて白血病抑制因子
    を有効成分として含有することを特徴とする試験管内培
    養において動物胚より胚性幹細胞を樹立するために用い
    る培養液。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし5のいずれかのインシュ
    リン様成長因子II型、又はこれに加えて白血病抑制因子
    を有効成分として含有することを特徴とする試験管内培
    養において胚性胚性奇形腫細胞を増殖及び/または維持
    するために用いる培養液。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし5のいずれかのインシュ
    リン様成長因子II型、又はこれに加えて白血病抑制因子
    を有効成分として含有することを特徴とする試験管内培
    養において胚性幹細胞を増殖及び/または維持するため
    に用いる培養液。
  10. 【請求項10】 請求項6ないし9のいずれかにおい
    て、インシュリン様成長因子II型及び/又は白血病抑制
    因子が天然型であることを特徴とする培養液。
  11. 【請求項11】 請求項6ないし9のいずれかにおい
    て、インシュリン様成長因子II型及び/又は白血病抑制
    因子が組換え型であることを特徴とする培養液。
  12. 【請求項12】 請求項6ないし11のいずれかにおい
    て、インシュリン様成長因子II型または白血病抑制因子
    がその活性を有するアミノ酸配列の全長を含むかもしく
    はその活性を有する断片長ペプチドを含むことを特徴と
    する培養液。
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