JPH0527322Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 この考案は車両用チヤイルドシート、特に幼児
の拘束性を向上した車両用チヤイルドシートに関
する。

《従来の技術》 車両用チヤイルドシートは、一般にシートバツ
ク前面に引き出された拘束用肩ベルトを有し、肩
ベルトの延長端部に連結された補助パツドをシー
トクツシヨンに固定して幼児の動きを規制保持
し、幼児の安全性を確保できるようになつてい
る。第７図はこのようなチヤイルドシートの一例
を示すものである。図において、シートバツクａ
に一対のスリツトｂが上下方向に複数設けられて
おり、このスリツトｂからリトラクター（不図
示）によつて捲き上げ自在に設けられた肩ベルト
ｃが前面に引き出されている。肩ベルトｃの先端
は、補助パツドｄに固定され、補助パツドｄの下
端部にはタングｅが設けられて、このタングｅを
シートクツシヨンｆに設けられたバツクルｇに固
定することにより幼児をシート本体ｈに拘束する
ようになつている。そして、肩ベルトｃによつて
幼児を確実に拘束できるように、シートバツクａ
に設けられたスリツトｂの上下位置を変えること
により幼児の肩とほぼ同じ高さ位置から肩ベルト
ｃを引き出してその幼児の体格に合わせている。

このようなチヤイルドシートは、走行時の振動
等によつても動かされることがないようにシート
ベルトによつて車両用シートに固定され、幼児の
安全性を図つている。

《考案が解決しようとする問題点》 しかしながら、このような従来のチヤイルドシ
ートでは、補助パツドｄ下端部のタングｅを係止
するバツクルｇの取付位置が標準体形の幼児の大
きさに合わせて決められているために、シートバ
ツクａと補助パツドｄとの間隔を任意に調整する
ことができなかつた。したがつて、第８図に示す
ように標準より小さな幼児ｉの場合には、シート
本体ｈと補助パツドｄとの間隔が広すぎて、シー
ト本体ｈ内の幼児ｉが前後方向に移動するなど不
安定な拘束状態になり、また逆に、第９図に示す
ように、標準より大きな幼児ｊの場合には、シー
トバツクａと補助パツドｄとの間隔が狭くきつく
なり、バツクルｇに対するタングｅの着脱操作が
しにくくなるばかりでなく、幼児ｊの腹部を圧迫
するなどの問題点があつた。

さらにバツクルｇは、シートクツシヨンｆの凹
段部ｋ内に直接固定されるために、補助パツドｄ
を着座幼児ｊに最適な高さ位置に設定できず、幼
児ｊの股間に補助パツドｄの取付基部が当たつた
りする問題点もあつた。

そこで、この考案の目的は、幼児の成長度合あ
るいは体格に応じてシート本体と補助パツドとの
間隔を調整可能にし、幼児をより安全に拘束する
ことができる車両用チヤイルドシートを提供する
ことにある。

《問題点を解決するための手段》 この目的を達成するために、車両用シートに載
置して使用されるチヤイルドシートであつて、車
両用シートに載置可能なフレームと、前記フレー
ムにそれぞれ設けられたシートバツクおよびシー
トクツシヨンと、一端部をリトラクターを介して
前記フレーム側に固定されて他端部を前記シート
バツクに設けられたスリツトを通して延長された
長さ調整可能な肩ベルトと、前記肩ベルトの延長
端側に固定されたタングと、一端側部を前記シー
トクツシヨンに設けられたスリツトに通して延長
し他端部を前記フレームの前記スリツトよりも後
部側に設けたアンカープレートの挿通孔を経て前
方に折り返され、２つのカムにより前記シートク
ツシヨンの後方に引つ張られたときに喰い込むよ
うに挟み込み係止した後前記シートクツシヨンの
前端部に臨ませた長さ調整可能な股ベルトと、前
記股ベルトの延長端部に固定されたバツクルとを
備え、前記股ベルトが通る前記スリツトは、前記
シートクツシヨンの前後方向に平行に穿設された
２つの穴と、該穴を連通するように穿設されたス
ライド溝とで構成し、前記スリツトの２つの穴に
股ベルトの延長部を選択的に挿入することにより
前記バツクルの前後方向の位置を調整するように
したことを特徴とする。

《作用》 シートクツシヨンに設けられたバツクルを長さ
調整可能な股ベルトとバツクルの位置を調整する
手段とを介して前後および上下方向に適宜調整す
ることにより、幼児に対する保持性が良好になつ
て、幼児をより一段と安全に拘束することができ
る。

《実施例》 以下、この考案の一実施例について図面を参照
して説明する。

第１図および第２図に示すように、このチヤイ
ルドシート１は、シートクツシヨン２とシートク
ツシヨン２の後部に下部がヒンジ結合されたシー
トバツク３とからなるシート本体と、これらが取
り付けられるフレーム４とを備えている。フレー
ム４は、パイプを側面形状がほぼＬ字状になるよ
うに枠状に折曲形成し、その両側部間を適宜にパ
イプ４ａ，４ｂ，４ｃで補強している。シートク
ツシヨン２は、フレーム４上にスライド機構５を
介して前後に摺動可能に取り付けられ、シートバ
ツク３はブラケツト６を介して揺動可能に取り付
けられている。したがつてスライド機構５により
シートクツシヨン２を前後調整すると、これに追
随してシートバツク３が傾動する。

シートバツク３には、縦方向に複数の一対のス
リツト８が形成され、このスリツト８から延長さ
れる肩ベルト９の一端部は、シートクツシヨン２
下面の緊急ロツク装置付きリトラクター１８に固
定され、延長された他端部には、先端部にタング
１１を有する補助パツド１０が固定されている。
タング１１は、肩ベルト９の他端部に直接固定し
てもよい。

スライド機構５は、第３図に示すようにフレー
ム４下部を扁平に潰した略直線部分４ｄの上部に
直接固定されるロアレール１４と、シートクツシ
ヨン２裏面にＬ字状の取付ブラケツト１５を介し
て固定され、ロアレール１４に摺動自在に取り付
けられたアツパーレール１６とを備えている。ア
ツパーレール１６は、その前部および後部を互い
に基板１７ａ，１７ｂにより連結されており、両
基板１７ａ，１７ｂはアツパーレール１６上部に
取付ブラケツト１５と共にボルト１３で固定され
る。

補助パツド１０の下端部に固設されたタング１
１は、シートクツシヨン２側に設けられたバツク
ル１２に差し込むことで係止される。タング１１
およびバツクル１２は、車両用シートのシートベ
ルトに用いられるものと同一構成となつており、
タング１１をバツクル１２の一端面に設けられた
ノブを押圧することでロツク解除される。また第
４図に示すようにバツクル１２は、その下端部に
一端部を結合した股ベルト１９を座面２ａに形成
したコ字形のスリツト２０の任意の穴に通すとと
もに、股ベルト１９の引き出す長さを適宜調整す
ることにより、前後および上下方向に位置調整可
能となつている。

この位置調整機構２１は、所定の長さを有する
股ベルト１９と、第５図に示すように股ベルト１
９を挿通支持させ、平行に２本穿設された穴２０
ａと穴２０ａの夫々一端側が互いに連通するよう
に穿設されたスライド溝２０ｂによりコ字形に形
成されたスリツト２０と、このスリツト２０から
シートクツシヨン２下部に挿通させる股ベルト１
９の他端部を摺動自在に係合して前方に折り返
し、少なくともスリツト２０より後方に装着され
たアンカープレート２２と、シートクツシヨン２
下部の前方に装着され、アンカープレート２２を
経て前方に引き出された股ベルト１９の他端部を
係止する長さ調整具２３とからなる。そして、股
ベルト１９の他端部は、この調整具２３より、シ
ートクツシヨン２の前端部にまで臨んでいる。

アンカープレート２２は、金属板により中央部
に股ベルト１９が挿通可能な大きさに穿設した長
方形状の貫通穴を有する先端部を若干上方へ折曲
させ、基端部をリトラクター１８とともに後部基
板１７ｂのほぼ中央部に取り付けられている。ま
た長さ調整具２３は前部基板１７ａのほぼ中央部
に取り付けられている。

長さ調整具２３は第６図に示すように、コ字形
のケース２４と、ケース２４の両側辺部間に上下
方向にピン２５により回動可能に軸支され、それ
ぞれが同じ形状および大きさに形成され、それぞ
れの対向辺に鋸歯２６ａを形成した２つのカム２
６と、カム２６とケース２４の一側辺部との間に
介装され、常にカム２６の鋸歯２６ａが互いに衝
接するように内側方向に付勢するねじりコイルば
ね２７とから構成されている。カム２６は、一端
側が偏狭に形成され、鋸歯２６ａが形成される円
弧面の半径が、一端側に向けてピン２５の中心か
ら次第に大きくなつている。

このような構成からなる長さ調整具２３は、カ
ム２６をコイルばね２７の付勢力によつて常に股
ベルト１９を上下方向から挟み込むように係止さ
せ、股ベルト１９を強く内側Ａ方向に引張る力が
働いた場合には、両カム２６の楔作用により上下
のカム２６の鋸歯２６ａが股ベルト１９に強くく
い込み、股ベルト１９がその位置に移動不可能に
固定される。また、上部のカム２６をばね圧に抗
して大人の指等でピン２５を支点にして上方に回
動させると長さ調整具２３のロツク状態は解除さ
れ、上下のカム２６の鋸歯２６ａの間隔は股ベル
ト１９の厚さ以上に広がり、ロツクを解除した状
態で股ベルト１９を前後方向に自由に移動させる
ことができ、股ベルト１９に連結するバツクル１
２を任意の高さ位置に設定することができる。な
お、このような長さ調整具２３の代りに肩ベルト
９に用いられる緊急ロツク装置付きリトラクター
１８と同様なリトラクターを用いてもよい。ま
た、バツクル１２を前後調整するには、シートク
ツシヨン２座面２ａから延長する股ベルト１９を
スライド溝２０ｂに沿つて任意の穴２０ａに移動
させることにより、幼児の体形に合つた最適のバ
ツクル１２の位置に設定することができる。

また、事故および急停車等において、その衝撃
力によりシート本体に拘束している幼児の前方移
動による負荷を補助パツド１０が受けても、股ベ
ルト１９の一端部を係止するアンカープレート２
２は座面２ａのスリツト２０より後方に取り付け
られているために、他端部がバツクル１２に連結
する股ベルト１９は、アンカープレート２２に直
接荷重がかかるように略一直線像に引張られる。
そのため、スリツト２０縁部にはあまり負荷がか
からず、座面２ａおよびスリツト２０等の破損が
防止され、着座幼児を危険にさらすことがない。

このようにバツクル１２を前後および上下方向
に位置調整することにより、シート本体７と補助
パツド１０との間隔がシート本体７に収容される
幼児の体形などに合つた最適の状態に設定され
る。したがつて、このチヤイルドシート１では、
幼児の成長度合や体形などに左右されることな
く、シート本体７に収容される幼児に対し補助パ
ツド１０の機能を常に充分に発揮させることがで
きる。

《考案の効果》 以上、説明したように、この考案の車両用チヤ
イルドシートは、補助パツドのタングを係止する
バツクルをシートクツシヨンに設けられたスリツ
トを通して延長された長さ調整可能な股ベルトに
固定させるとともに、バツクルの位置を調整する
手段を介して、前後および上下方向に調整するこ
とにより、シート本体とタングおよびバツクルと
の間隔を幼児の成長度合や体形に合つた最適状態
に設定でき、シート本体に収容される幼児をより
安全に拘束することができる。

また、この考案の肩ベルトは、その一端部がリ
トラクターを介してフレーム側に固定され、他端
部がシートバツクに設けられたスリツトを通して
長さ調整可能に延長されており、また、股ベルト
は、その一端側部がシートクツシヨンに設けられ
たスリツトに通して延長し、他端部がフレームの
スリツトよりも後部側に設けたアンカープレート
の挿通孔を経て前方に折り返され、２つのカムに
よりシートクツシヨンの後方に引つ張られたとき
に喰い込むように挟み込み係止した後シートクツ
シヨンの前端部に長さ調整可能に臨ませられると
いう構成を採つているために、車両の急停車等に
おいて、その衝撃力によりシート本体に拘束され
ている幼児の前方移動による負荷が肩ベルト或い
は股ベルトが受けても、肩ベルトがリトラクター
でロツクされ、この結果シートクツシヨンが前方
に移動する力を受けるが、この力は股ベルトの他
端部が、これを係止するアンカープレートがシー
トクツシヨンに設けたスリツトよりも後部側に設
けてあるので、アンカープレートに直接荷重がか
かるように略一直線状に引つ張られて受けること
となり、この結果、リトラクターとアンカープレ
ートとの間で、力がバランスすることとなり、こ
のため、シートクツシヨンに設けたスリツトには
あまり負荷がかからず、スリツトが急停車等の衝
撃力によつて破損することがなく、着座幼児を安
全に捕捉することができる。

更に、この考案の股ベルトは、その他端部を前
記フレームの前記スリツトよりも後部側に設けた
アンカープレートの挿通孔を経て前方に折り返さ
れ、２つのカムにより前記シートクツシヨンの後
方に引つ張られたときに喰い込むように挟み込み
係止した後前記シートクツシヨンの前端部に臨ま
せた長さ調整可能としているので、車両用シート
に装着したまま、股ベルトの他端側のシートクツ
シヨンの前端部に臨ませた部分を使つて、長さ調
整でき、非常に便利である。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の一実施例による車両用チヤ
イルドシートの正面から見た状態の斜視図、第２
図は同チヤイルドシートの背面から見た状態の斜
視図、第３図は同チヤイルドシートの側面図、第
４図は同チヤイルドシートの部分拡大断面図、第
５図はシートクツシヨン座面に設けられたスリツ
トを示す拡大平面図、第６図は長さ調整具を示す
斜視図、第７図は従来の車両用チヤイルドシート
を示す斜視図、第８図は同チヤイルドシートに体
格の小さな幼児が着座した状態を示す側面図、第
９図は同チヤイルドシートに体格の大きな幼児が
着座した状態を示す側面図である。 １……車両用チヤイルドシート、２……シート
クツシヨン、３……シートバツク、４……フレー
ム、８，２０……スリツト、９……肩ベルト、１
０……補助パツド、１１……タング、１２……バ
ツクル、１９……股ベルト。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 車両用シートに載置して使用されるチヤイルド
   シートであつて、車両用シートに載置可能なフレ
   ームと、前記フレームにそれぞれ設けられたシー
   トバツクおよびシートクツシヨンと、一端部をリ
   トラクターを介して前記フレーム側に固定されて
   他端部を前記シートバツクに設けられたスリツト
   を通して延長された長さ調整可能な肩ベルトと、
   前記肩ベルトの延長端側に固定されたタングと、
   一端側部を前記シートクツシヨンに設けられたス
   リツトに通して延長し他端部を前記フレームの前
   記スリツトよりも後部側に設けたアンカープレー
   トの挿通孔を経て前方に折り返され、２つのカム
   により前記シートクツシヨンの後方に引つ張られ
   たときに喰い込むように挟み込み係止した後前記
   シートクツシヨンの前端部に臨ませた長さ調整可
   能な股ベルトと、前記股ベルトの延長端部に固定
   されたバツクルとを備え、前記股ベルトが通る前
   記スリツトは、前記シートクツシヨンの前後方向
   に平行に穿設された２つの穴と、該穴を連通する
   ように穿設されたスライド溝とで構成し、前記ス
   リツトの２つの穴に股ベルトの延長部を選択的に
   挿入することにより前記バツクルの前後方向の位
   置を調整するようにしたことを特徴とする車両用
   チヤイルドシート。