JPH05265095A - 背面投影スクリーン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スクリーンに形成される画像の輝度及びコン
トラストを高め、画質を高めることを目的としている。 【構成】 アクリル樹脂を基材とするレンズシート４、
５で構成される背面投影スクリーンにおいて、上記レン
ズシート４、５の表面に、屈折率が上記アクリル樹脂の
屈折率より小さい低屈折率樹脂の被膜１１、１２を形成
した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、プロジェクションテ
レビやビデオプロジェクター等の画像形成に使用される
背面投影スクリーンに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来のプロジェクションテレビやビデオ
プロジェクター等の画像形成に使用されるスクリーン
で、スクリーン上に形成される画像をスクリーンを透過
した光で観察する背面投影スクリーンの代表的なもの
は、例えば刊行物（トリケップス出版「液晶プロジェク
ター技術」Ｐ１４９〜１５０）に示された様に、フレネ
ルレンズシート及びレンチキュラーレンズシートで構成
されている。図２に一例として、フレネルレンズシート
１枚とレンチキュラーレンズシート１枚で構成される２
枚式スクリーンの断面図とそのスクリーンに画像を投影
する投射光学系の概略図を示す。図において、それぞれ
赤、緑、青の光線を投射する投射器１、２、３から出射
した各色光線はフレネルレンズシート４によりレンチキ
ュラーレンズシート５の画像形成範囲に集光され、レン
チキュラーレンズシート５の内部で結像する。レンチキ
ュラーレンズシート５の内部に結像した光線はレンチキ
ュラーレンズシート５の内部に含有される拡散材６によ
り拡散され、観察者７に画像として認識される。レンチ
キュラーレンズシート５のレンズ部はレンチキュラーレ
ンズシート５から出射する光線の観察者７に対して水平
方向の出射角分布を広げ、観察者７の左右方向の視野角
を広げる働きをしている。フレネルレンズシート４及び
レンチキュラーレンズシート５の基材には主に透明性及
び加工牲に優れているアクリル樹脂が使用されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】従来の背面投影スクリ
ーンは以上のように構成されているので、投射器１、
２、３から出射した光線を観察者７の観察範囲に有効に
集光し、画像をレンチキュラーレンズシート５の内部に
形成することができるが、フレネルレンズシート５及び
レンチキュラーレンズシート６の基材は屈折率が約１．
４９のアクリル樹脂であるため、これらのレンズシート
と屈折率が約１．００の空気との界面では、反射率に関
するフレネルの法則に従って垂直入射光に対しては一界
面につき約４％の反射が、斜め入射光に対してはそれ以
上の反射が生じ、フレネルレンズシート４及びレンチキ
ュラーレンズシート５を透過し観察者７に到達する光線
の強度が低下し、形成される画像の輝度及びコントラス
トが低下するとともに、図３に示した様に、フレネルレ
ンズシート４のレンズ面と空気との界面で反射した光線
が再度フレネルレンズシート４の平面部で反射しフレネ
ルレンズシート４から出射し、レンチキュラーレンズシ
ート５の内部にゴースト像を形成するという問題点があ
った。また、電灯や太陽等の外光がスクリーンの最外面
を形成するレンチキュラーレンズシート５の平面部で観
察者７の方向に反射し、再生された画像を観察者が見難
くなるという問題点があった。

【０００４】本発明は上記の問題点を解決するためにな
されたもので、スクリーンに形成される画像の輝度及び
コントラストを高め、画質を高めることを目的としてい
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明に係る背面投影ス
クリーンは、そのスクリーンを構成するレンズシートの
表面に屈折率がそのレンズシートの基材であるアクリル
樹脂の屈折率よりも小さい低屈折率樹脂の被膜を形成す
るものである。

【０００６】

【作用】本発明に係る背面投影スクリーンでは、そのス
クリーンを構成する屈折率が約１．４９のアクリル樹脂
製レンズシートの表面に屈折率がそのレンズシートの基
材であるアクリル樹脂の屈折率よりも小さい低屈折率樹
脂の被膜を形成することによりそのレンズシートと空気
との界面で反射に関するフレネルの法則に従って生じる
反射を低減し、レンズシートを透過する光線の強度を高
め、形成される画像の輝度及びコントラストを高めると
ともに、フレネルレンズシートのレンズ面と空気との界
面で反射した光線が再度フレネルレンズシートの平面部
で反射し、フレネルレンズシートから出射し、レンチキ
ュラーレンズシートの内部にゴースト像を形成すること
を防ぎ、また電灯や太陽等の外光がスクリーンの最外面
で観察者の方向に反射し、再生された画像を観察者が見
難くなることを防ぎ、形成される画像の画質を高めてい
る。

【０００７】

【実施例】

実施例１．図１は本発明の実施例１による背面投影スク
リーンの構成を示す断面図とそのスクリーンに画像を投
影する投射光学系の概略図である。図において、１１は
フレネルレンズシート４の表面に形成された低屈折率樹
脂の被膜であり、１２はレンチキュラーレンズシート５
の表面に形成された低屈折率樹脂の被膜である。

【０００８】本発明の一実施例による背面投影スクリー
ンの作成方法ついて説明する。まず、アクリル樹脂製フ
レネルレンズシート４を洗浄、乾燥後、屈折率が約１．
４０である旭硝子株式会社製フッソ樹脂フロロコートＥ
Ｃ１０４を重量分率で２％の分量を含有するトリクロロ
エタン溶液に浸し、５０〜６０ｍｍ／ｍｉｎの速度で引
き上げ、室温で乾燥させた。フレネルレンズシート４の
表面に上記低屈折率樹脂の被膜１１を形成したことによ
る表面反射の低減効果を調べるために、フレネルレンズ
シート４の平面部の反射率特性を、上記低屈折率樹脂の
被膜１１を形成する前後について比較したところ、図４
に示したように、上記低屈折率樹脂の被膜１１を形成す
る前の反射率特性Ａに対して上記被膜１１を形成した後
の反射率特性Ｂは、波長が４００ｎｍ〜７００ｎｍの可
視光範囲において、約２／３〜１／２の反射率を示して
おり、フレネルレンズシート４の表面で生じる反射を低
減できることが確認できた。

【０００９】同様に、アクリル樹脂製レンチキュラーレ
ンズシート５の表面に、旭硝子株式会社製フッソ樹脂フ
ロロコートＥＣ１０４の被膜１２を形成し、レンチキュ
ラーレンズシート５の表面に上記低屈折率樹脂の被膜１
２を形成したことによる表面反射の低減効果を調べるた
めに、レンチキュラーレンズシート５の平面部の反射率
特性を、上記低屈折率樹脂の被膜１２を形成する前後に
ついて比較したところ、図５に示したように、上記低屈
折率樹脂の被膜１２を形成する前の反射率特性Ｃに対し
て上記被膜１２を形成した後の反射率特性Ｄは、波長が
４００ｎｍ〜７００ｎｍの可視光範囲において、約２／
３〜１／２の反射率を示しており、レンチキュラーレン
ズシート５の表面で生じる反射を低減できることが確認
できた。

【００１０】以上の様にして作成した表面に低屈折率樹
脂の被膜１１、１２を形成したフレネルレンズシート４
及びレンチキュラーレンズシート５を使用して、図１に
示したような背面投影スクリーンを構成し、４０インチ
プロジェクションテレビに搭載し、各種試験を行った。
まず、スクリーン中央付近にスクリーン全体の面積の５
％に相当する白色ウインドーを再生し、輝度を測定した
ところ、従来のスクリーンを搭載して同様に測定したと
きの輝度が４２０ｆｔ−Ｌであるのに対し、本実施例で
は４６０ｆｔ−Ｌの輝度が得られ、再生画像の輝度を高
めることができた。また、スクリーン中央付近にスクリ
ーン全体の面積の５％に相当する黒色ウインドーを再生
して輝度を測定し、続いて上記黒色ウインドウをスクリ
ーンの中央付近から右端に移動させて中央付近に新たに
再生された白色部の輝度を測定し、次式で表されるコン
トラスト

【００１１】

【数１】

【００１２】を求めたところ、従来のスクリーンを搭載
して同様に測定したときのコントラストが１７であるの
に対し、本実施例では２１のコントラストが得られ、再
生画像のコントラストを高めることができた。また、ス
クリーン全体に幅が約５ｍｍの水平方向の白線を上下方
向に１０ｃｍ間隔で再生し、スクリーンの斜め上の方向
から観察したところ、従来のスクリーンを搭載して同様
に観察したときは、図３に示したように、フレネルレン
ズシートのレンズ面と空気との界面で反射した光線が再
度フレネルレンズシートの平面部で反射しフレネルレン
ズシートから出射し、本来再生すべき白線の付近にゴー
スト線が鮮明に観察されるのに対して、本実施例では上
記ゴースト線は弱く観察される程度であり、再生画像の
画質を高めることができた。また、スクリーンに対して
観察者と同じ側に蛍光灯を点灯した状態で、スクリーン
全体に動画を再生し、スクリーンの表面で生じる蛍光灯
の反射を観察したところ、従来のスクリーンを搭載して
同様の観察をしたときは、蛍光灯の反射が強く、再生画
像が見難くなるのに対して、本実施例では蛍光灯の反射
は弱く、再生画像は見易く、再生画像の画質を高めるこ
とができた。

【００１３】実施例２．次に、本発明の別の実施例２に
ついて説明する。この実施例２は、本発明の効果を視覚
的に高めるために、レンズシートの表面に形成する低屈
折率樹脂の被膜の膜厚をｄ、屈折率をｎとするとき、特
に １２５ｎｍ ＜ ｎ・ｄ ＜ １５０ｎｍ ・・・式１ の関係が成り立つようにしたものである。一般に、透明
基板上にその基板の屈折率よりも低い屈折率を有する材
料からなる単層反射防止膜を形成するとき、その単層膜
の膜厚をｄ1，屈折率をｎ1、光の波長をλとすると、垂
直入射光に対して、 ｎ1・ｄ1 ＝ λ／４（２ｍ＋１） m = 0、1、2、3、・・・・ ・・・式２ の関係が満たされる波長λの光に対して、反射率が最も
小さくなることが知られており、この実施例では上記式
１の関係が満たされるように膜厚ｄを制御することによ
り、人間の比視感度が高い５００ｎｍ〜６００ｎｍの波
長範囲の反射を効果的に低減し、本発明の効果を視覚的
に高めるている。

【００１４】以下、この実施例の詳細について述べる。
アクリル樹脂製フレネルレンズシート４を洗浄、乾燥
後、屈折率が約１．４０である旭硝子株式会社製フッソ
樹脂フロロコートＥＣ１０４を重量分率で２％の分量を
含有するトリクロロエタン溶液に浸し、３５ｍｍ／ｍｉ
ｎの速度で引き上げ、室温で乾燥させた。フレネルレン
ズシート４の表面に上記低屈折率樹脂の被膜１１を形成
したことによる表面反射の低減効果を調べるために、フ
レネルレンズシート４の平面部の反射率特性を、上記低
屈折率樹脂の被膜１１を形成する前後で比較したとこ
ろ、図６に示したように、上記低屈折率樹脂の被膜１１
を形成する前の反射率特性Ｅに対して、上記被膜１１を
形成した後の反射率特性Ｆは、波長が４００ｎｍ〜７０
０ｎｍの可視光範囲において、約２／３〜１／２の反射
率を示しており、フレネルレンズの表面反射を低減でき
ることが確認できた。また、図６より、波長が５６０ｎ
ｍのとき反射率が最も小さくなっており、比視感度が高
い５００ｎｍ〜６００ｎｍの波長範囲の反射を低減でき
ていることが確認できた。

【００１５】同様に、アクリル樹脂製レンチキュラーレ
ンズシート５の表面に、旭硝子製フッソ樹脂フロロコー
トＥＣ１０４の被膜１２を形成し、レンチキュラーレン
ズシート５の平面部の反射率特性を、上記低屈折率樹脂
の被膜１２を形成する前後で比較したところ、図７に示
したように、上記低屈折率樹脂の被膜１２を形成する前
の反射率特性Ｇに対して、上記低屈折率樹脂の被膜１２
を形成した後の反射率特性Ｈは、波長が４００ｎｍ〜７
００ｎｍの可視光範囲において、約２／３〜１／２の反
射率を示しており、レンチキュラーレンズシート５の表
面反射を低減できることが確認できた。また、図７よ
り、波長が５５０ｎｍのとき反射率が最も小さくなって
おり、比視感度が高い５００ｎｍ〜６００ｎｍの波長範
囲の反射を低減できていることが確認できた。

【００１６】以上の様にして作成した表面に低屈折率樹
脂の被膜を形成したフレネルレンズシート４及びレンチ
キュラーレンズシート５を使用して、図１に示したよう
な背面投影スクリーンを構成し、４０インチプロジェク
ションテレビに搭載し、前実施例と同様の試験を行っ
た。輝度については、従来のスクリーンを搭載したとき
が４２０ｆｔ−Ｌであるのに対し、本実施例では４７０
ｆｔ−Ｌの輝度が得られ、再生画像の輝度を高めること
ができた。また、コントラストについては、従来のスク
リーンを搭載したときが１７であるのに対し、本実施で
は２２のコントラストが得られ、再生画像のコントラス
トを高めることができた。また、ゴースト線について
は、従来のスクリーンを搭載したときには白色のゴース
ト線が鮮明に観察されるのに対して、本実施例では目だ
たない紫色のゴースト線が弱く観察される程度であり、
再生画像の画質を視覚的に高めることができた。また、
スクリーンの表面で生じる蛍光灯の反射については、従
来のスクリーンを搭載したときは、蛍光灯の反射が強
く、再生画像が見難くなるのに対して、本実施例では蛍
光灯の反射は弱く、また反射光は目だたない紫色で、再
生画像は見易く、再生画像の画質を視覚的に高めること
ができた。

【００１７】なお、この発明における上記各実施例では
フレネルレンズシート４が１枚とレンチキュラーレンズ
シート５が１枚で構成される２枚式スクリーンについて
説明したが、本発明に係るスクリーンを構成するレンズ
シートの枚数は何枚でも良い。

【００１８】また、この発明における上記各実施例で
は、スクリーンを構成するすべてのレンズシートの表面
に低屈折率樹脂の被膜を形成したスクリーンについて説
明したが、表面に低屈折率樹脂の被膜を形成するレンズ
シートはスクリーンを構成する何枚かのレンズシートの
中の１部のレンズシートでも良く、またレンズシートの
片面、あるいは一部分だけに被膜を形成しても良い。

【００１９】

【発明の効果】以上のように、この発明によれば、スク
リーンを構成するレンズシートの表面に屈折率がそのレ
ンズシートの基材であるアクリル樹脂の屈折率よりも小
さい低屈折率樹脂の被膜を形成しているので、スクリー
ンに形成される画像の輝度及びコントラストを高め、画
質を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例による背面投影スクリーン
の構成を示す断面図である。

【図２】従来の背面投影スクリーンの構成を示す断面図
である。

【図３】従来のフレネルレンズシートに入射した光線の
光路を示す説明図である。

【図４】この発明の一実施例におけるフレネルレンズシ
ートの反射率特性を従来のフレネルレンズシートの反射
率特性と比較して示す特性図である。

【図５】この発明の一実施例におけるレンチキュラーレ
ンズシートの反射率特性を従来のレンチキュラーレンズ
シートの反射率特性と比較して示す特性図である。

【図６】この発明の別の実施例におけるフレネルレンズ
シートの反射率特性を従来のフレネルレンズシートの反
射率特性と比較して示す特性図である。

【図７】この発明の別の実施例におけるレンチキュラー
レンズシートの反射率特性を従来のレンチキュラーレン
ズシートの反射率特性と比較して示す特性図である。

【符号の説明】

１ 赤の光線を出射する投射器 ２ 緑の光線を出射する投射器 ３ 青の光線を出射する投射器 ４ フレネルレンズシート ５ レンチキュラーレンズシート １１ 低屈折率樹脂の被膜 １２ 低屈折率樹脂の被膜

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塚越 和夫 長岡京市馬場図所１番地 三菱電機株式会 社京都製作所内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アクリル樹脂を基材とするレンズシート
   で構成される背面投影スクリーンにおいて、上記レンズ
   シートの表面に、屈折率が上記アクリル樹脂の屈折率よ
   り小さい低屈折率樹脂の被膜を形成したことを特徴とす
   る背面投影スクリーン。