JPH0517559A - アントラキノン残基を持つポリエステル化合物、その製造方法、及びそれを含む顔料組成物 - Google Patents

アントラキノン残基を持つポリエステル化合物、その製造方法、及びそれを含む顔料組成物

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JPH0517559A
JPH0517559A JP3244507A JP24450791A JPH0517559A JP H0517559 A JPH0517559 A JP H0517559A JP 3244507 A JP3244507 A JP 3244507A JP 24450791 A JP24450791 A JP 24450791A JP H0517559 A JPH0517559 A JP H0517559A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】AQ(−X−Y−Zm)n〔式中、AQはアン
トラキノン残基を、Xは直接結合、−CH2 −、−SO
2 −、−CO−あるいは−CH2 NHCOCH2 −のい
ずれかを、YはXおよびZとの結合端がそれぞれ独立に
−NR1 −(R1 は水素もしくは低級アルキル基)ある
いは−O−であって、エーテル結合、2級あるいは3級
窒素、芳香族環、又はトリアジン環を含んでもよい連結
基(同一原子でXとZに結合してもよい、但しこの場合
Xは直接結合ではない)を、Zはラクトン類の開環反応
により誘導される連結基を有するポリエステル鎖を、m
は1あるいは2を、nは1〜4の整数を示す。〕で表さ
れる、アントラキノン残基を持つポリエステル化合物、
その製造方法、及びそれを含む顔料組成物。 【効果】本発明の分散剤の使用により、高濃度でかつ安
定な顔料組成物を得ることができる。特に、中性のCB
に対しても満足する効果を発揮する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、顔料分散剤として有用
な新規ポリエステル化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にインキ、塗料等の顔料を分散させ
たコーティング組成物では鮮明な色調、高い光沢および
着色力が要求される。このためには用いる顔料の粒子が
微細で、かつ高濃度に微分散されている必要がある。し
かしこのような顔料分散物を得ることは難しく、顔料の
分散不良に起因して、しばしば取扱上あるいは製品の品
質等の問題が生じるものである。
【0003】例えばカーボンブラック(CB)はインキ
や塗料等に着色剤として、あるいは導電性付与等を目的
として幅広く使われている。しかし、CB表面と分散媒
である有機溶媒や樹脂等との親和性は一般に低く、また
ストラクチャーと呼ばれるCB特有の構造があることや
粒子が凝集しやすいために分散しにくくなっている。こ
のため、従来から分散剤や表面処理剤等を用いて顔料の
分散性を改良する種々の方法が試みられてきた。特にイ
ンキや塗料等のコーティング組成物に対しては、高分子
の分散剤を用いる方法が普及している。そしてこれらの
分散剤のなかでも、親媒和ポリマー鎖と共に顔料表面に
対して吸着能を有する特定部位を持つものが比較的良い
効果をあげてきた。これらを吸着能の付与の仕方から分
類すると、いわゆる酸−塩基相互作用を利用するものと
色素残基を導入して顔料表面との構造類似性を持たせる
ものとに分けられる。以下CBの分散を例にとって従来
技術について説明する。
【0004】まず、酸−塩基相互作用を利用するものに
ついて、例えば特公昭57−25251号公報、特開平
1−311177号公報にはポリエステル鎖の末端ある
いは鎖中にアミノ基を持つものが、特開昭63−175
080号公報にはポリマー中にペンダントととしてアミ
ノ基を持つ化合物が開示されている。また、USP4,
224,212、特開昭64−79279号公報にはポ
リアミンやその変性体が示されている。これらは分散剤
中のアミノ基と顔料表面の酸性基との間の相互作用を利
用するものであり、カルボキシル基、フェノール性水酸
基等の酸性官能基を表面に多く持つ酸性CBに対して一
応の分散効果が得られている。
【0005】しかしながら、表面官能基の少ない中性C
Bに対しては十分な効果が得られていない。CBの表面
pHはその製造方法の違いや酸性処理の有無によって異
なり、フェノール性水酸基やカルボキシル基等の官能基
の濃度が高ければ酸性を示す。一方、CBの分散性につ
いてはこの官能基濃度に依存し、酸性CBであれば分散
性が良好である。しかし、実際の製造方法では通常上記
官能基濃度の低いCB(中性CB)が得られるので、分
散性を向上させるためにわざわざ酸性処理を行ない酸性
CBを得ているのが実情である。従って、特別の酸性処
理をしていない安価な中性CBを容易に分散することの
できる分散剤が望まれている。
【0006】次に色素誘導体を用いるものについて、構
造の類似性に起因する親和性を利用しているので、酸−
塩基相互作用によるものに比べて顔料表面の官能基濃度
の違いによる分散性の変化が少ないという利点がある。
例えば、前記の特公昭57−25251号公報、特開昭
51−55320号公報には、アミノ基を持つポリマー
とカルボキシル基やスルホン酸基を有する色素の酸誘導
体とを併用し、これらを塩形成で結びつけて分散効果を
得る方法が開示されている。また、特開昭63−514
68号公報、特開昭63−175080号公報、特開昭
62−195053号公報等には色素残基をエステル結
合、アミド結合、ウレタン結合などでポリマー鎖に導入
する方法がみられる。後者の3例では、塩形成ではなく
ポリマー鎖と色素残基とを共有結合で結びつけようとし
たものである。また、従来からCBを分散するために天
然物であるギルソナイトが使われることが多い。ギルソ
ナイトは安価ではあるが、反面分散性はそれほど良いも
のではなく、充分な効果を得るには至っていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭
63−51468号公報にあるようにカルボキシル基、
水酸基、酸無水物環等を持つ色素誘導体を水酸基やカル
ボキシル基末端のポリエステルと直接反応しようとして
も、色素誘導体の反応系中での溶解性が低いためなどに
より反応率が上がらず、結果的に十分な分散性が得られ
なかったり残存する未反応色素による種々の問題が生じ
ることが多いのが実情である。
【0008】このため特開昭63−175080号公報
にあるように多官能イソシアネートを用いることはでき
る。しかし、生成するウレタン結合や尿素結合は一般に
有機溶媒や樹脂との相溶性が低く、また残存するイソシ
アネート基が安定性を低下させるという問題があり、こ
れも十分といえない。また、特開昭62−195053
号公報のように、クロロメチル基、クロロスルフォニル
基、α−クロロアセトアミドメチル基などを有する色素
を樹脂と反応させる場合は、反応後に樹脂を水洗、乾燥
しなければならず操作が煩雑となってしまう。
【0009】この他、特開昭64−79278号公報等
には反応性基を持つ化合物をCB表面にグラフト化する
方法が提案されている。しかし、グラフト化率を上げる
にはやはりCB表面にカルボキシル基、フェノール性水
酸基、あるいはキノン構造を多く必要とし、中性CBに
は十分な効果を示さない。また、この場合はあらかじめ
CBの表面処理を行なわねばならないので簡便な用法と
しては不適である。このように、分散系に混合して使用
することによって、十分な効果が得られ、かつ表面不活
性な中性CBをも満足に分散できる分散剤は未だ見い出
されておらず、当業界では強く要望されていた。
【0010】本発明の目的はまさにこの点にあり、顔料
分散剤として特に上記のように従来は分散が困難であっ
た、表面官能基の少ない中性CBに対しても有用な化合
物を提供することにある。本発明者らは、上記要望に対
応するための顔料分散剤として、環に直接置換したアミ
ノ基を有するアントラキノン類のラクトン変性体からつ
くられる化合物が高い分散性を示すことを見い出し、す
でに特願平2−204366号として提案したが、本発
明は反応率の向上の面でこれを更に改良したものであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の要旨は、 (1) AQ(−X−Y−Zm)n
(I) 〔式中、AQはアントラキノン残基を、Xは直接結合、
−CH2 −、−SO2 −、−CO−あるいは−CH2
HCOCH2 −のいずれかを、YはXおよびZとの結合
端がそれぞれ独立に−NR1 −(R1 は水素もしくは低
級アルキル基)あるいは−O−であって、エーテル結
合、2級あるいは3級窒素、芳香族環、又はトリアジン
環を含んでもよい連結基(同一原子でXとZに結合して
もよい、但しこの場合Xは直接結合ではない)を、Zは
ラクトン類の開環反応により誘導される連結基を有する
ポリエステル鎖を、mは1あるいは2を、nは1〜4の
整数を示す。〕で表される、アントラキノン残基を持つ
ポリエステル化合物、(2)環に直接置換していない−
NHR1 (R1 は水素もしくは低級アルキル基)あるい
は−OHを持つ置換アントラキノン類に、ラクトン類を
重付加し、次いで炭素数12〜20のヒドロキシカルボ
ン酸またはその重縮合物を縮合させるか、炭素数4〜2
0のジカルボン酸もしくはその無水物と炭素数2〜20
のジオールによる縮合物をエステル化反応させることを
特徴とする前記(1)記載のポリエステル化合物の製造
方法、および(3)前記(1)記載のポリエステル化合
物を顔料分散剤として用いる顔料組成物に関する。
【0012】一般式(I)において、AQはアントラキ
ノン残基を示し、本発明の化合物は−X−Y−置換基を
有するアントラキノン類(SAQと略す)にZで表され
るポリエステル鎖が結合したものである。即ち、本発明
におけるSAQとは、環に直接置換していない−NHR
1 (R1 は水素もしくは低級アルキル基)あるいは−O
Hを持つものであり、市販のアントラキノン染料や中間
体をそのまま使うことができる。
【0013】具体例としては、ヒドロキシメチル基、ア
ミノフェニルアミノ基、ヒドロキシフェニルアミノ基、
ヒドロキシメチルフェニルアミノ基、β−ヒドロキシエ
チルフェニルアミノ基、γ−ヒドロキシプロピルフェニ
ルアミノ基、β−ヒドロキシプロピルフェニルアミノ
基、β−ヒドロキシエトキシフェニルアミノ基、γ−ヒ
ドロキシプロポキシフェニルアミノ基、β−ヒドロキシ
エチルアミノ基、β−ヒドロキシエトキシ基、β−アミ
ノエチルアミノ基、β−アミノエトキシ基、γ−ヒドロ
キシプロピルアミノ基、β−ヒドロキシプロピルアミノ
基、γ−ヒドロキシプロポキシ基、β−ヒドロキシプロ
ポキシ基、γ−アミノプロピルアミノ基、β−アミノプ
ロピルアミノ基、γ−アミノプロポキシ基、β−アミノ
プロポキシ基、β−ヒドロキシエトキシエチルアミノ
基、γ−ヒドロキシプロポキシエチルアミノ基、β−ヒ
ドロキシプロポキシエチルアミノ基、β−ヒドロキシエ
トキシプロピルアミノ基、γ−ヒドロキシプロポキシプ
ロピルアミノ基、β−ヒドロキシプロポキシプロピルア
ミノ基、(4−β−ヒドロキシエチルアミノ−6−メチ
ルアミノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ
フェニルアミノ基などを有するものや、これらの基が−
CH2 −、−SO2 −、−CO−、あるいは−CH2
HCOCH2 −を介して結合したアントラキノン類を挙
げることができる。これらの反応基を持てば他に環置換
した低級アルキル基、アミノ基、あるいは水酸基等が共
存してもよい。また、これらは単独で用いても2種以上
の混合物として用いてもよい。
【0014】ここで、Xとは直接結合、−CH2 −、−
SO2 −、−CO−あるいは−CH2 NHCOCH2
のいずれかを示す。また、YとはXおよびZとの結合端
がそれぞれ独立に−NR1 −(R1 は水素もしくは低級
アルキル基)あるいは−O−であって、エーテル結合、
2級あるいは3級窒素、芳香族環、又はトリアジン環を
含んでもよい連結基(同一原子でXとZに結合してもよ
い、但しこの場合Xは直接結合ではない)を示す。
【0015】ここで、Zで表されるポリエステル鎖と
は、少なくともラクトン類の開環反応により誘導される
連結基(連結基Aと略す)を必須とし、さらにヒドロキ
シカルボン酸のエステル化反応により誘導される連結基
(連結基Bと略す)、ジカルボン酸もしくはその無水物
とジオールによる縮合物のエステル化反応により誘導さ
れる連結基(連結基Cと略す)等でエステル結合した鎖
状構造をいう。
【0016】ここで、ラクトン類の開環反応により誘導
される連結基Aとは、具体的にはC(=O)R2 Oで表
される連結基が挙げられ、通常4〜7員環のラクトン類
の開環反応により誘導されるものである。ここで、R2
は低級アルキル側鎖を有してもよい炭素数2〜10(側
鎖のアルキル基の炭素数も含める)のアルキレン基を示
す。ラクトン類としては開環反応性の4〜7員環のもの
が使用できる。例えば、β−プロピオラクトン、δ−バ
レロラクトン、ε−カプロラクトン、あるいはこれらの
低級アルキル置換体が挙げられ、好ましくはε−カプロ
ラクトンである。
【0017】また、ヒドロキシカルボン酸のエステル化
反応により誘導される連結基Bは、具体的にはC(=
O)R3 Oで表される連結基が挙げられる。ここで、R
3 は不飽和結合、アルキル側鎖を有してもよい炭素数1
1〜19のアルキレン基あるいはアルケニレン基(側鎖
のアルキル基の炭素数も含める)を示す。ヒドロキシカ
ルボン酸としては、末端にヒドロキシル基を有する炭素
数12〜20の長鎖脂肪酸で、不飽和結合やアルキル側
鎖を有してもよいものを用いることができる。例えばリ
シノール酸やひまし油脂肪酸、およびその水素添加物、
あるいは12−ヒドロキシステアリン酸などがあげら
れ、好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸である。
【0018】また、ジカルボン酸もしくはその無水物と
ジオールによる縮合物のエステル化反応により誘導され
る連結基Cは、具体的にはC(=O)R4C(=O)O
5 Oで表される連結基が挙げられる。ここで、R4
炭素数4〜20で芳香族環を有していてもよいアルキレ
ン基あるいはアルケニレン基(側鎖のアルキル基の炭素
数も含める)を示す。R5 はエーテル結合、芳香族環を
有してもよい炭素数2〜20のアルキレン基あるいはア
ルケニレン基を示す。ジカルボン酸あるいはその無水物
としては、炭素数4〜20で芳香族環を有してもよいも
のを挙げることができ、具体的はこはく酸、無水こはく
酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、アジ
ピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカン
ジカルボン酸、ドデセニル無水コハク酸等またはこれら
の無水物で示され、好ましくは1,10−デカンジカル
ボン酸である。ジオールとしては炭素数2〜20でエー
テル結合や芳香族環を有してもよいものが挙げられる。
具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリ
コール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジ
オール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコー
ル、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4
−ジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA
等を示すことができ、好ましくは12−ヒドロキシステ
アリルアルコールである。
【0019】これらのヒドロキシカルボン酸、ジカルボ
ン酸又はその酸無水物、あるいはジオールは、目的とす
るポリエステル鎖の分散媒との相溶性や分子量などを考
慮して、適当に組み合わせて用いればよい。なお、非極
性分散媒に対しては長鎖ヒドロキシカルボン酸を主原料
とするポリエステル鎖を有する化合物が好ましい。
【0020】一般式(I)において、mは1あるいは
2、nは1〜4の整数を示すもので、導入されるポリエ
ステル鎖の数を示すものである。なお、上記した−NH
1 あるいは−OHのすべてが反応する必要はない。ま
た、顔料表面に吸着した後に十分なポリマー保護効果を
得るには、それに適した長さのポリエステル鎖を持つ必
要があり、一般式(I)の化合物の重量平均分子量は、
通常1,500〜20,000の範囲であればよく、好
ましくは2,000〜10,000の範囲である。
【0021】一般式 (I) で示された化合物は、SAQ
にラクトンを重付加した後、これを上記したポリエステ
ル原料単量体の組成物に加えてエステル化反応すること
により製造することができる。しかし反応の順序はこれ
に限定されるものではなく、これら単量体の縮合物とし
てカルボキシル基含有ポリエステルをあらかじめ合成し
ておき、SAQのラクトン重付加体と反応させる方法に
よってもよい。また、ジカルボン酸もしくはその無水物
とジオールとの縮合物を縮合させることにより容易に製
造することができる。ここで、用いられるSAQはアン
トラキノンの1つあるいは2つ以上の置換体であり、中
でも2置換体以上であることが好ましい。他に芳香環上
に低級アルキル基や水酸基等が共存してもよい。また、
SAQは単独であっても構造の異なる2種以上のSAQ
混合物であってもよい。
【0022】ラクトンのSAQへの重付加反応やつづく
エステル化反応では、それぞれ一般的に用いられる触媒
の存在下、あるいは非存在下に160 〜240 ℃に加熱して
行なえばよい。通常用いられる触媒としては、Ti、S
n、Zn化合物などが挙げられ、例えばテトラ−n−ブ
チルチタネート、ジ−n−ブチルすずジラウレート等で
ある。また、水の生成がある場合にはこれを除去しなが
ら所定の分子量になるまで反応すればよい。
【0023】ポリエステル化合物が有機溶媒や樹脂中で
の顔料分散に有利であることは一般に知られている。上
記の合成手順から分かるように、本発明ではポリエステ
ルにアントラキノン残基を導入する際にラクトンの付加
によるSAQの変性を経ることに特徴がある。SAQに
ポリエステル鎖を直接導入しようとすると、通常は反応
性や溶解性が低いためかなりの量のSAQが未反応のま
ま残存してしまう。これを本発明ではまずラクトンを付
加させることで解決したのである。但し、この付加量が
少なすぎると反応性や溶解性を十分に改良するまでには
至らず、逆に多過ぎるとポリエステル鎖の極性を必要以
上に上げてしまい、返って顔料分散性の低下をまねいて
しまう。
【0024】このことから、ラクトン類の使用量は上記
の分子量制限のもとで、Zで示されるポリエステル鎖中
1〜35個が取り込まれるようにすればよく、好ましく
は1〜25個であればよい。なお、SAQのラクトン変
性率を低下させないようにするため、ラクトンの使用量
としてはSAQに対して4倍モル以上とするのが好まし
く、また、目的とする分散剤のポリエステル鎖の極性、
分子量、およびSAQ中の反応性基の数などを参考にし
て最適量を決定することができる。
【0025】本発明は上記の反応手順を経るものである
が、ポリエステル鎖Zはラクトンの重合部分と、他の原
料による重合部分が完全なブロック共重合体の形になっ
ているとは限らない。これは、重合反応中にはエステル
交換反応が起こる可能性があるからである。
【0026】本発明の分散剤は顔料100重量部に対し
て、0.1〜100重量部の範囲で使用するのが望まし
い。好ましくは3〜50重量部である。但し、これは対
象とする顔料の物理化学的性質や分散媒の性質にも応じ
て変わるものであり、各々の場合で適値を定める必要が
ある。対象となる顔料としては、なかでもCBが適して
いる。特に、従来分散が困難であった中性のCBをも酸
性CBと同様に十分に分散することができる。他の顔料
に対しても分散剤として使用可能であるが、本発明の化
合物は着色していることもあり、濃い色調の顔料に対し
て用いるのが好ましい。
【0027】また、本発明の顔料分散剤は必要に応じて
他の分散剤と併用することができる。これは対象とする
顔料の種類にもよるが、CBについてはギルソナイトと
の併用でさらに良好な効果を得ることができる。即ち、
本発明の顔料分散剤を使用すると、通常のインキの顔料
濃度において、ベースインキが混練する際に発生する熱
によって高温度になっても、十分な流動性を有する。し
かし、ハイコンク化等に対応するために顔料濃度を高く
すると、本発明の顔料分散剤のみを使用したベースイン
キでは、他の一般的な顔料分散剤同様に高温度になるに
つれて流動性が悪くなる傾向を持つ。それに対して本発
明の顔料分散剤とギルソナイトとを併用することによっ
て、高顔料濃度のベースインキが高温となっても良好な
流動性を有することが可能となる。
【0028】この際の使用量は、CB100重量部に対
して、本分散剤が0.1〜100重量部、ギルソナイト
が0.1〜100重量部の範囲であればよい。ただし、
ここでもCBの物性や分散媒の性質に応じた適値を定め
る必要がある。
【0029】なお、本発明の化合物は有機溶媒中での顔
料分散において効果を奏するものであり、トルエン、キ
シレンのような芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチ
ルのようなエステル系、メチルエチルケトン、メチルイ
ソブチルケトンのようなケトン系、あるいはミネラルス
ピリットのような高沸点石油系等を溶媒とする印刷イン
キ、塗料等のコーティング剤の顔料分散剤として使用す
ることができる。また、上記コーティング剤で使用する
ビヒクルとしては、上記溶媒に溶解する樹脂であり、例
えば、アルキド樹脂、変性フェノール樹脂、ロジン変性
フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエス
テル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル系樹
脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹
脂、ブチラール樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂等
が使用できる。
【0030】本発明の顔料分散剤は、ポリエステルにア
ントラキノン残基を導入する際にこれを直接行なわず、
SAQのラクトン変性を経ることにより導入率を高くし
たものである。たとえば特開昭63−51468号公報
に示されているような、色素誘導体を直接ヒドロキシカ
ルボン酸あるいはそのポリエステルと比較して、従来の
実施例で示すように有効な効果が得られている。
【0031】
【実施例】以下の実施例、比較例及び参考例により本発
明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるも
のではない。なお、部としてあるのは重量部を表わす。 実施例1 ジムロート、温度計、攪拌棒を備えた反応容器に、ε−
カプロラクトン25部、1−β−ヒドロキシエトキシエ
チルアミノアントラキノン9部、触媒量のジ−n−ブチ
ルすずジラウレートを入れ、窒素雰囲気下に210〜2
20℃で40分間攪拌した。これに12−ヒドロキシス
テアリン酸66部とキシレン10部を加え、反応容器に
水分離管を取り付け、窒素気流下に190〜200℃で
生成する水を分離しながら15時間攪拌し、キシレンを
減圧留去して重量平均分子量約4800、酸価11mg
KOH/gの分散剤1を得た。
【0032】実施例2 同様の反応装置を用意した。ε−カプロラクトン24
部、1, 4−ビス (β−ヒドロキシエチルアミノ) アン
トラキノン9部、触媒量のテトラ−n−ブチルチタネー
トを入れ、窒素雰囲気下に210〜220℃で40分間
攪拌した。これにひまし油脂肪酸67部とキシレン10
部を加え、窒素気流下に190〜200℃で生成する水
を分離しながら15時間攪拌し、キシレンを減圧留去し
て重量平均分子量約4800、酸価12mgKOH/g
の分散剤2を得た。HPLCによる定量の結果、置換ア
ントラキノンの未反応率は3%以下であった。
【0033】実施例3 次の化合物 AQ−CH2 NHCOCH2 −NH−C2 4 −OH (式中、AQはアントラキノン残基を表す。)を7部と
ε−カプロラクトン22部の混合物に触媒量のジ−n−
ブチルすずジラウレートを加え、窒素雰囲気下に210
〜220℃で40分間攪拌した。これにリシノール酸7
1部とキシレン10部を加え、窒素気流下に190〜2
00℃で生成する水を分離しながら15時間攪拌し、キ
シレンを減圧留去して重量平均分子量約4500、酸価
14mgKOH/gの分散剤3を得た。
【0034】比較例1 1,4−ビス(β−ヒドロキシエチルアミノ)アントラ
キノン9部、ひまし油脂肪酸91部、キシレン10部の
混合物に少量のテトラ−n−ブチルチタネートを加え、
窒素気流下に190〜200℃で生成する水を分離しな
がら15時間攪拌し、次いでキシレンを減圧留去した。
しかし、実施例2とは対照的に未反応の1, 4−ビス
(β−ヒドロキシエチルアミノ) アントラキノンが多量
に析出しており、分散剤としては使えないものであっ
た。反応温度を250℃に上げても同様であった。
【0035】比較例2 水分離管を備えた反応容器に、12−ヒドロキシステア
リン酸86部、キシレン9部、触媒量のテトラ−n−ブ
チルチタネートを入れ、窒素気流下に190〜200℃
で水を分離しながら15時間攪拌して、酸価27mgK
OH/g、重量平均分子量約4900のポリエステルを
得た。これにポリエチレンイミンの30%水溶液 (ポリ
エチレンイミンの分子量は約30000、反応性アミノ
基の濃度は2.53mmol/g) 18部 (反応性アミ
ノ基の濃度をポリエステルのカルボキシル基の濃度と当
量とした)を加えた。100℃で水を分離後、少量のテ
トラ−n−ブチルチタネートを加えて窒素気流下に19
0〜200℃で2時間攪拌した。次いで減圧下にキシレ
ンを留去して、分散剤4を得た。この重合物は淡褐色粘
ちょう物であり、重量平均分子量約40000であっ
た。
【0036】比較例3 比較例2と同様にして酸価26mgKOH/g、分子量
約4800のポリエステルを合成した。この96部にペ
ンタエチレンヘキサミン (反応性アミノ基の濃度は1
2.6mmol/g) を3.6部加え (反応性アミノ基
の濃度をポリエステルのカルボキシル基の濃度と当量と
した) 、窒素気流下に190〜200℃で2時間攪拌し
た。減圧下にキシレンを留去して、重量平均分子量約9
200の褐色の重合体である分散剤5を得た。
【0037】比較例4 比較例2と同様にして酸価30mgKOH/g、分子量
約4000のポリエステルを合成した。この96部にメ
チルイミノビスプロピルアミンを3.7部加え(反応性
アミノ基の濃度をポリエステルのカルボキシル基の濃度
と当量とした)、窒素気流下に190〜200℃で2時
間攪拌した。減圧下にキシレンを留去して、重量平均分
子量約4800の淡褐色の分散剤6を得た。
【0038】比較例5 ε−カプロラクトン85部と1−β−ヒドロキシエチル
アミノアントラキノン15部とをテトラ−n−ブチルチ
タネートを触媒として、220〜230℃で40分反応
させて重量平均分子量約6500の分散剤7を得た。
【0039】参考例 実施例1と同様の反応装置を用意した。ε−カプロラク
トン22部に1,4−ジアミノアントラキノン7部と触
媒量のテトラ−n−ブチルチタネートを加え、窒素雰囲
気下に210〜240℃で40分間攪拌した。これにひ
まし油脂肪酸71部とキシレン10部を加え、窒素気流
下に190〜200℃で生成する水を分離しながら15
時間攪拌し、キシレンを減圧留去して、重量平均分子量
約4500、酸価12mgKOH/gの分散剤8を得
た。HPLCにより1,4−ジアミノアントラキノンを
定量したところ、未反応率は9%以下であった。
【0040】評価試験1 分散剤1〜8を用いて以下の組成のCBベースインキを
調製し、その性状を調べた。CBは表面のpHが酸性のも
の(pH=3.2)と、中性のもの (pH=8.0)で、粒径や吸油
量などの表面物性が類似しているものを用いた。なお、
分散剤を使用しないものについては、相当量 (6部) を
シリンダー油の増量で置き換えた。 組成 (全量100重量部) インキ用樹脂ワニス1) 50部 スピンドル油2) 12部 シリンダー油3) 2部 分散剤 6部 カーボンブラック4) 30部1) ロジン変性フェノール樹脂を35%含む。2) 日本石油製1号インキオイル3) 日本石油製2号インキオイル4) 三菱化成製 ♯33 (表面pH=8.0)、あるいは同社製MA
11 (表面pH=3.2)。
【0041】これを十分に混合した後、80℃に加熱し
たホットプレート上でプレミキシングを行い、続いてフ
ーバーマーラーで練肉をした。このCB高濃度ベースイ
ンキの降伏値、着色力、光沢を次の方法で調べた。得ら
れた結果を表1〜表3に示した。 降伏値:コーンプレート型回転粘度計で25℃での降伏値
(Pa) を測定した。 着色力:分散剤を使わない場合を基準とし、白ベースイ
ンキに対する着色力(%) を測定した。 光 沢:インキ展色面の光沢を目視により次の3段階に
判定した。 ○・・・良 △・・・可 ×・・・劣
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】このように本発明の分散剤1〜3を用いる
と、本発明者らがすでに報告した方法(特願平2−20
4366号)による分散剤8と同様に、酸性CBのみな
らず中性CBにも優れた効果が得られた。一方、比較例
の分散剤4〜7を用いた場合、特に中性CBにおいては
殆ど効果を示さなかった。
【0046】評価試験2 以下の組成のCBベースインキを調製し、その性状を調
べた。但し、分散剤及びギルソナイトのいずれも使用し
ないもの(表4中の「使用せず」)については、相当量
(10部) をシリンダー油(日本石油製2号インキオイ
ル)で置き換えた。また、分散剤を使用せずギルソナイ
トのみを用いた例(表4中の「ギルソナイトのみ」)で
は、相当量(8部)を同様のシリンダー油で置き換え
た。 組成 (全量100重量部) 顔料組成物 インキ用樹脂ワニス1) 10部 マシン油2) 35部 分散剤 8部 ギルソナイト 2部 カーボンブラック3) 45部1) ロジン変性フェノール樹脂を35%含む2) 日本石油製5号ソルベント3) 三菱化成製 ♯33 (表面pH=8.0)
【0047】これを評価試験1と同様にして練肉し、ラ
レー粘度計により粘度を測定した。結果を表4に示し
た。分散剤1〜3、または8を用いたものの他は高粘度
となり、ベースインキを調製できなかった。
【0048】
【表4】
【0049】このように本発明の分散剤1〜3とギルソ
ナイトを併用することにより、既に報告した方法(特願
平2−204366号)の分散剤8と同様に優れた効果
が得られた。これに対して比較例の分散剤4〜7では高
粘度となり、ベースインキを調製できず、効果は認めら
れなかった。ギルソナイト単独でも、低い効果にとどま
った。また、分散剤2と8の比較から分かるように、未
反応率は分散剤8では9%以下であるのに対し、本発明
の分散剤2では3%以下であり、未反応アントラキノン
誘導体の減少という点では更に改良されており、本発明
の優位性は明らかである。
【0050】
【発明の効果】本発明の分散剤をCBを用いるインキ、
塗料などに使用することによって、高濃度でかつ安定な
顔料組成物を得ることができる。特に、従来分散が困難
であった中性のCBに対しても満足できる効果を発揮す
ることができる。中性CBを使用したコーティング剤を
効率よく製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09C 3/10 PCE 6904−4J

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 AQ(−X−Y−Zm)n (I) 〔式中、AQはアントラキノン残基を、Xは直接結合、
    −CH2 −、−SO2 −、−CO−あるいは−CH2
    HCOCH2 −のいずれかを、YはXおよびZとの結合
    端がそれぞれ独立に−NR1 −(R1 は水素もしくは低
    級アルキル基)あるいは−O−であって、エーテル結
    合、2級あるいは3級窒素、芳香族環、又はトリアジン
    環を含んでもよい連結基(同一原子でXとZに結合して
    もよい、但しこの場合Xは直接結合ではない)を、Zは
    ラクトン類の開環反応により誘導される連結基を有する
    ポリエステル鎖を、mは1あるいは2を、nは1〜4の
    整数を示す。〕で表される、アントラキノン残基を持つ
    ポリエステル化合物。
  2. 【請求項2】 一般式(I)中のZで示されるポリエス
    テル鎖が、4〜7員環のラクトン類の開環反応により誘
    導される連結基を有するものである請求項1記載のポリ
    エステル化合物。
  3. 【請求項3】 一般式(I)中のZで示されるポリエス
    テル鎖が、炭素数12〜20のヒドロキシカルボン酸の
    重縮合により誘導される連結基、または炭素数4〜20
    のジカルボン酸もしくはその無水物と炭素数2〜20の
    ジオールとの縮合により誘導される連結基を有するもの
    である請求項1記載のポリエステル化合物。
  4. 【請求項4】 重量平均分子量が1,500〜20,0
    00の範囲である請求項1記載の化合物。
  5. 【請求項5】 環に直接置換していない−NHR1 (R
    1 は水素もしくは低級アルキル基)あるいは−OHを持
    つ置換アントラキノン類に、ラクトン類を重付加し、次
    いで炭素数12〜20のヒドロキシカルボン酸またはそ
    の重縮合物を縮合させることを特徴とする請求項1記載
    のポリエステル化合物の製造方法。
  6. 【請求項6】 環に直接置換していない−NHR1 (R
    1 は水素もしくは低級アルキル基)あるいは−OHを持
    つ置換アントラキノン類に、ラクトン類を重付加し、次
    いで炭素数4〜20のジカルボン酸もしくはその無水物
    と炭素数2〜20のジオールによる縮合物をエステル化
    反応させることを特徴とする請求項1記載のポリエステ
    ル化合物の製造方法。
  7. 【請求項7】 少なくとも顔料、樹脂、有機溶剤、およ
    び顔料分散剤から成る組成物において、該顔料分散剤と
    して少なくとも請求項1〜4いずれか記載の化合物を含
    む顔料組成物。
  8. 【請求項8】 顔料100重量部に対して、請求項1〜
    4いずれか記載の化合物を0.1〜100重量部含む請
    求項7記載の組成物。
  9. 【請求項9】 顔料がカーボンブラックである請求項7
    または8記載の組成物。
  10. 【請求項10】 顔料分散剤として請求項1〜4いずれ
    か記載の化合物とギルソナイトを含む請求項7〜9いず
    れか記載の組成物。
  11. 【請求項11】 カーボンブラック100重量部に対し
    てギルソナイトを0.1〜100重量部含む請求項7〜
    10いずれか記載の組成物。
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