JPH0519092A - 発電所の取水構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】冷却水取水ポンプ４に冷却水海水を導くための
取水路３内に津波等の引き波時に発生する干潮時水位２
より高い標高の頂部をもった堰１を設置し、干潮時に取
水路３内に取水路プール５を構成する。 【効果】津波等によって発生する海水位の低下時にも発
電を継続させるための必要海水量を確保し、取水構造物
の水路部分の堰の遮へい効果によりスクリーン構造を簡
素化することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はタービン駆動後の蒸気を
冷却・凝縮するための必要海水量を確保する取水構造物
に係り、特に、津波発生時の海水位低下時にも定格運転
を可能とするに好適な発電所の取水構造物に関する。

【０００２】

【従来の技術】発電所に設置される取水構造物は、海水
を復水器に導くための海水ポンプ、海水中の砂及び海生
生物が海水ポンプに吸引され、ポンプの機能に障害を与
えないように防護ネットにより除じんを行うためのスク
リーン設備及び海岸からの海水をこれら海水ポンプ・ス
クリーン設備に導くための水路により構成されている。
これらの取水構造物は発電所敷地前面の海底地形状況及
び海象により、若干の構造上の差異はあるものの基本的
にはポンプ・スクリーン及び水路によって構成されてい
る。

【０００３】これらの取水構造物は自然事象、例えば、
高潮・津波の際にもプラントの運転に支障のないように
ポンプ設計水位，ポンプ据付レベル及び水路の設定レベ
ルが決められている。

【０００４】特に、地震国である我国では、地震の従属
事象である津波に対して特別な考慮がなされており、地
震による高波に関しては、例えば、原子力発電所では海
水ポンプの機能を維持するためにポンプモータ部が海水
によって冠水しない様にポンプの設置レベルを設定して
いる。

【０００５】一方、引き波については取水路及び一般に
取水槽と言われる海水ポンプ設置部分のレベルを引き波
時の水位レベル以下とすることによって必要海水量を確
保するなどの手段がとられている。

【０００６】この引き波時の必要海水時の必要海水量の
確保に関する発明として特開昭57−46197 号公報があ
る。

【０００７】この発明は原力子発電所における非常用海
水ポンプの取水機能維持に係わるものであり、海水の取
入口を津波時の最低海水位より充分に深い位置に設置し
て津波発生時にも原子炉系の補機を冷却するための必要
海水量を確保することを意図したものであり、通常の発
電のための定格運転を継続させるための常用系海水ポン
プは従来の構成通りとなっている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】近年、発電所の集中立
地化が進んでおり、何らかの事象によっても複数のプラ
ントが送電を停止せず、安定した電力が継続的に供給さ
れることが望まれている。

【０００９】取水構造物の津波に対する設計上の考慮は
前述のものがあげられるが、これらは主として津波の引
き波発生という事象においてプラントの安全に係わる非
常用系のポンプ・機器に係わるものであり、通常の定格
運転継続に必要な海水量を確保することを目的とした常
用系の冷却水取水設備については考慮されていない。常
用系の冷却水取水設備の引き波時の取水機能の維持につ
いては、前述の発明の応用としての対策案が考えられ
る。

【００１０】これは非常用系の取水路と同様、常用系へ
の海水ポンプへ海水を導く取水路を津波の引き波レベル
以下とする方法であるが、このため、取水路及びポンプ
を設置する取水庭部分を引き波レベル以下とする必要が
ある。このため、これらの取水構造物建設のための工事
費がぼう大となり、取水路が深くなることにより、取水
路の保守性が低下する要因となる。

【００１１】一方、津波は事象としては高波と引き波の
繰り返しであり、ポンプを低く設置した場合、高波時の
冠水及びポンプ設定部の構築物とポンプ間の止水対策
等、従来の取水構造物では実施していない新たな対策を
講じる必要がある。

【００１２】本発明の目的は津波事象に対して、簡易な
構造によって定格運転継続に必要な冷却海水を確保する
ことを可能とした取水構造物を提供することにある。

【００１３】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
には、それらを生じる原因となる事象が恒久的なもので
はなく、一過性のものであることに着目すれば、それら
の事象が終結するまでの一定期間に発電運転を継続する
ために必要となる冷却水量を確保すれば良い。このため
に、通常時には水源からの冷却水が遅滞なく取水構造物
内に流入し、また、冷却水が減少する前述のような事象
の際には取水構造物内が必要となる冷却水量を貯留する
プール構造となるような堰を取水構造物内に設置してお
くことにより、この目的を達成することができる。

【００１４】また、本発明による取水構造物内に設置し
た堰は、発電所に想定される津波発生時の冷却水取水機
能を阻害しないよう堅固な構造とすることにより、冷却
水と共に水源より流入する異物の中の重量物の取水路へ
の混入を防ぐことが可能であるため、取水路内に異物流
入防止のために従来より設置されているスクリーン構造
を簡素化する目的が達成できる。

【００１５】

【作用】本発明による発電所の取水構造は、発電運転中
に発電所が遭遇する可能性のある津波等の自然事象によ
って冷却水源の水量が低下する場合にも、発電運転を継
続するために必要な一定量の冷却水を、上記自然事象が
終結するまでの一定期間内確保することが可能となる構
造を提供する。

【００１６】上記目的を達成するために、本発明では発
電所内の取水口から冷却水取水ポンプに至る取水構造物
の途中に、取水構造物の一部がプール構造となり、冷却
水が一定量貯留可能となるような堰を設置する。これに
より水源の水位（水量）が低下した場合でも堰より冷却
水取水ポンプに至る取水路で、取水路と堰で構成される
冷却水を内包したプールが一定期間形成される。水源の
水位（水量）を低下させた自然事象が終結するまでの期
間は、上記のプール内に貯留された冷却水をこの設備に
冷却水取水ポンプを介して供給することにより、発電運
転は支障なく継続することができる。さらにこの自然事
象が終結すれば、水源の水位（水量）が通常時のレベル
まで復帰することによって、冷却水は堰を越えて取水路
に流入するため、通常時における冷却水取水状態と同様
になる。

【００１７】一方、本発明により取水構造物内に設置し
た堰は、非常時の発電所の安全停止に係る取水機能を阻
害することのないよう堅固に設置するため、水源より冷
却水と共に流入する異物の中で比較的重量の大きいもの
が取水路に進入することを妨げる効果をもっている。従
って取水路に進入することとなるのは軽量の異物に限定
することができるため、従来よりこれらの異物の冷却水
取水ポンプへの吸込みを防止するために設置されている
スクリーン装置は、その構造，強度を軽量物に耐える程
度にまで簡素化することができる。

【００１８】

【実施例】以下、本発明の一実施例を、図１ないし図４
により説明する。

【００１９】図１は、本発明に基づく、海水を水源とし
沿岸に設置された発電所の取水構造の全体図を示すもの
である。取水構造物内に設置する本発明の堰１は、各発
電所毎に定まる必要水量に応じてその設置位置を定める
ことができる。即ち、通常海水位に干潮時の水位低下分
２及び冷却水取水ポンプの取水する水量を補給するに足
る海水の流入を確保するに必要な水面と堰１の頂部の標
高差を考慮して堰１の高さを定める。次に、想定する自
然事象の発生より終結までの継続時間中に必要となる冷
却水量に応じて、取水路３の断面積と冷却水取水ポンプ
４より堰１までの距離との関係より堰１の設置位置を定
める。これにより、発電所が津波等の自然事象に遭遇
し、その引き波によって海水面が低下した場合でも、取
水構造物内にプール構造をなす部分５が堰１によって形
成されるため、自然事象の際にも出力低下、あるいは、
停止に至ることなく発電運転を継続することができる。
自然事象が終結した場合には、低下した海水位は堰１の
頂部を越えて通常海水位レベルまで復帰するため、冷却
水は堰１の頂部より取水路３内へ遅滞なく流入し、通常
の取水状態となる。

【００２０】図２には本発明に基づく堰１の取水構造物
への設置のための構造図の例を示す。鉄筋コンクリート
製の堰に配した鉄筋６は、堰１の両側面及び下面より取
水構造物３側に貫通させることにより、取水構造物内に
堅固に設置することができる。また、本発明の堰の構造
は、図３に示すようなものも効果的である。これは、取
水構造物３の水路を遮断するように設置した堰１に、貫
通孔７と蝶番８を設け、逆止の機能を持つ円盤９を設け
たものであり、通常時は貫通孔７より冷却水が自由に流
入するが、水源側の水位が低下した場合堰１の内外の静
水頭の差により円盤９が堰１に圧着され、冷却水が貯留
される。

【００２１】同一敷地内に時期を異にして複数の発電所
が設置される場合には、図４に示すように、予め設置す
る基数に応じて定めた堰１の設置位置に鋼製のガイド１
０を設けておき、同様に鋼製とした堰１を発電所の基数
が増す毎にクレーン等で吊り上げ移動することによっ
て、設置基数に応じた必要冷却水量を確保することがで
きる。

【００２２】

【発明の効果】本発明によれば、津波等の自然事象によ
って冷却水の水源の水位が低下した場合にも、堰と取水
構造物が一定水量を確保したプール構造をなすので、自
然事象終結までの期間に必要となる冷却水を貯留するこ
とが可能となる。このため、冷却水量の低下の際にも安
定した電力供給を継続可能な発電所を提供することがで
きる。

【００２３】また、このように取水構造物内に堰を設置
することによって、取水構造物の断面方向の剛性が増
し、土圧あるいは地震力等に対する取水構造物の強度が
大きくなるため、その駆体厚さを低減することができ
る。

【００２４】一方、本発明の堰により、取水路に冷却水
と共に流入する異物の中の重量物は堰の底部に集積さ
れ、軽量の異物のみガスクリーン設備まで到達すること
となるため、スクリーン設備のこれら異物に対する強度
は軽減することができ、その簡素化により経済性の向上
が図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による一実施例の断面図。

【図２】本発明の堰の例を示す第一の説明図。

【図３】本発明の堰の例を示す第二の説明図。

【図４】多数基立地への本発明の実施例を示す平面図お
よび斜視図。

【符号の説明】 １…堰、２…干潮時水位、３…取水路、４…冷却水取水
ポンプ、５…取水路プール部。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】タービンの駆動源である蒸気を前記タービ
   ンを駆動した後に回収して冷却，凝縮する復水器と冷却
   水を前記復水器に供給するためのポンプ及び前記ポンプ
   による前記冷却水の取水を行うために水源より前記冷却
   水を前記ポンプに導く水路を形成する取水構造をもつ発
   電所において、 前記取水構造が津波発生時にも一定量の前記冷却水を確
   保するためのプール構造をなすように、堰を設置したこ
   とを特徴とする発電所の取水構造。
2. 【請求項２】請求項１において、前記堰を設けることに
   より、前記水源より前記冷却水と共に流入する異物を取
   除くためのスクリーン構造を簡素化した発電所の取水構
   造。