JPH05195143A - 延性,耐食性に優る高張力熱延鋼板と製造法 - Google Patents

延性,耐食性に優る高張力熱延鋼板と製造法

Info

Publication number
JPH05195143A
JPH05195143A JP2729792A JP2729792A JPH05195143A JP H05195143 A JPH05195143 A JP H05195143A JP 2729792 A JP2729792 A JP 2729792A JP 2729792 A JP2729792 A JP 2729792A JP H05195143 A JPH05195143 A JP H05195143A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hot
steel sheet
rolled steel
less
ductility
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2729792A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3350945B2 (ja
Inventor
Naomitsu Mizui
直光 水井
Shigeki Nomura
茂樹 野村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP02729792A priority Critical patent/JP3350945B2/ja
Publication of JPH05195143A publication Critical patent/JPH05195143A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3350945B2 publication Critical patent/JP3350945B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 延性を始めとする加工性に優れ、耐食性や外
観も良好で、かつC量の大きな変化なしに強度レベル調
整を行える高張力熱延鋼板を安定して提供する。 【構成】 熱延鋼板を、C:0.05〜 0.3%,Si:2.0%以
下,Mn:0.05〜 4.0%,P:0.1%以下,S:0.1%以下,
Cr:0.5〜 5.0%,Al:0.1〜 2.0%,N:0.01%以下で、
かつ Si(%)+Al(%) ≧ 0.5, 7.0≧ Mn(%)+Cr(%) ≧
1.0 を満足し、残部がFe及び不可避的不純物から成る
組成であって、しかも体積率で5%以上の残留オ−ステ
ナイトを含んだ組織を有して成る構成とする。また、上
記成分組成の鋼片を熱間圧延し、Ar3点以上で仕上げ熱
延した後、10〜100℃/sの冷却速度で350〜55
0℃まで冷却して巻取るか、或いは前記仕上げ熱延後に
10℃/s以上の冷却速度で600〜700℃の温度域ま
で冷却してから2〜10秒間空冷し、更に20℃/s以上
の冷却速度で300〜550℃まで冷却して巻取る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】この発明は、プレス加工や伸びフランジ加
工等により様々な形状に成形される構造部材として好適
な、延性及び耐食性の優れた高張力熱延鋼板並びにその
製造方法に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】連続熱間圧延によって製造され
る所謂“熱延鋼板”は、比較的安価な構造材料として自
動車を始めとする各種の産業機器類に広く適用されるよ
うになったが、近年、これら機械・装置類には更なる高
性能化は勿論のこと、これと共に軽量化に対する要望が
急速に高まってきている。そのため、軽量化を推進すべ
く素材となる鋼板の高強度化技術が数多く開発されてき
たが、一般に鋼板の高強度化は延性の劣化を伴うので良
好な加工性と高強度を兼ね備えた鋼板の製造は非常に困
難であった。
【0003】ところが、最近、「SiとMnを複合添加した
低炭素鋼板を熱間圧延した後、 オ−ステナイトを一部べ
イナイトに変態させ最終的に〔フェライト+ベイナイト
+残留オ−ステナイト〕から成る組織とした熱延鋼板(
以降“残留γ熱延鋼板”と呼ぶ)は、 加工時の変形中に
残留オ−ステナイトが歪誘起変態を起こして大きな伸び
を示す」との現象が見出されて以来、この現象を利用し
て高延性高張力熱延鋼板を製造しようとの試みもなされ
るようになった。
【0004】例えば、特開昭55−145121号公報
には、C含有量:0.35〜0.85%(以降、 成分割合を示す
%は重量%とする)の鋼をオ−ステナイト域から380
〜480℃の温度域まで急冷して恒温保持することでオ
−ステナイトの大半をベイナイトに変態させ、これによ
って高延性・高強度を有した残留γ熱延鋼板を得る方法
が開示されている。
【0005】しかし、この方法では、鋼板中のC含有量
を0.35〜0.85%と高目に調整する必要があることから得
られる鋼板は溶接性の点で劣り、自動車用鋼板等として
の利用は困難であった。
【0006】しかも、上述の如き混合組織を有する熱延
鋼板(残留γ熱延鋼板)は、引張試験において良好な延
性を示したとしても実際にはプレス加工時等の成形性は
必ずしも良好とは言えず、加工用鋼板として十分に満足
できるものではないとの指摘もなされていた。例えば、
前記混合組織鋼板を加工すると、変形後期では大部分の
残留オ−ステナイトが歪誘起変態して高炭素マルテンサ
イトに変化してしまっているので局部延性が極めて悪い
状態となる。この現象は“穴拡げ”のような伸びフラン
ジ加工の場合に顕著に現れ、そのため該混合組織鋼板の
穴拡げ性は従来の低炭素鋼板のそれよりも劣った結果と
なる。これは、打ち抜きにより穴開け加工を行った際、
歪誘起変態で生成した高炭素マルテンサイトが非常に硬
質なためにクラックが生じ、このクラックがその後の穴
拡げ時に拡大・伝播するためであると考えられている。
【0007】また、前記残留γ熱延鋼板に係わる既知の
製造技術では、強度レベルを変える場合に鋼中C濃度を
変化させる必要があるが、鋼中C濃度を低下させると最
終製品中の残留オ−ステナイトの体積率が低下すること
となり、そのため“強度の比較的低い領域で残留オ−ス
テナイトを多量に含有し高延性を示す熱延鋼板”を製造
することは困難であった。
【0008】一方、これとは別に、特開昭63−401
7号公報には、低いC含有量の下で残留オ−ステナイト
を確保して高延性を得る手立てを講じたところの、高Si
含有鋼を低温オ−ステナイト域で大圧下することにより
高延性・高強度を備えた残留γ熱延鋼板を得る方法が開
示されている。
【0009】しかしながら、上記方法で得られる熱延鋼
板もやはりプレス加工時等の成形性が十分であると言え
なかった。加えて、オ−ステナイト域における鋼の熱間
変形抵抗は圧延温度の低下に伴って著しく上昇するた
め、この方法では熱間圧延機に過大な負荷がかかること
になり、鋼板の板厚及び平坦度の制御が困難になるとい
う問題があった。即ち、熱延鋼板を製造するための実際
操業では「熱間圧延機に過大な負荷をかけないこと」が
大前提であり、そのため残留γ熱延鋼板を製造する上で
第1に留意しなければならないのは「熱間圧延機に過大
な負荷をかけずに安定して残留オ−ステナイトが得られ
るように成分設計を行う点」であることからして、特開
昭63−4017号公報所載の方法は実際的であると言
えないものであった。
【0010】更に、鋼へのSi添加量が多量になると、熱
間圧延工程のスラブ加熱時にSiO2 とFeOが共晶反応を
起こして低融点のスケ−ルが不均一に生じ、酸洗後の熱
延板の表面に凹凸が発生して外観が損なわれるとの問題
もあった。
【0011】その上、変態組織強化した鋼板の場合に
は、一般にその耐食性が固溶強化した鋼板に比べて劣る
という問題もあった。この問題は、腐食電位の異なる複
数の組織から成る複合組織鋼板では所謂“局部電池”が
形成されやすく、これが腐食に結びつくことに起因して
生じるものと考えられる。
【0012】このようなことから、本発明が目的とした
のは、延性を始めとする加工性に優れ、またC含有量の
大きな変化なしに強度レベル調整が行えるところの、耐
食性や外観の良好な高張力熱延鋼板を安定提供できる手
段を確立することであった。
【0013】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者は上記
目的を達成すべく鋭意研究を重ねたところ、次のような
知見を得ることができた。 (A) まず、0.15%C-1.5%Mnの組成を標準組成とした
熱延板のオ−ステナイト残留量に及ぼすSi及びAlの影響
を調査したが、この調査により、 a) 上記組成の鋼では熱間圧延完了温度が高くても、ま
た熱延間圧延が完了してから巻取られるまでの冷却速度
をそれほど厳密に制御しなくても比較的容易に残留オ−
ステナイトを確保することができ、しかも添加量が同等
であれば、Si及びAlの何れを添加した鋼板においてもほ
ゞ同体積率の残留オ−ステナイトが得られる, b) Alを添加した鋼板の方が全伸びはSi添加鋼板よりも
若干小さいものの、全伸びから均一伸びを差し引いた局
部伸びは逆に大きく、穴拡げ性に関しては良好な性能を
有する, ことが明らかとなった。
【0014】これは、Alを添加した鋼板では残留オ−ス
テナイトが安定なため高歪域に達するまで歪誘起変態を
起こしにくく、大きな変形域に至ってから変態するため
であると考えられる。なお、このような差が生じる原因
は不明であるが、残留オ−ステナイトの分布形態が変化
するためと推測される。
【0015】(B) また、鋼板中C濃度並びに〔Si+A
l〕の含有量を変えなくても、 Si(%)とAl(%) のバラン
スを変化させることにより同じ残留オ−ステナイト体積
率のままで鋼板の引張強度を任意に変化させることが可
能である。
【0016】(C) ただ、残留オ−ステナイトを確保す
るための成分としてAlの積極添加を行いSi量を低減する
と熱延鋼板に平滑な表面状態を確保できるようになり、
外観劣化を招くことも無くなる。
【0017】(D) 更に、Mn及びCrもオ−ステナイトの
安定化成分として知られる元素であるが、Al添加鋼板又
はSi添加鋼板に対してもMn添加及びCr添加は何れも残留
オ−ステナイト確保に好ましい効果を発揮して加工性改
善に寄与するものの、Crを添加した場合には鋼板の耐食
性が改善されるという効果も確保できるようになる。
【0018】(E) そして、上記Al,Si添加鋼にCrを含
有させて耐食性の強化を図った鋼から熱延鋼板を製造す
る場合、熱間圧延後の冷却条件や巻取り条件に工夫を凝
らすと延性に好都合な残留オ−ステナイト量の確保が一
段と容易になり、延性を始めとする加工性に優れた耐食
性高強度熱延鋼板の製造性が非常に安定化する。
【0019】本発明は、上記知見事項等を基にして完成
されたものであり、「熱延鋼板を、 C,Si,Mn,P,
S,Cr,Al及びNの含有量が C:0.05〜 0.3%, Si: 2.0%以下, Mn:0.05
〜 4.0%, P: 0.1%以下, S: 0.1%以下, Cr:0.5
〜 5.0%, Al: 0.1〜 2.0%, N:0.01%以下 で、 かつ Si(%)+Al(%) ≧ 0.5, 7.0 ≧ Mn(%)+Cr(%) ≧ 1.0 を満足すると共に残部がFe及び不可避的不純物から成る
成分組成であって、 しかも体積率にて5%以上の残留オ
−ステナイトを含んだ組織を有して成る構成とすること
により、 高強度と優れた延性,耐食性を兼備せしめた
点」を特徴としており、更には、 「C,Si,Mn,P,S,Cr,Al及びNの含有量が C:0.05〜 0.3%, Si: 2.0%以下, Mn:0.05
〜 4.0%, P: 0.1%以下, S: 0.1%以下, Cr:0.5
〜 5.0%, Al: 0.1〜 2.0%, N:0.01%以下 で、 かつ Si(%)+Al(%) ≧ 0.5, 7.0 ≧ Mn(%)+Cr(%) ≧ 1.0 を満足すると共に残部がFe及び不可避的不純物から成る
成分組成の鋼片を熱間圧延し、 Ar3点以上の温度域で仕
上げ熱延を行った後、 10〜100℃/sの冷却速度で3
50〜550℃の温度域まで冷却して巻取るか、 或いは
前記仕上げ熱延後に10℃/s以上の冷却速度で600〜
700℃の温度域まで冷却してから該温度域で2〜10
秒間空冷し、 続いて20℃/s以上の冷却速度で300〜
550℃まで冷却して巻取ることにより、 体積率にて5
%以上の残留オ−ステナイトを含んでいて高強度と優れ
た延性,耐食性を兼備した高張力熱延鋼板を安定製造で
きるようにした点」をも大きな特徴とするものである。
【0020】以下、本発明において、鋼板(鋼片)の成
分組成並びに鋼板の製造条件を前記の如くに限定した理
由をその作用と共に説明する。
【作用】
A) 成分組成 Cは最も強力なオ−ステナイト安定化元素であり、室温
においてオ−ステナイトを安定化するためにはオ−ステ
ナイト中にCが1%以上含有されることが必要である
が、熱延後の冷却パタ−ンを最適化すれば、鋼板中C含
有量が0.05%以上であれば十分なCがオ−ステナイト中
に濃縮される。そして、より多量のCを添加することに
より一層強度の高い熱延鋼板を製造できるが、 0.3%を
超える含有量になると鋼が硬くなり過ぎて通常の製板工
程では熱延鋼板に加工することができなくなる。従っ
て、C含有量は0.05〜 0.3%と限定したが、好ましくは
0.1〜0.2 %に調整するのが良い。更に、溶接性を考慮
すれば 0.1〜0.15%が最も好ましい。
【0021】Si Siはフェライト安定化元素で、熱延後の冷却過程におい
てフェライトを析出せしめ、平衡するオ−ステナイト相
のC濃度を高める作用を有している。また、これと共に
Siはフェライトを強化する作用をも有している。しかし
ながら、 2.0%を超えてSiを含有させるとSi添加鋼板特
有の高Siスケ−ルによる表面品質の劣化が著しく生じる
ので、Si含有量は 2.0%以下と定めた。なお、Siの含有
量は同じフェライト安定化元素であるAlとの関係で制御
しなければならず、上記作用に所望の効果を得るために
は[Si(%)+Al(%)]の値が 0.5以上となるように調整する
必要がある。
【0022】Mn Mnはオ−ステナイト安定化元素であり、この観点からす
るとMn含有量は同様の作用を有するCrの含有量との合計
で規制され、[Mn(%)+Cr(%)]の値が 1.0以上になるよう
に調整する必要がある。即ち、[Mn(%)+Cr(%)]の値が
1.0未満ではオ−ステナイトが安定化されない。ただ、M
n含有量が 4.0%を超えたり、[Mn(%)+Cr(%)]の値が 7.
0を超えると鋼板が硬くなりすぎて延性面で十分な性能
が得られない恐れがあるため、Mn含有量の上限は 4.0%
に抑え、かつ[Mn(%)+Cr(%)]の値は1.0 〜7.0 の範囲と
した。一方、Mnは鋼中のSをMnSとして固定し熱間脆性
を防止する作用をも有しているので、該作用に所望の効
果を確保するためには少なくとも0.05%の含有量を確保
する必要がある。なお、図1は本発明熱延鋼板に係わる
Mn及びCrの含有量範囲を図示したグラフである。
【0023】 Pは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であ
って、出来るだけ低い方が好ましい。特に、 0.1%を超
えて含有されると熱延鋼板の延性劣化が顕著化すること
から、P含有量は 0.1%以下と定めた。
【0024】 Sも不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であ
って、やはり低い方が好ましい。特に、 0.1%を超えて
含有されるとMnSの析出量が目立つようになり熱延鋼板
の延性を阻害するのみならず、オ−ステナイト安定化元
素として添加されるMnを前記析出物として消費すること
から、S含有量は 0.1%以下と定めた。
【0025】Cr Crは、Mnと同様にオ−ステナイトを安定化する作用を有
した元素であるのでこの目的のために添加されるが、同
時に熱延鋼板に所望の耐食性を確保するために必須の成
分でもある。そして、Cr含有量が 0.5%未満であると熱
延鋼板に所望の耐食性を付与することができず、一方、
5.0%を超えてCrを含有させると逆にフェライトの安定
化に寄与するようになってオ−ステナイトを不安定にす
ると同時に、鋼板の酸洗が著しく困難になる。従って、
Cr含有量は 0.5〜 5.0%と定めたが、好ましくは2〜3
%程度に調整するのが良い。なお、Cr含有量は、熱延鋼
板に高延性を確保すべくMn含有量との合計において7.0
%以下に抑える必要のあることは前述した通りである。
【0026】Al 前述した如く、AlはSiと同様にフェライト安定化元素で
あって、熱延後の冷却過程においてフェライトを析出せ
しめ、平衡するオ−ステナイト相のC濃度を高める作用
を有している。しかしながら、Siと比べてフェライトを
析出させる作用が強く、同時にオ−ステナイトを安定化
する作用もあり、 0.1%以上の含有量が確保されると熱
延鋼板の局部延性を向上させる効果が得られる。一方、
Al含有量が 2.0%を超えると鋼板中に介在物が多くなっ
て延性低下を招く。従って、Al含有量は 0.1〜 2.0%と
定めたが、フェライト安定化元素としての所望効果を確
保するためにはSiと共に[Si(%)+Al(%)]の値が 0.5以上
となるように調整する必要がある。なお、図2は本発明
熱延鋼板に係わるSi及びAlの含有量範囲を図示したグラ
フである。
【0027】 Nも不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であ
り、その含有量は低い方が好ましい。そして、N含有量
が0.01%を超えるとAlNとして消費されるAlの量が多く
Al添加の効果が小さくなるばかりでなく、AlNによる延
性の劣化が目立つようになることから、N含有量の上限
を0.01%と定めた。
【0028】B) 残留オ−ステナイトの体積率 本発明熱延鋼板の延性は含まれる残留オ−ステナイトの
体積率に左右され、該体積率が5%未満ではオ−ステナ
イトの歪誘起変態による延性の向上を期待することがで
きない。なお、該熱延鋼板の延性は残留オ−ステナイト
の増加に伴い向上するため、残留オ−ステナイトの体積
率は好ましくは10%以上とするのが良い。
【0029】C) 製造条件 熱間圧延は、通常条件でのスラブ加熱後通常の圧延スケ
ジュ−ルで行われれば良いが、仕上げ熱延後の冷却・巻
取り条件を特定に制御することが本発明に係わる熱延鋼
板製造法の1つの大きな特徴を成している。つまり、本
発明が目的とする所望の効果を確保するためには、以下
に記載する熱延条件を満たしていなければならない。
【0030】その熱延条件は、Ar3以上で仕上げ熱延を
行った後、10〜100℃/sの冷却速度にて350〜5
50℃まで冷却し巻取る条件である。この場合、10℃
/s未満の冷却速度で冷却したり550℃を超える温度で
巻取るとフェライトの体積率が多くなり過ぎるだけでな
く、オ−ステナイトがパ−ライトに変態してしまい、十
分な体積率の残留オ−ステナイトが得られない。一方、
100℃/sを超える冷却速度で冷却すると十分な体積率
でフェライトが析出しないため残留オ−ステナイト中に
Cが十分に濃縮されず、その後の冷却過程でマルテンサ
イトに変態してしまう。同様に350℃を下回る温度で
巻取ると巻取り後にベイナイト変態が生じず、残留オ−
ステナイト中にCが十分濃縮されないため、やはりオ−
ステナイトがマルテンサイトに変態してしまう。
【0031】また、更に好ましい熱延条件は、Ar3以上
で仕上げ熱延を行った後、10℃/s以上の冷却速度で6
00〜700℃の温度域まで冷却すると共に、該温度域
で2〜10秒間空冷し、その後更に20℃/s以上の冷却
速度で300〜550℃まで冷却して巻取る条件であ
る。空冷区間を設けることでフェライトの生成が促進さ
れるため、C濃化によるオ−ステナイトの安定化が顕著
となり延性が更に向上する。この効果を確保するには、
空冷時間を少なくとも2秒以上とする必要がある。な
お、この場合、仕上げ熱延後の冷却速度が10℃/s未満
であったり、その後に700℃を超える温度で保持(空
冷)したり、また600〜700℃間での保持(空冷)
時間が10秒を超えたり、この600〜700℃間で保
持(空冷)した後の冷却速度が20℃/s未満であった
り、或いは550℃を超える温度で巻取ると、フェライ
トの体積率が多くなり過ぎるだけでなく、オ−ステナイ
トがパ−ライトに変態してしまって十分な体積率の残留
オ−ステナイトが得られない。一方、仕上げ熱延後に6
00℃未満の温度域まで急速冷却すると、十分な体積率
でフェライトが析出しないため残留オ−ステナイト中に
Cが十分に濃縮されず、その後の冷却過程でマルテンサ
イトに変態してしまう。同様に300℃を下回る温度で
巻取ると巻取り後にベイナイト変態が生じず、残留オ−
ステナイト中にCが十分濃縮されないため、やはりオ−
ステナイトがマルテンサイトに変態してしまう。
【0032】続いて、本発明の効果を実施例によって更
に具体的に説明する。
【実施例】まず、50kg真空溶解炉にて表1に示す各成
分組成の鋼を溶製し、これらを熱間鍛造により60mm厚
のスラブとした。次に、該スラブを1200℃に再加熱
した後、表2及び表3に示す条件で2mm厚の熱延板を製
造した。なお、これら鋼種のAr3点は熱膨張にて測定し
たが、何れも800℃未満であった。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】次に、得られた熱延鋼板からJIS5号引
張試験片を採取して“機械的性質”を調べた。また、9
5mm×95mmの寸法の試験片を用い、14mmφの打抜き
穴を30mmφ円柱ポンチにより板厚貫通割れ発生まで拡
げる試験によって“打抜き穴拡げ性”も調査した。な
お、穴拡げ率は下記 (1)式にて計算した。 穴拡げ率=[(板厚貫通割れ発生時の穴径) − (元穴径)]/元穴径 …(1)
【0037】更に、各熱延鋼板の中央部からX線試験用
の試験片を採取し、X線反射強度より“残留オ−ステナ
イト量”の測定も行った。加えて、各熱延鋼板につき
“耐食性”の調査も実施した。耐食性は、鋼板にポリエ
ステル系樹脂塗装を施してからクロスカットを入れて3
年間の大気暴露を行い、この際にクロスカット部におい
て赤錆が発生し塗膜が剥離した部分の最大幅で評価し
た。これらの結果を表2及び表3に併せて示す。
【0038】表2及び表3に示される結果からは次のこ
とが分かる。即ち、本発明法に従って製造された熱延鋼
板は何れも体積率が5%以上の残留オ−ステナイトを有
し、そのため“引張強度と伸びの積”が2500を超え
る高い延性を示すと共に、“引張強度と穴拡げ率との
積”も3000を超える良好な穴拡げ性を示す。また、
耐食性にも優れる。
【0039】これに対して、Al添加量が本発明範囲の下
限値を下回る鋼を素材とした試験番号1及び22に係わる
熱延鋼板は、5%以上の残留オ−ステナイトが得られて
延性は高いものの、穴拡げ性は低い値を示している。ま
た、この鋼種を使用し、かつ熱間圧延仕上げ温度が高か
った試験番号2及び23に係わる熱延鋼板では、残留オ−
ステナイト量が著しく減少して延性も低い値しか示さな
い。
【0040】一方、熱間圧延仕上げ温度がAr3点未満で
あった試験番号9及び35に係わる熱延鋼板は、加工フェ
ライトが残るために延性,穴拡げ性とも著しく低くな
る。そして、熱間圧延後における冷却速度が遅い試験番
号10,36及び39に係わる熱延鋼板、巻取り温度が高い試
験番号11及び40に係わる熱延鋼板、熱間圧延後の冷却中
における空冷開始温度が高い試験番号37に係わる熱延鋼
板、並びに空冷時間の長い試験番号38に係わる熱延鋼板
は、パ−ライト変態が進行するため良好な延性が達成さ
れるに十分な量のオ−ステナイトが残留しない。
【0041】巻取り温度の低い試験番号12に係わる熱延
鋼板は、マルテンサイト変態が進行して延性,穴拡げ性
が共に低い。Al添加量が本発明範囲の上限を超える試験
番号13及び41に係わる熱延鋼板は、介在物が多くなって
延性,穴拡げ性とも低下している。MnとCrの合計量が本
発明範囲の上限を超える試験番号17及び45に係わる熱延
鋼板、並びにC含有量が本発明範囲の上限を超える試験
番号21及び49に係わる熱延鋼板は、何れも引張強度が高
いため加工が困難であると共に、穴拡げ性が低い。C含
有量が本発明範囲の下限を下回る試験番号18及び46に係
わる熱延鋼板は、オ−ステナイトの安定化が不十分で残
留オ−ステナイト量が少ない。また、Cr含有量が少ない
試験番号14及び42に係わる熱延鋼板は、十分な加工性は
有するが耐食性に劣る。
【0042】
【効果の総括】以上に説明した如く、この発明による
と、延性に優れ、良好な穴拡げ性等の加工性を示すと同
時に、優れた耐食性をも有した高張力熱延鋼板が安定し
て得られるなど、産業上極めて有用な効果がもたらされ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明熱延鋼板に係わるMn及びCrの含有量範囲
を図示したグラフである。
【図2】本発明熱延鋼板に係わるSi及びAlの含有量範囲
を図示したグラフである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C,Si,Mn,P,S,Cr,Al及びNの含
    有量が重量割合にて C:0.05〜 0.3%, Si: 2.0%以下, Mn:0.05
    〜 4.0%, P: 0.1%以下, S: 0.1%以下, Cr: 0.5
    〜 5.0%, Al: 0.1〜 2.0%, N:0.01%以下 で、かつ Si(%)+Al(%) ≧ 0.5, 7.0 ≧ Mn(%)+Cr(%) ≧ 1.0 を満足すると共に残部がFe及び不可避的不純物から成る
    成分組成であって、しかも体積率にて5%以上の残留オ
    −ステナイトを含んだ組織を有して成ることを特徴とす
    る、延性及び耐食性の優れた高張力熱延鋼板。
  2. 【請求項2】 C,Si,Mn,P,S,Cr,Al及びNの含
    有量が重量割合にて C:0.05〜 0.3%, Si: 2.0%以下, Mn:0.05
    〜 4.0%, P: 0.1%以下, S: 0.1%以下, Cr: 0.5
    〜 5.0%, Al: 0.1〜 2.0%, N:0.01%以下 で、かつ Si(%)+Al(%) ≧ 0.5, 7.0 ≧ Mn(%)+Cr(%) ≧ 1.0 を満足すると共に残部がFe及び不可避的不純物から成る
    成分組成の鋼片を熱間圧延し、Ar3点以上の温度域で仕
    上げ熱延を行った後、10〜100℃/sの冷却速度で3
    50〜550℃の温度域まで冷却して巻取ることを特徴
    とする、体積率にて5%以上の残留オ−ステナイトを含
    む延性及び耐食性の優れた高張力熱延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 C,Si,Mn,P,S,Cr,Al及びNの含
    有量が重量割合にて C:0.05〜 0.3%, Si: 2.0%以下, Mn:0.05
    〜 4.0%, P: 0.1%以下, S: 0.1%以下, Cr: 0.5
    〜 5.0%, Al: 0.1〜 2.0%, N:0.01%以下 で、かつ Si(%)+Al(%) ≧ 0.5, 7.0 ≧ Mn(%)+Cr(%) ≧ 1.0 を満足すると共に残部がFe及び不可避的不純物から成る
    成分組成の鋼片を熱間圧延し、Ar3点以上の温度域で仕
    上げ熱延を行った後、10℃/s以上の冷却速度で600
    〜700℃の温度域まで冷却してから該温度域で2〜1
    0秒間空冷し、続いて20℃/s以上の冷却速度で300
    〜550℃まで冷却して巻取ることを特徴とする、体積
    率にて5%以上の残留オ−ステナイトを含む延性及び耐
    食性の優れた高張力熱延鋼板の製造方法。
JP02729792A 1992-01-18 1992-01-18 延性,耐食性に優る高張力熱延鋼板と製造法 Expired - Lifetime JP3350945B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP02729792A JP3350945B2 (ja) 1992-01-18 1992-01-18 延性,耐食性に優る高張力熱延鋼板と製造法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP02729792A JP3350945B2 (ja) 1992-01-18 1992-01-18 延性,耐食性に優る高張力熱延鋼板と製造法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH05195143A true JPH05195143A (ja) 1993-08-03
JP3350945B2 JP3350945B2 (ja) 2002-11-25

Family

ID=12217158

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP02729792A Expired - Lifetime JP3350945B2 (ja) 1992-01-18 1992-01-18 延性,耐食性に優る高張力熱延鋼板と製造法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3350945B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1995029268A1 (fr) * 1994-04-26 1995-11-02 Nippon Steel Corporation Feuille en acier haute resistance convenant a l'emboutissage profond et son procede de fabrication
KR100481366B1 (ko) * 2000-12-08 2005-04-07 주식회사 포스코 연성이 우수한 열연 변태유기소성강판 및 그 제조방법
JP2009529098A (ja) * 2006-03-07 2009-08-13 アルセロールミタル・フランス 極めて高い強度、延性および靭性特性を有する鋼板を製造するための方法、ならびにこのように製造された板
WO2011025042A1 (ja) 2009-08-31 2011-03-03 新日本製鐵株式会社 高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1995029268A1 (fr) * 1994-04-26 1995-11-02 Nippon Steel Corporation Feuille en acier haute resistance convenant a l'emboutissage profond et son procede de fabrication
US5618355A (en) * 1994-04-26 1997-04-08 Nippon Steel Corporation High-strength steel sheet suitable for deep drawing and process for producing the same
KR100481366B1 (ko) * 2000-12-08 2005-04-07 주식회사 포스코 연성이 우수한 열연 변태유기소성강판 및 그 제조방법
JP2009529098A (ja) * 2006-03-07 2009-08-13 アルセロールミタル・フランス 極めて高い強度、延性および靭性特性を有する鋼板を製造するための方法、ならびにこのように製造された板
US9856548B2 (en) 2006-03-07 2018-01-02 Arcelormittal France Process for manufacturing steel sheet having very high strength, ductility and toughness characteristics, and sheet thus produced
US10370746B2 (en) 2006-03-07 2019-08-06 Arcelormittal Process for manufacturing steel sheet
WO2011025042A1 (ja) 2009-08-31 2011-03-03 新日本製鐵株式会社 高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
US9109275B2 (en) 2009-08-31 2015-08-18 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation High-strength galvanized steel sheet and method of manufacturing the same

Also Published As

Publication number Publication date
JP3350945B2 (ja) 2002-11-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2415893B1 (en) Steel sheet excellent in workability and method for producing the same
JP3317303B2 (ja) 局部延性の優れた高張力薄鋼板とその製造法
US20230349021A1 (en) High-strength thick hot-rolled steel sheet having excellent elongation and method for manufacturing same
JP3350944B2 (ja) 延性,耐食性の優れた高張力冷延薄鋼板と製造法
JP7431325B2 (ja) 耐久性に優れた厚物複合組織鋼及びその製造方法
KR100859303B1 (ko) 내형갤링성 및 내피로특성이 우수한 고장력 열연강판 및그 제조방법
CN115461482A (zh) 钢板、部件及其制造方法
JPH03277741A (ja) 加工性、常温非時効性及び焼付け硬化性に優れる複合組織冷延鋼板とその製造方法
JP2000328172A (ja) 深絞り面内異方性の小さい高炭素冷延鋼帯とその製造方法
JP2002012947A (ja) 伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP2962038B2 (ja) 高張力薄鋼板とその製造方法
JPH10251794A (ja) プレス成形性と表面性状に優れた構造用熱延鋼板およびその 製造方法
JP2003321734A (ja) 材質均一性に優れた高成形性高張力熱延鋼板ならびにその製造方法および加工方法
JP2003268491A (ja) 加工部材用高強度鋼板とその製造方法および耐磨耗性に優れた加工面を有する加工部材の製造方法、
EP4056724A1 (en) High-strength steel having high yield ratio and excellent durability, and method for producing same
JP3350945B2 (ja) 延性,耐食性に優る高張力熱延鋼板と製造法
JPH1081919A (ja) ノンイヤリング性および耐肌荒れ性に優れる2ピース缶用鋼板の製造方法
JP3616472B2 (ja) 加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP2001207234A (ja) 高延性高穴拡げ性高張力鋼板およびその製造方法
JPH05195150A (ja) 加工性に優れた熱延高張力鋼板とその製造法
JP3026540B2 (ja) ステンレス鋼板の製造方法
JP2003064446A (ja) 歪時効硬化特性に優れるとともに室温時効劣化のない冷延鋼板および冷延めっき鋼板ならびにそれらの製造方法
JPH0379718A (ja) 表面性状と加工性に優れた複合組織熱延高張力鋼板の製造方法
JP2003089847A (ja) 伸びフランジ加工性に優れた熱延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板とそれらの製造方法
KR102484992B1 (ko) 강도, 성형성 및 표면 품질이 우수한 도금강판 및 이의 제조방법

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 6

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080920

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080920

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 7

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090920

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 7

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090920

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100920

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 8

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100920

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 9

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110920

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 10

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120920

EXPY Cancellation because of completion of term
FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 10

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120920