JPH0526044B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、中空円筒形の内周面の軸方向に軌道
溝を数箇所形成した外筒と、この外筒の中空内周
面に、移動可能に挿入受容される軌道付きボール
スプライン軸の組合せからなり、この外筒の軌道
溝に対応する位置にスプライン軸の軌道溝を形成
し、上記外筒とボールスプライン軸との両軌道溝
間にボールを多数介在させ、このボールを外筒内
で無限循環させることによつてトルクを伝達しな
がら直線運動を行うボールスプライン軸受に関す
るものである。

従来技術 ボールスプライン軸受は、従来から各種の発
明・考案がなされてきたが、それぞれに少なから
ぬ欠点を有していたため、小型で剛性の高いボー
ルスプライン軸受の出現が望まれていた。

例えば1972年５月２日発行の米国特許第
3659435号に示されるボールスプライン軸受は、
隣接する負荷ボールの中心間を通る平面上にリタ
ーン孔が形成されているため、外筒の肉厚を大き
くせざるを得ず軸受の小型化にも限度があつた。

さらに1983年３月１日発行の米国特許第
4375305号のボールスプライン軸受は保持器を必
須的に使用し、かくして外筒に設ける負荷および
無負荷軸受ボール溝を、それぞれ断面Ｕ字形溝と
して構成でき、従つてこれらは別々にまたは同時
にブローチングまたはスロツテイング加工できて
従来に比して極めて高い製作能率を得た。また軸
受ボール方向転換路をへの字状に湾曲させて従来
のボールスプライン軸受よりは、より小型化でき
るようになつたが、反面保持器を使つて負荷及び
無負荷のボールを外筒から脱落しないように保持
しなければならないため、構成部品数が多くな
り、精度的にも組み立て時の部品累積誤差が多く
なつてボールの保持精度が悪くボールが外筒から
落ちたり、運転中にボールと保持器が接触するな
ど摺動抵抗の増加原因となつていた。

解決しようとする問題 本願発明はこれらの従来技術の欠点を解決し、
安価でしかも精度および剛性の高いボールスプラ
イン軸受を提供することを目的とする。

より具体的にはスプライン軸の断面積を最も大
きくして、軸の剛性を増加すると共に外筒外径を
最小にして、小型で剛性の高いボールスプライン
軸受を安価に提供することを目的とする。

更に外筒とスプライン軸を分離しても、軸受ボ
ルは外筒軌道溝内に保持され、外筒とスプライン
軸の自由な離脱を可能にできる。

問題点を解決するための手段 本発明のボールスプライン軸受は基本的には円
筒形のスプライン軸、該スプライン軸を可動的に
挿入受容する中空円筒形外筒、該両部材間に軸受
配置される多数の軸受ボール、該中空円筒外筒の
両端に設ける、ボール転換路を有する側板からな
る。

上記構成において本発明はさらに (1) スプライン軸の突出部の両側に位置する２列
の負荷ボールのボール中心を通る平面よりもス
プライン軸心側の外筒内に、ボールのためのリ
ターン孔をそれぞれ形成し、 (2) 負荷ボールをリターン孔に導くための円弧状
の方向転換路が外筒の軌道溝軸方向両端に取り
付けられた側板にそれぞれ形成され、 (3) 外筒に形成された軌道溝はボールの半分以上
を包含できるように形成さると共に、軌道溝の
上記外筒内周面における開放幅は、ボール径よ
りもわずかに狭く形成されていることを特徴と
し、前記目的を達成する。

作 用 本発明の軸受は、上記のように構成することに
よつて、各構成部分の加工精度を高め、軸受ボー
ルの円滑な循環を保証すると共に、特に外筒を減
少した外筒を有するコンパクトな構造に構成で
き、高速運転時の安定性を高めることができる。

本発明の実施例を以下図面を参照して説明す
る。

実施例 第１図は本発明のボールスプライン軸受の第１
の具体化例を全体透影図で示す。

１はスプライン軸で円筒形状を有し、その円周
方向数箇所に軸方向に伸びる突出部４を形成し、
その各々の突出部４の両側面に軌道溝５を形成す
る。各突出部４はスプライン円筒軸の円周方向に
複数個、等間隔に設けることが望ましい。

２は上該スプライン軸１を変移可能に挿入受容
する中空円筒形の外筒であり、該スプライン軸の
外径よりやや大径の中空環状内周面を有し、その
内周面に前記スプライン軸の突出部４を挟み込む
ような方向で、かつスプライン軸側の軌道溝５の
それぞれに対応して軌道溝７を形成する。

スプライン軸１を該外筒２に挿入した状態で、
上記スプライン軸外周と、外筒の中空内周面にそ
れぞれ対応的に設けた凹形軌道溝５，７間には軸
受ボールＢを多数介在させて玉軸受を構成する。

上記それぞれの凹形軌道溝５，７は、それぞれ
軸受ボールＢと同一の曲率の円の弧を形成する。

かくして構成された軸受への潤滑はボールスプ
ライン軸受外部から、第１図に示す外筒２の中央
部に形成された油溝８に潤滑剤を供給し、該潤滑
剤は油溝８と直結した油孔８′を通つてリターン
孔９内のボール群に供給される。

第１図、第５図および第６図を参照し、円筒形
外筒２の両端面には側板１１が固着され、該側板
１１の各々にはその所定箇所に軸受ボール方向転
換路１０′がその軸方向に対してもまた半径方向
に対しても円弧状に形成され該方向転換路１０′
の内径端には、軌道溝のボールを円滑に方向転換
路１０′へ掬うための掬い部１６が形成される。
方向転換路１０′は、方向転換溝１０のほぼ中央
に、スペーサ位置決めのためスペーサ固定溝１
２′を、該方向転換溝１０の両側に形成している。
スペーサ固定溝１２′の大きさは、外側径を大に
そして内側径を小さく形成して側板１１の空間部
分を最大限活用してスペーサの固定力を増加させ
ている。

第１図、第２図および第３図に外筒表面に設け
たキー溝３は、他の機械工具または要素に連結す
るに適したいかなる形状にも成形される。

第２図は第１図の外筒をその油溝８で切断した
半径方向の断面で示し、ここに外筒２内に形成さ
れたリターン孔９のそれぞれの位置は、スプライ
ン軸の突出部４を挟み込むように位置する負荷ボ
ールのボール中心間を通る平面よりもスプライン
軸の中心側におかれている。第２図に想像線で示
した方向転換路１０′は、側板１１内に形成され
ており、軸方向に対しても半径方向に対しても円
弧状に形成されてボールを円滑に移動させる。本
発明の構成によれば、軸受ボールのための保持器
を一切必要としないので軸をより太く形成するこ
とができ、軸の剛性を高めることができる。

第３図は第１図の軸方向断面図であり、スプラ
イン軸１の突出部４を挟むように軌道溝５に接触
する負荷ボール列Ｂが上段に示され、下段にはリ
ターン孔９内に整列する無負荷ボール群が示され
る。

外筒２の軌道溝７の軸方向両端には、ボールを
該軌道溝７からリターン孔９まで移動させるため
の方向転換路１０′を有する側板１１が取り付け
られる。所望により側板１１の外側にさらにシー
ル部材１３を取り付け、側板１１とシール部材１
３をサークリツプ１７によつて軸方向に固定して
もよい。また側板と外筒との半径方向固定はボル
ト固定、位置決めピン固定等いかなる常套手段で
もよい。

第４図は第２図の部分的拡大図を示し、スプラ
イン軸１の突出部４により形成される軌道溝５
と、外筒２の中空内周面に形成された軌道溝７が
詳細に示される。

スプライン軸の軌道溝５は、スプライン軸の円
筒体の一部を突出部４の頂点として残し、その両
側を切り欠いて切欠部６を形成して突出部４を構
成する。かくしてスプライン軸の断面積を最大に
保ち、軸の剛性を大にできる。

第４図はさらにボール保持部１４と逃げ部１５
の関係を示し、これら両部分はブローチ加工によ
つて成形できるため、軌道溝７のボール保持精度
を特に高めることができる。軌道溝７のボール接
触面は、熱処理後特殊なラツプ仕上により所定の
表面あらさと寸法精度に仕上げ、この特殊ラツプ
仕上げ作業の効率をよくするため軌道面以外は逃
げ部１５を形成する。

第７図側板１１内に設ける方向転換溝１０に使
用して方向転換路１０′を構成するスペーサ１２
を投影図で示し、側板１１に形成された方向転換
溝１０のスペーサ固定溝１２′に対応して上下に
大小の固定部１２″が形成され、中央部には方向
転換路部１０′が形成され、この固定部１２″は半
円筒形をなしその加工を容易にしている。外筒と
接触する面は平面とし側板１１との回転止めを果
している。

第８図に示される本発明の第２の具体例におい
ては、スプライン軸は大小二つの円弧α，βから
略形成されており、大きい円弧αが突出部４の頂
点となり、小さい円弧βが、突出部４とその両側
の軌道溝５を除く円弧面を形成している。この具
体例では軸の形状が単純化されて加工しやすくな
つている。外筒２の軌道溝７を除く内周面もスプ
ライン軸に対応して大小二つの円弧で形成するこ
とができるため、加工が容易である。

外筒の軌道溝７は、肉厚な中空円筒形部材の軌
道溝７の位置とリターン孔９の位置にドリルで軸
に孔を開け、内径を削つて孔を溝にして軌道溝７
を形成できる。

さらに、軌道溝はボール径よりもわずかに大き
な円弧で形成することにより、容易に加工でき、
全体として安価なボールスプライン軸受を提供で
きる。

これらの軌道溝とスプライン軸の形状の組み合
わせは、任意にできると共に、その他の公知な形
状との組合わせも容易である。

発明の効果 上記に詳述したように本願発明を構成すること
により以下の効果を達成できる。

(1) 保持器を必要としないため、前記公知軸受に
おけるよりも部品点数が少くて済み、ボールの
外筒における保持精度が高くできる。

(2) ボールリターン孔の特別の配置により最も小
型なボールスプライン軸受を製作することがで
きる。

(3) スプライン軸の強度・剛性が高く、高荷重に
適したボールスプライン軸受とる。

(4) 部品点数の減少および加工性の改善により安
価に製作できる。

(5) 負荷ボール軌道とリターン孔を連絡する方向
転換路を、スプライン軸の軸方向および半径方
向に円弧状にしてボールの円滑循環移動を実現
した。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の第１の具体例の全体を示す投
影図、第２図は第１図に示す外筒の油溝で切断し
た半径方向の部分断面図、第３図は第１図の軸方
向断面図、第４図は第２図の部分拡大図、第５図
は側板の平面図、第６図は側板に形成された方向
転換路を示し、Ａはその側面図、Ｂはその断面図
であり、第７図は方向転換路を構成するスペーサ
の投影図であり、そして第８図は第４図に類似し
た部分断面図で、本発明の第２の具体例を示す。 図中の符号はそれぞれ下記部材を示す。１：ス
プライン軸、２：外筒、Ｂ：ボール、３：キー
溝、４：突出部、５：軌道溝（スプライン軸側）、
６：切欠部、７：軌道溝（外筒側）、８：油溝、
８′：油孔、９：リターン孔、１０：方向転換溝、
１０′：方向転換路、１１：側板、１２：スペー
サ、１２′：スペーサ固定溝、１２″：スペーサ固
定部、１３：シール、１４：ボール保持部、１
５：逃げ部、１６：掬い部、１７：サークリツ
プ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 円筒形の円周方向の数筒所に軸方向へ向かつ
   て突出部を形成し、その突出部の両側面に負荷軌
   道溝を形成してなるスプライン軸と、 上記スプライン軸を可動的に挿入受容する中空
   円筒形の外筒であつて、その中空内周面に、前記
   スプライン軸の突出部を挟み込むような方向でか
   つ該スプライン軸の軌道溝に対応した軌道溝を有
   する外筒と、 スプライン軸と外筒とのそれぞれに設けた軌道
   溝間に多数のボールを挿入した、保持器部材を有
   さないボールスプライン軸受において、 各負荷のボールのためのリターン孔を、スプラ
   イン軸の突出部の両側に位置する上記２列の隣接
   する負荷軌道溝内の各負荷ボールのボール中心を
   通る平面に関してスプライン軸心側の外筒内に形
   成し、 負荷ボールをリターン孔に導くための円弧状の
   方向転換路が外筒の軌道溝軸方向両端に取り付け
   られた側板にそれぞれ形成され、 かつ、該円弧状方向転換路は側板半径方向断面
   において外方に湾曲し、 外筒に形成された軌道溝はボールの半分以上を
   包含できるように形成されると共に、軌道溝の上
   記外筒中空内周面に開放する開口幅は、ボール径
   よりもわずかに狭く形成されていることを特徴と
   するボールスプライン軸受。 ２ 特許請求の範囲第１項記載の軸受においてス
   プライン軸の突出部は円筒形の外表面を残して両
   側を切欠して形成し、 外筒の軌道溝形状がボールと接触する部分以外
   が大きく逃がされていることを特徴とするボール
   スプライン軸受。 ３ 特許請求の範囲第２項記載の軸受においてス
   プライン軸に形成された突出部は大小二つの円弧
   の組み合わせによつて形成されており、 外筒の軌道溝形状はボールよりわずかに大きい
   円弧で形成されていることを特徴とするボールス
   プライン軸受。 ４ 特許請求の範囲第１項乃至第３項の何れかに
   記載の軸受において、外筒の軌道軸方向に取り付
   けられた側板のそれぞれに形成された方向転換路
   は、円弧状の方向転換溝にスペーサを固定するこ
   とにより形成されることを特徴とするボールスプ
   ライン軸受。