JPH05222086A - 抗生物質アルデカルマイシンとその製造法、並びにその誘導体とその製造法 - Google Patents

抗生物質アルデカルマイシンとその製造法、並びにその誘導体とその製造法

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JPH05222086A
JPH05222086A JP15371391A JP15371391A JPH05222086A JP H05222086 A JPH05222086 A JP H05222086A JP 15371391 A JP15371391 A JP 15371391A JP 15371391 A JP15371391 A JP 15371391A JP H05222086 A JPH05222086 A JP H05222086A
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良和 高橋
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力 澤
Ryuichi Sawa
竜一 澤
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 低毒性で多剤耐性菌(メチシリン耐性菌等)
に優れた抗菌活性を示す抗生物質を提供する。 【構成】 下記式(I)で表わされるアルデカルマイシ
ン及びそのアセタール誘導体。 〔式中、Rはアルデヒド基である。〕式(I)の化合物
は、たとえば、ストレプトミセスMJ147−72F6
株を培養することにより得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抗菌活性を有する新規な
抗生物質であるMJ147−72F6物質およびアセタ
ール誘導体に関し、またMJ147−72F6物質およ
びそのアセタール誘導体の製造法に関する。さらに本発
明はMJ147−72F6物質を生産できる特性を持つ
新規な微生物、ストレプトミセス MJ147−72F
6株に関する。さらに本発明はMJ147−72F6物
質およびそれのアセタール誘導体を有効成分とする抗菌
剤に関する。
【0002】
【従来の技術】細菌感染症の化学療法において、多剤耐
性菌の出現は重大な問題である。従来知られるまたは使
用されている既知の抗菌性化合物とは異なる化学構造上
の骨格を有し且つ優れた抗菌活性と性質を示す新しい化
合物を発見または創製することは常に要望されており、
そのための研究が行われている。
【0003】
【発明が解決すべき課題】本発明は、上記の要望に応え
ることのできる抗菌活性をもつ新規な抗生物質を提供す
ることを目的にするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは有用
な新規抗生物質を発見すべく研究を行い、その結果、新
規な微生物として、ストレプトセミス属に属する菌株を
分離することに成功し、またこの菌株が新しい構造骨格
を有する抗生物質を産生することを見い出した。そし
て、この物質を単離することに成功してMJ147−7
2F6物質と命名した。このMJ147−72F6物質
がグラム陽性の細菌並びにその薬剤耐性菌(メチシリン
耐性菌等)に抗菌活性を示すことを見い出した。さらに
研究を続けMJ147−72F6物質のアセタール誘導
体{後記の式(I)のRが
【0005】
【0006】である場合の誘導体}を作り分析すること
により、MJ147−72F6物質の化学構造を決定し
た。そしてMJ147−72F6物質が新規化合物であ
ること及びヘキサピラノース環を含むことを確認し、後
記の式(I)により表わせることを知見した。
【0007】しかして、本発明は、ストレプトミセス属
に属する微生物を培養して得られて本発明者らによりM
J147−72F6物質と命名された物質およびその製
造法、並びにそのアセタール誘導体およびその製造法に
ついて提供するものである。さらに、本発明はMJ14
7−72F6物質およびそのアセタール誘導体を有効成
分とする抗菌剤を提供するものである。
【0008】すなわち、第1の本発明によると次式
(I)
【0009】
【0010】〔式中、Rはアルデヒド基−CHOであ
る〕で表わされる抗生物質MJ147−72F6物質も
しくはその水和物が提供される。
【0011】本発明による式(I)のMJ147−72
F6物質の理化学的性質は次の通りである。
【0012】(1)外観 白色粉末 (2)分子式 C3354 (3)元素分析 実験値 計算値(C3354・1/2 HOとして) C 65.48 65.64% H 9.29 9.18% O 25.47 25.18% (4)高分解能質量分析(HRFABMS:負イオンモード) 実験値 :593.3687(M−H) 計算値(C3353として):593.3689 (5)融点 125〜128℃ (6)比旋光度 [α] 26−78.7°(c 1.0,メタノール) (7)紫外線吸収スペクトル 添付図面の図1に示す通りである。
【0013】(8)赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤
法) 添付図面の図2の通りである。
【0014】(9)プロトン核磁気共鳴スペクトル 400MHzにおいて重メタノール中で室温にて測定し
たプロトンNMRスペクトルは、添付図面の図3に示す
通りである。
【0015】(10)炭素13核磁気共鳴スペクトル 100MHzにおいて重メタノール中で室温にて測定し
た炭素13NMRスペクトルは、添付図面の図4に示す
通りである。
【0016】(11)溶解性 メタノール、エタノール、ジオキサン、ジメチルスルフ
ォキシドに可溶であるが水、ヘキサンに不溶である。
【0017】(12)TLC シリカゲル60F254(メルク社製)の薄層クロマト
グラフィーで展開溶媒としてクロロホルム−メタノール
(20:3)で展開したときのRf値は0.39であ
る。
【0018】なお、本発明の式(I)のMJ147−7
2F6物質の水和物は式(I)のRとしてのアルデヒド
基−CHOが基−CH(OH)の形に転化しているも
のである。これは、含水有機溶媒中でのNMR分析から
認められる。
【0019】以下に、次式(I′−a)
【0020】
【0021】で表わされるMJ147−72F6物質ア
セタール誘導体の理化学的性質を示す。
【0022】(1)外観 白色粉末 (2)分子式 C355810 (3)高分解能質量分析(HRFABMS:負イオンモード) 実験値 :637.3935(M−H) 計算値(C355710として):637.3952 (4)融点 113〜117℃ (5)比旋光度 [α] 26−73.6°(c 1.0メタノール) (6)紫外線吸収スペクトル 末端吸収のみである。
【0023】(7)赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤
法) 添付図面の図5に示す通りである。
【0024】(8)プロトン核磁気共鳴スペクトル 400MHzにおいて重メタノール中で室温にて測定し
たプロトンNMRスペクトルは、添付図面の図6に示す
通りである。
【0025】(9)炭素13核磁気共鳴スペクトル 100MHzにおいて重メタノール中で室温にて測定し
た炭素13NMRスペクトルは、添付図面の図7に示す
通りである。
【0026】(10)溶解性 メタノール、エタノール、ジオキサン、ジメチルスルフ
ォキシドに可溶であるが、水、ヘキサンに不溶である。
【0027】(11)TLC シリカゲル60F254(メルク社製)の薄層クロマト
グラフィーで展開溶媒としてクロロホルム−メタノール
(20:3)で展開したときのRf値は0.46であ
る。
【0028】本発明による新規抗生物質MJ147−7
2F6物質が前記の式(I)で示される化学構造を有す
ることは、前記の式(I′−a)で示されるMJ147
−72F6物質アセタール誘導体のプロトンNMR,炭
素13NMR等の分析を詳細に検討することにより前記
の通り決定された。
【0029】本発明による式(I)のMJ147−72
F6物質および式(I′−a)のMJ147−72F6
物質アセタール誘導体は後記の生物学的性質を有する。
【0030】すなわち、MJ147−72F6物質物質
(I)およびそのアセタール誘導体(I′−a)は、薬
剤耐性菌(メチシリン耐性菌等)を含むグラム陽性の細
菌に対して抗菌活性を示す。またMJ147−72F6
物質およびそのアセタール誘導体は、ほ乳動物に対する
急性毒性が低い。
【0031】試験例1 各種の微生物に対するMJ147−72F6物質(I)
およびそのアセタール誘導体(I′−a)の抗菌スペク
トルは日本化学療法学会標準法に基づき、ミュラ・ヒン
トン寒天培地上で倍数希釈法によって測定した。その結
果を表1に示す。
【0032】 表 1 最小発育阻止濃度(MIC.)( μg/ml) MJ147-72F6物質(I) MJ147-72F6物質のアセ タール誘導体(I′−a) 供 試 菌 スタフィロコッカス・ アウレウス FDA209P 6.25 6.25 スタフィロコッカス・ アウレウス スミス 12.5 6.25 スタフィロコッカス・ アウレウス(多剤耐性) MS9610 6.25 6.25 スタフィロコッカス・ アウレウス(メチシリン 耐性)No. 5 12.5 6.25 スタフィロコッカス・ アウレウス(メチシリン 耐性)No. 17 12.5 6.25 ミクロコッカス・ルテウス FDA16 12.5 12.5 ミクロコッカス・ルテウス IFO3333 12.5 12.5 ミクロコッカス・ルテウス PCI1001 50 12.5 バチルス・アントラシス 6.25 6.25 バチルス・ズブチリス NRRL B-558 6.25 6.25 バチルス・ズブチリス PCI219 6.25 6.25 バチルス・セレウス ATCC10702 6.25 6.25 コリネバクテリウム・ ボビス 1810 12.5 6.25 エシエリヒア・コリ NIHJ >100 >100 エシエリヒア・コリ K-12 >100 >100 シゲラ・ディセンテリエ JS11910 >100 >100 サルモネラ・ティフィ T-63 >100 >100 プロテウス・ブリガリス OX19 >100 >100 セラチア・マルセッセンス >100 >100 シユドモナス・エルギノサ A3 >50 100 シユドモナス・エルギノサ GN315 100 >100 クレブシエラ・ニュウ モニエ >100 >100 マイコバクテリウム・スメ グマティス ATCC607 100 12.5 カンジダ・アルビカンス 3147 100 25 試験例2 マウスを使用して式(I)のMJ147−72F6物質
および式(I′−a)のMJ147−72F6物質アセ
タール誘導体の急性毒性を試験するに当たって、10%
ジメチルスルホキシドおよび少量のツイーン80含有の
生理食塩水にMJ147−72F6物質またはその該ア
セタール誘導体を溶解し、その溶液を尾静脈に注射し、
マウスを14日間観察した。その結果、MJ147−7
2F6物質のLD50は100mg/kg、また前記M
J147−72F6物質アセタール誘導体は、100m
g/kgで毒性は認められなかった。
【0033】さらに、第2の本発明によると、ストレプ
トミセス属に属する前記の式(I)のMJ147−72
F6物質の生産菌を培養し、培養物からMJ147−7
2F6物質を採取することを特徴とする式(I)の抗生
物質MJ147−72F6物質の製造法が提供される。
【0034】本発明の方法で使用するMJ147−72
F6物質生産菌は前述した理化学的性質および生物学的
性質を有する抗生物質を生産する能力を有するものであ
れば、その種を問わず使用でき広範な微生物から選ぶこ
とができる。かかる微生物のうち、MJ147−72F
6物質生産菌の具体的な好適の一例は、本発明者らによ
り平成元年9月に微生物化学研究所において東京都世田
谷区の土醸より分離された放線菌で、MJ147−72
F6株の菌株番号が付された菌株である。
【0035】以下にMJ147−72F6株の菌学的諸
性質について記載する。
【0036】1.形態 MJ147−72F6株は、分枝した基中菌糸より、6
〜8回転のらせんを有する気菌糸を伸長する。輪生枝お
よび胞子のうは認められない。気菌糸の先端には50個
以上の胞子の連鎖を認め、胞子の大きさは約0.6〜
0.7×0.7〜1.2ミクロンであった。なお、胞子
の表面は平滑である。
【0037】2.各種培地における生育状態 色の記載について〔 〕内に示す標準は、コンティナー
・コーポレーション・オブ・アメリカのカラー・ハーモ
ニー・マニュアル(Container Corpor
ation of America のcolor h
armoneymanual)を用いた。
【0038】(1)シュクロース・硝酸塩寒天培地(2
7℃培養) 無色の発育上に、黄味灰〔1 1/2ec,Putty〕の
気菌糸をうっすらと着生し、溶解性色素は認められな
い。
【0039】(2)グルコース・アスパラギン寒天培地
(27℃培養) 発育は貧弱でうす黄、気菌糸は着生せず、溶解性色素は
認められない。
【0040】(3)グリセリン・アスパラギン寒天培地
(ISP−培地5、27℃培養) 発育は明るい茶灰〔2ge,Covert Tan〜2
ig,Slate Tan〕、気菌糸は着生せず、溶解
性色素はわずかに茶灰をおびる。
【0041】(4)スターチ・無機塩寒天培地(ISP
−培地4、27℃培養) 発育は良好で、うすオリーブ〔1 1/2ie,Lt Ol
ive〕〜うす黄茶〔2ie,Lt Mustard
Tan〜2le,Mustard〕を呈し、黄味灰〔1
ba,Yellow Tint〕の気菌糸を着生する。
溶解性色素は認められない。
【0042】(5)チロシン寒天培地(ISP−培地
7、27℃培養) 発育はうす黄茶〔2ie,Lt Mustard Ta
n〕〜オリーブ灰〔1li,Lt Olive Dra
b〕、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められない。
【0043】(6)栄養寒天培地(27℃培養) 発育は貧弱で、黄茶〔3ni,Clove Brow
n〕、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められない。
【0044】(7)イースト・麦芽寒天培地(ISP−
培地2、27℃培養) 発育は、うす黄茶〔2ng,Dull Gold〜2p
i,MustardBrown〕、気菌糸は着生せず、
溶解性色素はわずかに茶色味を帯びる。
【0045】(8)オートミール・寒天培地(ISP−
培地3、27℃培養) 発育は無色、黄味灰〔2ba,Pearl〕の気菌糸を
わずかに着生し、溶解性色素は認められない。
【0046】(9)グリセリン・硝酸塩寒天培地(27
℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められ
ない。
【0047】(10)スターチ寒天培地(27℃培養) うす黄茶〔2ie,Lt Mustard Tan〕〜
灰味黄茶〔2pl,Mustard Brown〕の発
育上に、白色の気菌糸をわずかに着生する。溶解性色素
は認められない。
【0048】(11)リンゴ酸石灰寒天培地(27℃培
養) 発育は無色、気菌糸は着生ぜず、溶解性色素は認められ
ない。
【0049】(12)セルロース(濾紙片添加合成液、
27℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められ
ない。
【0050】(13)ゼラチン穿刺培養 15%単純ゼラチン培地(20℃培養)では、発育はう
す黄、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められない。
グルコース・ペプトン・ゼラチン培地の場合、27℃培
養では生育が認められず、20℃培養でごくわずかに無
色の発育を認めるが、気菌糸および溶解性色素は観察さ
れない。
【0051】(14)脱脂牛乳(37℃培養) 発育は無色〜うす黄、気菌糸は着生せず、溶解性色素も
認められない。
【0052】3.生理的性質 (1)生育温度範囲 グルコース・アスパラギン寒天培地(グルコース1.0
%,アスパラギン0.05%,リン酸二カリウム0.0
5%,紐寒天3.0%,pH7.0)およびスターチ・
無機塩寒天培地(ISP−培地4)を用い、6℃、10
℃、20℃、24℃、27℃、30℃、37℃、50℃
の各温度で試験した結果、50℃を除き、そのいずれの
温度でも発育し、生育至適温度は24℃付近と思われ
る。
【0053】(2)ゼラチンの液化(15%単純ゼラチ
ン培地、20℃培養;グルコース・ペプトン・ゼラチン
培地、20℃および27℃培養) 15%単純ゼラチン培地では培養後7日目頃より液化が
始まるが、その作用は中等度である。グルコース・ペプ
トン・ゼラチン培地においては、生育が極めて悪く、培
養後20日間を経過しても液化は認められなかった。
【0054】(3)スターチの加水分解(スターチ・無
機塩寒天培地およびスターチ寒天培地、いずれも27℃
培養) いずれの培地においても培養後10日目頃より、水解性
が認められその作用は中等度である。
【0055】(4)脱脂牛乳の凝固・ペプトン化(脱脂
牛乳、37℃培養) 35日間の培養で凝固及びペプトン化は認められない。
【0056】(5)メラニン様色素の生成(トリプトン
・イースト・ブロス、ISP−培地1;ペプトン・イー
スト・鉄寒天培地、ISP−培地6;チロシン寒天培
地、ISP−培地7;いずれも27℃培養) いずれの培地でも陰性である。
【0057】(6)炭素源の利用性(プリドハム・ゴド
リーブ寒天培地、ISP−培地9:スターチ・無機塩寒
天培地(ISP−培地4)のスターチ抜き;いずれも2
7℃培養) 双方の培地で、D−グルコース、L−アラビノース、D
−キシロース、ラムノース、スターチを利用して発育
し、シュクロース、イノシトール、ラフィノースは利用
しない。D−フラクトース、D−マンニトール、ラクト
ースはおそらく利用すると思われる。
【0058】(7)リンゴ酸石灰の溶解(リンゴ酸石灰
寒天培地、27℃培養) 陰性である。
【0059】(8)硝酸塩の還元反応(0.1%硝酸カ
リウム含有ペプトン水、ISP−培地8、27℃培養) 陰性である。
【0060】(9)セルロースの分解(濾紙片添加合成
液、27℃培養) 40日間培養の観察では分解は認められない。
【0061】以上の性状を要約すると、MJ147−7
2F6株は、その形態上、気菌糸がらせん形成を有し、
輪生枝及び胞子のうは認められない。気菌糸の先端には
50個以上の胞子を連鎖し、その表面は平滑である。種
々の培地で、発育は無色あるいはうす黄茶を呈し、気菌
糸は着生が少なく、溶解性色素も認められない。至適生
育温度は24℃付近にあり、比較的低い温度でも生育が
認められる。メラニン様色素の生成は陰性、スターチの
水解性は中等度、脱脂牛乳の凝固・ヘプトン化は認めら
れず、15%単純ゼラチンの液化は中等度である。この
生産菌はアロエ(ユリ科 アロエ属 キダチロカイ)エ
キスにグリセリン、イーストエキス及び無機塩を加えた
特殊な培地上に30℃で分離されたものであるが、その
組成の培地に最も良く生育する。次に生育の良いのがス
ターチ・無機塩寒天培地(ISP−培地4)であり、生
育の良い場合は黄味灰の気菌糸を豊富(ぼってりと)に
着生する。又、前に述べた生育状態の記載では顕著でな
いが、グリセリン・アスパラギン寒天培地(ISP−培
地5)等でCovert Tan〜Slate Tan
の発育と記されており、黒っぽい色を呈するのもこの株
の特徴である。
【0062】なお、細胞壁に含まれる2,6−ジアミノ
ピメリン酸はLL−型であった。
【0063】これらの性状より、MJ147−72F6
株は、ストレプトミセス(Streptomyces
属に属すると考えられる。
【0064】MJ147−72F6株を工業技術院微生
物工業技術研究所に寄託申請し、平成3年4月9日、微
工研菌寄第12174号として受託された。
【0065】第2の本発明の方法においては、MJ14
7−72F6物質の製造は次の通り行われる。
【0066】すなわち、MJ147−72F6物質の製
造はMJ147−72F6物質生産菌を栄養培地中に接
種して、27℃の温度で好気的に振とうしながら培養す
ることによって行われ、MJ147−72F6物質を含
む培養物が得られる。このような目的に用いる栄養培地
としては、放線菌の栄養源として使用しうるものが使用
される。栄養源として、例えば市販されているペプト
ン、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、落花生
粉、大豆粉、酵母エキス、硫酸アンモニウム等の窒素源
が使用でき、また、グリセリン、でん粉、グルコース、
ガラクトース、デキストリン等の炭水化物あるいは脂肪
などの炭素源が使用できる。さらに、食塩、リン酸塩、
炭酸カルシウムなどの無機塩を添加して使用できる。そ
の他必要に応じて微量の金属塩を添加することができ
る。これらのものは、MJ147−72F6物質生産菌
が利用し、MJ147−72F6物質の生産に役立つも
のであればよく、公知の放線菌の培養材料はすべて用い
ることができる。
【0067】MJ147−72F6物質生産は、ストレ
プトミセス属に属するMJ147−72F6物質の生産
能を有する微生物が使用される。具体的には、本発明者
らの分離したストレプトミセス MJ147−72F6
株がMJ147−72F6物質を生産することが本発明
者らによって明らかにされているが、その他の菌株につ
いては、抗生物質生産菌の単離の常法によって自然界よ
り分離することが可能である。また、ストレプトミセス
MJ147−72F6株を含めて、MJ147−72
F6物質の生産菌を放射線照射その他の変異処理に付し
て、MJ147−72F6物質の生産能を高める余地も
残っている。さらに、遺伝子工学的手法によってMJ1
47−72F6物質の生産も可能である。
【0068】MJ147−72F6物質は、ストレプト
ミセス属に属するMJ147−72F6物質生産菌を適
当な培地で好気的に培養し、その培養液から目的物を採
取することによって製造することができる。培養温度
は、MJ147−72F6物質生産菌の発育が実質的に
阻害されずにこの抗生物質の生産しうる範囲であれば、
特に制約されるものではなく、使用する生産菌に応じて
選択できるが、好ましくは25−30度の範囲内の温度
を挙げることができる。
【0069】MJ147−72F6物質生産のための種
母としては、寒天培地上、MJ147−72F6株の斜
面培養から得た生育物を使用する。
【0070】このMJ147−72F6株の生育は通常
3ないし4日で最高に達するが、一般に充分な抗菌活性
が培地の付与されるまで続ける。この培養液中のMJ1
47−72F6物質の力価の経時変化はバチルス・ステ
アロサーモフィルスを被検菌とする円筒平板法により測
定できる。
【0071】第2の本発明の方法においては、上記のよ
うにして得られた培養物からMJ147−72F6物質
を採取するが、採取法としては微生物の生産する代謝産
物を採取するのに用いられる手段を適宜利用することか
らなる。たとえば、水と混ざらない溶媒による抽出の手
段、各種吸着剤に対する吸着親和性の差を利用する手
段、ゲルろ過、向流分配を利用したクロマトグラフィー
などを単独または組み合わせて利用しMJ147−72
F6物質を採取できる。
【0072】また、分離した菌体からは、適当な有機溶
媒を用いた溶媒抽出法や菌体破砕による溶出法により菌
体から抽出し上記と同様に単離精製して採取することが
できる。かくして、前記した抗生物質MJ147−72
F6物質が得られる。前記の式(I′−a)で表わされ
るMJ147−72F6物質アセタール誘導体は、式
(I)のMJ147−72F6物質を後記の実施例2に
示される如くジオキサンに溶解し、酸性条件下で2価ア
ルコールとしてエチレングリコールと反応させることに
よって得られたものである。その反応液からは、水と混
じらない有機溶媒による抽出、吸着、向流分配を利用し
たクロマトグラフィー、ゲルろ過等を組合せることによ
り、式(I′−a)で表わされるMJ147−72F6
物質アセタール誘導体を採取できた。
【0073】他方、一般的には、式(I)のMJ147
−72F6物質のアルデヒド基(−CHO)に後記の式
(II)で表わされる1価アルコール、例えばメタノー
ル、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、
ベンジルアルコール、もしくは後記の式(III)で表わ
される2価アルコール、例えばエチレングリコール、プ
ロピレングリコール、ブチレングリコールまたはカテコ
ールを有機溶媒、例えばジオキサン、ジメチルホルムア
ミド中で酸性条件下に、例えばカンフアー・スルホン酸
又は塩化水素の存在下に室温で又は加熱下に反応させる
と、後記の式(I'')で表わされるMJ147−72F
6物質のアセタール誘導体が製造できることが本発明者
らにより知見された。
【0074】従って、第3の本発明によると、次式
(I′)
【0075】
【0076】〔式中、R′は次式
【0077】
【0078】(但し2個のRは夫々に任意の炭素数の
脂肪族または芳香族の基、例えば低級アルキル基または
アラルキル基、特にベンジル基であるか、あるいは2個
のRは連結して任意の炭素数の脂肪族または芳香族の
基1個、例えば低級アルキレン基をなす)で示される基
である〕で表わされるMJ147−72F6物質のアセ
タール誘導体が提供される。
【0079】さらにまた、第4の本発明によると、前記
の式(I)のMJ147−72F6物質のアルデヒド基
(−CHO)に次式 R−OH (II) 〔式中、Rは任意の炭素数の脂肪族または芳香族の
基、例えばアルキル基である〕の1価アルコール、もし
くは次式 HO−R−OH (III ) 〔式中、Rは任意の炭素数の脂肪族または芳香族の
基、例えば低級アルキレン基である〕の2価アルコール
を反応させることから成る、次式(I'')
【0080】
【0081】〔式中、R''は次式
【0082】
【0083】(但しRは前記の意味をもつ)で示され
る基であるか、もしくは次式
【0084】
【0085】(但しRは前記の意味をもつ)で示され
る基である〕で表わされるMJ147−72F6物質の
アセタール誘導体の製造方法が提供される。
【0086】さらに、第5の本発明では前記の式(I)
のMJ147−72F6物質を生産する特性を持つスト
レプトミセス MJ147−72F6株が提供される。
【0087】また、第6の本発明では、式(I)のMJ
147−72F6物質又は式(I′)のMJ147−7
2F6物質アセタール誘導体を有効成分とする抗菌剤が
提供される。
【0088】この抗菌剤においては、有効成分化合物は
製薬学的に許容できる常用の固体又は液状担体、例えば
エタノール、水、デンプン等と混和できる。
【0089】以下に実施例により本発明をさらに詳細に
説明する。
【0090】実施例1 抗生物質MJ147−72F6物質の製造 寒天斜面培地に培養したストレプトミセス MJ147
−72F6株(微工研菌寄第12174号)を、ガラク
トース2%、デキストリン2%、ソイペプトン1%、コ
ーン・スティープ・リカー0.5%、硫酸アンモニウム
0.2%、炭酸カルシウム0.2%、シリコン1滴を含
む液体培地(pH7.4に調整)を三角フラスコ(50
0ml容)に110mlずつ分注し、常法により120
℃で20分滅菌したものに接種し、その後27℃で3日
間振とう培養した。これにより、種母培養液を得た。
【0091】この種母培養液を、同様に三角フラスコに
分注し滅菌したグルコース2.0%、肉エキス3.0
%、硫酸アンモニウム0.6%、硫酸マグネシウム0.
3%、リン酸二カリウム0.6%、炭酸カルシウム0.
2%、シリコン1滴を含む液体培地(pH無修正)6l
に2%量を接種し、27℃で4日間振とう培養した。
【0092】このようにして得られた培養液を遠心分離
機にかけ菌体を分離した。この菌体にメタノール1lを
加え、撹はんしろ過した。このろ液はメタノールを減圧
下にて濃縮したあと、先の遠心上澄液と合わせてpH
2.0に調整後、酢酸ブチル6.5lでMJ147−7
2F6物質を抽出した。この抽出液を減圧下において濃
縮し、得られた残さ6.4gをシリカゲルカラムクロマ
トグラフィー(50g)を行い、クロロホルム−メタノ
ール(10:1)で溶出した。この溶出活性画分を集
め、減圧下において濃縮して得られた粗粉末を遠心液液
クロマトグラフィーによりクロロホルム−メタノール−
水(5:6:4)の溶媒系を用いて溶出した。
【0093】MJ147−72F6物質を含む活性画分
は減圧濃縮後、セファデックスLH−20カラムクロマ
トグラフィー(500ml)を行い、メタノールで展開
して精製した。この粗精製物は、シリカゲルプレートで
クロロホルム−メタノール−水(4:1:0.1)で展
開し活性画分をシリカゲルプレートからかきとり、メタ
ノールで抽出した。次にメタノールを減圧除去した残渣
の活性物質をセファデックスLH−20カラムクロマト
グラフィー(300ml)を行いメタノールで展開し
た。この活性画分から、減圧下で濃縮して154mgの
MJ147−72F6物質を白色粉末として得た。
【0094】さらに純度を上げるために、ここで得られ
た物質の一部(約100mg)を逆相のシリカゲルの高
速液体クロマトグラフィーを用いて75%アセトニトリ
ル水溶液で展開した。MJ147−72F6物質の単一
の画分を集めて濃縮し、再び遠心液液クロマトグラフィ
ーによりヘキサン−メタノールの溶媒系を用いて精製
し、高純度の式(I)のMJ147−72F6物質の白
色粉末48.4mgを得た。
【0095】実施例2 抗生物質MJ147−72F6物質のアセタール誘導体
の製造 MJ147−72F6物質から、それのアセタール誘導
体の製造は、公知の手法に基づいて行った。すなわち実
施例1によって得られたMJ147−72F6物質5
8.0mgを1mg/mlのカンファー・スルホン酸含
有のジオキサン溶液5.8mlに溶解し、これに2価ア
ルコールとしてエチレングリコール145μlを加えて
室温で2日間反応させた。
【0096】この反応液に飽和の炭酸水素ナトリウム水
溶液20mlを加え中和し酢酸エチル40mlで抽出し
た。この抽出液は、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、
減圧下で乾固し55.3mgの粗粉末を得た。これをシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(5g)にかけて、
酢酸エチル−メタノール(15:1)で展開し、MJ1
47−72F6物質のアセタール誘導体を含む画分を集
めて濃縮乾固した(24.6mg)。
【0097】さらに精製するためにセファデックスLH
−20カラムクロマトグラフィー(200ml)により
メタノールで溶出してMJ147−72F6物質のアセ
タール誘導体の単一画分を集め、21.2mgの白色粉
末を得た。最後に遠心液液クロマトグラフィーをヘキサ
ン−メタノール系を用いて行い、前記の式(I′−a)
で表わされるMJ147−72F6物質アセタール誘導
体の15.9mgを白色粉末として得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はMJ147−72F6物質のメタノール
溶液中の紫外線吸収スペクトルである。
【図2】図2はMJ147−72F6物質のKBr錠剤
法で測定した赤外線吸収スペクトルである。
【図3】図3はMJ147−72F6物質の重メタノー
ル溶液中にて室温で測定した400MHzにおけるプロ
トン核磁気共鳴スペクトルである。
【図4】図4はMJ147−72F6物質の重メタノー
ル溶液中にて室温で測定した100MHzにおける炭素
13核磁気共鳴スペクトルである。
【図5】図5はMJ147−72F6物質のアセタール
誘導体のKBr錠剤法で測定した赤外線吸収スペクトル
である。
【図6】図6はMJ147−72F6物質のアセタール
誘導体の重メタノール溶液中にて室温で測定した400
MHzにおけるプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図7】図7はMJ147−72F6物質のアセタール
誘導体の重メタノール溶液中にて室温で測定した100
MHzにおける炭素13核磁気共鳴スペクトルである。
【手続補正書】
【提出日】平成4年1月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 抗生物質アルデカルマイシンとそ
の製造法、並びにその誘導体とその製造法
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抗菌活性を有する新規な
抗生物質であるアルデカルマイシンおよびアセタール誘
導体に関し、またアルデカルマイシンおよびそのアセタ
ール誘導体の製造法に関する。さらに本発明はアルデカ
ルマイシンを生産できる特性を持つ新規な微生物、スト
レプトミセス MJ147−72F6株に関する。さら
に本発明はアルデカルマイシンおよびそれのアセタール
誘導体を有効成分とする抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】細菌感染症の化学療法において、多剤耐
性菌の出現は重大な問題である。従来知られるまたは使
用されている既知の抗菌性化合物とは異なる化学構造上
の骨格を有し且つ優れた抗菌活性と性質を示す新しい化
合物を発見または創製することは常に要望されており、
そのための研究が行われている。
【0003】
【発明が解決すべき課題】本発明は、上記の要望に応え
ることのできる抗菌活性をもつ新規な抗生物質を提供す
ることを目的にするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは有用
な新規抗生物質を発見すべく研究を行い、その結果、新
規な微生物として、ストレプトミセス属に属する菌株を
分離することに成功し、またこの菌株が新しい構造骨格
を有する抗生物質を産生することを見い出した。そし
て、この物質を単離することに成功してMJ147−7
2F6物質と当初は命名した。そして、この物質の名を
アルデカルマイシン(Aldecalmycin)と今
回、改称した。このアルデカルマイシンがグラム陽性の
細菌並びにその薬剤耐性菌(メチシリン耐性菌等)に抗
菌活性を示すことを見い出した。さらに研究を続けて
ルデカルマイシンのアセタール誘導体{後記の式(I)
のRが である場合の誘導体}を作り分析することにより、アル
デカルマイシンの化学構造を決定した。そしてアルデカ
ルマイシンが新規化合物であること及びヘキサピラノー
ス環を含むことを確認し、後記の式(I)により表わせ
ることを知見した。
【0005】しかして、本発明は、ストレプトミセス属
に属する微生物を培養して得られて本発明者らにより
ルデカルマイシンと命名された物質およびその製造法、
並びにそのアセタール誘導体およびその製造法について
提供するものである。さらに、本発明はアルデカルマイ
シンおよびそのアセタール誘導体を有効成分とする抗菌
剤を提供するものである。
【0006】すなわち、第1の本発明によると次式
(I) 〔式中、Rはアルデヒド基−CHOである〕で表わされ
る抗生物質アルデカルマイシンもしくはその水和物が提
供される。
【0007】本発明による式(I)のアルデカルマイシ
の理化学的性質は次の通りである。
【0008】(1)外観 白色粉末 (2)分子式 C33549 (3)元素分析 実験値 計算値(C33549 ・1/2 H2 Oとして) C 65.48 65.64% H 9.29 9.18% O 25.47 25.18% (4)高分解能質量分析(HRFABMS:負イオンモード) 実験値 :593.3687(M−H)- 計算値(C33539 として):593.3689 (5)融点 125〜128℃ (6)比旋光度 [α]D 26−78.7°(c 1.0,メタノール) (7)紫外線吸収スペクトル 添付図面の図1に示す通りである。
【0009】(8)赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤
法) 添付図面の図2の通りである。
【0010】(9)プロトン核磁気共鳴スペクトル 400MHzにおいて重メタノール中で室温にて測定し
たプロトンNMRスペクトルは、添付図面の図3に示す
通りである。
【0011】(10)炭素13核磁気共鳴スペクトル 100MHzにおいて重メタノール中で室温にて測定し
た炭素13NMRスペクトルは、添付図面の図4に示す
通りである。
【0012】(11)溶解性 メタノール、エタノール、ジオキサン、ジメチルスルフ
ォキシドに可溶であるが水、ヘキサンに不溶である。
【0013】(12)TLC シリカゲル60F254 (メルク社製)の薄層クロマトグ
ラフィーで展開溶媒としてクロロホルム−メタノール
(20:3)で展開したときのRf値は0.39であ
る。
【0014】なお、本発明の式(I)のアルデカルマイ
シンの水和物は式(I)のRとしてのアルデヒド基−C
HOが基−CH(OH)2 の形に変化しているものであ
る。これは、含水有機溶媒中でのNMR分析から認めら
れる。
【0015】以下に、次式(I′−a) で表わされるアルデカルマイシンのアセタール誘導体の
理化学的性質を示す。
【0016】(1)外観 白色粉末 (2)分子式 C355810 (3)高分解能質量分析(HRFABMS:負イオンモード) 実験値 :637.3935(M−H)- 計算値(C355710として):637.3952 (4)融点 113〜117℃ (5)比旋光度 [α]D 26−73.6°(c 1.0,メタノール) (6)紫外線吸収スペクトル 末端吸収のみである。
【0017】(7)赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤
法) 添付図面の図5に示す通りである。
【0018】(8)プロトン核磁気共鳴スペクトル 400MHzにおいて重メタノール中で室温にて測定し
たプロトンNMRスペクトルは、添付図面の図6に示す
通りである。
【0019】(9)炭素13核磁気共鳴スペクトル 100MHzにおいて重メタノール中で室温にて測定し
た炭素13プロトンNMRスペクトルは、添付図面の図
7に示す通りである。
【0020】(10)溶解性 メタノール、エタノール、ジオキサン、ジメチルスルフ
ォキシドに可溶であるが、水、ヘキサンに不溶である。
【0021】(11)TLC シリカゲル60F254 (メルク社製)の薄層クロマトグ
ラフィーで展開溶媒としてクロロホルム−メタノール
(20:3)で展開したときのRf値は0.46であ
る。
【0022】本発明による新規抗生物質であるアルデカ
ルマイシンが前記の式(I)で示される化学構造を有す
ることは、前記の式(I′−a)で示されるアルデカル
マイシンのアセタール誘導体のプロトンNMR,炭素1
3NMR等の分析を詳細に検討することにより前記の通
り決定された。
【0023】本発明による式(I)のアルデカルマイシ
および式(I′−a)のアルデカルマイシン・アセタ
ール誘導体は後記の生物学的性質を有する。
【0024】すなわち、アルデカルマイシン(I)およ
びそのアセタール誘導体(I′−a)は、薬剤耐性菌
(メチシリン耐性菌等)を含むグラム陽性の細菌に対し
て抗菌活性を示す。またアルデカルマイシンおよびその
アセタール誘導体は、ほ乳動物に対する急性毒性が低
い。
【0025】試験例1 各種の微生物に対するアルデカルマイシン(I)および
そのアセタール誘導体(I′−a)の抗菌スペクトルは
日本化学療法学会標準法に基づき、ミュラ・ヒントン寒
天培地上で倍数希釈法によって測定した。その結果を表
1に示す。
【0026】 表 1 最小発育阻止濃度(MIC.)(μg/ml) アルデカルマイシン(I) アルデカルマイシン のアセタール誘導体 供 試 菌 (I′−a) スタフィロコッカス・ アウレウス FDA209P 6.25 6.25 スタフィロコッカス・ アウレウス スミス 12.5 6.25 スタフィロコッカス・ アウレウス(多剤耐性) MS9610 6.25 6.25 スタフィロコッカス・ アウレウス(メチシリン 耐性)No. 5 12.5 6.25 スタフィロコッカス・ アウレウス(メチシリン 耐性)No. 17 12.5 6.25 ミクロコッカス・ルテウス FDA16 12.5 12.5 ミクロコッカス・ルテウス IFO3333 12.5 12.5 ミクロコッカス・ルテウス PCI1001 50 12.5 バチルス・アントラシス 6.25 6.25 バチルス・ズブチリス NRRL B-558 6.25 6.25 バチルス・ズブチリス PCI219 6.25 6.25 バチルス・セレウス ATCC10702 6.25 6.25 コリネバクテリウム・ ボビス 1810 12.5 6.25 エシエリヒア・コリ NIHJ >100 >100 エシエリヒア・コリ K-12 >100 >100 シゲラ・ディセンテリエ JS11910 >100 >100 サルモネラ・ティフィ T-63 >100 >100 プロテウス・ブリガリス OX19 >100 >100 セラチア・マルセッセンス >100 >100 シユドモナス・エルギノサ A3 >50 100 シユドモナス・エルギノサ GN315 100 >100 クレブシエラ・ニュウ モニエ PCI602 >100 >100 マイコバクテリウム・スメ グマティス ATCC607 100 12.5 カンジダ・アルビカンス 3147 100 25 試験例2 マウスを使用して式(I)のアルデカルマイシンおよび
式(I′−a)のアルデカルマイシンのアセタール誘導
体の急性毒性を試験するに当たって、10%ジメチルス
ルホキシドおよび少量のツイーン80含有の生理食塩水
アルデカルマイシンまたはそのアセタール誘導体を溶
解し、その溶液を尾静脈に注射し、マウスを14日間観
察した。その結果、アルデカルマイシンのLD50は10
0mg/kg、または前記アルデカルマイシンのアセタ
ール誘導体は、100mg/kgで毒性は認められなか
った。
【0027】さらに、第2の本発明によると、ストレプ
トミセス属に属する前記の式(I)のアルデカルマイシ
の生産菌を培養し、培養物からアルデカルマイシン
採取することを特徴とする式(I)の抗生物質アルデカ
ルマイシンの製造法が提供される。
【0028】本発明の方法で使用するアルデカルマイシ
生産菌は前述した理化学的性質および生物学的性質を
有する抗生物質を生産する能力を有するものであれば、
その種を問わず使用でき広範な微生物から選ぶことがで
きる。かかる微生物のうち、アルデカルマイシン生産菌
の具体的な好適の一例は、本発明者らにより平成元年9
月に微生物化学研究所において東京都世田谷区の土壌よ
り分離された放線菌で、MJ147−72F6の菌株番
号が付された菌株である。
【0029】以下にMJ147−72F6株の菌学的諸
性質について記載する。
【0030】1.形態 MJ147−72F6株は、分枝した基中菌糸より、6
〜8回転のらせんを有する気菌糸を伸長する。輪生枝お
よび胞子のうは認められない。気菌糸の先端には50個
以上の胞子の連鎖を認め、胞子の大きさは約0.6〜
0.7×0.7〜1.2ミクロンであった。なお、胞子
の表面は平滑である。
【0031】2.各種培地における生育状態 色の記載について〔 〕内に示す標準は、コンティナー
・コーポレーション・オブ・アメリカのカラー・ハーモ
ニー・マニュアル(Container Corpor
ation of America のcolor h
armoneymanual)を用いた。
【0032】(1)シュクロース・硝酸塩寒天培地(2
7℃培養) 無色の発育上に、黄味灰〔1 1/2ec,Putty〕の
気菌糸をうっすらと着生し、溶解性色素は認められな
い。
【0033】(2)グルコース・アスパラギン寒天培地
(27℃培養) 発育は貧弱でうす黄、気菌糸は着生せず、溶解性色素は
認められない。
【0034】(3)グリセリン・アスパラギン寒天培地
(ISP−培地5、27℃培養) 発育は明るい茶灰〔2ge,Covert Tan〜2
ig,Slate Tan〕、気菌糸は着生せず、溶解
性色素はわずかに茶灰をおびる。
【0035】(4)スターチ・無機塩寒天培地(ISP
−培地4、27℃培養) 発育は良好で、うすオリーブ〔1 1/2ie,Lt Ol
ive〕〜うす黄茶〔2ie,Lt Mustard
Tan〜2le,Mustard〕を呈し、黄味灰〔1
ba,Yellow Tint〕の気菌糸を着生する。
溶解性色素は認められない。
【0036】(5)チロシン寒天培地(ISP−培地
7、27℃培養) 発育はうす黄茶〔2ie,Lt Mustard Ta
n〕〜オリーブ灰〔1li,Lt Olive Dra
b〕、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められない。
【0037】(6)栄養寒天培地(27℃培養) 発育は貧弱で、黄茶〔3ni,Clove Brow
n〕、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められない。
【0038】(7)イースト・麦芽寒天培地(ISP−
培地2、27℃培養) 発育は、うす黄茶〔2ng,Dull Gold〜2p
i,MustardBrown〕、気菌糸は着生せず、
溶解性色素はわずかに茶色味を帯びる。
【0039】(8)オートミール・寒天培地(ISP−
培地3、27℃培養) 発育は無色、黄味灰〔2ba,Pearl〕の気菌糸を
わずかに着生し、溶解性色素は認められない。
【0040】(9)グリセリン・硝酸塩寒天培地(27
℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められ
ない。
【0041】(10)スターチ寒天培地(27℃培養) うす黄茶〔2ie,Lt Mustard Tan〕〜
灰味黄茶〔2pl,Mustard Brown〕の発
育上に、白色の気菌糸をわずかに着生する。溶解性色素
は認められない。
【0042】(11)リンゴ酸石灰寒天培地(27℃培
養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められ
ない。
【0043】(12)セルロース(濾紙片添加合成液、
27℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められ
ない。
【0044】(13)ゼラチン穿刺培養 15%単純ゼラチン培地(20℃培養)では、発育はう
す黄、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められない。
グルコース・ペプトン・ゼラチン培地の場合、27℃培
養では生育が認められず、20℃培養でごくわずかに無
色の発育を認めるが、気菌糸および溶解性色素は観察さ
れない。
【0045】(14)脱脂牛乳(37℃培養) 発育は無色〜うす黄、気菌糸は着生せず、溶解性色素も
認められない。
【0046】3.生理的性質 (1)生育温度範囲 グルコース・アスパラギン寒天培地(グルコース1.0
%,アスパラギン0.05%,リン酸二カリウム0.0
5%,紐寒天3.0%,pH7.0)およびスターチ・
無機塩寒天培地(ISP−培地4)を用い、6℃、10
℃、20℃、24℃、27℃、30℃、37℃、50℃
の各温度で試験した結果、50℃を除き、そのいずれの
温度でも発育し、生育至適温度は24℃付近と思われ
る。
【0047】(2)ゼラチンの液化(15%単純ゼラチ
ン培地、20℃培養;グルコース・ペプトン・ゼラチン
培地、20℃および27℃培養) 15%単純ゼラチン培地では培養後7日目頃より液化が
始まるが、その作用は中等度である。グルコース・ペプ
トン・ゼラチン培地においては、生育が極めて悪く、培
養後20日間を経過しても液化は認められなかった。
【0048】(3)スターチの加水分解(スターチ・無
機塩寒天培地およびスターチ寒天培地、いずれも27℃
培養) いずれの培地においても培養後10日目頃より、水解性
が認められその作用は中等度である。
【0049】(4)脱脂牛乳の凝固・ペプトン化(脱脂
牛乳、37℃培養) 35日間の培養で凝固及びペプトン化は認められない。
【0050】(5)メラニン様色素の生成(トリプトン
・イースト・ブロス、ISP−培地1;ペプトン・イー
スト・鉄寒天培地、ISP−培地6;チロシン寒天培
地、ISP−培地7;いずれも27℃培養) いずれの培地でも陰性である。
【0051】(6)炭素源の利用性(プリドハム・ゴド
リーブ寒天培地、ISP−培地9;スターチ・無機塩寒
天培地(ISP−培地4)のスターチ抜き;いずれも2
7℃培養) 双方の培地で、D−グルコース、L−アラビノース、D
−キシロース、ラムノース、スターチを利用して発育
し、シュクロース、イノシトール、ラフィノースは利用
しない。D−フラクトース、D−マンニトール、ラクト
ースはおそらく利用すると思われる。
【0052】(7)リンゴ酸石灰の溶解(リンゴ酸石灰
寒天培地、27℃培養) 陰性である。
【0053】(8)硝酸塩の還元反応(0.1%硝酸カ
リウム含有ペプトン水、ISP−培地8、27℃培養) 陰性である。
【0054】(9)セルロースの分解(濾紙片添加合成
液、27℃培養) 40日間培養の観察では分解は認められない。
【0055】以上の性状を要約すると、MJ147−7
2F6株は、その形態上、気菌糸がらせん形成を有し、
輪生枝及び胞子のうは認められない。気菌糸の先端には
50個以上の胞子を連鎖し、その表面は平滑である。種
々の培地で、発育は無色あるいはうす黄茶を呈し、気菌
糸は着生が少なく、溶解性色素も認められない。至適生
育温度は24℃付近にあり、比較的低い温度でも生育が
認められる。メラニン様色素の生成は陰性、スターチの
水解性は中等度、脱脂牛乳の凝固・プトン化は認めら
れず、15%単純ゼラチンの液化は中等度である。この
生産菌はアロエ(ユリ科 アロエ属 キダチロカイ)エ
キスにグリセリン、イーストエキス及び無機塩を加えた
特殊な培地上に30℃で分離されたものであるが、その
組成の培地に最も良く生育する。次に生育の良いのがス
ターチ・無機塩寒天培地(ISP−培地4)であり、生
育の良い場合は黄味灰の気菌糸を豊富(ぼってりと)に
着生する。又、前に述べた生育状態の記載では顕著でな
いが、グリセリン・アスパラギン寒天培地(ISP−培
地5)等でCovert Tan〜Slate Tan
の発育と記されており、黒っぽい色を呈するのもこの株
の特徴である。
【0056】なお、細胞壁に含まれる2,6−ジアミノ
ピメリン酸はLL−型であった。
【0057】これらの性状より、MJ147−72F6
株は、ストレプトミセス(Streptomyces
属に属すると考えられる。
【0058】MJ147−72F6株を工業技術院微生
物工業技術研究所に寄託申請し、平成3年4月9日、微
工研菌寄第12174号として受託された。
【0059】第2の本発明の方法においては、アルデカ
ルマイシンの製造は次の通り行われる。
【0060】すなわち、アルデカルマイシンの製造は
ルデカルマイシン生産菌を栄養培地中に接種して、27
℃の温度で好気的に振とうしながら培養することによっ
て行われ、アルデカルマイシンを含む培養物が得られ
る。このような目的に用いる栄養培地としては、放線菌
の栄養源として使用しうるものが使用される。栄養源と
して、例えば市販されているペプトン、肉エキス、コー
ン・スティープ・リカー、落花生粉、大豆粉、酵母エキ
ス、硫酸アンモニウム等の窒素源が使用でき、また、グ
リセリン、でん粉、グルコース、ガラクトース、デキス
トリン等の炭水化物あるいは脂肪などの炭素源が使用で
きる。さらに、食塩、リン酸塩、炭酸カルシウムなどの
無機塩を添加して使用できる。その他必要に応じて微量
の金属塩を添加することができる。これらのものは、
ルデカルマイシン生産菌が利用し、アルデカルマイシン
の生産に役立つものであればよく、公知の放線菌の培養
材料はすべて用いることができるアルデカルマイシン 生産菌は、ストレプトミセス属に属
するアルデカルマイシンの生産能を有する微生物が使用
される。具体的には、本発明者らの分離したストレプト
ミセス MJ147−72F6株がアルデカルマイシン
を生産することが本発明者らによって明らかにされてい
るが、その他の菌株については、抗生物質生産菌の単離
の常法によって自然界より分離することが可能である。
また、ストレプトミセス MJ147−72F6株を含
めて、アルデカルマイシンの生産菌を放射線照射その他
の変異処理に付して、アルデカルマイシンの生産能を高
める余地も残っている。さらに、遺伝子工学的手法によ
ってアルデカルマイシンの生産も可能である。
【0061】アルデカルマイシンは、ストレプトミセス
属に属するアルデカルマイシン生産菌を適当な培地で好
気的に培養し、その培養液から目的物を採取することに
よって製造することができる。培養温度は、アルデカル
マイシン生産菌の発育が実質的に阻害されずにこの抗生
物質の生産しうる範囲であれば、特に制約されるもので
はなく、使用する生産菌に応じて選択できるが、好まし
くは25−30℃の範囲内の温度を挙げることができ
る。
【0062】アルデカルマイシンの生産のための種母と
しては、寒天培地上、MJ147−72F6株の斜面培
養から得た生育物を使用する。
【0063】このMJ147−72F6株の生育は通常
3ないし4日で最高に達するが、一般に充分な抗菌活性
が培地に付与されるまで続ける。この培養液中のアルデ
カルマイシンの力価の経時変化はバチルス・ステアロサ
ーモフィルスを被検菌とする円筒平板法により測定でき
る。
【0064】第2の本発明の方法においては、上記のよ
うにして得られた培養物からアルデカルマイシンを採取
するが、採取法としては微生物の生産する代謝産物を採
取するのに用いられる手段を適宜利用することからな
る。たとえば、水と混ざらない溶媒による抽出の手段、
各種吸着剤に対する吸着親和性の差を利用する手段、ゲ
ルろ過、向流分配を利用したクロマトグラフィーなどを
単独または組み合わせて利用しアルデカルマイシンを採
取できる。
【0065】また、分離した菌体からは、適当な有機溶
媒を用いた溶媒抽出法や菌体破砕による溶出法により菌
体から抽出し上記と同様に単離精製して採取することが
できる。かくして、前記した抗生物質アルデカルマイシ
が得られる。前記の式(I′−a)で表わされるアル
デカルマイシンのアセタール誘導体は、式(I)のアル
デカルマイシンを後記の実施例2に示される如くジオキ
サンに溶解し、酸性条件下で2価アルコールとしてエチ
レングリコールと反応させることによって得られたもの
である。その反応液からは、水と混じらない有機溶媒に
よる抽出、吸着、向流分配を利用したクロマトグラフィ
ー、ゲルろ過等を組合せることにより、式(I′−a)
で表わされるアルデカルマイシンのアセタール誘導体を
採取できた。
【0066】他方、一般的には、式(I)のアルデカル
マイシンのアルデヒド基(−CHO)に後記の式(II)
で表わされる1価アルコール、例えばメタノール、エタ
ノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジル
アルコール、もしくは後記の式(III)で表わされる2価
アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレング
リコール、ブチレングリコールまたはカテコールを有機
溶媒、例えばジオキサン、ジメチルホルムアミド中で酸
性条件下に、例えばカンフアー・スルホン酸又は塩化水
素の存在下に室温で又は加熱下に反応させると、後記の
式(I″)で表わされるアルデカルマイシンのアセター
ル誘導体が製造できることが本発明者らにより知見され
た。
【0067】従って、第3の本発明によると、次式
(I′) 〔式中、R′は次式 (但し2個のRa は夫々に任意の炭素数の脂肪族または
芳香族の基、例えば低級アルキル基またはアラルキル
基、特にベンジル基であるか、あるいは2個のRaは連
結して任意の炭素数の脂肪族または芳香族の基1個、例
えば低級アルキレン基をなす)で示される基である〕で
表わされるアルデカルマイシンのアセタール誘導体が提
供される。
【0068】さらにまた、第4の本発明によると、前記
の式(I)のアルデカルマイシンのアルデヒド基(−C
HO)に次式 Rb −OH (II) 〔式中、Rb は任意の炭素数の脂肪族または芳香族の
基、例えばアルキル基である〕の1価アルコール、もし
くは次式 HO−Rc −OH (III) 〔式中、Rc は任意の炭素数の脂肪族または芳香族の
基、例えば低級アルキレン基である〕の2価アルコール
を反応させることから成る、次式(I″) 〔式中、R″は次式 (但しRb は前記の意味をもつ)示される基であるか、
もしくは次式 (但しRc は前記の意味をもつ)で示される基である〕
で表わされるアルデカルマイシンのアセタール誘導体の
製造方法が提供される。
【0069】さらに、第5の本発明では前記の式(I)
アルデカルマイシンを生産する特性を持つストレプト
ミセス MJ147−72F6株が提供される。
【0070】また、第6の本発明では、式(I)のアル
デカルマイシン又は式(I′)のアルデカルマイシンの
アセタール誘導体を有効成分とする抗菌剤が提供され
る。
【0071】この抗菌剤においては、有効成分化合物は
製薬学的に許容できる常用の固体又は液状担体、例えば
エタノール、水、デンプン等と混和できる。
【0072】以下に実施例により本発明をさらに詳細に
説明する。
【0073】実施例1 抗生物質アルデカルマイシンの製造 寒天斜面培地に培養したストレプトミセス MJ147
−72F6株(微工研菌寄第12174号)を、ガラク
トース2%、デキストリン2%、ソイペプトン1%、コ
ーン・スティープ・リカー0.5%、硫酸アンモニウム
0.2%、炭酸カルシウム0.2%、シリコン1滴を含
む液体培地(pH7.4に調整)を三角フラスコ(50
0ml容)に110mlずつ分注し、常法により120
℃で20分滅菌したものに接種し、その後27℃で3日
間振とう培養した。これにより、種母培養液を得た。
【0074】この種母培養液を、同様に三角フラスコに
分注し滅菌したグルコース2.0%、肉エキス3.0
%、硫酸アンモニウム0.6%、硫酸マグネシウム0.
3%、リン酸二カリウム0.6%、炭酸カルシウム0.
2%、シリコン1滴を含む液体培地(pH無修正)6l
に2%量を接種し、27℃で4日間振とう培養した。
【0075】このようにして得られた培養液を遠心分離
機にかけ菌体を分離した。この菌体にメタノール1lを
加え、撹はんしろ過した。このろ液はメタノールを減圧
下にて濃縮したあと、先の遠心上澄液と合わせてpH
2.0に調整後、酢酸ブチル6.5lでアルデカルマイ
シンを抽出した。この抽出液を減圧下において濃縮し、
得られた残さ6.4gをシリカゲルカラムクロマトグラ
フィー(50g)を行い、クロロホルム−メタノール
(10:1)で溶出した。この溶出活性画分を集め、減
圧下において濃縮して得られた粗粉末を遠心液液クロマ
トグラフィーによりクロロホルム−メタノール−水
(5:6:4)の溶媒系を用いて溶出した。
【0076】アルデカルマイシンを含む活性画分は減圧
濃縮後、セファデックスLH−20カラムクロマトグラ
フィー(500ml)を行い、メタノールで展開して精
製した。この粗精製物は、シリカゲルプレートでクロロ
ホルム−メタノール−水(4:1:0.1)で展開し活
性画分をシリカゲルプレートからかきとり、メタノール
で抽出した。次にメタノールを減圧除去した残渣の活性
物質をセファデックスLH−20カラムクロマトグラフ
ィー(300ml)を行いメタノールで展開した。この
活性画分から、減圧下で濃縮して154mgのアルデカ
ルマイシンを白色粉末として得た。
【0077】さらに純度を上げるために、ここで得られ
アルデカルマイシンの一部(約100mg)を逆相の
シリカゲルの高速液体クロマトグラフィーを用いて75
%アセトニトリル水溶液で展開した。アルデカルマイシ
の単一の画分を集めて濃縮し、再び遠心液液クロマト
グラフィーによりヘキサン−メタノールの溶媒系を用い
て精製し、高純度の式(I)のアルデカルマイシンの白
色粉末48.4mgを得た。
【0078】実施例2 抗生物質アルデカルマイシンのアセタール誘導体の製造アルデカルマイシン から、それのアセタール誘導体の製
造は、公知の手法に基づいて行った。すなわち実施例1
によって得られたアルデカルマイシン58.0mgを1
mg/mlのカンファー・スルホン酸含有のジオキサン
溶液5.8mlに溶解し、これに2価アルコールとして
エチレングリコール145μlを加えて室温で2日間反
応させた。
【0079】この反応液に飽和の炭酸水素ナトリウム水
溶液20mlを加え中和し酢酸エチル40mlで抽出し
た。この抽出液は、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、
減圧下で乾固し55.3mgの粗粉末を得た。これをシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(5g)にかけて、
酢酸エチル−メタノール(15:1)で展開し、アルデ
カルマイシンのアセタール誘導体を含む画分を集めて濃
縮乾固した(24.6mg)。
【0080】さらに精製するためにセファデックスLH
−20カラムクロマトグラフィー(200ml)により
メタノールで溶出してアルデカルマイシンのアセタール
誘導体の単一画分を集め、21.2mgの白色粉末を得
た。最後に遠心液液クロマトグラフィーをヘキサン−メ
タノール系を用いて行い、前記の式(I′−a)で表わ
されるアルデカルマイシンのアセタール誘導体の15.
9mgを白色粉末として得た。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はアルデカルマイシンのメタノール溶液中
の紫外線吸収スペクトルである。
【図2】図2はアルデカルマイシンのKBr錠剤法で測
定した赤外線吸収スペクトルである。
【図3】図3はアルデカルマイシンの重メタノール溶液
中にて室温で測定した400MHzにおけるプロトン核
磁気共鳴スペクトルである。
【図4】図4はアルデカルマイシンの重メタノール溶液
中にて室温で測定した100MHzにおける炭素13核
磁気共鳴スペクトルである。
【図5】図5はアルデカルマイシンのアセタール誘導体
のKBr錠剤法で測定した赤外線吸収スペクトルであ
る。
【図6】図6はアルデカルマイシンのアセタール誘導体
の重メタノール溶液中にて室温で測定した400MHz
におけるプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図7】図7はアルデカルマイシンのアセタール誘導体
の重メタノール溶液中にて室温で測定した100MHz
における炭素13核磁気共鳴スペクトルである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図4】
【図6】
【図7】
フロントページの続き (72)発明者 澤 竜一 神奈川県綾瀬市綾西4丁目6番7号 (72)発明者 浜田 雅 東京都新宿区内藤町1番26号

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次式(I) 〔式中、Rはアルデヒド基−CHOである〕で表わされ
    る抗生物質MJ147−72F6物質もしくはその水和
    物。
  2. 【請求項2】 ストレプトミセス属に属する請求項1に
    記載の式(I)のMJ147−72F6物質の生産菌を
    培養し、培養物からMJ147−72F6物質を採取す
    ることを特徴とする抗生物質MJ147−72F6物質
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 次式(I′) 〔式中、R′は次式 (但し2個のRは夫々に任意の炭素数の脂肪族または
    芳香族の基であるか、あるいは2個のRは連結して任
    意の炭素数の脂肪族または芳香族の基をなす)で示され
    る基である〕で表わされるMJ147−72F6物質の
    アセタール誘導体。
  4. 【請求項4】 請求項1に示される式(I)のMJ14
    7−72F6物質のアルデヒド基(−CHO)に次式 R−OH (II) 〔式中、Rは任意の炭素数の脂肪族または芳香族の基
    である〕の1価アルコール、もしくは次式 HO−R−OH (III ) 〔式中、Rは任意の炭素数の脂肪族または芳香族の基
    である〕の2価アルコールを反応させることから成る、
    次式(I'') 〔式中、R''は次式 (但しRは前記の意味をもつ)で示される基である
    か、もしくは次式 (但しRは前記の意味をもつ)で示される基である〕
    で表わされるMJ147−72F6物質のアセタール誘
    導体の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の式(I)のMJ147
    −72F6物質を生産する特性を持つストレプトミセス
    MJ147−72F6株。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載の式(I)で表わされる
    MJ147−72F6物質あるいは請求項2に記載の式
    (I′)で表わされるMJ147−72F6物質のアセ
    タール誘導体を有効成分とする抗菌剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004041787A1 (ja) * 2002-11-06 2004-05-21 Nissan Chemical Industries, Ltd. キノリンカルバルデヒド類の製造方法

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WO2004041787A1 (ja) * 2002-11-06 2004-05-21 Nissan Chemical Industries, Ltd. キノリンカルバルデヒド類の製造方法

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