JPH05285630A - 融解金属鋳造方法と鋳造装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 融解金属を鋳型へ注入して鋳造物を製造する
に際し、融解金属を確実に鋳込むことを目的とする。 【構成】 被融解金属６を収容した坩堝２を有する融解
室１と鋳型１４を有する鋳造室１２を排気し、両室を不
活性ガス雰囲気として坩堝２内の金属６を融解したの
ち、坩堝２下部の昇降装置４により坩堝２を上昇させて
融解金属６ａ内に鋳型１４に融解金属６ａを注入する注
入通路１７の取入口１８を挿入し、同時に不活性ガスを
加圧注入することによって融解金属６ａを鋳型１４に鋳
込む。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は歯科用或いは工業用小
型鋳造物を製造する融解金属鋳造方法およびその鋳造の
際に用いられる鋳造装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の融解金属鋳造方法や鋳造
装置には金属融解容器として坩堝が用いられている。そ
の坩堝としては図２あるいは図３に示すようなものが知
られている。即ち、図２に示す坩堝５１はその内部で融
解された金属を鋳型に注入する際に、坩堝を傾斜させて
坩堝の上部開口縁に形成された流出ガイド溝５２から注
ぐものである。また図３に示す坩堝５３の場合も同じよ
うに坩堝を傾斜させて、上部の流出口５４から融解した
金属を流出させるものである。

【０００３】図示していないが、この他に深さの浅い皿
状の坩堝もあるが、何れも流出ガイド溝５２あるいは流
出口５４に相当する部分が設けられていて、その部分か
ら融解金属を流出させるようになっている。また、一般
にこの種の精密鋳造に用いられる合金は、その量が数グ
ラムから数１０グラム程度の少量であることが多い。従
って、このような少量の金属を上記したような坩堝を用
いて融解して鋳型に注入すると、比較的温度が低い流出
ガイド溝５２あるいは流出口５４を通る際に、融解金属
が冷却されて凝固が始まり、単に鋳込み操作上の問題だ
けでなく、適切な鋳込み温度を維持できず、貴金属であ
る場合は付着による損失等がある。上記のような早期の
凝固を防止するために融解金属を適性温度以上に加熱し
ておくことも考えられるが、その場合は鋳肌あれ、鋳巣
の発生、金属組織の劣化等の問題がある。

【０００４】これらの問題を解決する融解金属注入装置
として本出願人はさきに以下に述べるような装置を提案
した。即ち、図４に示すように坩堝５５はテーパ付きの
円筒容器状に形成され、上部の開口５６の外側にフラン
ジ状部５７を有し、筒状側壁５８が底壁５９よりも下方
に延長して形成され、全体が中央で縦に２分割されて部
分５５ａ、５５ｂとされている。６０は部分５５ａ、５
５ｂの合わせ面であり、その上端位置には各々上方から
切欠部６１が形成されている。また、２分割した部分５
５ａ、５５ｂの各々にはフランジ状部５７の下側の対称
な位置に、下方へ突出した被支持部６２ａ、６２ｂが設
けられている。

【０００５】このように形成された坩堝５５は図５ａに
示すように、精密鋳造機の高周波コイル６３の上側に設
けられ、エアシリンダあるいは手動レバー（図示省略）
などの駆動手段に結合されていて所定寸法昇降駆動する
坩堝昇降支持体６４の孔６４ａの縁に被支持部６２ａ、
６２ｂが支持され、筒状側壁５８の下部が別に固定的に
設けられた坩堝拘束体６５のテーパ孔６６内に挿入状態
で装着されている。その状態で底壁５９は高周波コイル
６３のほぼ中央付近に位置しており、合わせ面６０は閉
じている。

【０００６】このような構造の注入装置の坩堝５５内に
て鋳込温度に融解された金属は、拘束体６５の下部に配
置されている鋳型（図示省略）にその上方の開口湯口か
ら鋳込まれる。この鋳込み操作は、図５ａの状態から昇
降支持体６４がエアシリンダあるいは手動レバーによっ
て上昇すると、坩堝５５も上昇し、その筒状側壁５８の
下部が挿入されているテーパ孔６６から抜ける。する
と、坩堝５５は部分５５ａ、５５ｂが各々被支持部６２
ａ、６２ｂのみで支持されることになるため、その各々
の重心の関係で図５ｂのように自然に下部が両側に開
き、これによって内部の融解金属は落下して鋳型内に入
るのである。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
たような坩堝を用いた融解金属注入装置では、坩堝内の
金属の融解温度が鋳込み温度になってから坩堝が上昇
し、その下部が拘束体から開放されて開き、融解金属が
鋳型内に注がれるのであるが、全融解金属が鋳型の湯口
に注がれるまでに約０．５〜０．６ｓｅｃかかり、この
間にも融解金属が冷却されて行く。また、湯口に注がれ
た融解金属は全てが湯口にたまるのではなく、徐々に５
００〜６００℃に加熱された鋳型内に注入され、鋳型に
よって冷却される。このため、アルゴンガス等の不活性
ガスを全融解金属が湯口に注入されてから加圧注入した
のでは効果がなく、融解金属を湯口に注ぎ始めると同時
または幾分遅れて注入する方法がとられているが、この
方法では融解金属の注入途中での不活性ガスの加圧注入
で融解金属中に不活性ガスの微細粒子が入りこみ、融解
金属が鋳込まれた鋳造物内に巣ができるという問題があ
った。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この発明は上記した従来
の鋳造装置における問題点、特に坩堝内の融解金属を鋳
型へ注入する際の問題点を解消すべく検討の結果、鋳肌
荒れや鋳巣の生じない鋳造物を得る鋳造方法および鋳造
装置を得るに至ったものである。

【０００９】即ち、この発明は被融解金属を収容した坩
堝を有する融解室と鋳型を有する鋳造室の双方を排気し
て真空にした後、上記融解室と鋳造室の双方に不活性ガ
スを注入、充満させる工程と、不活性ガス充満時に上記
融解室坩堝内の金属を融解する工程と、金属融解後融解
室の坩堝の下部に設けた昇降装置を動作させて該融解金
属を鋳型へ注入する注入通路の下端取入口を融解金属内
に挿入するとともに、上記鋳造室の鋳型内を排気する工
程と、挿入後直ちに不活性ガスを加圧注入して上記融解
金属を鋳型内へ注入する工程とからなる鋳造方法と、こ
の方法を実施するための鋳造装置を提供するものであ
る。

【００１０】

【作用】この発明は坩堝内の融解金属を鋳造室内の鋳型
に注入するに際し、坩堝を昇降装置にて上方に摺動せし
めて、坩堝内の融解金属内に融解金属注入通路の下端取
入口を挿入し、同時に不活性ガスを加圧注入することに
よって、金属の融解から鋳造に至る工程を全く空気に触
れることなく良質な鋳造品を得ることができる。

【００１１】

【実施例】以下、この発明の実施例を鋳造装置から図に
基づいて説明する。図１はこの発明の鋳造装置の一実施
例を示す縦断面図である。図において１は上方が開口し
ている融解室であって、該融解室１のなかほどに上方が
開口している容器状の坩堝２が坩堝受け台３に支持され
て配設されている。そして該坩堝受け台３の下方には、
この坩堝受け台３とともに坩堝２を上下動させる昇降装
置４が連設されている。この昇降装置４は下方の送入口
５からの空気圧、油圧などで駆動するシリンダ等によっ
て構成されている。７は坩堝２内に収容された被融解金
属６を加熱する加熱装置であって、坩堝２が位置する近
傍の融解室１の外周に巻かれた高周波誘導巻線８と、こ
の高周波誘導巻線８に入力する高周波電流を制御する電
力制御部９から構成されている。

【００１２】また、融解室１の一方の側壁上部にはミラ
ー１０が嵌め込まれており、その対向側壁には覗き窓１
１となる耐熱ガラスが嵌め込まれていて、坩堝２内の金
属の融解状態が確認できるようになっている。１２は下
方の開口を融解室１の開口と合致させるように融解室１
上に載置し、Ｏリング１３でシールされた鋳造室であ
る。そして、鋳造室１２内にはその側部と底部にＡｌ₂
Ｏ₃ やＳｉＯ₂ 等のセラミックスよりなる断熱材１５を
介して鋳型１４が装着されている。この鋳型１４は下部
に凹み部１６を有し、該凹み部１６の中央に融解金属を
鋳型１４内に注入するパイプ状の注入通路１７を設けた
もので、石膏（ＣａＳＯ₄ ）などで一体成形により得る
ことができる。そして、この鋳型１４の注入通路１７の
下端の融解金属取入口１８が坩堝２内で被融解金属６が
融解され、坩堝２が上昇して鋳型１４の凹み部１６の破
線で示す位置２ａまで達した時に融解金属６ａ内に挿入
されるようになっている。

【００１３】１９は鋳造室１２の側壁に設けた排気孔２
０から鋳造室１２、融解室１の空気、ガス等を排気する
排気装置であり、２１は鋳造室１２の下方側壁に設けた
注入孔２２を通して鋳造室、融解室に不活性ガスを注入
するガス注入装置である。

【００１４】次に、上記した鋳造装置を用いたこの発明
の鋳造方法を説明する。まず、融解室１上部の鋳造室１
２を前後または左右に移動させて坩堝２内に被融解金属
６を収容し、鋳造室１２を元へ戻して図１のように融解
室１上にシールする。次いで、鋳造室１２の上蓋１２ａ
をはずして鋳造室１２内に図１のような凹み部１６、パ
イプ状注入通路１７を一体に形成した鋳型１４を側壁お
よび底壁両端に断熱材１５を介して装着する。上蓋１２
ａを元へ戻した後、排気装置１９を作動し両室を真空状
態とする。

【００１５】次に、ガス注入装置２１を作動し、不活性
ガス注入孔２２から両室内にアルゴンガス等の不活性ガ
スを注入し、充満させる。その後、加熱装置を動作させ
て融解室１外周の高周波誘導巻線８に高周波電流を供給
して坩堝内の被融解金属６を融解させる。この加熱融解
時、金属６、断熱材１５、坩堝２等から発生するガスを
排気させるために融解室１を排気させる場合もある。次
いで、坩堝２内部の金属融解を融解室１側壁のミラー１
０とそれに対向して設けた覗き窓１１から確認した後、
直ちに送入口５から空気または油を送って昇降装置４を
作動させて、坩堝受け台３とともに坩堝２を鋳型１４の
凹み部１６の図中破線で示す位置まで坩堝２ａとして上
昇させ、鋳型１４の注入通路１７の下端取入口１８を坩
堝２の融解金属６ａ内に挿入する。と同時に鋳型内の空
気又はガスを排気装置１９にて排気孔２０から排気す
る。

【００１６】次いで、ガス注入装置２１を作動し、注入
孔２２から３〜５ｋｇ／ｃｍ² の不活性ガスを加圧注入
する。これによって融解金属６ａの湯面に矢印で示すよ
うに圧力がかかって、融解金属は取入口１８から強制的
に注入通路１７を経て鋳型１４内に入り、所要の鋳込み
が行なわれる。

【００１７】鋳込み終了後は、上昇している坩堝２ａを
昇降装置４にて下降させて元の位置に戻したうえ、鋳造
室１２の上蓋１２ａをはずして鋳型１４を取出せばよ
い。そして、鋳造室と融解室のシールを解いて鋳造室を
移動させ、坩堝内の残査を除去するか、坩堝の交換をし
て、上記の操作を繰返せばよい。

【００１８】上記した図１の鋳造装置を用いた鋳造方法
によれば、従来のように融解金属の入った坩堝を傾けた
り、回転させたりすることなく、昇降装置にて単に上昇
させるだけで鋳型の注入通路の取入口を融解金属内に挿
入することができ、また加圧した不活性ガスの注入によ
り融解金属全体を加圧するので、融解金属中に不活性ガ
スが入り込むことなく、かつ短時間で鋳型内への鋳込み
が行なえるので融解金属の冷却もなく、従って鋳巣や鋳
肌荒れのない良好な鋳造物が得られるのである。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように、この発明は融解室
内の坩堝で融解した金属を鋳造室内の鋳型に注入するに
当って、坩堝の下部に連設されている昇降装置を動作さ
せて鋳造室の鋳型を繋ぐ注入通路の下端取入口を融解金
属内に挿入するとともに不活性ガスを加圧注入すること
によって融解金属の湯面にガス圧がかかり、融解金属の
鋳型への注入、鋳込みをスムーズに行うことができ、か
つ鋳巣や鋳肌荒れのない鋳造物を得ることができるので
ある。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の鋳造装置を示す縦断面図である。

【図２】従来の鋳造装置で用いられている坩堝を示し、
（ａ）はその平面図、（ｂ）は側面図である。

【図３】（ａ）は従来の他の坩堝を示す平面図、（ｂ）
は（ａ）のＡ−Ａ線断面図である。

【図４】（ａ）は従来のさらに他の坩堝を示す平面図、
（ｂ）は側面図である。

【図５】（ａ）および（ｂ）は図４の坩堝を用いた従来
の融解金属注入装置の使用状態を示す縦断面図である。

【符号の説明】

１ 融解室 ２ 坩堝 ４ 昇降装置 ６ 被融解金属 ６ａ 融解金属 ７ 加熱装置 １１ 覗き窓 １２ 鋳造室 １４ 鋳型 １５ 断熱材 １６ 凹み部 １７ 注入通路 １８ 取入口 １９ 排気装置 ２１ ガス注入装置

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 被融解金属を収容した坩堝を有する融解
   室と鋳型を有する鋳造室の双方を排気して真空にした
   後、上記融解室と鋳造室の双方に不活性ガスを注入、充
   満させる工程と、不活性ガス充満時に上記融解室坩堝内
   の金属を融解する工程と、金属融解後融解室の坩堝の下
   部に設けた昇降装置を動作させて該融解金属を鋳型へ注
   入する注入通路の下端取入口を融解金属内に挿入すると
   ともに、上記鋳造室の鋳型内を排気する工程と、挿入後
   直ちに不活性ガスを加圧注入して上記融解金属を鋳型内
   へ注入する工程とからなることを特徴とする融解金属鋳
   造方法。
2. 【請求項２】 上方に開口する容器状に形成され、内部
   に被融解金属を収容した坩堝と、該坩堝を上下に摺動さ
   せる昇降装置とを有し、上方が開口している融解室と、
   上記昇降装置にて上昇した坩堝が嵌合する凹み部を下方
   に有し、該凹み部の中央部に融解金属の注入通路を有す
   る鋳型を断熱材を介して設け、下方中央部が開口してい
   る鋳造室と、上記融解室の坩堝の位置する外周に設けた
   加熱手段とからなり、上記融解室の上方に該融解室の上
   方開口と上記鋳造室の下方中央部の開口とを合致せしめ
   て鋳造室を設けてなることを特徴とする融解金属鋳造装
   置。