JPH05280613A - 無段変速装置 - Google Patents

無段変速装置

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JPH05280613A
JPH05280613A JP7684592A JP7684592A JPH05280613A JP H05280613 A JPH05280613 A JP H05280613A JP 7684592 A JP7684592 A JP 7684592A JP 7684592 A JP7684592 A JP 7684592A JP H05280613 A JPH05280613 A JP H05280613A
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Hirobumi Miyata
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 変速プーリ機構4及び差動ギヤ機構41を組
み合わせてなる無段変速装置に対し、安価な構造で、変
速プーリ機構4における軸荷重の制御範囲を拡大して、
伝達効率が高く、低コストで省スペースの無段変速装置
を実現する。 【構成】 変速プーリ機構4における各変速プーリ5,
9の可動シーブ7,11背面側に、可動シーブ7,11
を相対向する固定シーブ6,10に対し両変速プーリ
5,9間で互いに逆向きに接離させて変速プーリ5,9
のプーリ径を変化させる1対の駆動機構15,21を配
設し、両変速プーリ5,9のプーリ径が互いに逆方向に
変化するように両駆動機構15,21を連動させて両回
転軸2,3間の変速比を可変とする変速切換機構31を
設け、両変速プーリ5,9間にベルトBの緩み側スパン
を押圧してベルト推力を発生させる推力発生機構31を
配置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は無段変速装置に関し、
特に、変速プーリ機構と差動ギヤ機構とを組み合わせた
ものに関する。
【0002】
【従来の技術】ベルト式の無段変速装置は、互いに平行
に配置された1対の回転軸の各々に、該各回転軸に対し
て回転一体にかつ摺動不能に固定された固定シーブと、
回転軸に固定シーブとの間にV字状のベルト溝を形成す
るように対向配置されて回転一体にかつ摺動可能に支持
された可動シーブとからなる変速プーリを有するととと
もに、これら両変速プーリのベルト溝間に巻き掛けられ
たVベルトを有する変速プーリ機構からなり、可動シー
ブの軸方向の移動によってVベルトに対する有効半径を
可変とすることにより、両回転軸間の変速比を変えるよ
うにしたものである。
【0003】ところで、従来、特開昭62−11815
9号公報に記載されるように、上記変速プーリ機構を備
えるとともに、変速用のギヤ機構としての遊星ギヤ機構
(差動ギヤ機構)を設けることが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この変速プーリ機構及
び差動ギヤ機構を備えた無段変速装置において、差動ギ
ヤ機構を利用して出力軸を停止状態から回転させようと
すると、動力伝達経路が駆動動力と循環動力との2つに
分かれることが生じる。すなわち、閉路式差動ギヤ装置
では、差動ギヤ機構の3つのギヤ要素の1つを出力軸に
連結し、プーリ機構の変速比調整により差動ギヤ機構の
残りの1つのギヤ要素の回転数を変えることで、そのギ
ヤ要素と残りの他のギヤ要素との間の回転方向及び回転
速度を異ならせ、出力側ギヤ要素つまり出力軸の回転方
向及び回転数を決定するようになっている。ところが、
そのとき、動力として駆動動力及び循環動力が発生し、
出力動力は駆動動力から循環動力を減じたものとなる。
そして、入力軸から出力軸に至る2つの動力伝達経路の
うち、どちらが駆動動力経路又は循環動力経路になるか
は、差動ギヤ機構におけるギヤ要素の角速度で分かれ、
角速度の大きい方が駆動動力経路となる。
【0005】上記駆動動力及び循環動力の大きさは出力
トルクと差動ギヤ機構における各ギヤの回転数とで決ま
り、変速装置に入力される動力及び出力動力は駆動動力
から循環動力を引いたものとなる。条件の設定により、
例えば駆動動力が「15」で循環動力が「5」のとき
に、入力動力及び出力動力はいずれも「10(=15−
5)」となる(例1)。また、出力回転数を変化させる
と、駆動動力が「25」で循環動力が「15」のときで
も、入力動力及び出力動力は「10(=25−15)」
となり(例2)、入力動力よりも大きい動力が流れる。
【0006】上記変速プーリ機構におけるベルトの伝達
効率は0.9程度であり、差動ギヤ機構におけるギヤの
伝達効率は0.98程度であるので、実際には、上記の
例における出力動力は例1の場合、 15−5−{(15−15×0.98)+(5−5×0.9)}=9.2 であり、例2の場合には、 25−15−{(25−25×0.98)+(15−15×0.9)} =8.0 となる。これを、変速プーリ機構単体及び差動ギヤ機構
単体の伝達効率と比較すると、変速プーリ機構単体で
は、 10×0.9=9.0 となり、差動ギヤ機構単体では、 10×0.98=9.8 となるので、変速プーリ機構及び差動ギヤ機構を備えた
無段変速装置の伝達効率は変速プーリ機構単体の効率よ
りも下がるという問題がある。
【0007】この変速プーリ機構及び差動ギヤ機構を組
み合わせてなる無段変速装置の伝達効率を増大させるに
は、差動ギヤ機構及び変速プーリ機構における伝動要素
の伝達効率を高くする必要がある。伝動要素がギヤであ
る場合に関しては、ギヤの配列を変えてその噛合い個数
を減らすこと、潤滑オイルの循環方式やギヤ噛合状態を
変えること等の対処の仕方が挙げられるが、最大で2%
程度の増大しか期待できず、しかもギヤ配列の改良以外
はコスト高を招くという難がある。
【0008】これに対し、変速プーリ機構については、
ベルトの張力の与え方により効率が大きく変化する特性
がある。一般に、ベルトに適正な張力(負荷や変速比に
見合った張力)を与えた場合には、95%程度の伝動効
率が得られるが、この条件を忠実に再現するには図5に
示すような制御が必要となる。図5は、ベルト式変速装
置における変速比をHi 状態(変速比1:0.6)から
Mi 状態(同1:1)を経てLo 状態(同1:2)に変
えたときの軸荷重の変化を入力トルクの3〜7kgf ・m
毎に示したものである。
【0009】一方、図6は、従動側変速プーリの可動シ
ーブを固定シーブに接近する方向にばねで付勢する従動
ばね式のベルト変速装置における同特性を示したもの
で、この従動ばね式のものは、図5に示す特性と比べ線
制御になっていて軸荷重の幅がなく、つまり、ある一点
では伝動効率が高いが、その他の条件では効率が低い。
また、最大トルクの伝動時にスリップさせないようにす
るために、ばね力は、最大トルクを伝達できるだけの軸
荷重を発生させる大きさに設定する必要がある。
【0010】上記制御範囲を広げるために、従動ばね式
のベルト変速装置に対し、変速プーリの可動シーブと回
転軸とのトルク差に伴う相対回転により可動シーブを固
定シーブ側に移動させるトルクカムを加えると、図7に
示す制御範囲が得られる。この図7は、必要最大荷重の
1/2(50%)をばねで設定し、残り半分はトルクカ
ムで発生させたものである。トルクカム側の軸荷重分担
率を大きくすることで、制御範囲は大きくなるが、反
面、トルクカムでは、ベルトを挟みながら相対的なずれ
を発生させる必要があるので、上記軸荷重の分担率を大
きく変えると、ベルトの側面の摩擦係数とトルクカムと
の相関性が高いことから、トルクカムが軸荷重(推力)
を発生させる前にベルトのスリップ生じるようになり、
所期の目的を達成できなくなる虞れがある。
【0011】各変速プーリにおける可動シーブに駆動の
ための油圧シリンダを連結し、このシリンダの伸縮作動
により変速比や負荷の変化に応じて軸荷重を制御するこ
とで、上記高い伝達効率を達成することができる。しか
し、その場合、油圧発生のためのポンプや制御用のコン
ピュータ、トルクや位置検出用のセンサ類が必要で、コ
ストアップするのは避けられず、農業機械や一般産業用
としては実現性が乏しい。
【0012】本発明は以上の諸点に鑑みてなされたもの
で、その目的は、変速プーリ機構及び差動ギヤ機構を組
み合わせてなる無段変速装置に対し、安価な構造で、変
速プーリ機構における軸荷重の制御範囲を拡大する手段
を講じることで、伝達効率が高く、低コストで省スペー
スの無段変速装置を実現しようとすることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1の発明では、各変速プーリにおける可動
シーブをそれぞれ相対する固定シーブの接離が互いに逆
になるように移動させる駆動機構を設ける。この駆動機
構は、各プーリにおいて可動シーブを固定シーブに対し
て位置決めするだけの役割を持つものとし、ベルト推力
を得るために、両プーリ間に巻き掛けられる伝動ベルト
の緩み側を張力よりも大きい張力で押圧するようにす
る。
【0014】具体的には、この発明では、互いに平行に
配置された第1及び第2回転軸と、この両回転軸をベル
トによって変速可能に駆動連結する変速プーリ機構と、
上記第2回転軸上に配設された差動ギヤ機構とを備え
る。
【0015】上記変速プーリ機構は、各々、回転軸に回
転一体にかつ摺動不能に固定された固定シーブと、回転
軸に固定シーブに対する向きが互いに逆になるように軸
方向に摺動可能に支持された可動シーブとからなる変速
プーリと、該両変速プーリ間に巻き掛けられたベルト
と、上記各変速プーリの可動シーブ背面側に配設され、
該可動シーブを相対向する固定シーブに対し両変速プー
リ間で互いに逆向きに接離させて変速プーリのプーリ径
を変化させる1対の駆動機構と、上記両変速プーリのプ
ーリ径が互いに逆方向に変化するように上記両駆動機構
を連動させて両回転軸間の変速比を可変とする変速切換
機構と、上記両変速プーリ間に配置され、両変速プーリ
間に巻き掛けられるベルトの緩み側スパンを、該緩み側
スパンに回転軸間の変速比に対応して発生する張力より
も大きい張力となるように押圧してベルト推力を発生さ
せる推力発生機構とを備える。
【0016】一方、上記差動ギヤ機構は、第2回転軸に
回転一体に連結された第1ギヤ要素と、第1回転軸に回
転一体に取り付けたギヤに噛合された第2ギヤ要素と、
第3ギヤ要素とを備えている。
【0017】請求項2の発明では、請求項1の無段変速
装置において、差動ギヤ機構の第2ギヤ要素の回転数が
第1ギヤ要素の回転数よりも常に高くなるように構成す
る。
【0018】請求項3の発明では、請求項2の発明とは
逆に、差動ギヤ機構の第1ギヤ要素の回転数が第2ギヤ
要素の回転数よりも常に高くなるように構成する。
【0019】
【作用】上記の構成により、請求項1の発明では、第1
及び第2回転軸間には変速プーリ機構及び作動ギヤ機構
が並列に配置されているので、入力される動力は変速プ
ーリ機構及び作動ギヤ機構の一方を駆動動力経路とし、
他方を循環動力経路として伝達された後、出力される。
上記変速プーリ機構においては、各変速プーリの駆動機
構が変速切換機構により連係されているため、一方の変
速プーリの駆動機構を作動させて該プーリの可動シーブ
を軸方向に移動させると、それに伴って他方の変速プー
リの可動シーブが上記一方の変速プーリにおける可動シ
ーブの固定シーブに対する接離動作とは逆の動作でもっ
て移動し、この両可動シーブの逆方向の移動によって両
回転軸間の変速比が切換変更される。両変速プーリ間に
巻き掛けられる伝動ベルトは、その緩み側スパンが推力
発生機構により押圧されて張力が付与される。この推力
発生機構によるベルト張力は、その変速比でのベルトの
緩み側スパンに発生する張力よりも大きい張力であるの
で、ベルトのプーリに対するくさび効果が生じてベルト
推力が発生し、回転軸間で動力が伝達される。すなわ
ち、推力発生機構によりベルトの緩み側スパンの張力が
一定となるので、伝動負荷の大きさが変化すると、張り
側スパンの張力だけが変化することとなる。そして、こ
の張り側張力と緩み側張力とを加えたものが軸荷重であ
るので、伝動負荷が大きく変化すれば、軸荷重も大きく
なる。
【0020】このとき、無負荷に近い状態では、張り側
張力と緩み側張力とが略等しいので、軸荷重は緩み側張
力の略2倍となり、初期の緩み側張力が低いほど無負荷
時の軸荷重を低くすることができる。理想的には、無負
荷伝動状態では、軸荷重が0に近い方がよく、また、理
論上は緩み側張力が0の状態で負荷を伝動できると、最
大の伝動効率が得られる。しかし、実際には、摩擦伝動
では緩み側張力が0の状態で伝動することはできず、緩
み側張力が低いほど伝動効率が増大することとなる。こ
の発明では、上記各変速プーリの駆動機構を変速切換機
構により連係させる構造であるので、緩み側張力を低く
することができる。よって、変速プーリ機構及び差動ギ
ヤ機構を組み合わせてなる無段変速装置に対し、油圧シ
リンダ等を用いることなく簡単で安価な構造で伝動効率
を増大させることができる。
【0021】請求項2の発明では、差動ギヤ機構におい
て第1回転軸にギヤを介して連結されている第2ギヤ要
素の回転数が第1ギヤ要素の回転数よりも常に高くなる
ように設定されているので、差動ギヤ機構を駆動動力の
経路とし、変速プーリ機構を循環動力経路とすることが
できる。その結果、変速プーリ機構のベルトに駆動動力
よりも小さい循環動力を伝達させることができ、高出力
時であってもベルトの伝動負荷を小さくすることができ
る。
【0022】請求項3の発明では、差動ギヤ機構の第1
ギヤ要素の回転数が第2ギヤ要素の回転数よりも常に高
くなるように設定されているので、差動ギヤ機構を循環
動力の経路とし、変速プーリ機構を駆動動力経路とする
ことができる。
【0023】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図1は本発明の実施例に係る無段変速装置Aの全
体構成を示す。図1において、1は複数に分割されたケ
ーシングで、その内部には互いに平行に配置された第1
及び第2回転軸2,3が回転可能に支承されている。第
1回転軸2は入力軸を、また第2回転軸3は中間軸をそ
れぞれ構成しており、第2回転軸3の左半部は円筒状と
されている。
【0024】また、ケーシング1内には、上記両回転軸
2,3をVベルトBによって変速可能に駆動連結する変
速プーリ機構4と、第2回転軸3の右端部上に配置され
た差動ギヤ機構としての遊星ギヤ機構41とが収容され
ている。上記変速プーリ機構4は、第1回転軸2の左端
部上に配置された第1変速プーリ5を有する。この第1
変速プーリ5は、第1回転軸2に回転一体にかつ摺動不
能に固定されたフランジ状の固定シーブ6と、該固定シ
ーブ6に対向するように第1回転軸2にボス部7aにて
摺動可能にかつ相対回転可能に結合されたフランジ状の
可動シーブ7とからなり、これら両シーブ6,7間には
ベルト溝8が形成されている。
【0025】一方、第2回転軸3の左半部(円筒部分)
上には第2変速プーリ9が設けられている。この第2変
速プーリ9は、上記第1変速プーリ5と同様の構成であ
り、第2回転軸3に回転一体にかつ摺動不能に固定され
たフランジ状の固定シーブ10と、該固定シーブ10に
上記第1回転軸2上の第1変速プーリ5における固定シ
ーブ6に対する可動シーブ7の対向方向と逆方向でもっ
て対向するようにボス部11aにて摺動可能にかつ相対
回転可能に結合されたフランジ状の可動シーブ11とか
らなり、これら両シーブ10,11間にはベルト溝12
が形成されている。そして、上記第1変速プーリ5のベ
ルト溝8と第2変速プーリ9のベルト溝12との間には
VベルトBが巻き掛けられており、両変速プーリ5,9
の各可動シーブ7,11をそれぞれ固定シーブ6,10
に対して接離させて各プーリ5,9のプーリ径(Vベル
トBに対する有効半径)を変更する。例えば第1変速プ
ーリ5の可動シーブ7を固定シーブ6に接近させ、かつ
第2変速プーリ9の可動シーブ11を固定シーブ10か
ら離隔させたときには、第1変速プーリ5のプーリ径を
第2変速プーリ9よりも大きくすることにより、第1回
転軸2の回転を第2回転軸3に増速して伝達する。一
方、逆に、第1変速プーリ5の可動シーブ7を固定シー
ブ6から離隔させ、かつ第2変速プーリ9の可動シーブ
11を固定シーブ10に接近させたときには、第1変速
プーリ5のプーリ径を小にし、第2変速プーリ9のプー
リ径を大きくすることにより、第1回転軸2の回転を減
速して第2回転軸3に伝えるようになされている。
【0026】尚、上記第1変速プーリ5の可動シーブ7
のボス部7aと第1回転軸2との間及び第2変速プーリ
9の可動シーブ11のボス部11aと第2回転軸3との
間にはそれぞれトルクカム13,14が配設されてお
り、このトルクカム13,14により動力伝達時に可動
シーブ4,11を固定シーブ6,10に接近させるよう
になっている。
【0027】上記第1回転軸2上には第1変速プーリ5
における可動シーブ7背面側に、該可動シーブ7を固定
シーブ6に対して接離させるための駆動機構としての第
1カム機構15が設けられている。このカム機構15
は、可動シーブ7のボス部7a上にベアリング16を介
して相対回転可能にかつ軸方向に移動一体に外嵌合支持
された円筒カム17を有する。このカム17の第1変速
プーリ5と反対側端面には1対の傾斜カム面17a,1
7a(1つのみ図示する)が円周方向に等角度間隔(1
80°間隔)をあけて形成され、外周には図の紙面と直
交する方向に延びる回動レバー18が回動一体に突設さ
れている。
【0028】また、上記円筒カム17の背面側には、そ
の各カム面17aに当接して転動するカムフォロワとし
てのピン状のローラ19が配設され、このローラ19は
ケーシング1にベアリング20を介して回転可能に支持
されている。
【0029】一方、第2回転軸3上には、第2変速プー
リ9における可動シーブ11の背面側に、該可動シーブ
11を固定シーブ10に対して接離させるための駆動機
構としての第2カム機構21が設けられている。この第
2カム機構21は、上記第1カム機構15と同様の構成
で、可動シーブ11のボス部11a上にベアリング22
を介して相対回転可能にかつ軸方向に移動一体に外嵌合
支持された円筒カム23を有する。このカム23の第2
変速プーリ9と反対側端面には1対の傾斜カム面23
a,23a(1つのみ図示する)が円周方向に等角度間
隔をあけて形成され、外周には図の紙面と直交する方向
に延びる回動レバー24が回動一体に突設されている。
また、円筒カム23の背面側には、その各カム面23a
に当接して転動するローラ25が配設され、このローラ
25はケーシング1にピン27を介して回転可能に支持
されている。
【0030】そして、上記第1カム機構15の回動レバ
ー18先端にはピン28を介して折曲り棒状のリンク2
9の一端が連結され、このリンク29の他端は上記第2
カム機構21の回動レバー24先端にピン30を介して
連結されている。そして、上記リンク29及びピン2
8,30により変速切換機構31が構成されており、こ
の変速切換機構31により、図外の操作レバーの切換操
作に応じて、各カム機構15,21におけるカム17,
23を互いに連係して可動シーブ7,11のボス部7
a,11a周りに回動させ、そのカム面17a,23a
上でローラ19,25を転動させることにより、可動シ
ーブ7,11を軸方向に移動させて固定シーブ6,10
に対し互いに相反して接離させ、そのベルト溝8,12
の有効半径つまりプーリ5,9のプーリ径を可変とし、
第1及び第2回転軸2,3間の変速比を変化させるよう
にしている。
【0031】また、上記第1及び第2変速プーリ5,9
間には、両プーリ5,9間に張られたベルトBの1対の
スパンのうち第1変速プーリ5の駆動力が第2変速プー
リ9に伝達されるときの緩み側スパンをその背面から押
圧してベルトBに張力を与えることでベルト推力を発生
する推力発生機構32が配設されている。この推力発生
機構32は、ケーシング1にボス部33aにて揺動可能
に支持されたアーム33と、該アーム33の先端部に軸
34により回転可能に支承されたローラ35とを備えて
いる。上記アーム33の先端部とケーシング1との間に
は、アーム33をローラ35がベルトBの緩み側スパン
背面を押圧するように回動付勢するばね(図示せず)が
架設されている。そして、上記ローラ35がベルトBの
緩み側スパンを、該緩み側スパンに発生する最大張力よ
りも大きい張力で押圧するように、上記ばねの付勢力が
設定されており、この張力によりベルト推力を発生させ
るようにしている。
【0032】第2回転軸3上に配置された遊星ギヤ機構
41は、第2回転軸3に回転一体に固定された第1ギヤ
要素としてのサンギヤ42と、該サンギヤ42に噛合す
る複数のピニオン43,43,…と、第2回転軸3に回
転可能に支承され、上記ピニオン43,43,…を担持
する第3ギヤ要素としてのピニオンキャリア44と、最
も外周に配置され、上記ピニオン43,43,…に内周
で噛合する第2ギヤ要素としてのリングギヤ45とを備
えている。上記リングギヤ45は外周にて、第1回転軸
2の右端に回転一体に取り付けたギヤ47に噛合されて
いる。また、ピニオンキャリア44には出力ギヤ46が
一体に固定され、この出力ギヤ46は図外の正逆転機構
を介して出力回転軸に駆動連結されている。
【0033】そして、上記遊星ギヤ機構41のギヤ比及
び変速プーリ機構4の変速比の設定により、遊星ギヤ機
構41のリングギヤ45の回転数がサンギヤ42の回転
数よりも常に高くなるようになっている。
【0034】次に、上記実施例の作用について説明す
る。変速装置Aの第1及び第2回転軸2,3間には変速
プーリ機構4及び遊星ギヤ機構41が並列に配置されて
いるので、変速装置Aの作動時、第1回転軸2から入力
された動力は、変速プーリ機構4と第1回転軸2上のギ
ヤ47及び遊星ギヤ機構41とに伝達された後、該遊星
ギヤ機構41におけるピニオンキャリア44の出力ギヤ
46から出力動力として出力される。具体的には、上記
遊星ギヤ機構41のギヤ比及び変速プーリ機構4の変速
比は、遊星ギヤ機構41のリングギヤ45の回転数がサ
ンギヤ42の回転数よりも常に高くなるように設定され
ているので、入力動力はギヤ47及び遊星ギヤ機構41
のリングギヤ45を経由してそのピニオンキャリア44
に至る経路を駆動動力経路とし、変速プーリ機構4から
遊星ギヤ機構41のサンギヤ42に至る経路を循環動力
経路として伝達される。
【0035】このようにギヤ47及び遊星ギヤ機構41
が駆動動力の経路となり、変速プーリ機構4が循環動力
経路となるので、変速プーリ機構4のベルトBに駆動動
力よりも小さい循環動力を伝達させることができ、高出
力時であってもベルトBの伝動負荷を小さくすることが
できる。
【0036】上記変速プーリ機構4においては、推力発
生機構32のばねの付勢力によりアーム33が回動付勢
され、その先端のローラ35がベルトBの緩み側スパン
背面を押圧し、この押圧によりベルトBに張力が付与さ
れる。この張力は緩み側スパンに発生する最大張力より
も大きいため、このベルト張力によりベルトBのプーリ
5,9に対するくさび効果が生じて推力が発生し、この
推力により両プーリ5,9間でベルトBを介して動力が
伝達される。
【0037】そして、各変速プーリ5,9のカム機構1
5,21における回動レバー18,24同士が変速切換
機構31のリンク29により連係されているため、操作
レバーの操作により上記変速プーリ機構4の変速比を変
えることで、遊星ギヤ機構41のピニオンキャリア44
つまり変速装置Aの出力回転速度を停止状態(回転数
0)から増大変化させることができる。すなわち、停止
状態とするときには、操作レバーを停止位置に位置付け
る。この操作レバーは第1カム機構15におけるカム1
7外周の回動レバー18に連結されているので、上記停
止位置への切換状態では、上記カム17がそのカム17
a面上で各カム用ローラ19を転動させながら第1変速
プーリ5における可動シーブ7のボス部7a周りに一方
向に回動する。これにより、上記カム面17aがローラ
19に押されてカム17が第1回転軸2上を移動し、該
カム17にベアリング16を介して移動一体の可動シー
ブ7が同方向に移動して固定シーブ6に接近する。この
ことにより第1変速プーリ5が閉じてそのプーリ径が増
大し、このプーリ径の増大によりVベルトBが第1変速
プーリ5側に引き寄せられる。
【0038】また、これと同時に、上記操作レバーの停
止位置への切換えに伴い、上記第1変速プーリ5の可動
シーブ7の動きに同期して、第2カム機構21のカム2
3が第2回転軸3上を上記第1カム機構15のカム17
と同じ一方向に回動する。このカム23の回動によりカ
ム用ローラ25に対する押圧がなくなる。このため、上
記第1変速プーリ5側に移動するベルトBの張力によ
り、カム25及びそれにベアリング22を介して連結さ
れている可動シーブ11は固定シーブ10から離れる方
向に第2回転軸3上を移動し、この両シーブ10,11
の離隔により第2変速プーリ9が開いてプーリ径が減少
する。これらの結果、第1変速プーリ5のプーリ径が第
2変速プーリ9よりも大きくなり、第1回転軸2の回転
が増速されて第2回転軸3に伝達され、停止状態とな
る。
【0039】また、この停止状態から、操作レバーを高
速位置に向けて操作すると、この操作レバーの切換操作
に伴い、上記第2カム機構21のカム23がそのカム面
23a上でカム用ローラ25を転動させながら第2変速
プーリ9における可動シーブ11のボス部11a周りに
他方向に回動する。このカム23の回動によりカム面2
3aがカム用ローラ25に押されて第2回転軸3上を移
動し、可動シーブ11も同方向に移動して固定シーブ1
0に接近し、このことにより第2変速プーリ9が閉じて
プーリ径が増大する。このプーリ径の増大によりVベル
トBが第2変速プーリ9側に引き寄せられる。
【0040】また、上記可動シーブ11の動きに同期し
て、第1カム機構15のカム17が第1回転軸2上を上
記カム23と同じ他方向に回動し、このカム17の回動
によりカム用ローラ19に対する押圧がなくなり、ベル
トBの張力により第2変速プーリ5の可動シーブ7がカ
ム17と共に固定シーブ6から離れる方向に第1回転軸
2上を移動する。この両シーブ6,7の離隔により第1
変速プーリ5が開いてそのプーリ径が減少する。その結
果、第1変速プーリ5のプーリ径が第2変速プーリ9よ
りも小さくなり、第1回転軸2の回転が減速されて第2
回転軸3に伝達され、このことで出力回転数を上昇させ
ることができる。
【0041】そのとき、上記推力発生機構32の押圧に
よりベルトBの緩み側スパンの張力が一定となるので、
伝動負荷の大きさが変化すると、張り側スパンの張力だ
けが変化することとなる。この張り側張力と緩み側張力
とを加えたものが軸荷重であるので、伝動負荷が大きく
変化すれば、軸荷重も大きくなる。そして、無負荷に近
い状態では、張り側張力と緩み側張力とが略等しいの
で、軸荷重は緩み側張力の略2倍となり、初期の緩み側
張力が低いほど無負荷時の軸荷重を低くすることができ
る。理想的には、無負荷伝動状態では、軸荷重が0に近
い方がよく、また、理論上は緩み側張力が0の状態で負
荷を伝動できると、最大の伝動効率が得られる。この実
施例では、上記各変速プーリ5,9の可動シーブ7,1
1をカム機構15,21及び変速切換機構31により連
係させる構造であるので、ベルトBの緩み側スパンの緩
み側張力を低くすることができ、その結果、図2に示す
ように軸荷重の制御範囲を拡大することができる(図2
は本実施例における変速プーリ機構4の軸荷重変化を例
示したものである)。よって変速プーリ機構4及び遊星
ギヤ機構41を組み合わせてなる無段変速装置Aに対
し、油圧シリンダ等を用いることなく簡単で安価な構造
で伝動効率を増大させることができる。
【0042】本発明の効果をより明確にするために、本
発明者が行った具体例について説明する。図5に示す軸
荷重特性から、最大負荷時は、トルクが7kgf ・m が入
力されるLo 状態のときで314kgf であり、このLo
状態での駆動側変速プーリのベルトピッチ径は57.0
mm、従動側変速プーリのベルトピッチ径は107.47
mmであった。このベルトピッチ径からベルトの伝達張力
は、 7kg・m ÷0.0285m =245.6kgf であり、緩み側張力は、 (314−245.6)/2=34.2kgf である。従って、張り側張力は、 245.6+34.2=279.8kgf となり、軸荷重は、 279.8+34.2=314kgf となる。以上の計算により、緩み側張力として34.2
kgf の張力を与えてやれば、最大負荷7kgf ・m を伝達
できることとなる。この状態で無負荷状態にすると、軸
荷重は、 34.2×2=68.4kgf となり、2軸制御よりも低くなって図2に示す制御範囲
が得られる。
【0043】また、実用上は最大負荷時に大きなスリッ
プを起こさないかぎり、緩み側張力を使用頻度の高い常
用負荷に設定するので、この実際の制御範囲は図3に示
す範囲で使用可能となる。
【0044】すなわち、以上のことを2軸制御で行う
と、張り側及び緩み側スパンがプーリにより共に張力を
発生させられているので、張り側スパンが設定以上の張
力になると、プーリが開くと同時に、緩み側張力も低下
し、このことから最大負荷時にスリップを発生する。こ
れに対し、上記実施例のように3軸制御では、張り側ス
パンの負荷張力が設定値以上になっても、緩み側張力が
低下することはなく、よって最大負荷時のスリップの発
生がない。
【0045】図4は無段変速装置の変速プーリ機構とし
て3軸タイプを使用した本発明例の伝動効率を示してお
り、一般の変速プーリ機構を使用した従来例に比べ、高
い伝達効率が得られることが判る。
【0046】尚、例えば上記第1回転軸2上のギヤ47
と遊星ギヤ機構41のリングギヤ45とのギヤ比を変え
ることで、遊星ギヤ機構41のサンギヤ42の回転数が
リングギヤ45の回転数よりも常に高くなるように設定
してもよく、その場合には、遊星ギヤ機構41を循環動
力の経路とし、変速プーリ機構4を駆動動力経路とする
ことができる。
【0047】また、上記実施例では、遊星ギヤ機構41
のリングギヤ45を第1回転軸2上のギヤ47に噛合さ
せているが、ピニオンキャリア44を同ギヤ47に噛合
させて、リングギヤ45を出力ギヤとしてもよい。さら
には、遊星ギヤ機構41のピニオンキャリア44を動力
の入力部とし、第1回転軸2を出力部とすることも可能
である。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に
よると、第1及び第2回転軸の間に変速プーリ機構及び
差動ギヤ機構を組み合わせてなる無段変速装置に対し、
変速プーリ機構における各変速プーリの可動シーブ背面
側に、可動シーブを相対向する固定シーブに対し両変速
プーリ間で互いに逆向きに接離させて変速プーリのプー
リ径を変化させる1対の駆動機構を配設し、両変速プー
リのプーリ径が互いに逆方向に変化するように両駆動機
構を連動させて両回転軸間の変速比を可変とする変速切
換機構を設け、両変速プーリ間に、両変速プーリ間に巻
き掛けられるベルトの緩み側スパンを、緩み側スパンに
回転軸間の変速比に対応して発生する張力よりも大きい
張力となるように押圧してベルト推力を発生させる推力
発生機構を配置したので、変速プーリ機構のベルトの緩
み側張力を小さくすることができ、伝達効率が高く、低
コストで操作荷重の低い無段変速装置が得られる。
【0049】請求項2の発明によると、差動ギヤ機構に
おいて第1回転軸にギヤにより連結される第2ギヤ要素
の回転数が第1ギヤ要素の回転数よりも常に高くなるよ
うにしたので、変速プーリ機構を循環動力経路として、
高出力時であってもベルトの伝動負荷を小さくすること
ができる。
【0050】請求項3の発明によれば、逆に、差動ギヤ
機構の第1ギヤ要素の回転数が第2ギヤ要素の回転数よ
りも常に高くなるようにしたので、差動ギヤ機構を循環
動力の経路とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の無段変速装置の全体構成を示
す断面図である。
【図2】本発明の実施例における無段変速装置の変速比
をHi 〜Lo 状態に変えたときの軸荷重の変化を示した
特性図である。
【図3】実際の使用範囲を示す図2相当図である。
【図4】本発明の実施例の変速装置の伝動効率を示す特
性図である。
【図5】ベルト式変速装置における変速比をHi 〜Lo
状態に変えたときの軸荷重の変化を示した特性図であ
る。
【図6】従動ばね式のベルト変速装置における変速比を
Hi 〜Lo 状態に変えたときの軸荷重の変化を示した特
性を示した図である。
【図7】トルクカムを加えた従動ばね式のベルト変速装
置の図6相当図である。
【符号の説明】
A 無段変速装置 2 第1回転軸 3 第2回転軸 4 変速プーリ機構 5 第1変速プーリ 6 固定シーブ 7 可動シーブ 8 ベルト溝 9 第2変速プーリ 10 固定シーブ 11 可動シーブ 12 ベルト溝 15 第1カム機構(駆動機構) 17 円筒カム 19 ローラ 21 第2カム機構(駆動機構) 23 円筒カム 25 ローラ 29 リンク 31 変速切換機構 32 推力発生機構 B 伝動ベルト 41 遊星ギヤ機構(差動ギヤ機構) 42 サンギヤ(第1ギヤ要素) 44 ピニオンキャリア(第3ギヤ要素) 45 リングギヤ(第2ギヤ要素)
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年12月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 無段変速装置
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は無段変速装置に関し、
特に、変速プーリ機構と差動ギヤ機構とを組み合わせた
ものに関する。
【0002】
【従来の技術】ベルト式の無段変速装置は、互いに平行
に配置された1対の回転軸の各々に、該各回転軸に対し
て回転一体にかつ摺動不能に固定された固定シーブと、
回転軸に固定シーブとの間にV字状のベルト溝を形成す
るように対向配置されて回転一体にかつ摺動可能に支持
された可動シーブとからなる変速プーリを有するととと
もに、これら両変速プーリのベルト溝間に巻き掛けられ
たVベルトを有する変速プーリ機構からなり、可動シー
ブの軸方向の移動によってVベルトに対する有効半径を
可変とすることにより、両回転軸間の変速比を変えるよ
うにしたものである。
【0003】ところで、従来、特開昭62−11815
9号公報に記載されるように、上記変速プーリ機構を備
えるとともに、変速用のギヤ機構としての遊星ギヤ機構
(差動ギヤ機構)を設けることが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この変速プーリ機構及
び差動ギヤ機構を備えた無段変速装置において、差動ギ
ヤ機構を利用して出力軸を停止状態から回転させようと
すると、動力伝達経路が駆動動力と循環動力との2つに
分かれることが生じる。すなわち、閉路式差動ギヤ装置
では、差動ギヤ機構の3つのギヤ要素の1つを出力軸に
連結し、プーリ機構の変速比調整により差動ギヤ機構の
残りの1つのギヤ要素の回転数を変えることで、そのギ
ヤ要素と残りの他のギヤ要素との間の回転方向及び回転
速度を異ならせ、出力側ギヤ要素つまり出力軸の回転方
向及び回転数を決定するようになっている。ところが、
そのとき、動力として駆動動力及び循環動力が発生し、
出力動力は駆動動力から循環動力を減じたものとなる。
そして、入力軸から出力軸に至る2つの動力伝達経路の
うち、どちらが駆動動力経路又は循環動力経路になるか
は、差動ギヤ機構におけるギヤ要素の角速度で分かれ、
角速度の大きい方が駆動動力経路となる。
【0005】上記駆動動力及び循環動力の大きさは出力
トルクと差動ギヤ機構における各ギヤの回転数とで決ま
り、変速装置に入力される動力及び出力動力は駆動動力
から循環動力を引いたものとなる。条件の設定により、
例えば駆動動力が「15」で循環動力が「5」のとき
に、入力動力及び出力動力はいずれも「10(=15−
5)」となる(例1)。また、出力回転数を変化させる
と、駆動動力が「25」で循環動力が「15」のときで
も、入力動力及び出力動力は「10(=25−15)」
となり(例2)、入力動力よりも大きい動力が流れる。
【0006】上記変速プーリ機構におけるベルトの伝達
効率は0.9程度であり、差動ギヤ機構におけるギヤの
伝達効率は0.98程度であるので、実際には、上記の
例における出力動力は例1の場合、 15−5−{(15−15×0.98)+(5−5×0.9)}=9.2 であり、例2の場合には、 25−15−{(25−25×0.98)+(15−15×0.9)} =8.0 となる。これを、変速プーリ機構単体及び差動ギヤ機構
単体の伝達効率と比較すると、変速プーリ機構単体で
は、 10×0.9=9.0 となり、差動ギヤ機構単体では、 10×0.98=9.8 となるので、変速プーリ機構及び差動ギヤ機構を備えた
無段変速装置の伝達効率は変速プーリ機構単体の効率よ
りも下がるという問題がある。
【0007】この変速プーリ機構及び差動ギヤ機構を組
み合わせてなる無段変速装置の伝達効率を増大させるに
は、差動ギヤ機構及び変速プーリ機構における伝動要素
の伝達効率を高くする必要がある。伝動要素がギヤであ
る場合に関しては、ギヤの配列を変えてその噛合い個数
を減らすこと、潤滑オイルの循環方式やギヤ噛合状態を
変えること等の対処の仕方が挙げられるが、最大で2%
程度の増大しか期待できず、しかもギヤ配列の改良以外
はコスト高を招くという難がある。
【0008】これに対し、変速プーリ機構については、
ベルトの張力の与え方により効率が大きく変化する特性
がある。一般に、ベルトに適正な張力(負荷や変速比に
見合った張力)を与えた場合には、95%程度の伝動効
率が得られるが、この条件を忠実に再現するには図5に
示すような制御が必要となる。図5は、ベルト式変速装
置における変速比をHi 状態(変速比1:0.6)から
Mi 状態(同1:1)を経てLo 状態(同1:2)に変
えたときの軸荷重の変化を入力トルクの3〜7kgf ・m
毎に示したものである。
【0009】一方、図6は、従動側変速プーリの可動シ
ーブを固定シーブに接近する方向にばねで付勢する従動
ばね式のベルト変速装置における同特性を示したもの
で、この従動ばね式のものは、図5に示す特性と比べ線
制御になっていて軸荷重の幅がなく、つまり、ある一点
では伝動効率が高いが、その他の条件では効率が低い。
また、最大トルクの伝動時にスリップさせないようにす
るために、ばね力は、最大トルクを伝達できるだけの軸
荷重を発生させる大きさに設定する必要がある。
【0010】上記制御範囲を広げるために、従動ばね式
のベルト変速装置に対し、変速プーリの可動シーブと回
転軸とのトルク差に伴う相対回転により可動シーブを固
定シーブ側に移動させるトルクカムを加えると、図7に
示す制御範囲が得られる。この図7は、必要最大荷重の
1/2(50%)をばねで設定し、残り半分はトルクカ
ムで発生させたものである。トルクカム側の軸荷重分担
率を大きくすることで、制御範囲は大きくなるが、反
面、トルクカムでは、ベルトを挟みながら相対的なずれ
を発生させる必要があるので、上記軸荷重の分担率を大
きく変えると、ベルトの側面の摩擦係数とトルクカムと
の相関性が高いことから、トルクカムが軸荷重(推力)
を発生させる前にベルトのスリップ生じるようにな
り、所期の目的を達成できなくなる虞れがある。
【0011】各変速プーリにおける可動シーブに駆動の
ための油圧シリンダを連結し、このシリンダの伸縮作動
により変速比や負荷の変化に応じて軸荷重を制御するこ
とで、上記高い伝達効率を達成することができる。しか
し、その場合、油圧発生のためのポンプや制御用のコン
ピュータ、トルクや位置検出用のセンサ類が必要で、コ
ストアップするのは避けられず、農業機械や一般産業用
としては実現性が乏しい。
【0012】本発明は以上の諸点に鑑みてなされたもの
で、その目的は、変速プーリ機構及び差動ギヤ機構を組
み合わせてなる無段変速装置に対し、安価な構造で、変
速プーリ機構における軸荷重の制御範囲を拡大する手段
を講じることで、伝達効率が高く、低コストで省スペー
スの無段変速装置を実現しようとすることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1の発明では、各変速プーリにおける可動
シーブをそれぞれ相対する固定シーブの接離が互いに逆
になるように移動させる駆動機構を設ける。この駆動機
構は、各プーリにおいて可動シーブを固定シーブに対し
て位置決めするだけの役割を持つものとし、ベルト推力
を得るために、両プーリ間に巻き掛けられる伝動ベルト
の緩み側を張力よりも大きい張力で押圧するようにす
る。
【0014】具体的には、この発明では、互いに平行に
配置された第1及び第2回転軸と、この両回転軸を変速
可能に駆動連結する変速プーリ機構と、互いに連結され
た第1〜第3ギヤ要素を有する差動ギヤ機構とを備え
る。
【0015】上記変速プーリ機構は、各々、上記回転軸
に固定シーブ及び可動シーブが互いに逆向きになるよう
に配置支持された1対の変速プーリと、該両変速プーリ
間に巻き掛けられたベルトと、上記各変速プーリの可動
シーブ背面側に配設され、該可動シーブを相対向する固
定シーブに対し接離させて変速プーリのプーリ径を変化
させる1対の駆動機構と、上記両変速プーリのプーリ径
が互いに逆方向に変化するように上記両駆動機構を連動
させて両プーリ間の変速比を変化させる変速切換機構
と、上記両変速プーリ間に巻き掛けられるベルトの緩み
側スパンを、該緩み側スパンにプーリ間の変速比に対応
して発生する張力よりも大きい張力となるように押圧し
てベルト推力を発生させる推力発生機構とを備える。
【0016】一方、上記差動ギヤ機構は、互いに連結さ
れた第1〜第3ギヤ要素のうち、第1ギヤ要素が上記第
1回転軸に連結される一方、第2ギヤ要素が上記第2回
転軸に連結されている構成とする。
【0017】そして、上記第1回転軸又は差動ギヤ機構
の第3ギヤ要素の一方を変速装置の入力部とする一方、
他方を出力部としていて、上記変速切換機構による切換
操作により出力部を入力部に対し正転状態、ニュートラ
ル又は逆転状態に切り換えて変速するように構成する
【0018】請求項2の発明では、請求項1の無段変速
装置において、差動ギヤ機構の第2ギヤ要素の回転数が
第1ギヤ要素の回転数よりも常に高くなるように構成す
る。
【0019】請求項3の発明では、請求項2の発明とは
逆に、差動ギヤ機構の第1ギヤ要素の回転数が第2ギヤ
要素の回転数よりも常に高くなるように構成する。
【0020】
【作用】上記の構成により、請求項1の発明では、第1
及び第2回転軸間には変速プーリ機構及び作動ギヤ機構
が並列に配置されているので、入力される動力は変速プ
ーリ機構及び作動ギヤ機構の一方を駆動動力経路とし、
他方を循環動力経路として伝達された後、出力される。
上記変速プーリ機構においては、各変速プーリの駆動機
構が変速切換機構により連係されているため、一方の変
速プーリの駆動機構を作動させて該プーリの可動シーブ
を軸方向に移動させると、それに伴って他方の変速プー
リの可動シーブが上記一方の変速プーリにおける可動シ
ーブの固定シーブに対する接離動作とは逆の動作でもっ
て移動し、この両可動シーブの逆方向の移動によって両
プーリ間の変速比が切換変更される。両変速プーリ間に
巻き掛けられる伝動ベルトは、その緩み側スパンが推力
発生機構により押圧されて張力が付与される。この推力
発生機構によるベルト張力は、その変速比でのベルトの
緩み側スパンに発生する張力よりも大きい張力であるの
で、ベルトのプーリに対するくさび効果が生じてベルト
推力が発生し、回転軸間で動力が伝達される。すなわ
ち、推力発生機構によりベルトの緩み側スパンの張力が
一定となるので、伝動負荷の大きさが変化すると、張り
側スパンの張力だけが変化することとなる。そして、こ
の張り側張力と緩み側張力とを加えたものが軸荷重であ
るので、伝動負荷が大きく変化すれば、軸荷重も大きく
なる。
【0021】このとき、無負荷に近い状態では、張り側
張力と緩み側張力とが略等しいので、軸荷重は緩み側張
力の略2倍となり、初期の緩み側張力が低いほど無負荷
時の軸荷重を低くすることができる。理想的には、無負
荷伝動状態では、軸荷重が0に近い方がよく、また、理
論上は緩み側張力が0の状態で負荷を伝動できると、最
大の伝動効率が得られる。しかし、実際には、摩擦伝動
では緩み側張力が0の状態で伝動することはできず、緩
み側張力が低いほど伝動効率が増大することとなる。こ
の発明では、上記各変速プーリの駆動機構を変速切換機
構により連係させる構造であるので、緩み側張力を低く
することができる。よって、変速プーリ機構及び差動ギ
ヤ機構を組み合わせてなる無段変速装置に対し、油圧シ
リンダ等を用いることなく簡単で安価な構造で伝動効率
を増大させることができる。
【0022】請求項2の発明では、差動ギヤ機構におい
て第1回転軸にギヤを介して連結されている第2ギヤ要
素の回転数が第1ギヤ要素の回転数よりも常に高くなる
ように設定されているので、差動ギヤ機構を駆動動力の
経路とし、変速プーリ機構を循環動力経路とすることが
できる。その結果、変速プーリ機構のベルトに駆動動力
よりも小さい循環動力を伝達させることができ、高出力
時であってもベルトの伝動負荷を小さくすることができ
る。
【0023】請求項3の発明では、差動ギヤ機構の第1
ギヤ要素の回転数が第2ギヤ要素の回転数よりも常に高
くなるように設定されているので、差動ギヤ機構を循環
動力の経路とし、変速プーリ機構を駆動動力経路とする
ことができる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図1は本発明の実施例に係る無段変速装置Aの全
体構成を示す。図1において、1は複数に分割されたケ
ーシングで、その内部には互いに平行に配置された第1
及び第2回転軸2,3が回転可能に支承されている。第
1回転軸2は入力軸を、また第2回転軸3は中間軸をそ
れぞれ構成しており、第2回転軸3の左半部は円筒状と
されている。
【0025】また、ケーシング1内には、上記両回転軸
2,3をVベルトBによって変速可能に駆動連結する変
速プーリ機構4と、第2回転軸3の右端部上に配置され
た差動ギヤ機構としての遊星ギヤ機構41とが収容され
ている。上記変速プーリ機構4は、第1回転軸2の左端
部上に配置された第1変速プーリ5を有する。この第1
変速プーリ5は、第1回転軸2に回転一体にかつ摺動不
能に固定されたフランジ状の固定シーブ6と、該固定シ
ーブ6に対向するように第1回転軸2にボス部7aにて
摺動可能にかつ相対回転可能に結合されたフランジ状の
可動シーブ7とからなり、これら両シーブ6,7間には
ベルト溝8が形成されている。
【0026】一方、第2回転軸3の左半部(円筒部分)
上には第2変速プーリ9が設けられている。この第2変
速プーリ9は、上記第1変速プーリ5と同様の構成であ
り、第2回転軸3に回転一体にかつ摺動不能に固定され
たフランジ状の固定シーブ10と、該固定シーブ10に
上記第1回転軸2上の第1変速プーリ5における固定シ
ーブ6に対する可動シーブ7の対向方向と逆方向でもっ
て対向するようにボス部11aにて摺動可能にかつ相対
回転可能に結合されたフランジ状の可動シーブ11とか
らなり、これら両シーブ10,11間にはベルト溝12
が形成されている。そして、上記第1変速プーリ5のベ
ルト溝8と第2変速プーリ9のベルト溝12との間には
VベルトBが巻き掛けられており、両変速プーリ5,9
の各可動シーブ7,11をそれぞれ固定シーブ6,10
に対して接離させて各プーリ5,9のプーリ径(Vベル
トBに対する有効半径)を変更する。例えば第1変速プ
ーリ5の可動シーブ7を固定シーブ6に接近させ、かつ
第2変速プーリ9の可動シーブ11を固定シーブ10か
ら離隔させたときには、第1変速プーリ5のプーリ径を
第2変速プーリ9よりも大きくすることにより、第1回
転軸2の回転を第2回転軸3に増速して伝達する。一
方、逆に、第1変速プーリ5の可動シーブ7を固定シー
ブ6から離隔させ、かつ第2変速プーリ9の可動シーブ
11を固定シーブ10に接近させたときには、第1変速
プーリ5のプーリ径を小にし、第2変速プーリ9のプー
リ径を大きくすることにより、第1回転軸2の回転を減
速して第2回転軸3に伝えるようになされている。
【0027】尚、上記第1変速プーリ5の可動シーブ7
のボス部7aと第1回転軸2との間及び第2変速プーリ
9の可動シーブ11のボス部11aと第2回転軸3との
間にはそれぞれトルクカム13,14が配設されてお
り、このトルクカム13,14により動力伝達時に可動
シーブ,11を固定シーブ6,10に接近させるよう
になっている。
【0028】上記第1回転軸2上には第1変速プーリ5
における可動シーブ7背面側に、該可動シーブ7を固定
シーブ6に対して接離させるための駆動機構としての第
1カム機構15が設けられている。このカム機構15
は、可動シーブ7のボス部7a上にベアリング16を介
して相対回転可能にかつ軸方向に移動一体に外嵌合支持
された円筒カム17を有する。このカム17の第1変速
プーリ5と反対側端面には1対の傾斜カム面17a,1
7a(1つのみ図示する)が円周方向に等角度間隔(1
80°間隔)をあけて形成され、外周には図の紙面と直
交する方向に延びる回動レバー18が回動一体に突設さ
れている。
【0029】また、上記円筒カム17の背面側には、そ
の各カム面17aに当接して転動するカムフォロワとし
てのピン状のローラ19が配設され、このローラ19は
ケーシング1にベアリング20を介して回転可能に支持
されている。
【0030】一方、第2回転軸3上には、第2変速プー
リ9における可動シーブ11の背面側に、該可動シーブ
11を固定シーブ10に対して接離させるための駆動機
構としての第2カム機構21が設けられている。この第
2カム機構21は、上記第1カム機構15と同様の構成
で、可動シーブ11のボス部11a上にベアリング22
を介して相対回転可能にかつ軸方向に移動一体に外嵌合
支持された円筒カム23を有する。このカム23の第2
変速プーリ9と反対側端面には1対の傾斜カム面23
a,23a(1つのみ図示する)が円周方向に等角度間
隔をあけて形成され、外周には図の紙面と直交する方向
に延びる回動レバー24が回動一体に突設されている。
また、円筒カム23の背面側には、その各カム面23a
に当接して転動するローラ25が配設され、このローラ
25はケーシング1にピン27を介して回転可能に支持
されている。
【0031】そして、上記第1カム機構15の回動レバ
ー18先端にはピン28を介して折曲り棒状のリンク2
9の一端が連結され、このリンク29の他端は上記第2
カム機構21の回動レバー24先端にピン30を介して
連結されている。そして、上記リンク29及びピン2
8,30により変速切換機構31が構成されており、こ
の変速切換機構31により、図外の操作レバーの切換操
作に応じて、各カム機構15,21におけるカム17,
23を互いに連係して可動シーブ7,11のボス部7
a,11a周りに回動させ、そのカム面17a,23a
上でローラ19,25を転動させることにより、可動シ
ーブ7,11を軸方向に移動させて固定シーブ6,10
に対し互いに相反して接離させ、そのベルト溝8,12
の有効半径つまりプーリ5,9のプーリ径を可変とし、
第1及び第2回転軸2,3間の変速比を変化させるよう
にしている。
【0032】また、上記第1及び第2変速プーリ5,9
間には、両プーリ5,9間に張られたベルトBの1対の
スパンのうち第1変速プーリ5の駆動力が第2変速プー
リ9に伝達されるときの緩み側スパンをその背面から押
圧してベルトBに張力を与えることでベルト推力を発生
する推力発生機構32が配設されている。この推力発生
機構32は、ケーシング1にボス部33aにて揺動可能
に支持されたアーム33と、該アーム33の先端部に軸
34により回転可能に支承されたローラ35とを備えて
いる。上記アーム33の先端部とケーシング1との間に
は、アーム33をローラ35がベルトBの緩み側スパン
背面を押圧するように回動付勢するばね(図示せず)が
架設されている。そして、上記ローラ35がベルトBの
緩み側スパンを、該緩み側スパンに発生する最大張力よ
りも大きい張力で押圧するように、上記ばねの付勢力が
設定されており、この張力によりベルト推力を発生させ
るようにしている。
【0033】第2回転軸3上に配置された遊星ギヤ機構
41は、第2回転軸3に回転一体に固定された第1ギヤ
要素としてのサンギヤ42と、該サンギヤ42に噛合す
る複数のピニオン43,43,…と、第2回転軸3に回
転可能に支承され、上記ピニオン43,43,…を担持
する第3ギヤ要素としてのピニオンキャリア44と、最
も外周に配置され、上記ピニオン43,43,…に内周
で噛合する第2ギヤ要素としてのリングギヤ45とを備
えている。上記リングギヤ45は外周にて、第1回転軸
2の右端に回転一体に取り付けたギヤ47に噛合されて
いる。また、ピニオンキャリア44には出力ギヤ46が
一体に固定され、この出力ギヤ46は図外の正逆転機構
を介して出力回転軸に駆動連結されている。
【0034】そして、上記遊星ギヤ機構41のギヤ比及
び変速プーリ機構4の変速比の設定により、遊星ギヤ機
構41のリングギヤ45の回転数がサンギヤ42の回転
数よりも常に高くなるようになっている。
【0035】次に、上記実施例の作用について説明す
る。変速装置Aの第1及び第2回転軸2,3間には変速
プーリ機構4及び遊星ギヤ機構41が並列に配置されて
いるので、変速装置Aの作動時、第1回転軸2から入力
された動力は、変速プーリ機構4と第1回転軸2上のギ
ヤ47及び遊星ギヤ機構41とに伝達された後、該遊星
ギヤ機構41におけるピニオンキャリア44の出力ギヤ
46から出力動力として出力される。具体的には、上記
遊星ギヤ機構41のギヤ比及び変速プーリ機構4の変速
比は、遊星ギヤ機構41のリングギヤ45の回転数がサ
ンギヤ42の回転数よりも常に高くなるように設定され
ているので、入力動力はギヤ47及び遊星ギヤ機構41
のリングギヤ45を経由してそのピニオンキャリア44
に至る経路を駆動動力経路とし、変速プーリ機構4から
遊星ギヤ機構41のサンギヤ42に至る経路を循環動力
経路として伝達される。
【0036】このようにギヤ47及び遊星ギヤ機構41
が駆動動力の経路となり、変速プーリ機構4が循環動力
経路となるので、変速プーリ機構4のベルトBに駆動動
力よりも小さい循環動力を伝達させることができ、高出
力時であってもベルトBの伝動負荷を小さくすることが
できる。
【0037】上記変速プーリ機構4においては、推力発
生機構32のばねの付勢力によりアーム33が回動付勢
され、その先端のローラ35がベルトBの緩み側スパン
背面を押圧し、この押圧によりベルトBに張力が付与さ
れる。この張力は緩み側スパンに発生する最大張力より
も大きいため、このベルト張力によりベルトBのプーリ
5,9に対するくさび効果が生じて推力が発生し、この
推力により両プーリ5,9間でベルトBを介して動力が
伝達される。
【0038】そして、各変速プーリ5,9のカム機構1
5,21における回動レバー18,24同士が変速切換
機構31のリンク29により連係されているため、操作
レバーの操作により上記変速プーリ機構4の変速比を変
えることで、遊星ギヤ機構41のピニオンキャリア44
つまり変速装置Aの出力回転速度を停止状態(回転数
0)から増大変化させることができる。すなわち、停止
状態とするときには、操作レバーを停止位置に位置付け
る。この操作レバーは第1カム機構15におけるカム1
7外周の回動レバー18に連結されているので、上記停
止位置への切換状態では、上記カム17がそのカム17
a面上で各カム用ローラ19を転動させながら第1変速
プーリ5における可動シーブ7のボス部7a周りに一方
向に回動する。これにより、上記カム面17aがローラ
19に押されてカム17が第1回転軸2上を移動し、該
カム17にベアリング16を介して移動一体の可動シー
ブ7が同方向に移動して固定シーブ6に接近する。この
ことにより第1変速プーリ5が閉じてそのプーリ径が増
大し、このプーリ径の増大によりVベルトBが第1変速
プーリ5側に引き寄せられる。
【0039】また、これと同時に、上記操作レバーの停
止位置への切換えに伴い、上記第1変速プーリ5の可動
シーブ7の動きに同期して、第2カム機構21のカム2
3が第2回転軸3上を上記第1カム機構15のカム17
と同じ一方向に回動する。このカム23の回動によりカ
ム用ローラ25に対する押圧がなくなる。このため、上
記第1変速プーリ5側に移動するベルトBの張力によ
り、カム23及びそれにベアリング22を介して連結さ
れている可動シーブ11は固定シーブ10から離れる方
向に第2回転軸3上を移動し、この両シーブ10,11
の離隔により第2変速プーリ9が開いてプーリ径が減少
する。これらの結果、第1変速プーリ5のプーリ径が第
2変速プーリ9よりも大きくなり、第1回転軸2の回転
が増速されて第2回転軸3に伝達され、停止状態とな
る。
【0040】また、この停止状態から、操作レバーを高
速位置に向けて操作すると、この操作レバーの切換操作
に伴い、上記第2カム機構21のカム23がそのカム面
23a上でカム用ローラ25を転動させながら第2変速
プーリ9における可動シーブ11のボス部11a周りに
他方向に回動する。このカム23の回動によりカム面2
3aがカム用ローラ25に押されて第2回転軸3上を移
動し、可動シーブ11も同方向に移動して固定シーブ1
0に接近し、このことにより第2変速プーリ9が閉じて
プーリ径が増大する。このプーリ径の増大によりVベル
トBが第2変速プーリ9側に引き寄せられる。
【0041】また、上記可動シーブ11の動きに同期し
て、第1カム機構15のカム17が第1回転軸2上を上
記カム23と同じ他方向に回動し、このカム17の回動
によりカム用ローラ19に対する押圧がなくなり、ベル
トBの張力により第2変速プーリ5の可動シーブ7がカ
ム17と共に固定シーブ6から離れる方向に第1回転軸
2上を移動する。この両シーブ6,7の離隔により第1
変速プーリ5が開いてそのプーリ径が減少する。その結
果、第1変速プーリ5のプーリ径が第2変速プーリ9よ
りも小さくなり、第1回転軸2の回転が減速されて第2
回転軸3に伝達され、このことで出力回転数を上昇させ
ることができる。
【0042】そのとき、上記推力発生機構32の押圧に
よりベルトBの緩み側スパンの張力が一定であるので、
伝動負荷の大きさが変化すると、張り側スパンの張力だ
けが変化することとなる。この張り側張力と緩み側張力
とを加えたものが軸荷重であるので、伝動負荷が大きく
変化すれば、軸荷重も大きくなる。そして、無負荷に近
い状態では、張り側張力と緩み側張力とが略等しいの
で、軸荷重は緩み側張力の略2倍となり、初期の緩み側
張力が低いほど無負荷時の軸荷重を低くすることができ
る。理想的には、無負荷伝動状態では、軸荷重が0に近
い方がよく、また、理論上は緩み側張力が0の状態で負
荷を伝動できると、最大の伝動効率が得られる。この実
施例では、上記各変速プーリ5,9の可動シーブ7,1
1をカム機構15,21及び変速切換機構31により連
係させる構造であるので、ベルトBの緩み側スパンの緩
み側張力を低くすることができ、その結果、図2に示す
ように軸荷重の制御範囲を拡大することができる(図2
は本実施例における変速プーリ機構4の軸荷重変化を例
示したものである)。よって変速プーリ機構4及び遊星
ギヤ機構41を組み合わせてなる無段変速装置Aに対
し、油圧シリンダ等を用いることなく簡単で安価な構造
で伝動効率を増大させることができる。
【0043】本発明の効果をより明確にするために、本
発明者が行った具体例について説明する。図5に示す軸
荷重特性から、最大負荷時は、トルクが7kgf ・m が入
力されるLo 状態のときで314kgf であり、このLo
状態での駆動側変速プーリのベルトピッチ径は57.0
mm、従動側変速プーリのベルトピッチ径は107.47
mmであった。このベルトピッチ径からベルトの伝達張力
は、 7kg・m ÷0.0285m =245.6kgf であり、緩み側張力は、 (314−245.6)/2=34.2kgf である。従って、張り側張力は、 245.6+34.2=279.8kgf となり、軸荷重は、 279.8+34.2=314kgf となる。以上の計算により、緩み側張力として34.2
kgf の張力を与えてやれば、最大負荷7kgf ・m を伝達
できることとなる。この状態で無負荷状態にすると、軸
荷重は、 34.2×2=68.4kgf となり、2軸制御よりも低くなって図2に示す制御範囲
が得られる。
【0044】また、実用上は最大負荷時に大きなスリッ
プを起こさないかぎり、緩み側張力を使用頻度の高い常
用負荷に設定するので、この実際の制御範囲は図3に示
す範囲で使用可能となる。
【0045】すなわち、以上のことを2軸制御で行う
と、張り側及び緩み側スパンがプーリにより共に張力を
発生させられているので、張り側スパンが設定以上の張
力になると、プーリが開くと同時に、緩み側張力も低下
し、このことから最大負荷時にスリップを発生する。こ
れに対し、上記実施例のように3軸制御では、張り側ス
パンの負荷張力が設定値以上になっても、緩み側張力が
低下することはなく、よって最大負荷時のスリップの発
生がない。
【0046】図4は無段変速装置の変速プーリ機構とし
て3軸タイプを使用した本発明例の伝動効率を示してお
り、一般の変速プーリ機構を使用した従来例に比べ、高
い伝達効率が得られることが判る。
【0047】尚、例えば上記第1回転軸2上のギヤ47
と遊星ギヤ機構41のリングギヤ45とのギヤ比を変え
ることで、遊星ギヤ機構41のサンギヤ42の回転数が
リングギヤ45の回転数よりも常に高くなるように設定
してもよく、その場合には、遊星ギヤ機構41を循環動
力の経路とし、変速プーリ機構4を駆動動力経路とする
ことができる。
【0048】また、上記実施例では、遊星ギヤ機構41
のリングギヤ45を第1回転軸2上のギヤ47に噛合さ
せているが、ピニオンキャリア44を同ギヤ47に噛合
させて、リングギヤ45を出力ギヤとしてもよい。さら
には、遊星ギヤ機構41のピニオンキャリア44を動力
の入力部とし、第1回転軸2を出力部とすることも可能
である。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に
よると、第1及び第2回転軸の間に変速プーリ機構及び
差動ギヤ機構を組み合わせてなる無段変速装置に対し、
変速プーリ機構における各変速プーリの可動シーブ背面
側に、可動シーブを相対向する固定シーブに対し両変速
プーリ間で互いに逆向きに接離させて変速プーリのプー
リ径を変化させる1対の駆動機構を配設し、両変速プー
リのプーリ径が互いに逆方向に変化するように両駆動機
構を連動させて両回転軸間の変速比を可変とする変速切
換機構を設け、両変速プーリ間に、両変速プーリ間に巻
き掛けられるベルトの緩み側スパンを、緩み側スパンに
回転軸間の変速比に対応して発生する張力よりも大きい
張力となるように押圧してベルト推力を発生させる推力
発生機構を配置したので、変速プーリ機構のベルトの緩
み側張力を小さくすることができ、伝達効率が高く、低
コストで操作荷重の低い無段変速装置が得られる。
【0050】請求項2の発明によると、差動ギヤ機構に
おいて第1回転軸にギヤにより連結される第2ギヤ要素
の回転数が第1ギヤ要素の回転数よりも常に高くなるよ
うにしたので、変速プーリ機構を循環動力経路として、
高出力時であってもベルトの伝動負荷を小さくすること
ができる。
【0051】請求項3の発明によれば、逆に、差動ギヤ
機構の第1ギヤ要素の回転数が第2ギヤ要素の回転数よ
りも常に高くなるようにしたので、差動ギヤ機構を循環
動力の経路とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の無段変速装置の全体構成を示
す断面図である。
【図2】本発明の実施例における無段変速装置の変速比
をHi 〜Lo 状態に変えたときの軸荷重の変化を示した
特性図である。
【図3】実際の使用範囲を示す図2相当図である。
【図4】本発明の実施例の変速装置の伝動効率を示す特
性図である。
【図5】ベルト式変速装置における変速比をHi 〜Lo
状態に変えたときの軸荷重の変化を示した特性図であ
る。
【図6】従動ばね式のベルト変速装置における変速比を
Hi 〜Lo 状態に変えたときの軸荷重の変化を示した特
性を示した図である。
【図7】トルクカムを加えた従動ばね式のベルト変速装
置の図6相当図である。
【符号の説明】 A 無段変速装置 2 第1回転軸 3 第2回転軸 4 変速プーリ機構 5 第1変速プーリ 6 固定シーブ 7 可動シーブ 8 ベルト溝 9 第2変速プーリ 10 固定シーブ 11 可動シーブ 12 ベルト溝 15 第1カム機構(駆動機構) 17 円筒カム 19 ローラ 21 第2カム機構(駆動機構) 23 円筒カム 25 ローラ 29 リンク 31 変速切換機構 32 推力発生機構 B 伝動ベルト 41 遊星ギヤ機構(差動ギヤ機構) 42 サンギヤ(第1ギヤ要素) 44 ピニオンキャリア(第3ギヤ要素) 45 リングギヤ(第2ギヤ要素)
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに平行に配置された第1及び第2回
    転軸と、 上記両回転軸をベルトによって変速可能に駆動連結する
    変速プーリ機構と、 上記第2回転軸上に配設された差動ギヤ機構とを備え、 上記変速プーリ機構は、各々、回転軸に回転一体にかつ
    摺動不能に固定された固定シーブと、回転軸に固定シー
    ブに対する向きが互いに逆になるように軸方向に摺動可
    能に支持された可動シーブとからなる変速プーリと、該
    両変速プーリ間に巻き掛けられたベルトと、上記各変速
    プーリの可動シーブ背面側に配設され、該可動シーブを
    相対向する固定シーブに対し両変速プーリ間で互いに逆
    向きに接離させて変速プーリのプーリ径を変化させる1
    対の駆動機構と、上記両変速プーリのプーリ径が互いに
    逆方向に変化するように上記両駆動機構を連動させて両
    回転軸間の変速比を可変とする変速切換機構と、上記両
    変速プーリ間に配置され、両変速プーリ間に巻き掛けら
    れるベルトの緩み側スパンを、該緩み側スパンに回転軸
    間の変速比に対応して発生する張力よりも大きい張力と
    なるように押圧してベルト推力を発生させる推力発生機
    構とを備える一方、 上記差動ギヤ機構は、第2回転軸に回転一体に連結され
    た第1ギヤ要素と、第1回転軸に回転一体に取り付けた
    ギヤに噛合された第2ギヤ要素と、第3ギヤ要素とを有
    していることを特徴とする無段変速装置。
  2. 【請求項2】 請求項1の無段変速装置において、 差動ギヤ機構の第2ギヤ要素の回転数が第1ギヤ要素の
    回転数よりも常に高くなるように構成されていることを
    特徴とする無段変速装置。
  3. 【請求項3】 請求項1の無段変速装置において、 差動ギヤ機構の第1ギヤ要素の回転数が第2ギヤ要素の
    回転数よりも常に高くなるように構成されていることを
    特徴とする無段変速装置。
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