JPH05277660A - 双ロールによるクラッド鋼板の連続鋳造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 双ロールにより連続的にクラッド鋼板を製造
する鋳造方法にて、湯溜り部の上下層溶融金属の混合を
防止した連続鋳造方法を提供する。 【構成】 双ロール１の両端面に設けたサイド堰２の両
端面外側に磁極６ａを配置して湯溜り部３内に静磁場帯
７による境界層を形成し、境界層の上層に外層凝固シェ
ル８ａを形成させる溶融金属と、下層に内層凝固シェル
８ｂを形成させる溶融金属を注入し、内外層の凝固シェ
ルをロールキス１０点またはその前後にて一体に複合さ
せてクラッド鋼板を製造する。 【効果】 湯溜り部上下層の溶融金属の混合を防止で
き、従って密度が異なる材料を使用したクラッド鋼板の
製造にも適用でき、また外層と内層の境界が極めて明瞭
なクラッド鋼板が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、薄板鋳片を製造する双
ロール式連続鋳造により、異種の溶融金属を複合させて
連続的にクラッド鋼板を製造する鋳造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来クラッド鋼板を製造する技術として
は、圧延法または爆着法による方法が知られている。こ
れら技術は、それぞれ個別に製造された板材を圧延また
は爆発力により密着させる方法である。

【０００３】しかしながら上記の方法は、複合される板
材をそれぞれ個別に圧延し製造する必要があり、また複
合させるにも手数が掛かる上にコスト高となり、現在で
はあまり適用されていない。

【０００４】上記課題を解消する方法として、従来方形
の冷却鋳型を用いた複合金属材の連続鋳造方法が用いら
れている。しかしながらこの方法は、鋳片厚さが１００
ｍｍ以上の極厚スラブを対象とする技術であり、これを
実用的なクラッド鋼板とするには、さらに熱間圧延，冷
間圧延等の工程を経由する必要があり、多くの工程を経
るうえになおコスト高の問題はなお解消されない。

【０００５】これに代わる技術として、最近では双ロー
ル式連続鋳造により直接所定板厚の複層金属材すなわち
クラッド鋼板を製造する技術が考えられている。

【０００６】図７は双ロールによるクラッド鋼板の連続
鋳造方法の比較例を示す図面であり、この技術は、２個
のロール４１とロールの両側面に設けたサイド堰に４２
よって形成される湯溜り部４３に長さの異なる２本の注
入ノズル４４ａ，４４ｂを浸漬し、該注入ノズルにそれ
ぞれ異種の溶融金属を注入して湯溜り部４３に上下２層
の溶融金属層４３ａ，４３ｂを形成させる。

【０００７】次いでロール４１に接する上層の溶融金属
により外層凝固シェル４５ａを形成させ、引き続き下層
の溶融金属により内層凝固シェル４５ｂを形成させ、該
内外層の凝固シェル４５ａ，４５ｂをロールキス点４６
にて一体に複合させてクラッド鋼板４７を製造する双ロ
ールによるクラッド鋼板の連続鋳造方法である。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】ところでこの技術は、
湯溜り部４３の中に異種の溶融金属が共存し、２種の溶
融金属が混合する恐れがある。従ってこの混合を避ける
には、上層の溶融金属層４３ａすなわち外層凝固シェル
４５ａを形成する溶融金属は、内層凝固シェル４５ｂを
形成する下層の溶融金属よりも密度の小さい金属とする
必要がある。

【０００９】このために、内層よりも外層のほうが密度
の大きい材料を使用したクラッド鋼板，例えば内層を普
通軟鋼材とし、外層をステンレス材としたクラッド鋼板
の製造にこの方法を適用することはできない。

【００１０】本発明は上記課題に鑑みなされたもので、
双ロール式連続鋳造において、湯溜り部における上下層
溶融金属の混合を防止したクラッド鋼板の連続鋳造方法
を提供する。

【００１１】

【課題を解決するための手段】第１の本発明は、２個の
ロールとロールの両側面に設けたサイド堰によって形成
される湯溜り部に長さの異なる２本の注入ノズルを浸漬
し、該注入ノズルによりそれぞれ異種の溶融金属を注入
し、湯溜り部に上下２層の溶融金属層を形成させてクラ
ッド鋼板を製造する連続鋳造方法において、前記ロール
の両側面に磁極を配置して湯溜り部内に静磁場帯による
境界層を形成し、該境界層の上層に外層凝固シェルを形
成させる溶融金属と、下層に内層凝固シェルを形成させ
る溶融金属をそれぞれ注入し、該内外層の凝固シェルを
ロールキス点にて一体に複合させてクラッド鋼板を製造
することを特徴とする双ロールによるクラッド鋼板の連
続鋳造方法である。

【００１２】また第２の本発明は、２個のロールとロー
ルの両側面に設けたサイド堰によって形成される湯溜り
部に長さの異なる２本の注入ノズルを浸漬し、該注入ノ
ズルによりそれぞれ異種の溶融金属を注入し、湯溜り部
に上下２層の溶融金属層を形成させてクラッド鋼板を製
造する連続鋳造方法において、前記注入ノズルのうち下
層に溶融金属を注入する長い注入ノズルに水平に展張す
る隔離板を設けるとともに、さらにロールの両側面に磁
極を配置して前記隔離板と重複する位置に静磁場帯を形
成し、隔離板と静磁場帯による境界層の上層に外層凝固
シェルを形成させる溶融金属と、下層に内層凝固シェル
を形成させる溶融金属をそれぞれ注入し、該内外層の凝
固シェルをロールキス点にて一体に複合させてクラッド
鋼板を製造することを特徴とする双ロールによるクラッ
ド鋼板の連続鋳造方法である。

【００１３】

【作用】溶融金属内にその横断方向に静磁場帯を付与す
ることにより、静磁場帯が溶融金属の境界層を形成し、
静磁場帯の上下の溶融金属は流動制動力（電磁ブレー
キ）を受けて混合が抑制されることはよく知られてい
る。

【００１４】本発明は、ベッセマー法として知られてい
る双ロールによる薄板鋳片の連続鋳造方法において、２
個のロールとロールの両側面に設けたサイド堰に例えば
電磁石を配置し、該電磁石よって湯溜り部内を水平に横
断する静磁場帯による境界層を形成し、長さの異なる２
本の注入ノズルを境界層の上下に浸漬し、それぞれの注
入ノズルから異種の溶融金属を注入し、混合を防止しな
がら湯溜り部に上下２層の溶融金属層を形成するもので
ある。

【００１５】また２個のロールとロールの両側面に設け
たサイド堰によって形成される湯溜り部内に、浸漬する
注入ノズルのうち下層に溶融金属を注入する長い注入ノ
ズルに水平に展張する隔離板を設けるとともに、さらに
隔離板と重複する位置に例えば電磁石を配置して水平に
静磁場帯を形成し、隔離板と静磁場帯による境界層の上
下にそれぞれの注入ノズルから異種の溶融金属を注入
し、混合を防止しながら湯溜り部に上下２層の溶融金属
層を形成するものである。

【００１６】次いで境界層の上層の溶融金属層は、ロー
ルによって冷却されて外層凝固シェルを形成し、また下
層の溶融金属層は外層凝固シェルによって冷却されその
内側に内層凝固シェルを形成し、内外層凝固シェルはロ
ールキス点にて一体に複合されて複層鋳片となり、クラ
ッド鋼板が製造される。

【００１７】この場合隔離板は、あまり大きくすると折
角ロール表面に形成された外層凝固シェルを破り、溶融
金属が装置外に流出するブレークアウトとなる恐れがあ
る。従って形成される外層凝固シェルの厚みを勘案して
その大きさを定める必要がある。

【００１８】このように上下２層の溶融金属層間に静磁
場帯，さらには隔離板と静磁場帯により形成した境界層
によって、密度の異なる溶融金属を上下層に注入しても
両溶融金属が混合することはなく、また製造されたクラ
ッド鋼板は、溶融金属が混合することがないので、外層
と内層の境界が極めて明瞭な鋳片となり、優れたクラッ
ド鋼板が得られる。

【００１９】

【実施例】図１〜図３は、本発明を実施するに好適なク
ラッド鋼板を製造する双ロール式連続鋳造装置の第１の
実施例を示す図面であり、図１は側面図，図２は平面
図，図３は正面図である。

【００２０】本連続鋳造装置は、２個のロール１とロー
ルの両側面に設けたサイド堰２によって形成される湯溜
り部３に、長さの異なる２本の注入ノズル４ａ，４ｂを
浸漬して構成され、それぞれ両ノズルより異種の溶融金
属を注入して湯溜り部３に上下２層の溶融金属層３ａ，
３ｂを形成する。

【００２１】さらに本装置にはそれぞれのサイド堰２の
側面に電磁石６を配置し、湯溜り部３内を水平に横断す
る静磁場帯７による境界層を形成し、上記２本の注入ノ
ズルのうち上層に浸漬される短い注入ノズル４ａから注
入される溶融金属は溶融金属層３ａを形成し、下層に浸
漬される長い注入ノズル４ｂから注入される溶融金属は
溶融金属層３ｂを形成する。

【００２２】電磁石６は、サイド堰２の外側面にそれぞ
れコイル６ｂを巻着した異極性の磁極５ａを配設し、ロ
ール１を囲繞する高透磁率の継鉄６ｃにて結合して構成
される。

【００２３】この静磁場帯７の上下層に形成された溶融
金属層３ａ，３ｂの溶融金属は、静磁場帯７によって形
成される境界層によって流動制動力を受け、湯溜り部３
内にて上下に分離されて混合することはない。

【００２４】ここで上層の溶融金属層３ａを形成する溶
融金属は、ロール１によって冷却され、湯面と接する凝
固開始点８ａより凝固を開始して、外層凝固シェル９ａ
を形成しながら下方に誘導される。

【００２５】また下層の溶融金属層３ｂを形成する溶融
金属は、外層凝固シェル９ａによって冷却され、静磁場
帯７によって形成される境界層のレベルを凝固開始点８
ｂとして外層凝固シェル９ａの内側に内層凝固シェル９
ｂを形成する。

【００２６】ついでこの内外層の凝固シェル９ａ，９ｂ
は、ロールキス点１０にて一体に複合されて複層鋳片１
１となり、クラッド鋼板が製造される。

【００２７】図４〜図６は、第２の実施例を示す図面で
あり、図４は側面図，図５は平面図，図６は正面図であ
る。

【００２８】本連続鋳造装置は、２個のロール２１とロ
ールの両側面に設けたサイド堰２２によって形成される
湯溜り部２３に、長さの異なる２本の注入ノズル２４
ａ，２４ｂを浸漬して構成され、それぞれ両ノズルより
異種の溶融金属を注入して湯溜り部２３に上下２層の溶
融金属層２３ａ，２３ｂを形成する。

【００２９】さらに本装置には、２本の注入ノズル２４
ａ，２４ｂのうち、下層に浸漬させる長い注入ノズル２
４ｂ側に上下２層の溶融金属層２３ａ，２３ｂの境界を
形成する両溶融金属の隔離部位に水平に展張する隔離板
２５を設けるとともに、さらにサイド堰２２の側面に電
磁石２６を配置し、隔離板２５と重複する位置に静磁場
帯２７を形成し、隔離板２５と静磁場帯２７による境界
層の、上層に浸漬される短い注入ノズル２４ａから注入
される溶融金属は溶融金属層２３ａを形成し、下層に浸
漬される長い注入ノズル２４ｂから注入される溶融金属
は溶融金属層２３ｂを形成する。

【００３０】電磁石２６は、サイド堰２２の外側面にそ
れぞれコイル２６ｂを巻着した異極性の磁極２５ａを配
設し、ロール２１を囲繞する高透磁率の継鉄２６ｃにて
結合して構成される。

【００３１】この隔離板２５と静磁場帯２７により形成
される境界層上下の溶融金属層２３ａ，２３ｂの溶融金
属は、隔離板２５による分離作用と静磁場帯２７による
流動制動力を受け、湯溜り部２３内にてさらに完全に上
下に分離して混合することはない。

【００３２】ここで、溶融金属層２３ａを形成する溶融
金属は、ロール２１によって冷却され、湯面と接する凝
固開始点２８ａより凝固を開始して、外層凝固シェル２
９ａを形成しながら下方に誘導される。

【００３３】また溶融金属層２３ｂを形成した溶融金属
は、外層凝固シェル２９ａによって冷却され、湯溜り部
２３内の隔離板２５と静磁場帯２７により形成される境
界層レベルを凝固開始点２８ｂとして外層凝固シェル２
９ａの内側に内層凝固シェル２９ｂを形成する。

【００３４】前記隔離板２５は、２個のロール２１内に
形成された外層凝固シェル２９ａの中間に位置すること
になるので、あまり大きくすると、折角ロール表面に形
成された外層凝固シェル２９ａを破り、溶融金属が装置
外に流出するブレークアウトとなる。従って形成される
外層凝固シェル２９ａの厚みを勘案してその大きさを定
める必要がある。

【００３５】ついでこの内外層の凝固シェル２９ａ，２
９ｂは、ロールキス点３０にて一体に複合されて複層鋳
片３１となり、クラッド鋼板が製造される。

【００３６】上記実施例１，２では、磁極６ａ，２６ａ
を配置して静磁場帯７，２７を形成する手段として電磁
石６，２６を使用したが、電磁石に代わり永久磁石を使
用して静磁場帯を形成するようにしてもよい。

【００３７】このように湯溜り部内を水平に横断する静
磁場帯による境界層、または隔離板と静磁場帯による境
界層を形成することにより、上下層の溶融金属の混合を
防止することが可能となり、外層と内層の境界が極めて
明瞭な鋳片となり、優れたクラッド鋼板が得られる。

【００３８】またこのように静磁場帯，隔離板による境
界層を設けることにより、密度の異なる溶融金属を上下
層に注入しても両溶融金属が混合することはなく、例え
ば下層即ち内層よりも上層即ち外層のほうが密度の大き
い材料を使用したクラッド鋼板の製造が可能である。

【００３９】

【発明の効果】以上説明した如く本発明によれば、湯溜
り部に静磁場帯，または隔離板と静磁場帯による境界層
を設けることにより、湯溜り部上下層の溶融金属の混合
を防止することができ、従って内外層で密度が異なる材
料を使用したクラッド鋼板の製造にも適用できるととも
に、外層と内層の境界が極めて明瞭な鋳片となり、良質
のクラッド鋼板が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を実施するに好適なクラッド鋼板を製造
する双ロール式連続鋳造装置の第１の実施例を示す側面
図である。

【図２】図１の平面図である。

【図３】図１の正面図である。

【図４】本発明を実施するに好適なクラッド鋼板を製造
する双ロール式連続鋳造装置の第２の実施例を示す側面
図である。

【図５】図４の平面図である。

【図６】図４の正面図である。

【図７】双ロール式連続鋳造装置によるクラッド鋼板の
製造方法の比較例を示す図面である。

【符号の説明】

１，２１ 鋳造用のロール ２，２２ サイド堰 ３，２３ 湯溜り部 ３ａ，２３ａ 上層溶融金属層 ３ｂ，２３ｂ 下層溶融金属層 ４ａ，２４ａ 上層用の注入ノズル ４ｂ，２４ｂ 下層用の注入ノズル ２５ 隔離板 ６，２６ 電磁石 ６ａ，２６ａ 磁極 ６ｂ，２６ｂ コイル ６ｃ，２６ｃ 継鉄 ７，２７ 静磁場帯 ８ａ，２８ａ 外層の凝固開始点 ８ｂ，２８ｂ 内層の凝固開始点 ９ａ，２９ａ 外層凝固シェル ９ｂ，２９ｂ 内層凝固シェル １０，３０ ロールキス点 １１，３１ 複層鋳片

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ２個のロールとロールの両側面に設けた
   サイド堰によって形成される湯溜り部に長さの異なる２
   本の注入ノズルを浸漬し、該注入ノズルによりそれぞれ
   異種の溶融金属を注入し、湯溜り部に上下２層の溶融金
   属層を形成させてクラッド鋼板を製造する連続鋳造方法
   において、前記ロールの両側面に磁極を配置して湯溜り
   部内に静磁場帯による境界層を形成し、該境界層の上層
   に外層凝固シェルを形成させる溶融金属と、下層に内層
   凝固シェルを形成させる溶融金属をそれぞれ注入し、該
   内外層の凝固シェルをロールキス点にて一体に複合させ
   てクラッド鋼板を製造することを特徴とする双ロールに
   よるクラッド鋼板の連続鋳造方法。
2. 【請求項２】 ２個のロールとロールの両側面に設けた
   サイド堰によって形成される湯溜り部に長さの異なる２
   本の注入ノズルを浸漬し、該注入ノズルによりそれぞれ
   異種の溶融金属を注入し、湯溜り部に上下２層の溶融金
   属層を形成させてクラッド鋼板を製造する連続鋳造方法
   において、前記注入ノズルのうち下層に溶融金属を注入
   する長い注入ノズルに水平に展張する隔離板を設けると
   ともに、さらにロールの両側面に磁極を配置して前記隔
   離板と重複する位置に静磁場帯を形成し、隔離板と静磁
   場帯による境界層の上層に外層凝固シェルを形成させる
   溶融金属と、下層に内層凝固シェルを形成させる溶融金
   属をそれぞれ注入し、該内外層の凝固シェルをロールキ
   ス点にて一体に複合させてクラッド鋼板を製造すること
   を特徴とする双ロールによるクラッド鋼板の連続鋳造方
   法。