JPH0522188Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はビル火災等で緊急避難するときに同時
に多数の人が安全に降下できるようにした脱出用
装置に関する。

（従来の技術） 近年高層ビルが増えるにつれビル火災等による
死亡事故が増大し、そのための緊急脱出用装置が
様々考案されている。

例えば従来から縄ばしごやロープ、シユート等
が使用され、又近年ではウインチ的なロープ巻取
装置のドラムに連結した増速機構にガバナ等を設
け、この摩擦抵抗でドラムの減速をするようにし
たもの等が提供されている。

又、実開昭56−95250号公報には、ゴンドラを
建物屋上から垂直外壁に沿つてワイヤと電動ウイ
ンチを使つて移動させ、人をゴンドラに乗せて下
降させる避難装置が開示されている。又、実公昭
35−14662号公報には、足場をワイヤで吊下げる
とともに、電動モータでワイヤ巻取ドラムを回転
させて、ワイヤを操作して足場を上下動する吊足
場が開示されている。

（考案が解決しようとする問題点） しかしながら、この従来の縄ばしごやロープを
使用するものにあつては相当な体力と技術、それ
に精神力がないと高所からの脱出は困難であり、
シユートを使用する場合は地上での場所の確保や
取付け、地上との連絡等があつてビル火災等の緊
急時に間に合わないという欠点があつた。

又、ロープ巻取装置のドラムを増速機構のガバ
ナで減速するようにしたものでは摩擦部分の発熱
による作動不良があるし増速機構部分は複雑であ
る上に出来るだけコンパクトに収めなければなら
ないため各部品の製作、組立に手間がかかつて大
変なコストアツプになるばかりでなく確実作動の
信頼性に欠けるという問題点があつた。

さらに前記緊急脱出装置はほとんど一人用とし
て構成されているものであり、ビルの収容人員全
てに行き渡るように常備するには経費や点検等に
非常な負担がかかるし、又大量輸送できるエレベ
ーターは火災時には昇降路が煙道となつたり停電
で途中で使用不能となつて非常に危険で使用でき
ないという欠点があつた。

又、実開昭56−95250号公報及び実公昭35−
14662号公報とも、ウインチ・ワイヤ巻取ドラム
を駆動するのが電動モータであるので、火災時に
停電して使用不能となる危険があり、使用の確実
さがない。又、モータの回転速度の制御で下降さ
せるので、モータが故障・不動作になると、下降
速度が高くなり低速にすることが難しいという問
題点がある。

（問題点を解決するための手段） 本考案はこの従来の問題点を解決するためにな
されたもので、その目的をするところは、緊急時
にはいつまでも使用でき、多数の人を同時に安全
に地上に脱出させることができ、しかも何度も繰
返して使用できる高所からの緊急脱出用安全降下
装置を提供することにあり、そのために技術的手
段として本考案では、手動操作による移行手段で
屋上から壁面までせり出すケージを同屋上に配設
し、前記ケージを壁面に沿つて昇降させるガイド
レールを壁面に固設し、かつ同ケージにウインチ
を内蔵させると共に同ウインチのドラムに巻取つ
たワイヤーロープの一端を屋上側に固定し、さら
にドラムの回転速度を制御してケージの下降速度
を減速させるブレーキとケージ巻上用の原動機と
を前記ウインチに取付けている構成とした。

（作用） 従つて本考案では緊急脱出用安全降下装置の搬
器をケージとし、通常は屋上に配設しておくよう
にしたので、同ケージを火災時の緊急時に手動の
移行手段によつて屋上から壁面の垂直面までせり
出し、同壁面のガイドレールに沿つて降下させな
がら要所要所で停止して多数の人を同時に収容で
きるし、又同ケージを昇降させるウインチの回転
を制御してケージの下降速度を減速させるブレー
キを取付けたので、ケージは降下速度が加速され
ることなく適正な速度で安全に地上に着地するこ
とができるし、又、前記ウインチには原動機を取
付けたのでケージは何度でも昇降して脱出者を救
出することができる。

（実施例） 以下本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。

図において１は建造物の昇降式救命装置、２は
ジブクレーン本体、３はケージ、４はケージ３の
上部に取付けたウインチ、５はブレーキ部、６は
ブレーキ部の油圧ダンバー、７はガソリンエンジ
ンである。

前記、ジブクレーン本体２は脚部８を建造物９
の屋上１０に固設し、脚部８にオイルポンプ１
１、ジブ伸縮切換バルブ１２を内蔵しハンドル１
３で油圧を発生させる。又、ケージ３の移行手段
としてのジブ１４は内蔵した油圧シリンダー１５
を前記オイルポンプ１１で作動させてアーム１６
を伸縮させる。

さらに同アーム１６の先端にガイドアーム１７
を固着しガイドローラ１８を適宜軸支している。

なお、１９はジブ伸縮切換バルブの切換レバ
ー、２０は油圧パイプである。

前記ケージ３は軽量鉄骨や薄鋼板で略密閉型に
形成され、建造物９の壁面２１に対向する面を正
面とし、一方の側面に昇降口２２と正面の一角に
オペレーター席２３とを設けている。又、ケージ
３の室内上部にマシンフレーム２４を固着し、同
マシンフレーム２４にウインチ４、ブレーキ部
５、ガソリンエンジン７を取付け、ウインチ４の
ドラム２５に巻取つたワイヤロープ２６を前記ア
ーム１６の先端と連結しドラム２５の正転時にワ
イヤロープ２６を巻戻してケージ３を降下させ、
逆転時にワイヤロープ２６を巻取つてケージ３を
昇降させる。

前記ウインチ４はドラム回動軸２７の一方にブ
レーキ部５が一方向クラツチ２８を介して連結さ
れる。この一方向クラツチ２８はドラム２５の正
転時に回動軸２７とブレーキ部５とを連結し、逆
転時には開放する。このブレーキ部はブレーキド
ラム２９に油圧ダンパー６の一方を偏心軸支し、
他方をマシンフレーム２４に軸支してブレーキド
ラム２９の回動を減速させる。さらにブレーキド
ラム２９の外周に停止用のバンドブレーキシユー
３０が設けられている。

又、前記ドラム回動軸２７の他方と減速機３１
の出力軸とが連結され、さらに同減速機３１の入
力軸が遠心クラツチ３２を介してガソリンエンジ
ン７の出力軸と連結されている。

前記遠心クラツチ３２はドラム２５の逆転方向
にガソリンエンジン７と連結し、正転方向にはガ
ソリンエンジン７と切り離してドラムの回転がエ
ンジン側に伝達されないようにしている。

前記ガソリンエンジン７のキヤブレータフロー
ト室に底部に燃料廃棄孔３４を開閉するドレンバ
ルブ３５を設け、エンジンストツプレバー３６を
押込むと燃料コツク３７が開放されてガソリンを
キヤブレータフロート室３３に送ると共にドレン
バルブ３５が燃料廃棄孔３４を閉鎖し、又エンジ
ンストツプスイツチ３８を作動させてエンジンの
電気回路を接続する。エンジンストツプレバー３
６を引出すと燃料コツク３７が閉鎖され燃料廃棄
孔３４を開放してキヤブレータフロート室３３の
残留ガソリンを廃棄し、さらにエンジンストツプ
スイツチ３８を作動させて電気回路を開く。

尚このガソリンエンジン７はスターターロープ
３９を引いて始動させる方式を採用し、バツテリ
ーの放電による始動不良がないようにしている。

このエンジン７のスターターロープ３９、エン
ジンストツプレバー３６、アクセルペダル４０、
それにバンドブレーキシユー３０と連結したフツ
トブレーキペダル４１、及びバンドブレーキシユ
ー３０をオペレーター不在時でも作動させた状態
で保持するパーキングブレーキレバー４２をオペ
レーター席２３に配設している。

ケージ３は前記諸機器を配設し常時はドラム２
５でワイヤーロープ２６を巻取りガイドアーム１
７内に収められガイドローラ１８で保持される。

そしてケージ３の底部に軸支した支持ローラ４
３を屋上１０に配設したガイドレール４４に嵌挿
してケージ３を屋上載置しておく。このケージ３
を昇降させるには、ハンドル１３でオイルポンプ
１１を作動させ油圧シリンダー１５でアーム１６
を伸長させてケージ３を建造物９の壁面より外へ
突き出す。

このときパーキングブレーキレバー４２を引い
てブレーキのかかつた状態にしておく。

そして屋上１０のガイドレール４４と同一位置
で壁面２１に固着した壁面ガイドレール４５にケ
ージ３の正面に軸支した昇降用ガイドローラ４６
を嵌挿させてから屋上に避難している人達をケー
ジ３に収容してパーキングブレーキレバー４２を
ゆるめる。

これによりバンドブレーキシユー３０はブレー
キドラム２９を解放するのでドラム２５は自重に
よつて回動し始めてケージ３が降下する。

しかしながらこのドラム２５はドラム回動軸２
７のブレーキドラム２１に偏心軸支した油圧ダン
パー６によつて回動を一定速度に制限されている
のでケージ３は加速することなく一定の安全速度
で降下する。そして要所でフツトブレーキペダル
４１又はパーキングブレーキレバー４２を使つて
ケージ３を停止させ脱出者を救助してから再度降
下させて地上に着地させる。

このケージ３を繰返し使用するために屋上や途
中階まで上昇させるには、まずエンジンストツプ
レバー３６を押込むと燃料コツク３７が解放され
て新鮮なガソリンがキヤブレターに供給されると
共にキヤブレータフロート室３３の燃料廃棄孔３
４がドレンバルブ３５で閉鎖され、又エンジンス
トツプスイツチ３８が解放されるので直ちにスタ
ーターロープ３９でガソリンエンジン７を始動さ
せることができる。

そしてアクセルペダル４０でエンジン回転数を
上げると遠心スラツチ３２が作動して減速機３１
の入力軸へ動力を伝達しドラム２５を回動させて
ワイヤロープ２６を巻取つてケージ３を上昇させ
る。

このとき一方向クラツチ２８はドラムが逆転し
ているのでブレーキ部５とは接続されずエンジン
動力は全てケージ３の巻上用に利用される。

尚、４７はドレンバルブ押圧スプリング、４８
はキブレターと燃料コツク用のリンクレバー、４
９は同プツシユプルワイヤー、５０はオペレータ
ーシート、５１はオペレーター席保護仕切、５２
はカツプリング、５３はブレーキカム、５４はブ
レーキワイヤである。

以上のように本実施例では重力、エンジン動力
をケージ昇降用に効果的に利用している。

又、ブレーキ部は油圧ダンパーで降下速度を一
定に制限させるようにしたので発熱等による焼付
きで使用不能となることがない。

又、巻上用動力は電動機を使用せず、いつでも
新鮮なガソリンをキヤブレータフロート室へ送つ
てからスターターロープで始動させるのでいつで
も必ず始動させることができ、繰返し昇降させて
多数の人を救出することができる。

以上本考案の実施例を図面に基づいて説明した
が、本考案の具体的な構成はこの実施例に限定さ
れるものではなく、考案の要旨を逸脱しない範囲
の設計変更等があつても本考案の技術的範囲にあ
る。

（考案の効果） 以上のように本考案によれば前記特徴の構成と
することによつて安全、確実に多数の人を同時に
救助することができる。又ブレーキ部はケージの
下降速度を減速させて降下させるので高所からの
降下も安全に着地させることができる。

その上繰返し使用が可能であるので多数の人を
何度も救助することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案実施例の建造物の昇降式救命装
置を示す斜視図、第２図は同側面図、第３図は同
ウインチとブレーキ部を示す斜視図、第４図は同
断面図、第５図は同ガソリンエンジンを示す斜視
図、第６図は同要部を示す説明図、第７図は同オ
ペレーター席の説明図である。 １……建造物の昇降式救命装置、３……ケー
ジ、４……ウインチ、５……ブレーキ部、６……
油圧ダンパー、７……ガソリンエンジン、９……
建造物、１０……屋上、２１……壁面、４５……
壁面ガイドレール。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 手動操作による移行手段で屋上から壁面までせ
   り出すケージを同屋上に配設し、前記ケージを壁
   面に沿つて昇降させるガイドレールを壁面に固設
   し、かつ同ケージにウインチを内蔵させると共に
   同ウインチのドラムに巻取つたワイヤーロープの
   一端を屋上側に固定し、さらにドラムの回転速度
   を制御してケージの下降速度を減速させるブレー
   キとケージ巻上用の原動機とを前記ウインチに取
   付けていることを特徴とする建造物の昇降式救命
   装置。