JPH05255836A - 表面処理金属板およびその製造方法 - Google Patents
表面処理金属板およびその製造方法Info
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- JPH05255836A JPH05255836A JP8768292A JP8768292A JPH05255836A JP H05255836 A JPH05255836 A JP H05255836A JP 8768292 A JP8768292 A JP 8768292A JP 8768292 A JP8768292 A JP 8768292A JP H05255836 A JPH05255836 A JP H05255836A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 耐食性、耐酸化性に優れた表面処理金属板を
提供すること、および従来の表面処理方法に生じていた
諸問題を解決し得る表面処理金属板の製造方法を提供す
ることを目的とする。 【構成】 表面処理金属板が、 Ｃｒ：５〜３０％（重量％の意味、以下同じ） Ｘ ：０．０１〜１％（ただし、ＸはＺｒ，Ｎｂ，Ｍ
ｏ，Ｔａ，Ｗよりなる群から選択される１種または２種
以上の金属を表わす） を含有し、残部がＡｌおよび不可避不純物からなるＡｌ
合金めっき層を金属板に施したものであり、上記Ａｌ合
金めっき鋼板を蒸着めっき法によって製造する場合は、
Ａｌ浴蒸発槽と、ＣｒとＸからなる合金浴蒸発槽とを用
いることを特徴とする表面処理金属板の製造方法。
提供すること、および従来の表面処理方法に生じていた
諸問題を解決し得る表面処理金属板の製造方法を提供す
ることを目的とする。 【構成】 表面処理金属板が、 Ｃｒ：５〜３０％（重量％の意味、以下同じ） Ｘ ：０．０１〜１％（ただし、ＸはＺｒ，Ｎｂ，Ｍ
ｏ，Ｔａ，Ｗよりなる群から選択される１種または２種
以上の金属を表わす） を含有し、残部がＡｌおよび不可避不純物からなるＡｌ
合金めっき層を金属板に施したものであり、上記Ａｌ合
金めっき鋼板を蒸着めっき法によって製造する場合は、
Ａｌ浴蒸発槽と、ＣｒとＸからなる合金浴蒸発槽とを用
いることを特徴とする表面処理金属板の製造方法。
Description
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、建材、家電製品、容器
材、自動車等の分野に用いられる耐食性に優れた表面処
理金属板およびその製造方法に関するものである。
材、自動車等の分野に用いられる耐食性に優れた表面処
理金属板およびその製造方法に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】ＡｌおよびＡｌ合金は鋼系材料に比べ
て、耐食性に優れ、軽量で清潔感があるため、種々の容
器、建材、家電製品等に汎用されている。またＡｌの持
つこのような特徴を鋼系材料に利用するという趣旨のＡ
ｌ系めっき鋼板も多用されている。自動車マフラー等の
排気系部材、各種ストーブの熱反射板、あるいはごみ焼
却炉構成部材等の機械部品は、高温環境下、あるいは高
温かつ強腐食性環境下で用いられるため、耐熱性、耐酸
化性、耐食性の全てにおいて普通鋼より優れたステンレ
ス鋼が多用されている。しかし、ステンレス鋼は高価な
ため普通鋼の改善によって対応することが要求され、耐
酸化性や耐食性に劣る普通鋼の表面にこれらの特性に優
れたＡｌめっき層を施すことによって、低級ステンレス
鋼並みの優れた特性を有するＡｌめっき鋼板が開発され
た。
て、耐食性に優れ、軽量で清潔感があるため、種々の容
器、建材、家電製品等に汎用されている。またＡｌの持
つこのような特徴を鋼系材料に利用するという趣旨のＡ
ｌ系めっき鋼板も多用されている。自動車マフラー等の
排気系部材、各種ストーブの熱反射板、あるいはごみ焼
却炉構成部材等の機械部品は、高温環境下、あるいは高
温かつ強腐食性環境下で用いられるため、耐熱性、耐酸
化性、耐食性の全てにおいて普通鋼より優れたステンレ
ス鋼が多用されている。しかし、ステンレス鋼は高価な
ため普通鋼の改善によって対応することが要求され、耐
酸化性や耐食性に劣る普通鋼の表面にこれらの特性に優
れたＡｌめっき層を施すことによって、低級ステンレス
鋼並みの優れた特性を有するＡｌめっき鋼板が開発され
た。
【０００３】しかしＡｌめっき鋼板は、Ｃｌ- のような
ハロゲン化物イオンが存在する環境下では、Ａｌ表面の
不働態皮膜がハロゲン化物イオンによって破壊され孔食
が発生し易いという欠点がある。孔食が発生すると、孔
食周囲にＡｌの腐食生成物であるＡｌ（ＯＨ）3 を主成
分とする白錆が生じ、孔食がさらに進行すると素地鋼板
の腐食にまで至って赤錆が発生することもある。このよ
うな白錆や赤錆は、Ａｌめっき鋼板の外観を著しく損ね
商品価値を低下させるため大きな問題であった。
ハロゲン化物イオンが存在する環境下では、Ａｌ表面の
不働態皮膜がハロゲン化物イオンによって破壊され孔食
が発生し易いという欠点がある。孔食が発生すると、孔
食周囲にＡｌの腐食生成物であるＡｌ（ＯＨ）3 を主成
分とする白錆が生じ、孔食がさらに進行すると素地鋼板
の腐食にまで至って赤錆が発生することもある。このよ
うな白錆や赤錆は、Ａｌめっき鋼板の外観を著しく損ね
商品価値を低下させるため大きな問題であった。
【０００４】そこで上記Ａｌめっき鋼板の表面に、クロ
メート皮膜等の各種化成処理膜や樹脂皮膜を形成したも
のも開発・使用されているが、これらの皮膜は非常に薄
いために傷つき易く、防食効果の確実性に欠けるもので
ある。またＡｌめっきは一般に溶融めっき法で行なわれ
ているため、溶融Ａｌめっき浴中にＺｎ等の他の元素を
加えて得られる各種Ａｌ合金めっき鋼板によって耐食性
を向上させることも試みられている。しかし溶融Ａｌめ
っき浴中に溶解可能な金属の種類および量に制限があっ
て、これらの溶融めっき法によるＡｌ合金めっき鋼板で
は耐食性がまだ不充分なのが現状である。さらに、溶融
めっき法でＡｌめっきを行なう場合は、溶融Ａｌ浴が約
７００℃もの高温であるために、鋼板の浸漬時に鋼板と
Ａｌめっきとの界面にＦｅ2 Ａｌ5 等の脆弱で加工性に
乏しいＦｅ−Ａｌ系金属間化合物が生成して、強度の成
型加工時にはめっき剥離の原因になるという問題があっ
た。
メート皮膜等の各種化成処理膜や樹脂皮膜を形成したも
のも開発・使用されているが、これらの皮膜は非常に薄
いために傷つき易く、防食効果の確実性に欠けるもので
ある。またＡｌめっきは一般に溶融めっき法で行なわれ
ているため、溶融Ａｌめっき浴中にＺｎ等の他の元素を
加えて得られる各種Ａｌ合金めっき鋼板によって耐食性
を向上させることも試みられている。しかし溶融Ａｌめ
っき浴中に溶解可能な金属の種類および量に制限があっ
て、これらの溶融めっき法によるＡｌ合金めっき鋼板で
は耐食性がまだ不充分なのが現状である。さらに、溶融
めっき法でＡｌめっきを行なう場合は、溶融Ａｌ浴が約
７００℃もの高温であるために、鋼板の浸漬時に鋼板と
Ａｌめっきとの界面にＦｅ2 Ａｌ5 等の脆弱で加工性に
乏しいＦｅ−Ａｌ系金属間化合物が生成して、強度の成
型加工時にはめっき剥離の原因になるという問題があっ
た。
【０００５】一方、電気めっき法によるＡｌめっきの製
造も研究されており、各種のＡｌ系塩を溶解させた非水
系有機溶媒溶液あるいはＡｌ系溶融塩浴からの電析方法
が検討されている。電気めっき法では、溶融めっき法に
比べて使用する浴中に添加可能な金属塩の種類や含有量
に対する自由度が非常に高く、結果として純Ａｌめっき
のみならず、各種Ａｌ系合金めっき（例えばＡｌ−Ｍｎ
合金めっき等）を電析させることが可能であるという長
所を有している。しかしながら電気めっき法は、電流効
率が低い、あるいは高電流密度での電析が不可能である
等の理由で生産性が悪く、めっき浴が電気的に不安定に
なり易いこともあって工業的生産は困難である。
造も研究されており、各種のＡｌ系塩を溶解させた非水
系有機溶媒溶液あるいはＡｌ系溶融塩浴からの電析方法
が検討されている。電気めっき法では、溶融めっき法に
比べて使用する浴中に添加可能な金属塩の種類や含有量
に対する自由度が非常に高く、結果として純Ａｌめっき
のみならず、各種Ａｌ系合金めっき（例えばＡｌ−Ｍｎ
合金めっき等）を電析させることが可能であるという長
所を有している。しかしながら電気めっき法は、電流効
率が低い、あるいは高電流密度での電析が不可能である
等の理由で生産性が悪く、めっき浴が電気的に不安定に
なり易いこともあって工業的生産は困難である。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】本発明では上記事情を
考慮して、耐食性や耐酸化性に優れた表面処理金属板を
提供すること、および従来生じていた上記問題を解決し
得る表面処理方法を提供することを目的とする。
考慮して、耐食性や耐酸化性に優れた表面処理金属板を
提供すること、および従来生じていた上記問題を解決し
得る表面処理方法を提供することを目的とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】上記目的を解決するため
の本発明は、表面処理金属板が、 Ｃｒ：５〜３０％ Ｘ ：０．０１〜１％（ただし、ＸはＺｒ，Ｎｂ，Ｍ
ｏ，Ｔａ，Ｗよりなる群から選択される１種または２種
以上の金属を表わす） を含有し残部がＡｌおよび不可避不純物からなるＡｌ合
金めっき層を金属板表面に施したものであることを要旨
とし、また上記Ａｌ合金めっきを蒸着めっき法によって
形成する場合は、Ａｌ浴蒸発槽と、ＣｒとＸからなる合
金浴蒸発槽とを用いることをもうひとつの要旨とするも
のである。
の本発明は、表面処理金属板が、 Ｃｒ：５〜３０％ Ｘ ：０．０１〜１％（ただし、ＸはＺｒ，Ｎｂ，Ｍ
ｏ，Ｔａ，Ｗよりなる群から選択される１種または２種
以上の金属を表わす） を含有し残部がＡｌおよび不可避不純物からなるＡｌ合
金めっき層を金属板表面に施したものであることを要旨
とし、また上記Ａｌ合金めっきを蒸着めっき法によって
形成する場合は、Ａｌ浴蒸発槽と、ＣｒとＸからなる合
金浴蒸発槽とを用いることをもうひとつの要旨とするも
のである。
【０００８】
【作用】本発明者等は、Ａｌ系めっき鋼板の耐食性改善
を目的として種々検討し、合金添加元素の種類および添
加量の制約がほとんどない真空蒸着めっき法を用いて、
Ｃｒを合金化元素としたＡｌ−Ｃｒ鋼板が優れた耐食性
を有することを見い出し、先に出願した（特開平1-1276
65号、同1-188666号、特願平2-74883 号、同2-116098
号）。本発明では、さらに耐食性を向上させるために、
Ａｌ−Ｃｒの２成分合金めっきに第３成分元素を添加し
た多元系Ａｌ合金めっきについて検討し、優れた特性を
有する表面処理金属板とその製造方法の発明に到達した
ものである。以下本発明を詳細に説明する。
を目的として種々検討し、合金添加元素の種類および添
加量の制約がほとんどない真空蒸着めっき法を用いて、
Ｃｒを合金化元素としたＡｌ−Ｃｒ鋼板が優れた耐食性
を有することを見い出し、先に出願した（特開平1-1276
65号、同1-188666号、特願平2-74883 号、同2-116098
号）。本発明では、さらに耐食性を向上させるために、
Ａｌ−Ｃｒの２成分合金めっきに第３成分元素を添加し
た多元系Ａｌ合金めっきについて検討し、優れた特性を
有する表面処理金属板とその製造方法の発明に到達した
ものである。以下本発明を詳細に説明する。
【０００９】まず本発明において、表面処理皮膜層であ
るＡｌ合金めっき層は、その構成成分としてＣｒを５〜
３０％、第３成分元素として前記Ｚｒ，Ｎｂ，Ｍｏ，Ｔ
ａ，Ｗよりなる群から選択される１種または２種以上の
金属（以下単にＸと表わすことがある）を０．０１〜１
％含有し、残部がＡｌおよび不可避不純物からなるもの
であって、実質的にはＡｌ−Ｃｒ−Ｘ系合金めっき層で
ある。
るＡｌ合金めっき層は、その構成成分としてＣｒを５〜
３０％、第３成分元素として前記Ｚｒ，Ｎｂ，Ｍｏ，Ｔ
ａ，Ｗよりなる群から選択される１種または２種以上の
金属（以下単にＸと表わすことがある）を０．０１〜１
％含有し、残部がＡｌおよび不可避不純物からなるもの
であって、実質的にはＡｌ−Ｃｒ−Ｘ系合金めっき層で
ある。
【００１０】Ｃｒはめっき層中に５〜３０％含まれてい
ることが必要である。めっき層中のＣｒは、その一部ま
たは全てがＡｌとの合金相を形成し、この合金相が金属
板の耐食性改善に有効であることがすでに本発明者等に
よって見い出されている。従って、Ｃｒが５％より少な
いとめっき層中に含まれる該合金層の割合が低下し、充
分な耐食性改善効果が得られないために好ましくない。
また３０％を超えて含有させてもそれ以上の耐食性向上
効果は認められず、使用環境によってはむしろ耐食性が
悪くなることがあるので上限を３０％とした。
ることが必要である。めっき層中のＣｒは、その一部ま
たは全てがＡｌとの合金相を形成し、この合金相が金属
板の耐食性改善に有効であることがすでに本発明者等に
よって見い出されている。従って、Ｃｒが５％より少な
いとめっき層中に含まれる該合金層の割合が低下し、充
分な耐食性改善効果が得られないために好ましくない。
また３０％を超えて含有させてもそれ以上の耐食性向上
効果は認められず、使用環境によってはむしろ耐食性が
悪くなることがあるので上限を３０％とした。
【００１１】第３成分元素Ｘはめっき層中に０．０１〜
１％含まれていることが必要である。Ｘが０．０１％未
満では、第３成分の添加による耐食性改善効果が発現せ
ず、実質的にＡｌ−Ｃｒ二元系合金めっきにおける耐食
性と大差がない。０．０１％以上の含有量でＡｌ−Ｃｒ
二元系合金めっきに比べて耐食性が向上し、第３成分元
素添加効果が顕著になる。耐食性はＸの含有量の増加に
伴ない著しく向上していくが、含有量が１％を超えると
Ｘの添加による耐食性改善効果が飽和してしまい、さら
にＸを構成するＺｒ，Ｎｂ，Ｍｏ，Ｔａ，Ｗは高価な金
属であるので経済的にも好ましくない。
１％含まれていることが必要である。Ｘが０．０１％未
満では、第３成分の添加による耐食性改善効果が発現せ
ず、実質的にＡｌ−Ｃｒ二元系合金めっきにおける耐食
性と大差がない。０．０１％以上の含有量でＡｌ−Ｃｒ
二元系合金めっきに比べて耐食性が向上し、第３成分元
素添加効果が顕著になる。耐食性はＸの含有量の増加に
伴ない著しく向上していくが、含有量が１％を超えると
Ｘの添加による耐食性改善効果が飽和してしまい、さら
にＸを構成するＺｒ，Ｎｂ，Ｍｏ，Ｔａ，Ｗは高価な金
属であるので経済的にも好ましくない。
【００１２】第３成分元素添加による耐食性向上の理由
は現時点では明確になっていないが、これらの元素のめ
っき層中への添加により、Ａｌ−Ｃｒ合金めっき表面に
形成される不動態皮膜中に、第３成分元素が酸化物また
はオキシ水酸化物として取り込まれて欠陥の少ない不働
態皮膜が形成され、ハロゲン化物イオンに対する耐食
性、すなわち耐孔食性を向上させ得るためか、もしくは
めっき層自身の耐食性を向上させて孔食のめっき膜厚方
向への進行を遅らせることによるものであると推察され
る。
は現時点では明確になっていないが、これらの元素のめ
っき層中への添加により、Ａｌ−Ｃｒ合金めっき表面に
形成される不動態皮膜中に、第３成分元素が酸化物また
はオキシ水酸化物として取り込まれて欠陥の少ない不働
態皮膜が形成され、ハロゲン化物イオンに対する耐食
性、すなわち耐孔食性を向上させ得るためか、もしくは
めっき層自身の耐食性を向上させて孔食のめっき膜厚方
向への進行を遅らせることによるものであると推察され
る。
【００１３】Ａｌ−Ｃｒ−Ｘ系合金めっきの金属板表面
への付着量は、その量が多くなるほど耐食性の効果が大
きくなるが、必要以上のめっきを付着させることは製造
コストアップにつながるだけで不経済である。本発明で
は上記付着量は特に限定されず、適用部材、使用環境等
に応じて適宜選択される。一般的に冷延鋼板に適用する
場合、耐食性と経済性のバランスから１０〜１００ｇ／
ｍ2 、好ましくは２０〜６０ｇ／ｍ2 程度のめっき層を
形成すれば良い。
への付着量は、その量が多くなるほど耐食性の効果が大
きくなるが、必要以上のめっきを付着させることは製造
コストアップにつながるだけで不経済である。本発明で
は上記付着量は特に限定されず、適用部材、使用環境等
に応じて適宜選択される。一般的に冷延鋼板に適用する
場合、耐食性と経済性のバランスから１０〜１００ｇ／
ｍ2 、好ましくは２０〜６０ｇ／ｍ2 程度のめっき層を
形成すれば良い。
【００１４】上記めっき層は非水溶媒系または溶融塩系
からの電析による電気めっき法で形成することも原理的
には可能であるが、表面外観が美しく、素地金属板との
密着性に優れ、加工性に優れるといった点から蒸着めっ
き膜であることが好ましい。本発明では、上記Ａｌ−Ｃ
ｒ−Ｘ系合金めっきを安定に製造し得る蒸着法を見い出
した。その方法とは、上記Ａｌ合金を蒸着めっきするに
当たり、Ａｌ浴蒸発槽と、ＣｒとＸからなる合金浴蒸発
槽を用いるものである。
からの電析による電気めっき法で形成することも原理的
には可能であるが、表面外観が美しく、素地金属板との
密着性に優れ、加工性に優れるといった点から蒸着めっ
き膜であることが好ましい。本発明では、上記Ａｌ−Ｃ
ｒ−Ｘ系合金めっきを安定に製造し得る蒸着法を見い出
した。その方法とは、上記Ａｌ合金を蒸着めっきするに
当たり、Ａｌ浴蒸発槽と、ＣｒとＸからなる合金浴蒸発
槽を用いるものである。
【００１５】ＡｌおよびＸは蒸気圧が高い金属であり、
ＡｌまたはＸの溶融浴表面から種々の加熱源を用いてＡ
ｌまたはＸの蒸気を発生させることが可能である。しか
しＣｒは昇華性金属であって、固体金属表面から直接蒸
気が発生し、蒸発挙動はＡｌおよびＸとは異なってい
る。固体金属表面からの昇華による蒸発は通常の溶融浴
からの蒸発に比べ、蒸発面の面積および温度が不安定に
なりやすく、加熱源からの供給熱量を一定にしてもその
蒸発量を安定にコントロールすることが困難である。従
ってめっき層におけるＣｒの付着量を一定にするために
は、Ｃｒを合金化して昇華性を失わせ溶融浴を形成する
様にすることが好ましいと考えられる。本発明者等が種
々検討した結果、第３成分元素ＸがＣｒとの合金溶融浴
を形成することが可能であること、およびこの合金溶融
浴からＣｒとＸの混合蒸気を安定に発生させることが可
能であることを明らかにしたものである。
ＡｌまたはＸの溶融浴表面から種々の加熱源を用いてＡ
ｌまたはＸの蒸気を発生させることが可能である。しか
しＣｒは昇華性金属であって、固体金属表面から直接蒸
気が発生し、蒸発挙動はＡｌおよびＸとは異なってい
る。固体金属表面からの昇華による蒸発は通常の溶融浴
からの蒸発に比べ、蒸発面の面積および温度が不安定に
なりやすく、加熱源からの供給熱量を一定にしてもその
蒸発量を安定にコントロールすることが困難である。従
ってめっき層におけるＣｒの付着量を一定にするために
は、Ｃｒを合金化して昇華性を失わせ溶融浴を形成する
様にすることが好ましいと考えられる。本発明者等が種
々検討した結果、第３成分元素ＸがＣｒとの合金溶融浴
を形成することが可能であること、およびこの合金溶融
浴からＣｒとＸの混合蒸気を安定に発生させることが可
能であることを明らかにしたものである。
【００１６】Ｚｒ，Ｎｂ，Ｍｏ，Ｔａ，Ｗよりなる群か
ら選択される第３成分元素Ｘは、その１種を選んでＣｒ
と混合し二元系合金とした場合であっても、または２種
以上を選んで任意に組み合わせてＣｒと混合し三元系以
上の合金とした場合であっても、いずれもＣｒ−Ｘ系合
金溶融浴を形成することができ、該合金浴からＣｒとＸ
の安定した蒸発が可能である。
ら選択される第３成分元素Ｘは、その１種を選んでＣｒ
と混合し二元系合金とした場合であっても、または２種
以上を選んで任意に組み合わせてＣｒと混合し三元系以
上の合金とした場合であっても、いずれもＣｒ−Ｘ系合
金溶融浴を形成することができ、該合金浴からＣｒとＸ
の安定した蒸発が可能である。
【００１７】なお、本発明で規定しためっき組成を達成
するためには、Ａｌ、Ｃｒおよび第３成分元素Ｘの各蒸
発量をコントロールする必要があるが、具体的手法とし
ては、Ａｌの任意の蒸発量に対して、ＣｒおよびＸの蒸
発量を上記範囲になるように適宜制御すればよい。そし
てＣｒとＸの蒸発量を調整するに当たっては、ＣｒとＸ
からなる浴における合金浴組成を調整することによって
達成されるが、前記合金浴の表面から蒸発するＣｒとＸ
の混合蒸気の組成は、Ｘとして用いられるＺｒ，Ｎｂ，
Ｍｏ，Ｔａ，Ｗの蒸気圧がすべてＣｒより小さいため
に、決して合金浴組成とは一致しない。しかし、ある合
金浴組成に対して得られる混合蒸気組成は、合金浴の表
面温度が一定であれば一義的に決まるものであるため、
前記規定しためっき組成となるように、合金浴組成と表
面温度を相関連させて調整すれば良い。
するためには、Ａｌ、Ｃｒおよび第３成分元素Ｘの各蒸
発量をコントロールする必要があるが、具体的手法とし
ては、Ａｌの任意の蒸発量に対して、ＣｒおよびＸの蒸
発量を上記範囲になるように適宜制御すればよい。そし
てＣｒとＸの蒸発量を調整するに当たっては、ＣｒとＸ
からなる浴における合金浴組成を調整することによって
達成されるが、前記合金浴の表面から蒸発するＣｒとＸ
の混合蒸気の組成は、Ｘとして用いられるＺｒ，Ｎｂ，
Ｍｏ，Ｔａ，Ｗの蒸気圧がすべてＣｒより小さいため
に、決して合金浴組成とは一致しない。しかし、ある合
金浴組成に対して得られる混合蒸気組成は、合金浴の表
面温度が一定であれば一義的に決まるものであるため、
前記規定しためっき組成となるように、合金浴組成と表
面温度を相関連させて調整すれば良い。
【００１８】図１には本発明で規定した製造方法を可能
にする蒸着めっき設備の一例を示す。被めっき金属帯１
は入側真空シール装置２Ａを経て第１蒸着めっき室４Ａ
に導入される。第１蒸着めっき室４Ａには、アルミナ蒸
発槽５Ｂ中のＡｌ浴６ＢとＣｕ製蒸発槽５Ａ中のＣｒ−
Ｘ系合金浴６Ａがあり、両者の蒸発槽から出る金属蒸気
によって被めっき材片面上にＡｌ−Ｃｒ−Ｘ系合金めっ
き層が形成される。デフレクターロール３で被めっき金
属帯１の進行方向を変え、同様にしてもう一方の表面に
も蒸着Ａｌ−Ｃｒ−Ｘ系合金めっきを施す。
にする蒸着めっき設備の一例を示す。被めっき金属帯１
は入側真空シール装置２Ａを経て第１蒸着めっき室４Ａ
に導入される。第１蒸着めっき室４Ａには、アルミナ蒸
発槽５Ｂ中のＡｌ浴６ＢとＣｕ製蒸発槽５Ａ中のＣｒ−
Ｘ系合金浴６Ａがあり、両者の蒸発槽から出る金属蒸気
によって被めっき材片面上にＡｌ−Ｃｒ−Ｘ系合金めっ
き層が形成される。デフレクターロール３で被めっき金
属帯１の進行方向を変え、同様にしてもう一方の表面に
も蒸着Ａｌ−Ｃｒ−Ｘ系合金めっきを施す。
【００１９】蒸着室は真空または希薄ガス雰囲気下に保
持する。ＡｌやＣｒ−Ｘの金属蒸気を発生させるための
加熱蒸発源は特に限定されるものではなく、電子ビー
ム、レーザービーム、ホロカソード等を用いることがで
きる。これらの中でも、電子ビーム方式は電子銃を用い
て直接原料表面に照射できるため高エネルギーかつ加熱
・蒸発効率に優れており、またメンテナンス性にも優れ
ているので好ましく採用される。
持する。ＡｌやＣｒ−Ｘの金属蒸気を発生させるための
加熱蒸発源は特に限定されるものではなく、電子ビー
ム、レーザービーム、ホロカソード等を用いることがで
きる。これらの中でも、電子ビーム方式は電子銃を用い
て直接原料表面に照射できるため高エネルギーかつ加熱
・蒸発効率に優れており、またメンテナンス性にも優れ
ているので好ましく採用される。
【００２０】なお、本発明の表面処理金属板にさらに特
性を付与するために、金属蒸気が金属板表面に到達する
前にイオン化させて蒸着させるイオンプレーティング方
法を採用してもよい。イオン化の手段は特に限定されな
いが、ＲＦ（高周波）法、アーク法、ＨＣＤ法等を採用
することができる。また本発明の被処理材は、一般の普
通鋼板、各種ステンレス鋼板、合金鋼板等の金属板や、
Ａｌ、Ｃｕ、Ｔｉ等の非鉄金属板、あるいはそれぞれの
合金板等が用いられ、金属板である限り特に限定されな
い。
性を付与するために、金属蒸気が金属板表面に到達する
前にイオン化させて蒸着させるイオンプレーティング方
法を採用してもよい。イオン化の手段は特に限定されな
いが、ＲＦ（高周波）法、アーク法、ＨＣＤ法等を採用
することができる。また本発明の被処理材は、一般の普
通鋼板、各種ステンレス鋼板、合金鋼板等の金属板や、
Ａｌ、Ｃｕ、Ｔｉ等の非鉄金属板、あるいはそれぞれの
合金板等が用いられ、金属板である限り特に限定されな
い。
【００２１】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明する。実施例１〜４２および比較例４３〜６２ 図１に示した設備を用いて、表１〜３に示す種々の組成
のＡｌ合金めっき鋼板を製造した。なお表にはめっき層
中の残部Ａｌの含有量は省略した。
説明する。実施例１〜４２および比較例４３〜６２ 図１に示した設備を用いて、表１〜３に示す種々の組成
のＡｌ合金めっき鋼板を製造した。なお表にはめっき層
中の残部Ａｌの含有量は省略した。
【００２２】○蒸着めっき条件 被めっき板： 冷延鋼板（低炭素Ａｌキルド鋼） 被めっき板前処理：アルカリ電解脱脂−水洗−乾燥後に
Ｈ2 −Ｎ2 混合ガスによるガス還元炉に導入し、鋼板表
面の還元による清浄化前処理 めっき前の被めっき材温度： ２００〜３５０℃
Ｈ2 −Ｎ2 混合ガスによるガス還元炉に導入し、鋼板表
面の還元による清浄化前処理 めっき前の被めっき材温度： ２００〜３５０℃
【００２３】蒸発原料： Ａｌ、Ｃｒ、第３成分元素Ｘ（Ｚｒ、Ｎｂ、Ｍｏ、Ｔ
ａ、Ｗ） 蒸発槽： Ａｌ浴用蒸発槽：アルミナ蒸発槽 Ｃｒ−Ｘ合金浴用蒸発槽：水冷式Ｃｕ製蒸発槽 蒸発原料の蒸発槽への供給： Ａｌ：Ａｌワイヤーによる補給 Ｃｒ、Ｘ：インゴットによる供給
ａ、Ｗ） 蒸発槽： Ａｌ浴用蒸発槽：アルミナ蒸発槽 Ｃｒ−Ｘ合金浴用蒸発槽：水冷式Ｃｕ製蒸発槽 蒸発原料の蒸発槽への供給： Ａｌ：Ａｌワイヤーによる補給 Ｃｒ、Ｘ：インゴットによる供給
【００２４】蒸発原料の加熱蒸発源： ピアス型電子銃 （最大出力３００ｋＷ） 蒸着室真空度： １×１０-2Ｐａ以下 めっき付着量およびめっき組成のコントロール方法： ・電子ビームのトータル出力 ・Ａｌ浴とＣｒ−Ｘ合金浴への電子ビームのトータル出
力の配分 ・被めっき材の走行速度 の組み合わせによる制御
力の配分 ・被めっき材の走行速度 の組み合わせによる制御
【００２５】○耐食性評価試験評価試験−１ 塩水噴霧試験（５％ＮａＣｌ水溶液、３５℃）を行な
い、供試材の腐食による赤錆が発生するまでの試験時間
で評価した。
い、供試材の腐食による赤錆が発生するまでの試験時間
で評価した。
【００２６】 ◎：耐食性優れる ： 10000時間以上赤錆発生なし ○：耐食性良好 ： 5000 〜 10000時間で赤錆発生 △：耐食性やや劣る： 1000 〜 5000 時間 〃 ×：耐食性劣る ： 1000 時間以内 〃
【００２７】評価試験−２ 下記に示した腐食水溶液に供試材を全浸漬し、溶液を８
０℃に加熱して蒸発させ、２４時間で溶液を完全乾固さ
せる。この加熱蒸発試験を１サイクル／日とし、合計２
０サイクル繰り返した。なお５サイクル毎に、供試材を
大気中で２５０℃×２４時間加熱した。
０℃に加熱して蒸発させ、２４時間で溶液を完全乾固さ
せる。この加熱蒸発試験を１サイクル／日とし、合計２
０サイクル繰り返した。なお５サイクル毎に、供試材を
大気中で２５０℃×２４時間加熱した。
【００２８】サイクル試験の完了後に、供試材表面に形
成された錆を除去した後、供試材の孔あき深さを測定
し、孔あきの大きいものから順に２０点選び、その平均
値を平均孔あき深さとして評価した。
成された錆を除去した後、供試材の孔あき深さを測定
し、孔あきの大きいものから順に２０点選び、その平均
値を平均孔あき深さとして評価した。
【００２９】・試験溶液組成 Ｃｌ- ：１００ｐｐｍ ＮＯ3 - ：１００ｐｐｍ ＳＯ3 2- ：５００ｐｐｍ ＳＯ4 2- ：５００ｐｐｍ ＣＨ3 ＣＯＯ- ：５００ｐｐｍ （全てアンモニウム塩にて添加） ◎：耐食性優れる ：平均孔あき深さ 0.1ｍｍ以下 ○：耐食性良好 ： 〃 0.1〜0.2 ｍｍ △：耐食性やや劣る： 〃 0.2〜0.5 ｍｍ ×：耐食性劣る ： 〃 0.5ｍｍ以上 得られた結果を比較材と共にまとめて表１〜３に示し
た。
た。
【００３０】
【表１】
【００３１】
【表２】
【００３２】
【表３】
【００３３】表１〜３から明らかなように、本発明の蒸
着Ａｌ系合金めっき鋼板は優れた耐食性を有している
が、第３成分元素Ｘを添加しない場合（Ａｌ−Ｃｒ二元
系めっき）、または第３成分元素の含有量が本発明で規
定する値より少ない場合は、耐食性が不充分であること
がわかる。また、比較例として用いた各種蒸着めっき鋼
板および溶融めっき鋼板は、その種類にかかわらず、本
発明のめっき鋼板に比べて耐食性が劣ることがわかる。
着Ａｌ系合金めっき鋼板は優れた耐食性を有している
が、第３成分元素Ｘを添加しない場合（Ａｌ−Ｃｒ二元
系めっき）、または第３成分元素の含有量が本発明で規
定する値より少ない場合は、耐食性が不充分であること
がわかる。また、比較例として用いた各種蒸着めっき鋼
板および溶融めっき鋼板は、その種類にかかわらず、本
発明のめっき鋼板に比べて耐食性が劣ることがわかる。
【００３４】
【発明の効果】以上のように構成された本発明の表面処
理金属板は、従来のＡｌ系めっき材等に比べ、耐酸化
性、耐食性が著しく向上した。従って普通鋼に適用した
場合であっても、腐食性の強い環境で充分使用できる金
属板を提供できる。このため、本発明の表面処理金属板
は、建材、家電製品、自動車等の多くの分野に有用なも
のである。また本発明の製造方法によって上記表面処理
金属板を安定に製造することが可能になった。
理金属板は、従来のＡｌ系めっき材等に比べ、耐酸化
性、耐食性が著しく向上した。従って普通鋼に適用した
場合であっても、腐食性の強い環境で充分使用できる金
属板を提供できる。このため、本発明の表面処理金属板
は、建材、家電製品、自動車等の多くの分野に有用なも
のである。また本発明の製造方法によって上記表面処理
金属板を安定に製造することが可能になった。
【図１】本発明に適用する蒸着めっき設備の一例を示す
説明図である。
説明図である。
１ 被めっき材（金属帯） ２Ａ 入側真空シール装置 ２Ｂ 出側真空シール装置 ３ デフレクターロール ４Ａ Ｎｏ．１蒸着めっき室 ４Ｂ Ｎｏ．２蒸着めっき室 ５Ａ 水冷式Ｃｕ製蒸発槽 ５Ｂ アルミナ蒸発槽 ６Ａ Ｃｒ−第３成分元素系合金浴 ６Ｂ Ａｌ溶融浴
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 綾部 東太 加古川市金沢町１番地 株式会社神戸製鋼 所加古川製鉄所内 (72)発明者 加藤 淳 加古川市金沢町１番地 株式会社神戸製鋼 所加古川製鉄所内 (72)発明者 三宅 昭二 加古川市金沢町１番地 株式会社神戸製鋼 所加古川製鉄所内
Claims (3)
- 【請求項１】Ｃｒ：５〜３０％（重量％の意味、以下同
じ） Ｘ ：０．０１〜１％（ただし、ＸはＺｒ，Ｎｂ，Ｍ
ｏ，Ｔａ，Ｗよりなる群から選択される１種または２種
以上の金属を表わす） を含有し、残部がＡｌおよび不可避不純物からなるＡｌ
合金めっき層を金属板表面に施したものであることを特
徴とする表面処理金属板。 - 【請求項２】 Ａｌ合金めっき層が蒸着めっきされたも
のである請求項１に記載の表面処理金属板。 - 【請求項３】 上記Ａｌ合金を蒸着めっきするに当た
り、Ａｌ浴蒸発槽と、ＣｒとＸからなる合金浴蒸発槽と
を用いることを特徴とする表面処理金属板の製造方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP8768292A JPH05255836A (ja) | 1992-03-10 | 1992-03-10 | 表面処理金属板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP8768292A JPH05255836A (ja) | 1992-03-10 | 1992-03-10 | 表面処理金属板およびその製造方法 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH05255836A true JPH05255836A (ja) | 1993-10-05 |
Family
ID=13921706
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP8768292A Withdrawn JPH05255836A (ja) | 1992-03-10 | 1992-03-10 | 表面処理金属板およびその製造方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPH05255836A (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2007186792A (ja) * | 2006-01-10 | 2007-07-26 | General Electric Co <Ge> | 物理蒸着法とそのための装置 |
-
1992
- 1992-03-10 JP JP8768292A patent/JPH05255836A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2007186792A (ja) * | 2006-01-10 | 2007-07-26 | General Electric Co <Ge> | 物理蒸着法とそのための装置 |
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Legal Events
| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
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