JPH0523819A - ダイカスト用金型、及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 キャビティのガスをガス排出路に流出させる
微小間隙のガス通路を簡単な構造で実現すること。 【構成】 キャビティ２に沿うように穿設されたガス排
出路３、４を有する金型母材１に、キャビティ２面から
ガス抜き路３、４に到達する位置までガスの通過を可能
ならしめる一方、溶融金属の通過を阻止する間隙長を有
する溝５、６、７、８を形成して、溶湯により押された
空気や離型剤により発生したガスを溝５、６、７、８を
通してガス排出路３、４からキャビティ外部に排出さ
せ、また溶湯は溝５、６、７、８との表面張力により阻
止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、段差部を有してキャビ
ティ内にガスが停滞し易い形状の部品をダイカストによ
り製造するのに適した金型に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えばカムシャフトのように軸と、これ
の放射方向に突出するカム部とにより構成され凹凸が存
在し、かつ軸長比が大きな部品をダイカストにより製造
する場合には、これの金型の軸線が上下方向となるよう
にして溶湯を注入する関係上、金型下部から流入してき
た溶湯に押された空気や、離型剤から発生したガスがカ
ム部を形成するためのキャビティの凹部に停滞し易く、
これらの気体が鋳造製品に巣等を発生させるという問題
がある。

【０００３】このような問題を解消するため、図９
（イ）に示したように金型を本体部Ａと入子Ｂ、Ｂ、Ｂ
との２つの部材に分割して構成し、本体部Ａにキャビテ
ィＣに沿ってガス排出路Ｄ、Ｄと、同図（ロ）に示した
ような入子を固定するためのピンＪの挿入孔Ｅ、Ｅとを
穿設しておき、またキャビティＣの一部を形成する入子
Ｂには同図（ロ）に示したように本体部Ａとの間でガス
抜き用スリットを形成する間隙を確保するための凸部
Ｆ、Ｆ、Ｆと、固定用ピンＪの挿入孔Ｇ、Ｇ、Ｇと、さ
らにはガス排出路を形成する切欠部Ｈ、Ｈ、Ｈとを形成
し、これら複数の入子Ｂ、Ｂ、Ｂ‥‥を本体部Ａの入子
挿入用凹部にセットしてから、ピンＪで本体部Ａに固定
し、本体部Ａの入子挿入部と入子Ｂ、Ｂ、Ｂとで形成さ
れる隙間によりキャビティＣからガス排出路Ｄ、Ｄに連
通させるようにしたダイカスト用金型が提案されている
（実開昭63-25234号公報）。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなキャビティ面とガス排出路とを接続するスリット
は、気体だけを選択的に通過させ、溶湯を確実に阻止す
る程度のサイズ、例えば０．２ミリメートル以下に形成
することが必要であるため、スリット間隙を確保するた
めに入子Ｂ、Ｂ、Ｂに形成する凸部Ｆ、Ｆ、Ｆは極めて
高い加工精度が必要となるばかりでなく、キャビティの
形状精度を確保できるように入子Ｂ、Ｂ、Ｂを本体部Ａ
に組み付けることが要求され、金型の製造に手間が掛る
という不都合がる。

【０００５】また入子Ｂ、Ｂ、Ｂと本体部Ａとの組み付
け作業の便を考慮すると、入子Ｂ、Ｂ、Ｂを作業を行な
い易いサイズとしなければならないから、キャビティＣ
からガス排出路Ｄ、Ｄ、Ｄまでの距離が長くなるばかり
でなく、入子構造に適した箇所だけにしかスリットが形
成できないため、ガスの排出を十分に行なわせることが
できないという不都合がある。

【０００６】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであって、その目的とするところは、これらの問題
を一気に解消すべく、入子構造を採ることなくキャビテ
ィからガス排出路にいたるガス排出用の間隙を形成した
ダイカスト用金型を提供することにある。本発明の他の
目的は上記金型を製造するための方法を提案することで
ある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】このような問題を解消す
るために本発明においては、鋳造製品のプロフィールに
一致するキャビティが形成され、かつキャビティに沿う
ように穿設されたガス排出路を有する金型母材に、前記
キャビティが形成される面から前記ガス抜き路に到達す
る位置までガスの通過を可能ならしめる一方、溶融金属
の通過を阻止する間隙長を有する溝を形成するようにし
た。

【０００８】

【作用】溶湯により押された空気や離型剤により発生し
たガスは、キャビティとガス抜き路を接続している溝を
通ってガス排出路からキャビティ外部に排出される。ま
た溶湯は溝との表面張力により阻止され、結果として気
体だけが選択的にキャビティの外に排出されることにな
る。

【０００９】

【実施例】そこで、以下に本発明の詳細を図示した実施
例に基づいて説明する。図１は、本発明の一実施例を示
すものであって、図中符号１は、製造すべき物品、例え
ばカムシャフトのプロフィールとなるようにキャビティ
２が数値加工装置等により形成された金型母材で、キャ
ビティ２の軸方向（図中では左上から右下の方向）にガ
ス排出路３、４が形成されている。５、６、７、８は、
それぞれキャビティ２面からガス排出路３、４に至る連
通となる溝で、鋳造時に比較的ガスが停滞しやすい箇所
を選んで任意の位置に形成されており、またその間隙長
が空気や離型剤から発生したガスの通過を許す一方、溶
融金属に対してはその表面張力により通過を阻止する程
度の間隙長、例えば０．２粍以下に形成されている。な
お、図中符号１０は金型を鋳造装置に固定するための台
座部を示す。

【００１０】この実施例において、対となる２つの金型
１３、１４を図２に示したように軸方向を上下とするよ
うに鋳造装置のダイベース１５内に固定金型１６と移動
金型１７としてセットする。この状態で溶湯を供給する
と、下部の溶湯供給口１８から上昇した溶湯によりキャ
ビティ２内で発生したガスや空気は、溝５、６、７、８
を通ってガス排出路３、４に流出し、金型装置の連通孔
１９、２０から外部に排出される。一方、溝５、６、
７、８に到達した溶湯は、溝５、６、７、８との表面張
力によりここの通過を阻止される。

【００１１】鋳造が終了して鋳造品を金型装置から取り
出すと、キャビティとの連通部近傍の溝５、６、７、８
への溶湯の侵入は極めて少ないから、鋳造品とともに持
去られ、従来のような除去作業が不要となる。この金型
１は、各パート全てが基台部１ａで母材段階と同様に一
体となっているから、そのまま鋳造装置に組み付けるこ
とにより使用できるばかりでなく、入子のように移動す
る畏れのある部材を有していないからキャビティの形状
精度を長期間維持して高い信頼性を発揮することができ
る。

【００１２】このような金型１は、図３（イ）に示した
ように予め外形を目的に合せて成形した母材２１にガス
排出路２２、２３を穿設しておき、鍛造品のプロフィー
ルを形成したときガスが停滞し易い箇所を選んで、キャ
ビティが形成される面２１ａからガス排出路２２、２３
に至る位置まで、後述するワイヤ放電加工装置を用い
て、完成したときほぼ水平方向となる方向に両側端に通
じた溝２４、２４、２４‥‥を形成する（同図
（ロ））。もとよりワイヤ放電加工装置は、その電極の
厚みや直径を選択することにより０．２ミリメートル幅
程度の切りしろで溝を形成することができるから、気体
の通過は許すが、溶湯を阻止する程度の間隙を簡単に形
成することができる。溝２４、２４、２４‥‥が形成さ
れた段階で、鋳造品のプロフィールに一致するキャビテ
ィ２５を形成すれば（同図（ハ））金型が完成する。

【００１３】この実施例では、キャビテが形成される予
定の面からガス抜き路孔に向けてワイヤ放電加工により
溝を形成し、その後でキャビティを形成しているので、
図４に示したように加工当初にエッジ効果で生じる加工
代の広がり部２７をキャビティ２５の形成時に除去する
ことになるから、間隙の小さな溝１４を形成することが
できる。

【００１４】図５は本発明に使用するワイヤ放電加工装
置の一例を示すもので、図中符号３０は、ＸーＹ方向に
移動するテーブル３１、３２に固定されたワークタンク
で、純水等の加工液３３を収容するとともに、ワークＷ
を導電関係をもって把持するアーム３４が取り付けられ
ていて、テーブル３１、３２の移動に一致してワークＷ
を後述するワイヤ３５に対して相対的に運動させるよう
に構成されている。一方、ワークｗを挟む上下方向には
他方の電極となる導電性材料からなワイヤ３５がローラ
２６、２７に張設されていて、ワークＷに対して一定速
度で送り出され、かつ一定圧力で当接され、ワークＷと
の間に電源装置２８からの放電電流が供給されているよ
うに構成されている。

【００１５】このような構成を採るワイヤ放電加工装置
のアーム３４に金型母材をワークＷとして取り付け、ま
た電極となるワイヤ３５として直径５０及至１００ミク
ロンメートル程度の金属細線を用い、ワイヤ３５をワー
クＷに一定圧力で押し当てながら形成すべき溝に合せて
テーブル３１、３２を移動させることにより、ワイヤ３
５に当接する部分がほぼワイヤ３５の直径程度の幅で放
電により除去されて溝が形成されることになる。

【００１６】なお、この実施例では溝２４、２４、２４
を形成してからキャビティ２５を形成するようにしてい
るが、図６に示したように予めキャビティ４０やガス排
出路４１、４２が形成された母材４３を用いて、前述と
同様にワイヤ放電加工によりキャビティ４０からガス排
出路４１、４２に至る溝を形成することもできる。この
場合には図７に示したようにガス排出路４１、４２の近
辺にワイヤ放電加工装置のワイヤ３５をワークの両側端
に貫通させることができる程度の直径を有するイニシャ
ル加工孔４４を穿設しておく。溝を形成する段階で加工
孔４４にワイヤ３５を挿通し、キャビティ方向（図中符
号４５で示す矢印方向）に向けて放電加工を行なうと、
ガス排出路４１、４２とキャビティ４０とを接続する溝
４６を形成できることになる。この実施例によれば前述
したワイヤ放電加工装置のエッジ効果によるキャビティ
表面での溝４６の拡大を防止して、間隙長の小さな溝を
形成することができる。

【００１７】なお、上述の実施例ではガス排出路を形成
した後に、溝を形成するようにしているが、溝を形成し
た後にガス排出路を穿設しても同様の作用を奏すること
は明らかである。

【００１８】ところで、従来の金型は、図９（イ）、
（ロ）にも示したように本体部Ａと入子Ｂ、Ｂ、Ｂとを
用いた分割構造を採ってガス抜き用のスリットを形成す
るようにしていたため、本体部Ａと入子Ｂとの組み付け
に固定ピンＪの使用が不可欠である関係上、軸方向に余
り長い金型では作業が困難となるため、金型の軸方向の
サイズに制限があった。そのため、大型の金型を構成す
る場合には、図９（ハ）に示したように目的の鋳造品の
金型を複数のブロックＫ、Ｌ、Ｍに分割して製作してい
た。この結果、個々のブロックＫ、Ｌ、Ｍにそれぞれ独
立した冷却水路Ｐ、Ｑ、Ｒを形成し、各ブロック毎の冷
却水路Ｐ、Ｑ、Ｒをそれぞれ外部で冷却媒体供給管、排
出管Ｓ、Ｔにより接続して冷却媒体の吸排を行なってい
た。このため、金型近傍の配管構造が複雑になるばかり
でなく、保守点検などの際に配管工事に手間が掛るとい
う問題があった。

【００１９】これに対して上述したように本発明の金型
は、金型となる母材、もしくはキャビティが形成だけの
母材を用い、これにワイヤ放電加工によりキャビティか
らガス排出路に到達する溝を形成することにより構成で
きるため、ワイヤ放電加工装置の能力が許すサイズの単
一母材から金型を構成することができる。この結果、図
８（イ）に示したように鋳造品のサイズに関わりなく固
定金型５０、及び移動金型５１をそれぞれ単一の母材に
より構成し、各金型に軸方向に連続する幹流路５２、５
３を形成し、必要に応じてこれに連通させて枝水路５
４、５４‥‥、５５、５５‥‥を形成することにより、
幹管路５２、５３の流入口、排出口となる開口５６、５
７、５８、５９だけを外部接続部として給水管路、排出
管路に連通させることができる。

【００２０】また、図８（ロ）に示したようにキャビテ
ィ６０の軸方向に平行に複数の幹管路６１、６２となる
通孔を穿設し、これら幹管路６１、６２間を梯状に接続
する枝管路６３、６３、６３‥‥を金型側部から穿設し
て形成し、所要箇所に盲栓６２、６２、６２‥‥を施
し、幹管路６１、６２の端部に冷却媒体の流入口６４、
排出口６５を形成するだけで冷却管路系が構成でき、冷
却媒体の管路を極めて簡素化することができるという効
果がある。

【００２１】なお、この実施例においては放電加工によ
り溝を形成するようにしているが、放電加工と同様に電
極形状に対して雌型に母材を除去できる電解加工装置を
用いてもガスの通過は可能ならしめるが、溶湯の通過は
阻止する程度の間隙の溝を形成できることは明らかであ
る。

【００２２】また、上述の実施例においてはカムシャフ
トに例を採って説明したが、前述したように本願発明に
おいては鋳造すべき製品のサイズに制約を受けないか
ら、キャビティとガス排出路とを連通させるガス通路を
必要とする金型全てに適用できることは明らかである。

【００２３】

【発明の効果】以上説明したように本発明においては、
鋳造製品のプロフィールに一致するキャビティが形成さ
れ、かつキャビティに沿うように穿設されたガス排出路
を有する金型母材に、キャビティが形成される面からガ
ス抜き路に到達する位置までガスの通過を可能ならしめ
る一方、溶融金属の通過を阻止する間隙長を有する溝を
形成したので、入子の組み付けなどの面倒な作業を要す
ることなく、しかもガスの停滞し易い箇所を選んで溝を
形成することにができ、また各パートの全てが基台部で
母材段階と同様に一体となっていてそのまま鋳造装置に
セットして使用できるばかりでなく、入子のように移動
する畏れのある部材を有していないからキャビティの形
状精度を長期間維持して高い信頼性を発揮する。

【００２４】さらには本質的に軸方向長さに制限を受け
ることがないので、金型内の冷却媒体流路を連続した孔
により構成できるから、冷却媒体を供給、排出する外部
管路との接続構造を簡素化することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の金型の一実施例を示す斜視図である。

【図２】本発明の金型を金型装置にセットした状態を示
す断面図である。

【図３】同図（イ）及至（ハ）はそれぞれ本発明の金型
の製造方法の一実施例を、キャビテイ及びガス排出路を
中心にして示す説明図である。

【図４】ワイヤ放電加工装置の加工状態を示す説明図で
ある。

【図５】ワイヤ放電加工装置の一例を示す構成図であ
る。

【図６】本発明の他の実施例を示す溝形成前の金型母材
をキャビテイ、及びガス排出路を中心にして示す斜視図
である。

【図７】本発明における溝形成方法の他の実施例を示す
説明図である。

【図８】同図（イ）、（ロ）はそれぞれ本発明により構
成された金型に形成される冷却媒体の流路の実施例を示
す図である。

【図９】同図（イ）、（ロ）はそれぞれ従来の金型装
置、及びこれに使用される入子の一例を示す図であり、
また同図（ハ）は従来のもので大型鋳造品の製造を可能
とする金型を構成した場合における冷却媒体の流路を示
す断面図である。

【符号の説明】

１ 金型母材 ２ キャビティ ３、４ ガス排出路 ５、６、７、８ 溝 １０ 台座

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鋳造製品のプロフィールに一致するキャ
   ビティが形成され、かつキャビティに沿うように穿設さ
   れたガス排出路を有する金型母材に、前記キャビティが
   形成される面から前記ガス抜き路に到達する位置までガ
   スの通過を可能ならしめる一方、溶融金属の通過を阻止
   する間隙長を有する溝を形成してなるダイカスト用金
   型。
2. 【請求項２】 鋳造製品のプロフィールに一致するキャ
   ビティが形成され、かつキャビティに沿うように穿設さ
   れたガス排出路、及び該ガス排出路より前記キャビティ
   側から離れた位置で前記キャビティの軸方向に延び、か
   つ軸端近傍に冷却媒体の流入出口を有する冷却水路を備
   えた金型母材に、前記キャビティが形成される面から前
   記ガス抜き路に到達する位置までガスの通過を可能なら
   しめる一方、溶融金属の通過を阻止する間隙長を有する
   溝を形成してなるダイカスト用金型。
3. 【請求項３】 金型母材にガス排出路を形成する工程
   と、ガスの通過を可能ならしめる一方、溶融金属の通過
   を阻止する間隙長を有する溝を、キャビティが形成され
   る面から前記ガス排出路に到達する位置まで形成する工
   程と、鋳造製品のプロフィールに一致するキャビティを
   形成する工程からなるダイカスト用金型の製造方法。
4. 【請求項４】 金型母材にガス排出路を形成する工程
   と、鋳造製品のプロフィールに一致するキャビティを形
   成する工程と、ガスの通過を可能ならしめる一方、溶融
   金属の通過を阻止する間隙長を有する溝を、キャビティ
   面から前記ガス排出路に到達する位置まで形成する工程
   とからなるダイカスト用金型の製造方法。