JP3064536B2 - アントラキノン残基を持つポリエステル化合物の製造方法、用法及びそれを用いた顔料組成物 - Google Patents

アントラキノン残基を持つポリエステル化合物の製造方法、用法及びそれを用いた顔料組成物

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JP3064536B2
JP3064536B2 JP3208425A JP20842591A JP3064536B2 JP 3064536 B2 JP3064536 B2 JP 3064536B2 JP 3208425 A JP3208425 A JP 3208425A JP 20842591 A JP20842591 A JP 20842591A JP 3064536 B2 JP3064536 B2 JP 3064536B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アントラキノン残基を
持つポリエステル化合物の製造方法、用法及びそれを用
いた顔料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、インキ、塗料等の顔料を分散さ
せたコーティング組成物では鮮明な色調、高い光沢およ
び着色力が要求される。このためには用いる顔料の粒子
が微細で、かつ高濃度に微分散されている必要がある。
しかしこのような顔料分散物を得ることは難しく、顔料
の分散不良に起因して、しばしば取扱上あるいは製品の
品質上の問題が生じるものである。
【0003】例えば、カーボンブラック(以下、CBと
略する)はインキや塗料等に着色剤として、あるいは導
電性付与等を目的として幅広く使われている。しかし、
CB表面と分散媒である有機溶媒や樹脂等との親和性は
一般に低く、またストラクチャーと呼ばれるCB特有の
構造があることや粒子が凝集しやすいために分散しにく
くなっている。
【0004】このため、従来から分散剤や表面処理剤等
を用いて顔料の分散性を改良する種々の方法が試みられ
てきた。特にインキや塗料等のコーティング組成物に対
しては、高分子の分散剤を使用する方法が普及してい
る。そしてこれらの分散剤のなかでも、親媒和ポリマー
鎖と共に顔料表面に対して吸着能を有する部位を持つ化
合物が比較的良い効果をあげてきた。これらを吸着能の
付与のしかたから分類すると、いわゆる酸−塩基相互作
用を利用するものと、色素残基を導入して顔料表面との
構造類似性を持たせるものとに分けられる。
【0005】以下、CBの分散を例として、従来技術に
ついて説明する。まず、酸−塩基相互作用を利用するも
のについては、例えば、特公昭57−25251号、特
開平1−311177号各公報にはポリエステル鎖の末
端あるいは鎖中にアミノ基を持つものが、特開昭63−
175080号公報にはポリマー中にペンダントとして
アミノ基を持つ化合物が開示されている。また、USP
4,224,212、特開昭64−79279号各公報
にはポリアミンやその変性体が示されている。これらは
分散剤中のアミノ基と顔料表面の酸性基との間の相互作
用を利用するものであり、カルボキシル基、フェノール
性水酸基等の酸性官能基を表面に多く持つ酸性CBに対
して一応の顔料分散効果が得られている。
【0006】しかしながら、表面官能基の少ない中性C
Bに対しては、充分な効果が得られていない。CBの表
面pHは、その製造方法の違いや酸性処理の有無によっ
て異なり、フェノール性水酸基やカルボキシル基等の官
能基の濃度が高ければ、CBは酸性を示す。一方、CB
の分散性については、上記官能基の濃度に依存し、酸性
CBであれば分散性が良好である。実際の製造方法にお
いては、通常上記官能基の濃度の低いCB(中性CB)
が得られるので、分散性を向上させるためには、わざわ
ざ酸性処理を行い酸性CBを得ているのが実情である。
従って、特別な酸性処理を行うことのない、より安価な
中性CBを容易に分散させることができる分散剤が望ま
れている。
【0007】次に色素誘導体を用いるものについてであ
るが、構造の類似性に起因する親和性を利用しているの
で、酸−塩基相互作用によるものに比べて顔料表面の官
能基濃度の違いによる分散性の変化が少ないという利点
がある。例えば、前述の特公昭57−25251号、特
開昭51−55320号各公報にはアミノ基を持つポリ
マーとカルボキシル基やスルホン酸基を有する色素の酸
誘導体とを併用して、これらを塩形成で結びつけて分散
効果を得る方法が示されている。また、特開昭63−5
1468号、特開昭63−175080号、特開昭62
−195053号等の公報には色素残基をエステル結
合、アミド結合、ウレタン結合などでポリマー鎖に導入
する方法が開示されている。後者の3例は塩形成ではな
く、色素残基とポリマー鎖とを共有結合で結びつけよう
としたものである。また、従来からCBを分散するため
に天然物であるギルソナイトが使われることが多い。こ
れの利点は安価なことであるが、反面分散性はそれほど
良いものではなく、十分な効果を得るには至っていな
い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】特開昭63−5146
8号公報にあるように、カルボキシル基、水酸基、酸無
水物環等を持つ色素誘導体をポリエステルの末端水酸基
やカルボキシル基と直接反応させようとしても、色素誘
導体の反応系中での溶解性が低いことなどのため、反応
効率が上がらず、結果的に十分な分散性が得られなかっ
たり、残存する未反応色素による種々の問題が生じるこ
とが多いのが実情である。
【0009】このため、特開昭63−175080号公
報にあるように、多官能イソシアネートを用いることは
できるが、生成するウレタン結合や尿素結合は一般に有
機溶剤や樹脂との相溶性が低く、また残存イソシアネー
ト基が安定性を低下させるという問題もありこれも十分
とはいえない。また、特開昭62−195053号公報
のように、クロロメチル基、クロロスルフォニル基、α
−クロロアセトアミドメチル基などを有する色素を樹脂
と反応させる場合は、反応後に樹脂を水洗、乾燥しなけ
ればならず、操作が煩雑となってしまう。
【0010】この他、特開昭64−79278号等の公
報には反応性基を持つ化合物をCB表面にグラフト化す
る方法が提案されている。しかし、グラフト化率を上げ
るにはやはりCB表面にカルボキシル基、フェノール性
水酸基、あるいはキノン構造等の反応性基を多く必要と
し、中性CBには十分な効果を示さない。さらに、予め
CBの表面処理を行なわなければならないので、簡便な
用法とはいえない。このように、分散系に混合して使用
することによって、十分な分散効果が得られ、かつ表面
不活性な中性CBをも満足に分散できる分散剤は、未だ
見い出されておらず、このような分散剤の開発が当業界
では強く要望されていた。本発明の目的はまさにこの点
にあり、特に上述のように従来は分散が困難であった表
面官能基の少ない中性CBに対しても顔料分散剤として
有用な化合物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上述の課題
を解決するために、種々の顔料分散剤について検討した
結果、特定の構造を有する化合物が顔料分散剤として有
用であり、しかもこの化合物を効率良く製造する方法を
見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】即ち、本発明の要旨は、 (1) アミノアントラキノン類にラクトン類を重付加
し、次いでこれにヒドロキシカルボン酸を重縮合させる
ことを特徴とする、一般式(1) AQ(−NH−X)n (1) (式中、AQはアントラキノン残基Xは少なくともラ
クトン類の開環反応により誘導される連結基を一部に有
するポリエステル鎖nは1〜4の整数を示す)で
れるアントラキノン残基を有するポリエステル化合物
製造方法、 (2) アミノアントラキノン類にラクトン類を重付加
し、次いでこれにヒドロキシカルボン酸の重縮合物を縮
合させるか、またはジカルボン酸もしくはその無水物と
ジオールとの縮合物を縮合させることを特徴とする、
般式(1) AQ(−NH−X)n (1) (式中、AQはアントラキノン残基、Xは少なくともラ
クトン類の開環反応により誘導される連結基を一部に有
するポリエステル鎖、nは1〜4の整数を示す) で表さ
れるアントラキノン残基を有するポリエステル化合物の
製造方法、 (3) 一般式(1): AQ(−NH−X)n (1) (式中、AQはアントラキノン残基、Xは少なくともラ
クトン類の開環反応により誘導される連結基を一部に有
するポリエステル鎖、nは1〜4の整数を示す)で表さ
れる アントラキノン残基を有するポリエステル化合物
顔料分散剤として使用する方法、および (4) 顔料100重量部に対して、一般式(1) AQ(−NH−X)n (1) (式中、AQはアントラキノン残基、Xは少なくともラ
クトン類の開環反応により誘導される連結基を一部に有
するポリエステル鎖、nは1〜4の整数を示す) で表さ
れるアントラキノン残基を有するポリエステル化合物を
0.1〜100重量部含む顔料組成物に関する。
【0013】一般式(1)において、AQはアントラキ
ノン残基を示し、本発明の化合物はこのアントラキノン
のアミノ置換体であるアミノアントラキノン類にXで表
されるポリエステル鎖が結合したものである。ここで、
Xで表されるポリエステル鎖とは、少なくともラクトン
類の開環反応により誘導される連結基(連結基Aと略
す)を一部に有し、さらにヒドロキシカルボン酸の重縮
合により誘導される連結基(連結基Bと略す)、または
ジカルボン酸もしくはその無水物とジオールとの縮合に
より誘導される連結基(連結基Cと略す)等でエステル
結合した鎖状構造をいい、特にラクトン類の開環反応に
より誘導される連結基Aをポリエステル鎖中に1〜35
個、好ましくは1〜25個有することによって、本発明
の化合物として特性を示す。ラクトン類の開環反応によ
り誘導される連結基Aが少なすぎると反応性や溶解性を
十分に改良するまでには至らず、逆に多すぎるとポリエ
ステル鎖の極性を必要以上に上げてしまい、かえって顔
料の分散性の低下をまねいてしまう。
【0014】ここで、ラクトン類の開環反応により誘導
される連結基Aとは、具体的にはC(=O)R1 Oで表
される連結基が挙げられ、通常4〜7員環のラクトン類
の開環反応により誘導されるものである。ここで、R1
は低級アルキル側鎖を有してもよい炭素数2〜10(側
鎖のアルキル基の炭素数も含める)であるアルキレン基
を示す。なお、本発明ではポリエステルにアントラキノ
ン残基を導入する際にラクトン類の付加によるアミノア
ントラキノン類(以下、AAQと略する)の変性を経る
ことに特徴があるが、このAAQのラクトン変性率を低
下させないようにするため、ラクトン類の使用量として
はAAQに対して4倍モル以上とするのが好ましく、ま
た、目的とする化合物のポリエステル鎖の極性、分子
量、およびAAQ中の反応性アミノ基の数などを参考に
して最適量を決定することができる。
【0015】また、ヒドロキシカルボン酸の重縮合によ
り誘導される連結基Bは、具体的にはC(=O)R2
で表される連結基が挙げられる。ここで、R2 は不飽和
結合、アルキル側鎖を有してもよい炭素数11〜19の
アルキレン基あるいはアルケニレン基(側鎖のアルキル
基の炭素数も含める)を示す。このような連結基Bは、
ポリエステル鎖中に通常1〜35個、好ましくは1〜2
5個含まれる。また、ジカルボン酸もしくはその無水物
とジオールとの縮合により誘導される連結基Cは、具体
的にはC(=O)R3 C(=O)OR4 Oで表される連
結基が挙げられる。ここで、R3 は炭素数4〜20で芳
香族環を有していてもよいアルキレン基あるいはアルケ
ニレン基(側鎖のアルキル基の炭素数も含める)を示
し、R4 は炭素数2〜20で分子内にエーテル結合や芳
香族環を有していてもよいアルキレン基あるいはアルケ
ニレン基(側鎖のアルキル基の炭素数も含める)を示
す。
【0016】ここで、ラクトン類としては、開環反応性
の4〜7員環のものが使用できる。例えば、β−プロピ
オラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクト
ン、ε−カプロラクトン、あるいはこれらの低級アルキ
ル置換体が挙げられ、好ましくはε−カプロラクトンで
ある。
【0017】ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキ
シル基を有する炭素数12〜20の長鎖脂肪酸で不飽和
結合やアルキル側鎖を有していてもよいものを用いるこ
とができる。例えば、リシノール酸やひまし油脂肪酸、
及びその水素添加物、あるいは12−ヒドロキシステア
リン酸などが挙げられ、好ましくは12−ヒドロキシス
テアリン酸である。
【0018】ジカルボン酸もしくはその無水物として
は、炭素数4〜20で芳香族環を有していてもよいもの
を挙げることができ、具体的にはコハク酸、無水コハク
酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、アジ
ピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカン
ジカルボン酸、ドデセニル無水コハク酸等またはこれら
の無水物で示され、好ましくは1,10−デカンジカル
ボン酸である。
【0019】ジオールとしては炭素数2〜20で分子内
にエーテル結合や芳香族環を有していてもよいものが挙
げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−
ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチ
レングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチ
ルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1
2−ヒドロキシステアリルアルコール、ビスフェノール
A、水添ビスフェノールA等を示すことができ、好まし
くは12−ヒドロキシステアリルアルコールである。こ
れらのヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸またはその
酸無水物、あるいはジオールは、目的とするポリエステ
ル鎖の分散媒との相溶性や分子量などを考慮して適当に
組み合わせて用いればよい。なお、非極性分散媒に対し
ては長鎖ヒドロキシカルボン酸を主原料とするポリエス
テル鎖を有する化合物が好ましい。
【0020】また、nは1〜4の整数を示すもので、具
体的には反応後、AAQに導入されるポリエステル鎖の
数を示すものである。なお、AAQ中のアミノ基がすべ
てアミド結合を介してポリエステル鎖を有する必要はな
い。また、顔料表面に吸着した後に十分なポリマー保護
効果を得るには、それに適した長さのポリエステル鎖を
持つことが必要であり、一般式 (1) の化合物の重量平
均分子量は、通常1,500〜20,000の範囲であ
り、好ましくは2,000〜10,000である。
【0021】一般式 (1) で示される化合物は、AAQ
にラクトン類を重付加し、次いでこれに上述したヒドロ
キシカルボン酸を加えて重縮合させることにより製造す
ることができる。しかし反応の順序はこれに限定される
ものではなく、この単量体の重縮合物としてカルボキシ
ル基含有ポリエステルを予め合成しておき、AAQのラ
クトン類重付加体と反応させる方法によってもよい。ま
た、ジカルボン酸もしくはその無水物とジオールとの縮
合物を縮合させることにより容易に製造することができ
る。ここで、用いられるAAQはアントラキノンの1つ
あるいは2つ以上のアミノ置換体であり、中でも2置換
体以上であることが好ましい。他に芳香環上に低級アル
キル基や水酸基等が共存してもよい。また、AAQは単
独であっても構造の異なる2種以上のAAQ混合物であ
ってもよい。
【0022】ラクトン類のAAQへの重付加反応や続く
重縮合反応では、それぞれ一般的に用いられる触媒の存
在下あるいは非存在下に160〜240℃に加熱して行
なえばよい。通常用いられる触媒としては、Ti、S
n、Zn化合物などが挙げられ、例えばテトラ−n−ブ
チルチタネート、ジ−n−ブチルすずジラウレート等が
挙げられる。また水の生成がある場合にはこれを除去し
ながら所定の分子量になるまで反応させればよい。
【0023】ポリエステル化合物が有機溶媒や樹脂中で
の顔料分散に有効であることは一般に知られている。上
述の合成手順から分かるように、本発明ではポリエステ
ルにアントラキノン残基を導入する際にラクトン類の付
加によるAAQの変性を経ることに特徴がある。AAQ
にポリエステル鎖を直接導入しようとすると、通常は反
応性や溶解性が低いためにかなりの量のAAQが未反応
のまま残存してしまう。そこで、本発明では前記のよう
にまずラクトン類を付加させることでこれを解決したの
である。本発明は上述の反応手順を経るものであるが、
一般式 (1) のポリエステル鎖Xは、ラクトン類の重合
部分と他の原料による重合部分が完全なブロック共重合
体の形になっているとは限らない。これは、重合反応中
にエステル交換反応が起こる可能性があるからである。
【0024】本発明の一般式(1)で示す化合物は、顔
料分散剤として有効なものであり、顔料組成物として
は、顔料100重量部に対し、0.1〜100重量部の
範囲で使用するのが望ましい。好ましくは3〜50重量
部である。ただしこれは、対象とする顔料の物理化学的
性質や分散媒の性質にも応じて変わるものであり、各々
の場合で適値を定める必要がある。
【0025】対象となる顔料としては、なかでもCBが
適している。特に、従来分散が困難であった中性のCB
をも酸性CBと同様に十分に分散することができる。他
の顔料に対しても分散剤として使用可能であるが、本発
明の化合物は着色していることもあり、濃い色調の顔料
に対して用いるのが好ましい。
【0026】また、本発明の顔料分散剤は必要に応じて
他の分散剤と併用することができる。これは対象とする
顔料の種類にもよるが、CBについてはギルソナイトと
の併用でさらに良好な効果を得ることができる。即ち、
本発明の顔料分散剤を使用すると、通常のインキの顔料
濃度において、ベースインキが混練する際に発生する熱
によって高温度になっても、十分な流動性を有する。し
かし、顔料濃度を高くすると、本発明の顔料分散剤のみ
を使用したベースインキでは、他の一般的な顔料分散剤
同様に高温度になるにつれて流動性が悪くなる傾向を持
つ。それに対して本発明の顔料分散剤とギルソナイトと
を併用することによって、高顔料濃度のベースインキが
高温となっても良好な流動性を有することが可能とな
る。この際の使用量は、CB100重量部に対して、本
発明の顔料分散剤が0.1〜100重量部、ギルソナイ
トが0.1〜100重量部の範囲であればよい。ただ
し、ここでもCBの物性や分散媒の性質に応じた適値を
定める必要がある。
【0027】なお、本発明の化合物は、有機溶媒中での
顔料分散において、効果を奏するものであり、トルエ
ン、キシレンのような芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢
酸ブチルのようなエステル系、メチルエチルケトン、メ
チルイソブチルケトンのようなケトン系、あるいはミネ
ラルスピリットのような高沸点石油系等を溶媒とする印
刷インキ、塗料等のコーティング剤の顔料分散剤として
使用することができる。また、上記コーティング剤で使
用するビヒクル樹脂としては、上記溶媒に溶解する樹脂
であり、例えば、アルキド樹脂、変性アルキド樹脂、フ
ェノール樹脂、変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイ
ン酸樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン
樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹
脂、酢酸ビニル樹脂、ブチラール樹脂、石油樹脂、ロジ
ンエステル樹脂等が使用できる。
【0028】このように、本発明の顔料分散剤は、ポリ
エステルにアントラキノン残基を導入する際に、直接反
応させず、AAQのラクトン変性を経ることにより、導
入率を高くしたものである。その結果、例えば特開昭6
3−51468号公報に示されているような、色素誘導
体を直接ヒドロキシカルボン酸あるいはそのポリエステ
ルと反応させたものと比較して、後述の実施例で示すよ
うに有効な結果が得られている。
【0029】
【実施例】以下の実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、
部としてあるのは重量部を表す。 実施例1 ジムロート、温度計、攪拌棒を備えた反応容器に、ε−
カプロラクトン24部、1−アミノアントラキノン6
部、触媒量のジ−n−ブチルすずジラウレートを加え、
窒素雰囲気下230〜240℃で40分間攪拌した。容
器に水分離管を取り付け、12−ヒドロキシステアリン
酸70部とキシレン10部を加え、窒素気流下に190
〜200℃で生成する水を分離しながら15時間攪拌
し、キシレンを減圧留去して分散剤1を得た。GPC測
定による重量平均分子量は約4000、酸価は15mg
KOH/gであった。
【0030】実施例2 同様の反応装置を用意した。ε−カプロラクトン22部
に1, 4−ジアミノアントラキノン7部と触媒量のテト
ラ−n−ブチルチタネートを加え、窒素雰囲気下210
〜240℃で40分間攪拌した。これにひまし油脂肪酸
71部とキシレン10部を加え、窒素気流下に190〜
200℃で生成する水を分離しながら15時間攪拌し、
キシレンを減圧留去して、重量平均分子量約4500、
酸価12mgKOH/gの分散剤2を得た。
【0031】実施例3 水分離管を備えた反応容器に、12−ヒドロキシステア
リン酸70部、キシレン7部、触媒量のテトラ−n−ブ
チルチタネートを入れ、窒素気流下に190〜200℃
で水を分離しながら10時間攪拌して、酸価34mgK
OH/g、重量平均分子量約3000のポリエステルを
得た。これに、実施例2と同様にして合成したε−カプ
ロラクトン22部と1, 4−ジアミノアントラキノン7
部との反応物、およびキシレン4部を加え、窒素気流下
に190〜200℃で生成する水を分離しつつ6時間攪
拌し、キシレンを減圧留去して重量平均分子量約470
0、酸価11mgKOH/gの分散剤3を得た。
【0032】実施例4 水分離管を備えた反応容器に、1,10−デカンジカル
ボン酸33.5部、12−ヒドロキシステアリルアルコ
ール36.5部、キシレン7部、触媒量のテトラ−n−
ブチルチタネートを入れ、窒素気流下に190〜200
℃で水を分離しながら8時間攪拌して、更にオクチルア
ルコール3.1部を加えて同温度で3時間縮合反応を行
い、酸価37mgKOH/g、重量平均分子量約300
0のポリエステルを得た。これに、実施例2と同様にし
て合成したε−カプロラクトン22部と1, 4−ジアミ
ノアントラキノン7部との反応物、およびキシレン4部
を加え、窒素気流下に190〜200℃で生成する水を
分離しつつ6時間攪拌し、キシレンを減圧留去して重量
平均分子量約4400、酸価13mgKOH/gの分散
剤4を得た。
【0033】比較例1 水分離管を備えた反応容器を用意した。1,4−ジアミ
ノアントラキノン7部、ひまし油脂肪酸93部、キシレ
ン10部および少量のチタンテトラ−n−ブチルチタネ
ートを加え、窒素気流下に190〜200℃で生成する
水を分離しながら15時間攪拌し、次いでキシレンを減
圧留去した。対応する分散剤2が均一であり、HPLC
により未反応の1,4−ジアミノアントラキノンを定量
したところ、9%以下であったのに対して、ここでは未
反応のまま多量に析出していて、分散剤としては使えな
いものであった。反応温度を250℃に上げても同様で
あった。
【0034】比較例2 水分離管を備えた反応容器に、12−ヒドロキシステア
リン酸86部、キシレン9部、触媒量のテトラ−n−ブ
チルチタネートを入れ、窒素気流下に190〜200℃
で生成する水を分離しながら15時間攪拌して、酸価2
7mgKOH/g、重量平均分子量約4900のポリエ
ステルを得た。これにポリエチレンイミンの30%水溶液
(ポリエチレンイミンの重量平均分子量は約3000、
溶液状態での反応性アミノ基の濃度は2.53mmol
/g、東京化成) 18部 (反応性アミノ基をポリエステ
ルのカルボキシル基と当量とした) を加えた。100℃
で水を分離後、触媒量のテトラ−n−ブチルチタネート
を加えて窒素気流下に190℃で2時間攪拌した。次い
で減圧下にキシレンを留去し、分散剤5を得た。この重
合物は淡褐色粘ちょう物であり、重量平均分子量約40
000であった。
【0035】比較例3 比較例2と同様にして酸価26.0mgKOH/g、重
量平均分子量約4800のポリエステルを合成した。こ
の96部にペンタエチレンヘキサミン (反応性アミノ基
の濃度は12.6mmol/g) を3.6部加え (反応
性アミノ基をポリエステルのカルボキシル基と当量とし
た) 、窒素気流下に190℃で2時間攪拌した。減圧下
にキシレンを留去して、重量平均分子量約9200の褐
色の重合体である分散剤6を得た。
【0036】比較例4 比較例2と同様にして酸価30.0mgKOH/g、重
量平均分子量約4000のポリエステルを合成した。こ
の96部にメチルイミノビスプロピルアミンを3.7部
加え (反応性アミノ基をポリエステルのカルボキシル基
と当量とした)、窒素気流下に190℃で2時間攪拌し
た。減圧下にキシレンを留去して、重量平均分子量約4
800の淡褐色の分散剤7を得た。
【0037】比較例5 ε−カプロラクトン85部と1−アミノアントラキノン
15部とをテトラ−n−ブチルチタネートを触媒とし
て、230〜240℃で40分反応させて重量平均分子
量約6500の分散剤8を得た。
【0038】評価試験1 分散剤1〜8を用いて以下の組成のCBと分散剤とから
なる顔料組成物を調製し、その性状を調べた。CBは表
面のpHが酸性のもの(pH=3.2)と、中性のもの(pH=8.
0)で、粒径や吸油量などの表面物性が類似しているもの
を用いた。なお、分散剤を使用しないものについては、
相当量 (6部) をシリンダー油の増量で置き換えた。 組成 (全量100重量部) インキ用樹脂ワニス1) 50部 スピンドル油2) 12部 シリンダー油3) 2部 分散剤 6部 カーボンブラック4) 30部1) ロジン変性フェノール樹脂系ワニス。2) 日本石油製1号インキオイル3) 日本石油製2号インキオイル4) 三菱化成製 ♯33 (表面pH=8.0)、あるいは同社製MA
−11 (表面pH=3.2)。
【0039】これを十分に混合した後、80℃に加熱し
たホットプレート上でプレミキシングを行い、続いてフ
ーバーマーラーで練肉をした。このCB高濃度ベースイ
ンキの降伏値、着色力、光沢を次の方法で調べた。得ら
れた結果を表1〜表3に示した。 降伏値:コーンプレート型回転粘度計で25℃での降伏値
(Pa) を測定した。降伏値が高いものほどチキソトロピ
ックな性質を呈し、好ましくないものである。 着色力:分散剤を使わない場合を基準とし、白ベースイ
ンキに対する着色力(%) を測定した。 光 沢:インキ展色面の光沢を目視により次の3段階に
判定した。 ○・・・良 △・・・可 ×・・・劣
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】このように本発明の分散剤1〜4を用いる
と、酸性CBのみならず中性CBにも優れた効果が得ら
れた。一方、比較例の分散剤5〜8を用いた場合、特に
中性CBにおいては殆ど分散剤としての有用性が得られ
なかった。
【0044】評価試験2 以下の組成のCBベースインキを調製し、その性状を調
べた。なお、分散剤及びギルソナイトのいずれも使用し
ないものについては、相当量 (8部) をシリンダー油
(日本石油製2号インキオイル)で置き換えた。 組成 (全量100重量部) 顔料組成物 2−1 2−2 2−3 インキ用樹脂ワニス1) 10部 10部 10部 マシン油2) 37部 37部 35部 分散剤 8部 − 8部 ギルソナイト − 8部 2部 カーボンブラック3) 45部 45部 45部1) ロジン変性フェノール樹脂を35%含む2) 日本石油製5号ソルベント3) 三菱化成製 ♯33 (表面pH=8.0)
【0045】これを評価試験1と同様にして練肉し、得
られた流動性の結果を表4に示した。
【表4】
【0046】このように本発明の分散剤1〜4とギルソ
ナイトを併用することにより優れた効果が得られた。こ
れに対して比較例の分散剤5〜8では高粘度となり、ベ
ースインキを調製できず、効果は認められなかった。ギ
ルソナイト単独でも、低い効果にとどまった。
【0047】
【発明の効果】本発明の分散剤をCBを用いるインキ、
塗料などのコーティング剤等に使用することによって、
高濃度でかつ安定な顔料組成物を得ることができる。特
に、従来分散が困難であった中性のCBに対しても満足
できる効果を発揮することができる。中性CBを使用し
たコーティング剤を効率よく製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C09C 3/10 C09C 3/10 C09D 17/00 C09D 17/00 167/04 167/04 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/08,63/197,63/685 C08L 67/02 C09C 1/56,3/10

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アミノアントラキノン類にラクトン類を
    重付加し、次いでこれにヒドロキシカルボン酸を重縮合
    させることを特徴とする、一般式(1): AQ(−NH−X)n (1) (式中、AQはアントラキノン残基、Xは少なくともラ
    クトン類の開環反応により誘導される連結基を一部に有
    するポリエステル鎖、nは1〜4の整数を示す)で表さ
    れるアントラキノン残基を有する ポリエステル化合物の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 アミノアントラキノン類にラクトン類を
    重付加し、次いでこれにヒドロキシカルボン酸の重縮合
    物を縮合させるか、またはジカルボン酸もしくはその無
    水物とジオールとの縮合物を縮合させることを特徴とす
    、一般式(1): AQ(−NH−X)n (1) (式中、AQはアントラキノン残基、Xは少なくともラ
    クトン類の開環反応により誘導される連結基を一部に有
    するポリエステル鎖、nは1〜4の整数を示す)で表さ
    れるアントラキノン残基を有する ポリエステル化合物の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 一般式(1): AQ(−NH−X)n (1) (式中、AQはアントラキノン残基、Xは少なくともラ
    クトン類の開環反応により誘導される連結基を一部に有
    するポリエステル鎖、nは1〜4の整数を示す)で表さ
    れるアントラキノン残基を有する ポリエステル化合物を
    顔料分散剤として使用する方法。
  4. 【請求項4】 顔料100重量部に対して、一般式
    (1): AQ(−NH−X)n (1) (式中、AQはアントラキノン残基、Xは少なくともラ
    クトン類の開環反応により誘導される連結基を一部に有
    するポリエステル鎖、nは1〜4の整数を示す)で表さ
    れるアントラキノン残基を有する ポリエステル化合物を
    0.1〜100重量部含む顔料組成物。
  5. 【請求項5】 顔料が、カーボンブラックである請求項
    記載の顔料組成物。
  6. 【請求項6】 さらにギルソナイトを含む請求項また
    記載の顔料組成物。
  7. 【請求項7】 カーボンブラック100重量部に対し
    て、ギルソナイトを0.1〜100重量部含む請求項
    記載の顔料組成物。
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