JPH05176947A - 人工血管およびその製造方法 - Google Patents

人工血管およびその製造方法

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JPH05176947A
JPH05176947A JP3359922A JP35992291A JPH05176947A JP H05176947 A JPH05176947 A JP H05176947A JP 3359922 A JP3359922 A JP 3359922A JP 35992291 A JP35992291 A JP 35992291A JP H05176947 A JPH05176947 A JP H05176947A
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JP
Japan
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tube
elastic resin
blood vessel
artificial blood
porous
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JP3359922A
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Shinichi Kanazawa
進一 金澤
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 PTFE多孔質チューブの有する表面特性、
生体適合性、可撓性、引裂強度等の諸特性を保持しなが
ら、弾性樹脂と複合させることにより、穿刺に対する弾
性が付与された人工血管を提供すること。 【構成】 ポリテトラフルオロエチレン多孔質チューブ
の内面に弾性樹脂層が積層され、かつ、弾性樹脂層の一
部がポリテトラフルオロエチレン多孔質チューブ内面側
の多孔性空間内に侵入した構造を有することを特徴とす
る人工血管。ポリテトラフルオロエチレン多孔質チュー
ブの内腔に弾性樹脂チューブを挿入した後、加熱するこ
とにより弾性樹脂チューブの一部または全部を溶融し、
ポリテトラフルオロエチレン多孔質チューブ内面側より
その多孔性空間内に溶融した弾性樹脂の一部を侵入させ
ることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔質
チューブの内面に弾性樹脂層が積層された構造の人工血
管の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医療用途に用いられる
人工血管に関し、さらに詳しくは、弾性樹脂層との複合
構造を有するポリテトラフルオロエチレン(以下、PT
FEと略記)多孔質チューブからなる人工血管に関す
る。
【0002】
【従来の技術】PTFEを材料とする多孔質体は、PT
FE自体のもつ耐熱性、耐薬品性、耐候性、不燃性など
の特性、さらには低摩擦係数、撥水・撥油性、非粘着性
等の表面特性に加えて、多孔質であるため、可撓性、流
体透過性、微粒子の捕集・濾過性、低誘電率・誘電正接
等の特性が付加されており、これらの独自の特性から一
般工業分野のみならず医療分野などへの用途が拡大して
いる。例えば、PTFE多孔質体は、濾過膜、隔膜、シ
ール材の他、人工血管等の医療材料としても用いられて
いる。
【0003】人工血管は、生体血管の病変部位を切除し
た欠損部の補填や病変部を迂回して血行を維持するバイ
パスとして、あるいは血液透析で血液の体外循環のため
使用する血液導管として、さらにはシャントチューブな
どとして使用されている。
【0004】人工血管としての用途のうち、透析シャン
ト用人工血管は大きな利用分野である。長期透析患者に
対し血液透析用のブラッドアクセスとして内シャントが
広く用いられているが、これは、頻回のシャントの再手
術により吻合ないしは穿刺する自己血管の無くなった症
例に対するものである。血液透析用シャントは、通常、
前腕および上腕の動脈と静脈の間をつなぐバイパス状に
吻合されるが、この用途には、可撓性や生体適合性に優
れるPTFE多孔質チューブがよく用いられている。
【0005】このPTFE多孔質チューブは、生体適合
性や可撓性には優れているものの、生体血管に比べると
弾力性に劣っている。このため、PTFE多孔質チュー
ブを血液透析用シャントとして用いる場合、透析装置の
太針を繰り返し穿刺すると、穿刺針抜去後に穿刺針の孔
が塞がらないで残り、そこから血液・血漿の漏出が起こ
り、その結果、血腫や血清腫が起こったり、この穿刺に
よる血液漏出、血液凝固を繰り返す内に内膜が異常肥厚
し、最終的に動脈瘤・血管閉塞に至るという問題があっ
た。
【0006】これに対し、弾力性に富む樹脂、例えばシ
リコンゴム樹脂やウレタン樹脂を用いた人工血管は、穿
刺抜去後、容易にその孔は塞がり止血は良好であるもの
の、引裂強度や耐座屈性に問題がある。すなわち、これ
らの弾性樹脂チューブは、生体血管との吻合の際、手術
糸等に対する引裂強度が低く吻合できないため、人工血
管としては不適であり、また、特に内シャント用途とし
ては、前腕および上腕等の狭い領域への移植に必要とな
る可撓性がなく、座屈しやすいなどの問題があった。
【0007】また、PTFE多孔質チューブやポリエチ
レンテレフタレートの織物などの実用化されている人工
血管は、有孔性であるため、人工血管周囲の生体組織が
一部その孔内に入り込み、しっかりと接着して血管の外
膜様組織を形成し、ある程度の止血性や人工血管が生体
内で一体化する効果をもっているが、弾性樹脂チューブ
は、無孔性のため、周囲の生体組織との接着性が悪く、
周囲組織による強度の補強効果がない。
【0008】さらに、弾性樹脂チューブは、PTFE多
孔質チューブに比べ、局部的な止血性はよいものの、度
重なる穿刺によるチューブ全体の強度劣化が激しいこと
もあって、チューブ破裂の危険性が高い。弾性樹脂チュ
ーブを多孔質化することは可能であるが、多孔質化は、
チューブ強度、引裂強度、耐座屈性を著しく低下させる
ため、周囲組織との接着性は向上するものの、人工血管
としての使用には難があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、PT
FE多孔質チューブの有する表面特性、生体適合性、可
撓性、引裂強度等の諸特性を保持しながら、弾性樹脂と
複合させることにより、穿刺に対する弾性が付与された
人工血管を提供することにある。
【0010】本発明者は、従来技術の問題点を克服する
ために鋭意研究した結果、PTFE多孔質チューブの内
腔に、予め管状に成形した弾性樹脂を挿入し、加熱する
ことにより、両者の積層界面において、弾性樹脂の一部
がPTFE多孔質チューブの多孔性空間に侵入し、弾性
樹脂層がPTFE多孔質チューブ内面に固定・一体化さ
れた構造の積層チューブの得られることを見いだした。
【0011】このような複合構造のチューブは、その表
面にPTFE多孔質チューブ特有の有孔性を保持してい
るため、生体組織との接着性に優れており、しかも弾性
樹脂層による弾性が付加されているため、度重なる穿刺
に十分耐えることができ、人工血管、特に透析内シャン
ト用人工血管として非常に効果的なものである。本発明
は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】かくして本発明によれ
ば、ポリテトラフルオロエチレン多孔質チューブの内面
に弾性樹脂層が積層され、かつ、弾性樹脂層の一部がポ
リテトラフルオロエチレン多孔質チューブ内面側の多孔
性空間内に侵入した構造を有することを特徴とする人工
血管が提供される。
【0013】また、本発明によれば、ポリテトラフルオ
ロエチレン多孔質チューブの内腔に弾性樹脂チューブを
挿入した後、加熱することにより弾性樹脂チューブの一
部または全部を溶融し、ポリテトラフルオロエチレン多
孔質チューブ内面側よりその多孔性空間内に溶融した弾
性樹脂の一部を侵入させることを特徴とするポリテトラ
フルオロエチレン多孔質チューブの内面に弾性樹脂層が
積層された構造の人工血管の製造方法が提供される。
【0014】以下、本発明について詳述する。PTFE
多孔質チューブは、穿刺による孔が塞がらないこと、一
方、弾性樹脂チューブは、引裂強度や耐座屈性、強度劣
化、周囲の生体組織との接着性が問題である。本発明で
は、これらを複合化することにより、両者の欠点を補う
ことを可能としたものである。
【0015】ところで、両者を複合化する場合、PTF
E多孔質チューブに弾性樹脂チューブをかぶせただけ、
あるいはその逆にかぶせただけでは、両者の接着性が悪
いため、太針を穿刺した時にPTFE多孔質チューブと
弾性樹脂層との間に漏出血液塊部が発生し、動脈瘤化の
危険性がある。したがって、PTFE多孔質チューブと
弾性樹脂を複合化するには、弾性樹脂をPTFE多孔質
チューブの多孔性空間内に侵入させて、固定・一体化す
ることが必要である。
【0016】しかしながら、PTFE多孔質チューブの
多孔性空間内に弾性樹脂を含浸させて固定化すると、P
TFE多孔質チューブの有孔性が阻害され、本来PTF
E多孔質チューブの有する周囲生体組織との接着性が損
なわれる。このため、両者の複合化形態は、PTFE多
孔質チューブの外側の有孔性を保つ必要がある。つま
り、弾性樹脂は、PTFE多孔質チューブの内側から多
孔質内の厚み方向の途中までの部分、少なくとも外表面
に達しない範囲内に侵入させて固定化される必要があ
る。
【0017】ところが、液体状態から硬化剤添加や加
熱、加硫によって硬化されるタイプの弾性樹脂の場合に
は、PTFE多孔質チューブの外側に塗布して積層する
か、あるいはその多孔性空間全体に含浸させて複合化す
ることは可能であるが、外側の孔を残して内側のみに複
合化することは極めて困難である。例えば、PTFE多
孔質チューブ内腔に液状の弾性樹脂を注入し、PTFE
多孔質チューブの外側から吸引して弾性樹脂の一部を内
側から多孔性空間内に侵入させる方法が考えられるが、
弾性樹脂の侵入を一定の深さで停止させたり、均一な厚
みに制御することは極めて困難であり、工業生産上から
は不可能に近い。
【0018】そこで、本発明においては、PTFE多孔
質チューブの内腔に、予め管状に成形した弾性樹脂(弾
性樹脂チューブ)を挿入した後、加熱することにより弾
性樹脂の一部または全部を溶融し、PTFE多孔質チュ
ーブ内面側よりその多孔性空間内に溶融した弾性樹脂の
一部を侵入させる方法を採用する。
【0019】本発明に用いるPTFE多孔質チューブ
は、多孔性空間を有するものであれば良く、特定の製造
方法によるものに限定されない。PTFE多孔質チュー
ブは、例えば、特公昭42−13560号公報に記載の
方法により製造することができる。具体的には、先ず、
PTFE未燒結粉末に液状潤滑剤を混和し、押出し等に
よりチューブ状に成形する。この成形物から液状潤滑剤
を加熱蒸発等により除去、あるいは除去せずして成形物
を少なくとも一軸方向に延伸する。熱収縮防止状態にて
燒結温度の327℃以上に加熱して延伸した構造を燒結
固定すると強度の向上したPTFE多孔質チューブが得
られる。
【0020】このPTFE多孔質チューブは、非常に細
い繊維と該繊維により互いに連結された結節とからなる
微細繊維状組織を有しており、この微細繊維状組織が多
孔性空間を形成している。その繊維径と長さ、結節の大
きさやそれらの数は延伸と燒結の条件により変化させる
ことが可能であり、得られるPTFE多孔質チューブの
孔径と気孔率も自由に決定できる。
【0021】また、特公昭60−37736号公報や特
公昭58−1656号公報に記載されているような、外
表面に凹凸構造を有し、その凹凸部分の平均孔径が内表
面の平均孔径よりも大きなPTFE多孔質チューブを使
用することもできる。
【0022】PTFE多孔質チューブと複合化される弾
性樹脂は、基本的に弾性をもつポリマーであれば特定の
ものに限定されず、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン
樹脂、フッ素ゴム、熱可塑性エラストマーなどを挙げる
ことができるが、それらの中でも、特に、熱可塑性エラ
ストマーが好ましい。
【0023】熱可塑性エラストマーは、他の熱硬化性ゴ
ムなどとは違い、一般プラスチックの成形加工方法を用
いることができるため、例えば溶融押出などで簡単に任
意径のチューブを得ることができる。このチューブは、
加熱により溶融状態にすることが可能であり、例えば、
このチューブの上にPTFE多孔質チューブをかぶせ
て、外側から加熱し、熱可塑性エラストマーの融点以上
にすれば、溶融した熱可塑性エラストマーの一部がPT
FE多孔質チューブ内面よりその多孔性空間内に侵入す
る。これを室温に戻すと、PTFE多孔質チューブ内面
に強く固定した熱可塑性エラストマーの均一な内層を設
けた人工血管を容易に得ることができる。しかも、この
方法によれば、熱可塑性エラストマーの侵入の程度を容
易に制御することができ、PTFE多孔質チューブの外
側にまで滲み出すことを防ぐことができる。
【0024】PTFE多孔質チューブの内面側からその
多孔性空間内に侵入させる弾性樹脂層の侵入の程度は、
両者が実用上強固に固定・一体化されるために、PTF
E多孔質チューブ内面からその厚み方向に通常10μm
以上、好ましくは15μm以上とすることが望ましい。
ただし、弾性樹脂は、PTFE多孔質チューブの外表面
側にまで侵入させない。
【0025】本発明品の用途を考えれば、用いる熱可塑
性エラストマーとしては、抗血栓性や低炎症性などの生
体適合性に優れたものが望ましく、ウレタン系、フッ素
系のものが望ましい。熱可塑性エラストマー以外の弾性
樹脂で、熱の代わりに弾性樹脂を溶かす溶剤を使用して
製造することも可能である。ただし、この場合、溶剤に
よる弾性樹脂の強度低下、溶剤の残留などの問題に留意
する必要がある。
【0026】以上のような製造方法によって、PTFE
多孔質チューブの内面に弾性樹脂層、特に熱可塑性エラ
ストマーを設けることで初めて、PTFE多孔質チュー
ブと弾性樹脂がそれぞれの長所を活かし、欠点を補い合
った優れた特性を有する人工血管を得ることができる。
【0027】
【実施例】以下に本発明について、実施例および比較例
を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施
例のみに限定されるものではない。
【0028】[実施例1]PTFE多孔質チューブとし
ては、内径6mmφ、長さ40cmのPTFE人工血管
「テクノグラフトTG06040」(住友電工社製)を
使用した。弾性樹脂としては、フッ素ゴムをソフトセグ
メント、フッ素樹脂をハードセグメントとするフッ素系
熱可塑性エラストマー「ダイエルサーモプラスチックT
−530」(ダイキン工業社製)を使用した。該熱可塑
性エラストマーを溶融押出によって内径4.9mmφ、
外径6.0mmφのチューブに成形した。
【0029】図2に示すように、熱可塑性エラストマー
チューブ(2)に、平均孔径0.8μm、気孔率65
%、内径4mmφ、外径5mmφの離型用PTFE多孔
質チューブ(3)で被覆した外径4mmφのステンレス
棒(4)を挿入し、さらに上記PTFE多孔質チューブ
(1)にこれを挿入した。離型用のPTFE多孔質チュ
ーブを使用したのは、ステンレス棒のみだとステンレス
棒と熱可塑性エラストマーチューブが接着して、後でス
テンレス棒が抜けなくなるからである。
【0030】次いで、PTFE多孔質チューブ(1)と
熱可塑性エラストマー(2)の両端をステンレス線で縛
ってステンレス棒(4)に固定した。その後、内径40
cmφの横円筒型加熱炉の中心軸とこのステンレス棒の
長軸を合わせるように配置して、ステンレス棒の長軸を
中心に回転させながら、炉温280℃、30分加熱し
た。こののち、ステンレス棒に被覆した離型用PTFE
多孔質チューブ(3)およびステンレス棒(4)を外し
て、図1に断面を示すような、内径5mmφ、外径7m
mφ、PTFE多孔質チューブの内面側より平均20μ
m、熱可塑性エラストマー層がPTFE多孔質チューブ
の多孔性空間内に侵入し、固定化された人工血管を得
た。
【0031】[実施例2]PTFEファインパウダー
(ダイキン工業社製、PTFEファインパウダー:F1
04)100重量部に対して、ドライゾール23重量部
を助剤として混合し、ラム押出によってチューブ状に成
形したのちに、ドライゾールを50℃、48時間で乾燥
させた。この押出チューブを電気炉炉温400℃、炉内
滞在時間30秒の条件で加熱しながら500%延伸し、
気孔率75%、繊維長25μm、内径5.3mm、外径
5.8mmのPTFE多孔質チューブを得た。
【0032】実施例1と同じ熱可塑性エラストマーを使
用し、溶融押出にて内径4.9mm、外径5.4mmの
熱可塑性エラストマーチューブを得た。
【0033】上記で得られたPTFE多孔質チューブと
熱可塑性エラストマーチューブを使用した以外は、実施
例1と同様にして、図3に断面を示すような、内径5m
mφ、外径6mm、PTFE多孔質チューブ(1)の内
面より平均30μm、熱可塑性エラストマー(2)がP
TFE多孔質チューブの多孔性空間内に侵入し、固定化
された人工血管を得た。
【0034】[比較例1]実施例1で使用したのと同じ
PTFE多孔質チューブを人工血管とした。
【0035】[比較例2]弾性樹脂として、メディカル
グレードシリコンエラストマー「MDX−4−421
0」(ダウコーニング社製)を使用し、エラストマーベ
ース(主剤)10に対し、硬化剤1の重量比にて混合
し、真空脱気して樹脂溶液を作製した。
【0036】外径5mmφのポリテトラフルオロエチレ
ン棒(PTFE棒)を内径6.0mmφのステンレス管
内に中心軸が合うように挿入し、PTFE棒とステンレ
ス管の隙間に樹脂溶液を充填した。その後、55℃、2
時間の熱処理を加えることで弾性樹脂を硬化させ、ステ
ンレス管を外した。
【0037】このPTFE棒挿入状態の弾性樹脂チュー
ブの外側に、実施例1と同様のPTFE多孔質チューブ
を挿入し、両端をステンレス線で縛って固定後、室温で
トルエン中に浸漬した。この浸漬時間を5分、10分、
20分と変えた3種類の試料を作製した。その後、トル
エンから出して、真空乾燥したのちに、PTFE棒を引
き抜いた。
【0038】5分浸漬したものは、PTFE多孔質チュ
ーブと弾性樹脂チューブがPTFE棒抜去時に分離して
一体化できなかった。
【0039】浸漬時間20分のものは、弾性樹脂チュー
ブの一部がPTFE棒に接着して剥離し、人工血管内面
に弾性樹脂の粒塊物が多数認められ、弾性樹脂層の破壊
が起こっていた。そこで、浸漬時間10分のものを比較
例2として、以下の評価を行った。
【0040】[比較例3]比較例2で作製した弾性樹脂
チューブを比較例3とした。
【0041】〈実施例および比較例の評価〉実施例1、
2および比較例1、2、3の試料について、16ゲージ
の針による同一カ所50回の穿刺抜去の試験を行った後
に、バブルポイント(イソプロピルアルコール中で人工
血管内腔を加圧したときに、人工血管外表面より気泡が
発生する最低圧)を測定した。
【0042】その結果、比較例1と2の試料で0.00
5kg/cm2以下であったのに対し、実施例1の試料
で0.10kg/cm2、実施例2の試料では0.05
kg/cm2と良好な穿刺孔の閉口効果が見られた。
【0043】比較例2の試料でパブルポイントが0.0
05kg/cm2以下となった理由は、比較例3の試料
ではバブルポイントが0.10kg/cm2と良好であ
ったことから、トルエンによる強度劣化が起こったため
と考えられる。
【0044】次に、実施例1および2の試料について、
JIS K−6854 B法に準じたT型剥離試験を行
ったところ、5点の試験サンプルは、すべてPTFE多
孔質チューブ部分の破壊が起こり、PTFE多孔質チュ
ーブと弾性樹脂層との界面では剥離が起こらず、両者の
接着性は非常に良好であった。
【0045】さらに、実施例1、2および比較例2、3
の試料の両端を封止し滅菌後、ラット背皮下へ2週間埋
植したところ、実施例1と2の試料では、人工血管周囲
を取り囲むように、人工血管と強固に接着する皮下生体
組織が形成されていた。病理組織検索の結果、この生体
組織は毛細血管を含む線維芽細胞を中心とする正常な皮
下組織で、PTFE多孔質チューブの多孔性空間内まで
侵入し人工血管と一体化していることがわかった。この
人工血管周囲に形成した生体組織は穿刺抜去後の止血に
有効と考えられる。
【0046】一方、比較例2と3の試料では、人工血管
周囲に皮下組織は取り囲んでいたものの、皮下からの取
り出しの際に人工血管から簡単に剥離し、病理組織検索
でも、人工血管内部への組織の侵入は見られず、特に比
較例2の試料では、弾性樹脂層付近に多数の炎症性の細
胞が集積し、炎症反応が強く起こっていた。
【0047】
【発明の効果】本発明による人工血管は、PTFE多孔
質チューブの表面特性や生体適合性等と、弾性樹脂の穿
刺に対する弾性を兼ね備えたものであり、人工血管、特
に透析内シャント用人工血管として非常に効果的であ
り、本発明の製造方法はその人工血管を得るのに非常に
有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得た人工血管の断面図であ
る。
【図2】本発明の実施例1の人工血管の製造方法を説明
した模式図である。
【図3】本発明の実施例2で得た人工血管の断面図であ
る。
【符号の説明】
1 PTFE多孔質チューブ 2 弾性樹脂層 3 離型用PTFE多孔質チューブ 4 ステンレス棒

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリテトラフルオロエチレン多孔質チュ
    ーブの内面に弾性樹脂層が積層され、かつ、弾性樹脂層
    の一部がポリテトラフルオロエチレン多孔質チューブ内
    面側の多孔性空間内に侵入した構造を有することを特徴
    とする人工血管。
  2. 【請求項2】 ポリテトラフルオロエチレン多孔質チュ
    ーブの内腔に弾性樹脂チューブを挿入した後、加熱する
    ことにより弾性樹脂チューブの一部または全部を溶融
    し、ポリテトラフルオロエチレン多孔質チューブ内面側
    よりその多孔性空間内に溶融した弾性樹脂の一部を侵入
    させることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多
    孔質チューブの内面に弾性樹脂層が積層された構造の人
    工血管の製造方法。
JP3359922A 1991-12-26 1991-12-26 人工血管およびその製造方法 Pending JPH05176947A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6926735B2 (en) 2002-12-23 2005-08-09 Scimed Life Systems, Inc. Multi-lumen vascular grafts having improved self-sealing properties
JP2013068712A (ja) * 2011-09-21 2013-04-18 Utsunomiya Univ 疑似血管ユニット

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