JPH05255119A - ドラッグキャリアー - Google Patents

ドラッグキャリアー

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JPH05255119A
JPH05255119A JP3772292A JP3772292A JPH05255119A JP H05255119 A JPH05255119 A JP H05255119A JP 3772292 A JP3772292 A JP 3772292A JP 3772292 A JP3772292 A JP 3772292A JP H05255119 A JPH05255119 A JP H05255119A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】投与が容易であり、生体内あるいは生体の管腔
内において薬物濃度を長時間維持しうるドラッグキャリ
アーを提供すること。 【構成】体温より低い温度でゲル化し、該ゲル化温度以
下の温度では水溶性を示す高分子化合物からなることを
特徴とするドラッグキャリアー。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生体内あるいは生体の
管腔内で薬物を持続的に放出しうるドラッグキャリアー
に関する。さらに詳しくは、投与温度では液状であるた
めに容易に投与することができ、生体内あるいは生体の
管腔内においてはゲル化するために薬物を持続的に放出
することができるドラッグキャリアーに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、薬物を必要な量だけ、必要とする
患部に、必要な時間供給し、薬効を最大限に発揮させて
副作用は最小限に抑える薬物投与法であるドラッグ・デ
リバリー・システム(Drug Delivery System,DDS)
の開発が活発に行われている。最も典型的な例として、
薬物を種々の形態のマトリックスに複合化し、臓器、器
官、皮下組織、生体の管腔内などに留置して薬物を徐放
化させる生体内インプラントシステムが開発されてい
る。
【0003】生体内インプラントシステムとしては、抗
癌剤を高分子担体に複合化したインプラントを癌病巣に
直接留置し、抗癌剤を持続放出することにより、腫瘍縮
小、延命、癌性疼痛の緩解などを期待したものが開発さ
れており、これについては数多くの臨床応用が行われて
いる。また、抗癌剤以外にも、各種ホルモン剤、インタ
ーフェロン、インターロイキンなどの免疫賦活剤、麻薬
拮抗剤、麻酔剤などがこのシステムに応用されている。
生体内インプラントは、高分子のマトリックスに主とし
て物理的手段によって薬物を分散しておき、マトリック
ス内部から薬物を拡散することによって徐放化を行うも
のである。薬物とマトリックスの複合化が容易であるた
め、対象薬物の範囲が広く、また製造工程での薬物の薬
理活性の失活がほとんど認められないという利点を有し
ている。
【0004】ところで、これらの生体内インプラントを
臨床適用するには、針状、ロッド状、フィルム状、ペレ
ット状など適用部位に応じた形状のインプラントを外科
的手術などによって生体内に埋設しなければならない。
このような外科的手術が不可避である剤形は、患者の苦
痛、感染症、手術痕跡などの点から臨床適用上望ましく
ないものである。
【0005】また、生体内に留置されたインプラントは
上記のように種々の形状を有するため、放出される薬物
の作用はインプラントに接する部分にのみ限局され易
く、病巣部での薬物濃度分布が不均一になりがちであ
る。
【0006】以上のように、従来の生体内インプラント
システムには種々の重大な問題があり、投与が簡便であ
り、しかも十分な徐放性を満足できるドラッグキャリア
ーは未だ提供されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、投
与が容易であり、生体内あるいは生体の管腔内において
薬物濃度を長時間維持しうるドラッグキャリアーを提供
することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、体温より低
い温度でゲル化し、該ゲル化温度以下の温度では水溶性
を示す高分子化合物からなることを特徴とするドラッグ
キャリアーによって達成することができる。
【0009】本発明のドラッグキャリアーに使用する高
分子化合物は、上記性質を有し生体内において有害でな
ければいかなる物質であってもよい。かかる高分子化合
物として好ましいものは、LCSTを有する温度感応性
高分子化合物と水溶性高分子化合物が結合された高分子
化合物である。
【0010】LCSTを有する温度感応性高分子化合物
とは、水に対する溶解度温度係数が負を示す高分子化合
物であり、低温にて生成する高分子化合物と水分子との
水素結合に依存する水和物(オキソニウムヒドロキシ
ド)が高温で分解し、脱水和により高分子化合物同士が
凝集し沈殿する特徴を有する。LCST(Lower Critic
al Solution Temperature)とは、このような温度感応
性高分子化合物の水和と脱水和の転移温度をいう(例え
ば、ハスキンズ(M. Haskins)らの J. Macromol, Sci.
-Chem., A2 (8), 1441 (1986) 参照)。すなわち、本発
明の温度感応性高分子化合物はLCST以下の温度では
親水性で水に溶解するが、LCST以上の温度では疎水
性となって沈殿し、この変化は可逆的である。本発明に
おいては、上記温度感応性高分子化合物のLCSTが体
温より低い温度であることが必要である。
【0011】本発明に用いられる温度感応性高分子化合
物としては、ポリN置換アクリルアミド誘導体、ポリN
置換メタアクリルアミド誘導体およびこれらの共重合
体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール
部分酢化物などが挙げられる。好ましい温度感応性高分
子化合物を以下にLCSTが低い順に列挙する。
【0012】ポリ−N−アクリロイルピペリジン;ポリ
ーN−n−プロピルメタアクリルアミド;ポリーN−イ
ソプロピルアクリルアミド;ポリーN,N−ジエチルア
クリルアミド;ポリーN−イソプロピルメタアクリルア
ミド;ポリーN−シクロプロピルアクリルアミド;ポリ
ーN−アクリロイルピロリジン;ポリーN,N−エチル
メチルアクリルアミド;ポリーN−シクロプロピルメタ
アクリルアミド;ポリーN−エチルアクリルアミド上記
の高分子化合物は、単一の単量体を重合したものであっ
ても、他の単量体と共重合させたものであってもよい。
共重合する単量体は、親水性単量体、疎水性単量体のい
ずれでも用いることができる。一般的には、親水性単量
体と共重合すると生成物のLCSTは上昇し、疎水性単
量体と共重合すると生成物のLCSTは下降する。した
がって、これらを適宜選択することによっても所望のL
CSTを有する高分子化合物を得ることができる。
【0013】親水性単量体としては、N−ビニルピロリ
ドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアクリル
アミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエチル
メタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒ
ドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメチルア
クリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタアクリル
酸およびそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチレンスル
ホン酸など、並びに塩基性を有するN,N−ジメチルア
ミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエ
チルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル
アクリルアミドおよびそれらの塩などが挙げられるが、
これらに限定されるものではない。
【0014】一方、疎水性単量体としては、エチルアク
リレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリ
レートなどのアクリレート誘導体およびメタクリレート
誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミドなどのN置
換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニル、ア
クリロニトリル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられ
るが、これらに限定されるものではない。
【0015】一方、本発明に用いられる水溶性高分子化
合物は、水に可溶な高分子化合物であれば特に制限はな
く、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコ
ール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジ
ン、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポ
リ−N−メチルアクリルアミド、ポリヒドロキシエチル
メタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレー
ト、ポリヒドロキシメチルメタアクリレート、ポリヒド
ロキシメチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタ
クリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホ
ン酸およびそれらの塩、ポリ−N,N−ジメチルアミノ
エチルメタクリレート、ポリ−N,N−ジエチルアミノ
エチルメタクリレート、ポリ−N,N−ジメチルアミノ
プロピルアクリルアミドおよびそれらの塩などが挙げら
れる。
【0016】LCSTを有する温度感応性高分子化合物
と水溶性高分子化合物との結合は、いずれかの高分子化
合物中に重合性官能基を導入し、他方の高分子化合物を
与える単量体を共重合させて行うことができる。例え
ば、水溶性高分子化合物であるポリエチレンオキシドの
両末端水酸基にアクリル酸クロライドを反応させて、重
合性官能基、アクリル基を導入後、LCSTを有する温
度感応性高分子化合物を与える単量体、例えば、N−イ
ソプロピルアクリルアミドを共重合させることによっ
て、約30℃にLCSTを有する温度感応性高分子化合
物と水溶性高分子化合物との結合体を得ることができ
る。また、LCSTを有する温度感応性高分子化合物と
水溶性高分子化合物との結合物は、温度感応性高分子化
合物を与える単量体と、水溶性高分子化合物を与える単
量体とのブロック共重合によっても得られる。また、L
CSTを有する温度感応性高分子化合物と水溶性高分子
化合物との結合は、予め両者に反応活性な官能基を導入
し、両者を化学反応により結合させることによっても行
える。このとき、水溶性高分子化合物中に反応活性な官
能基を複数導入する必要がある。例えば、N−イソプロ
ピルアクリルアミドと、N−アクリロキシスクシンイミ
ドを共重合させることによって1級アミンと容易に反応
する基を導入した温度感応性高分子化合物を合成し、こ
れと両末端に1級アミノ基を有する水溶性高分子化合物
であるポリエチレンオキシドの反応によって、約30℃
にLCSTを有する温度感応性高分子化合物と水溶性高
分子化合物との結合体を得ることができる。
【0017】温度感応性高分子化合物と水溶性高分子化
合物との結合物は、温度感応性高分子化合物のLCST
以下の温度においては、温度感応性高分子化合物部分と
水溶性高分子化合物部分はともに水溶性であるので、完
全に水に溶解する。しかし、この水溶液の温度を、温度
感応性高分子化合物のLCST以上の温度に加温する
と、温度感応性高分子化合物部分が疎水性になるため、
疎水的相互作用によって別個の分子間で会合する。一
方、水溶性高分子化合物部分は、このときでも水溶性で
あるので、結合物は水中において、温度感応性高分子化
合物部分間の疎水性会合部を架橋点とした、三次元網目
構造をもつハイドロゲルを生成する。結合物がこのよう
な性質を有するため、後述のように本発明のドラッグキ
ャリアーは生体内において薬物をゲル内部に封じ込める
ことができる。このとき水溶性高分子化合物部分は、温
度感応性高分子化合物部分同士の疎水性結合が強すぎる
ためにドラッグキャリアーが沈殿、不溶化し、薬物と該
ドラッグキャリアーが完全に分離してしまうのを防ぐ働
きをしている。なお、ゲル化した結合物の温度を再び、
温度感応性高分子化合物のLCST以下の温度に冷却す
ると、温度感応性高分子化合物部分が水溶性となって疎
水性会合による架橋点が解放され、ハイドロゲル構造が
消失する。このため、結合物は、再び完全な水溶液とな
る。
【0018】本発明のドラッグキャリアーはさまざまな
薬物と複合化することができる。その複合化法として
は、LCST以下の温度で本発明のドラッグキャリアー
の均一な水溶液を作製し、所望の薬物と混合する方法が
最も一般的に用いられる。該複合化法は、最も簡便であ
ると同時に複合過程で薬物の薬理活性の失活がほとんど
認められないという利点を有している。本発明のドラッ
グキャリアーには薬効の異なった複数の薬物を同時に複
合化することも可能である。
【0019】薬物と複合化された本発明のドラッグキャ
リアーは、LCST以下の温度で均一に混合された薬物
と本発明のドラッグキャリアーの混合液を生体内あるい
は生体の管腔内へ注入あるいは注射することによって投
与することができる。このように簡便な方法によって投
与することができる点が本発明の重要な特徴である。生
体内あるいは生体の管腔内などに投与された後、温度感
応性高分子化合物のLCST以上の温度(体温)になる
と、ただちに本発明のドラッグキャリアーはゲル化して
薬物をゲル内部に封じ込める。このため、生体内あるい
は生体の管腔内の薬物の滞留性が著しく向上すると同時
にゲル内部の薬物が拡散現象によって徐放化される。
【0020】本発明のドラッグキャリアーは投与時に液
体であるため、従来の生体内インプラントと異なり外科
手術などを行わなくても注入が可能であり、しかも注入
後は幹部のすみずみまで薬物を到達させることが可能で
ある。さらに、生体内あるいは生体の管腔内でのゲルは
従来の生体内インプラント材料と異なり柔軟であり、生
体組織、臓器へ与える機械的損傷は著しく軽減される。
【0021】
【実施例】
(1)温度感応性高分子化合物としてのポリ(N−イソ
プロピルアクリルアミド−コ−N−アクリロキシスクシ
ンイミド)の合成 N−イソプロピルアクリルアミド10.2g、N−アク
リロキシスクシンイミド1.71gをクロロホルム40
0mlに溶解、窒素置換後、N,N’−アゾビスインブチ
ロニトリル0.135gを加え、60℃にて6時間重合
させた。濃縮後、ジエチルエーテル中にて再沈した。凝
集、真空乾燥して8.8gのポリ(N−イソプロピルア
クリルアミド−コ−N−アクリロキシスクシンイミド)
を得た。 (2)該ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−
N−アクリロキシスクシンイミド)と水溶性高分子化合
物としての両末端アミノ化ポリエチレンオキシドの結合 ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−N−アク
リロキシスクシンイミド)1.0g、両末端アミノ化ポ
リエチレンオキシド(分子量6,000:川研ファイン
ケミカル(株)製)0.5gをクロロホルム100mlに
溶解し、50℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、
イソプロピルアミン0.1gを加え、1時間放置した。
濃縮後、ジエチルエーテル中にて沈澱させた。凝集、真
空乾燥して、1.5gの本発明のドラッグキャリアーを
得た。
【0022】該ドラッグキャリアー0.5gを10mlの
蒸留水に氷冷下で溶解した。この水溶液を徐々に加温す
ると、約30℃以上で流動性を失い、ゲル化した。この
ゲルを冷却すると、約30℃以下で流動性を取り戻し、
再び水溶液に戻った。この変化は可逆的に繰り返し観測
された。
【0023】(3)該ドラッグキャリアーと制癌剤であ
るピリミジン代謝括抗性を有する5−フロロウラシル
(以下、5−FUと略す)の複合化 容量が約10mlのガラス製試験管(内径:7mm)中で該
ドラッグキャリアー0.2gを1mlの生理的食塩水中に
常温で溶解した後、該溶液中に約1mgの5−FU(協和
発酵(株))を加え振盪によって完全に溶解させた後、
該溶液を含む試験管を約37℃の浴槽に移し、5分間静
置させ、5−FUを含むゲルを形成させた。次に5−F
Uを含むゲルからの5−FUの生体内での放出をシュミ
レートするために、37℃に保持した試験管中にあらか
じめ37℃に加温された家免の血清を約5ml加え、振盪
下に血清中に移行してくる5−FUを下記に記す方法に
よって定量し、該ゲル中に残存する5−FU量を推定し
た。
【0024】各時間毎に採取した血清1mlに60%過塩
素酸0.1mlを添加して2分間振盪した後、12000
rpmで10分間高速遠心した後に、上層0.2mlを採
取し、酢酸エチル0.2mlを添加し、3000rpmで
10分間、遠心分離した。下層20〜60μlを採取
し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって
5−FUを定量した。HPLCの較正曲線は5−FU
(協和発酵(株))を既知量、血清中に溶解し、上記と
同様の方法で作製した。HPLCの測定は、島津高速液
体クロマトグラフィー装置により固定相として強酸性陽
イオン交換樹脂(島津製作所、内径4mm×長さ15cm)
および移動相として0.02Mのリン酸1ナトリウム水
溶液を用いて行った。
【0025】上記の方法でゲル中の5−FUの残存率を
測定した結果、ゲル中の5−FUの残存が初期の50%
になるまでの期間は約25時間であった。
【0026】生体中の5−FUの残存挙動を、家免の静
脈中に5−FUを投与した後、血清中あるいは生体組織
中の5−FUの残存性をHPLCで測定することによっ
て検討した結果、血清中では10〜20分で残存率が約
50%に低下し、組織中でも20〜30分間で残存率が
50%に低下し、5−FUの生体中での消失は非常に短
期間に生ずることが報告されている(勝又郁男,歯学
70(5),869,1983)。
【0027】したがって本発明のゲルを用いることによ
って生体中での5−FUの滞留時間を著しく延長するこ
とが可能である。
【0028】
【発明の効果】本発明のドラッグキャリアーは投与温度
において液体であるので、経口、注射、カテーテルなど
による注入などが容易である。しかも生体の管腔内ある
いは生体内で瞬時にゲル化するために,薬物の放出制
御、生物学的利用率を増大させることができる。このた
め、持続的な有効濃度の維持が可能であり、薬効を最大
限に発揮させることができるうえ、副作用の軽減もでき
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森 有一 神奈川県横浜市金沢区釜利谷町1642−212 B−4

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】体温より低い温度でゲル化し、該ゲル化温
    度以下の温度では水溶性を示す高分子化合物からなるこ
    とを特徴とするドラッグキャリアー。
  2. 【請求項2】前記高分子化合物が、体温よりも低いLC
    STを有する温度感応性高分子化合物と水溶性高分子化
    合物が結合されている高分子化合物であって、該LCS
    Tを有する温度感応性高分子化合物部分が一分子内に複
    数存在する請求項1記載のドラッグキャリアー。
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