JPH05153953A - 氷晶核添加による濃縮または希薄アルコール飲料の製造方法 - Google Patents

氷晶核添加による濃縮または希薄アルコール飲料の製造方法

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JPH05153953A
JPH05153953A JP34398691A JP34398691A JPH05153953A JP H05153953 A JPH05153953 A JP H05153953A JP 34398691 A JP34398691 A JP 34398691A JP 34398691 A JP34398691 A JP 34398691A JP H05153953 A JPH05153953 A JP H05153953A
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ice
alcoholic beverage
wine
ice crystals
concentrated
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Yutaka Nishi
裕 西
Mitsukatsu Sato
充克 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ワイン、清酒等のアルコール飲料を、これら
の風味を損なうことなしに濃縮または希釈する方法の提
供。 【構成】 過冷却状態のアルコール飲料に氷晶核を添加
して氷結晶を析出させ、析出した氷結晶を除去すること
を特徴とする濃縮アルコール飲料の製造方法。過冷却状
態のアルコール飲料に氷晶核を添加して氷結晶を析出さ
せ、析出した氷結晶を分離し、分離した氷結晶を融解す
ることを特徴とする希薄アルコール飲料の製造方法。ア
ルコール飲料としては、ワイン、清酒を例示できる。氷
晶核としては、氷片及び氷核活性蛋白を例示できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルコール分およびエ
キス分を変化させた濃縮アルコール飲料及び希薄アルコ
ール飲料の製造方法に関する。更に詳しくは、ワイン等
のアルコール飲料を凍結させることにより濃縮又は希釈
する方法であって、氷晶核を用いることで、アルコール
飲料からの氷結晶の析出を促進させることを特徴とする
ものである。また、本発明では、氷晶核として、微生物
由来の氷核活性蛋白を使用することもできる。
【0002】
【従来の技術】アルコール濃度を高めたワイン又は清酒
等のアルコール飲料には、アルコール強化飲料として兼
ねてより潜在的な需要がある。この種のワインは、ワイ
ン中にアルコールまたはブランデーのようなアルコール
濃度の高い種類を添加することにより製造できる。しか
し、アルコールのみを添加するではワイン全体としての
風味が変化してしまい問題である。また、ブランデーな
どを使用する場合にも、ワインの風味を損うことのない
量とする必要があった。
【0003】ワインとしての風味のバランスを保ちつつ
アルコールを濃厚化する方法として、例えば特公昭57-3
8233号に、半透膜によりワインから水のみを除去する方
法が開示されている。しかしながら、本方法で用いる半
透膜は分子量の小さい物質の選択性が悪く、香気成分や
有機酸等が水と共に除かれてしまうという欠点がある。
他の濃縮ワインの製造方法として、例えば特開昭50-154
494 号には、果汁を膜濃縮した後に発酵させる方法が開
示されている。しかし、水のみを選択的に透過できる膜
は現在のところ知られていないので、本方法にも、水と
共に香気成分等が減少してしまう欠点がある。また、果
汁を濃縮すると、発酵原液の糖濃度又は有機酸等の濃度
が高くなりすぎて、順調な発酵が阻害されることもあ
る。
【0004】以上の欠点を補う方法として、凍結濃縮法
が挙げられる。凍結濃縮法とは、目的の液体を凍結さ
せ、液体中の水を氷の結晶に変え、この氷結晶を分離す
ることによって、成分を濃縮する方法である。この方法
は、0℃以下の温度で操作が行われるので香気成分の揮
散が認められず、優れた品質の濃縮物が得られるという
大きな利点がある。
【0005】凍結濃縮を行うことによって濃縮アルコー
ル飲料を得る方法としては、例えば特公昭 55-159790号
の濃縮清酒の製造法がある。本方法では清酒を−15℃
に冷却し、この温度で比較的長時間(例えば、約10時
間)保持し、生成した氷を除去して濃縮清酒を得てい
る。しかし、凍結濃縮によってアルコール分やエキス分
の移動と排除を行う為には、アルコール飲料を長時間低
温に保続する必要がある。これは急激に冷却すると、氷
結晶が急速に増加して、濃縮物として押し出されるべき
成分が氷結晶間に取り込まれてしまうからである。氷結
晶間に濃縮物が取り込まれると、得られる濃縮物の量が
減少し、効率が悪くなる。その為、氷結晶が折出する温
度近くの温度で長時間冷却を続け、氷結晶を徐々に成長
させなければならず、電気代および設備費が過剰に必要
であった。この解決策は未だに講じられていなかった。
【0006】過冷却状態とは、液体から氷結晶が折出可
能な温度であるが、結晶折出のための核がない為、氷結
晶を形成できない状態を意味する。過冷却状態の液体に
氷結晶核を添加すると、液体中の水分がその部分を核と
して、氷結晶の形成が可能となる。過冷却状態のアルコ
ール飲料に氷晶核を添加して、通常よりも高い冷却温度
で氷結晶を形成させることは従来行なわれていなかっ
た。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、過冷却状態の
アルコール飲料に氷晶核を添加して氷結晶を析出させ、
析出した氷結晶を除去することを特徴とする濃縮アルコ
ール飲料の製造方法に関する。
【0008】さらに本発明は、過冷却状態のアルコール
飲料に氷晶核を添加して氷結晶を析出させ、析出した氷
結晶を分離し、分離した氷結晶を融解することを特徴と
する希薄アルコール飲料の製造方法に関する。
【0009】本発明により得られるアルコール飲料は、
飲用に適したアルコール分およびエキス分を濃縮した、
あるいはそれらが希薄なものである。従来、凍結温度以
上の温度で凍結濃縮を行ない、品質の良い濃縮および希
薄アルコール飲料を提供することおよび、氷晶核として
氷核活性蛋白を利用するという考えは見当たらず、本発
明のアイディアそのものが新規なものである。
【0010】以下、本発明について詳述する。本発明に
おけるアルコール飲料とは、ワイン、清酒等の醸造酒を
いう。ここでワインとは、所謂果実酒であって、葡萄の
果汁を酵母の作用により発酵し、必要に応じて樽または
瓶に貯蔵して得られるものであり、通常赤ワイン、白ワ
イン、ロゼワインが知られる。本発明において原料とし
て用いるワインは、飲用に適したワインであればよく、
葡萄の果汁のみを発酵して醸造される所謂赤、白、ロゼ
の天然ワインが挙げられる。さらに、これら以外に、ワ
インに濃縮果汁、ブランデーを添加したシェリー、ポー
ト、マディラ、マルガ、マルサラ等の所謂補強ワイン、
あるいはワインに薬草、香料、色素等を添加して得られ
るベルモットを代表とする混成ワイン等も含む。特殊な
例として、シャンペン等の発泡酒でも本発明の濃縮およ
び希薄ワインは得られる。又、清酒とは、米、米麹、水
及びその他の物品を原料として発酵させて、こしたもの
である。本発明においてはこれ以外にも、アルコール、
焼酎または清酒とぶどう糖等を原料とする合成清酒を原
料として用いることができる。
【0011】本発明の方法では、まず原料アルコール飲
料を過冷却状態になるように冷却する。過冷却状態とな
る温度は、原料アルコール飲料の種類、アルコール濃度
等により異なる。例えば、原料アルコール飲料がワイン
の場合、ワイン中に含まれるアルコール濃度によっても
異なるが、通常約−4℃〜−8℃に冷却すれば、過冷却
状態となる。冷却温度をワインの凍結温度である約−9
℃以下にすると、氷晶核を添加した後の氷結晶の析出速
度が早くなり過ぎる傾向がある。氷結晶の析出速度が早
くなり過ぎると、アルコール分およびエキス分の移動が
効率よく行なわれることなしに細かな氷結晶の塊が全体
的に形成されるので注意を要する。また、原料アルコー
ル飲料が清酒の場合、清酒中に含まれるアルコール濃度
によっても異なるが、通常約−10℃〜−15℃に冷却
すれば、過冷却状態となる。
【0012】氷晶核としては、氷片、または微生物由来
の氷核活性蛋白等を用いることができる。氷晶核として
氷片を用いる場合、氷片の大きさには特に制限はなく、
適宜選択することができる。また、氷片の量は、原料ア
ルコール飲料に対して0.1〜10重量%、好ましくは
0.3〜5重量%とすることが適当である。
【0013】一方、氷核活性蛋白とは、シュードモナス
・シリンガエ( Pseudomonas syringae)(ATCC53543、
IFO3310)をはじめとする氷核活性細菌(日本冷凍協会論
文集第5巻第2号(1998)1〜10頁参照)の外膜
に存在する氷結晶のもとと成りやすい性質を持っている
蛋白のことである。この蛋白懸濁液は通常より高い温度
で凍結する性質を保持するので、従来は人工雪の製造に
使用されていたが、凍結濃縮への応用は試みられていな
かった(特開平2−76589号、特開平2−7659
5号)。
【0014】本発明の方法には、上述のシュードモナス
・シリンガエの他に、シュードモナス・フルオレッセン
ス( Pseudomonas fluorescens )、シュードモナス・
ビリディフラバ( Pseudomonas viridiflava ) 、エル
ウィニア・ウレドボラ(Erwinia uredovora )、エル
ウィニア・ヘルビコラ(Erwinia herbicola)(IFO126
86)等、任意の氷核活性細菌由来の氷核活性蛋白を用い
ることができる。氷核活性蛋白の蛋白懸濁液を作る場
合、氷核活性蛋白の使用量は、原料アルコール飲料1リ
ットルに対して例えば1g以上、好ましくは5g以上と
することが適当である。氷核活性蛋白の使用量の上限は
特にないが、経済上少ないほうが良く、適宜選択するこ
とができる。なお、氷核活性蛋白は、前述の懸濁液とし
て使用する以外にも、粉末をそのまま使用することもで
きる。
【0015】過冷却状態のアルコール飲料に上述の氷晶
核を添加する。氷晶核を添加するとアルコール飲料中で
は氷結晶の形成が開始される。氷結晶の形成のための温
度は、過冷却状態の温度と同一であるか、あるいは変化
させても良い。また、温度によっては、そのまま放置す
るとアルコール飲料全体が凍結する場合もあるので、氷
結晶を徐々に除去することもできる。即ち、ある程度ア
ルコール飲料中に氷結晶が形成されたところで、その一
部を掻き出して分離し、一部の氷結晶が除去されたアル
コール飲料を引き続いて冷却して残った氷結晶を核とす
る氷結晶の形成および掻き出しが継続的に行なうことが
できる。その結果、アルコール飲料中の水分含量は徐々
に低下し、相対的にアルコール分およびエキス分が上昇
することにより色、風味的に優れた濃縮アルコール飲料
を得ることができる。
【0016】一方、掻き出した氷結晶には、吸引もしく
は遠心分離といった手段を施し、氷結晶間に僅かに残っ
ていた未凍結液の除去を行ない、得られた未凍結液を冷
却容器に再び戻す。このようにして集めた氷結晶は、融
解することにより、原料アルコール飲料よりアルコール
分およびエキス分が低く水分の含有量が高い希薄アルコ
ール飲料を得ることができる。融解法には特に限定はな
い。
【0017】濃縮倍率は特に限定されず、濃縮アルコー
ル飲料及び/又は希薄アルコール飲料のアルコール濃度
により適宜決めることができる。例えば、液状部分と氷
結晶部分の容量比が、液状部分1に対して氷結晶部分1
〜10とすることができる。また、一回の操作で、希望
のアルコール分およびエキス分にまで到達しなかった場
合は、操作を繰り返し行なうことによって濃度を変化さ
せることもできる。
【0018】原料アルコール飲料がワインの場合、通常
のワインのアルコール濃度は9〜12%の範囲である
が、本発明の方法により得られる濃縮ワインは、これよ
りアルコール濃度の高い例えば15〜20%のものが得
られ、希薄ワインとしてこれよりアルコール濃度の低い
例えば5〜10%のものが得られる。原料アルコール飲
料が清酒の場合、通常の清酒のアルコール濃度は15〜
22%の範囲であるが、本発明の方法により得られる濃
縮清酒は、これよりアルコール濃度の高い例えば25〜
30%のものが得られ、希薄清酒としてこれよりアルコ
ール濃度の低い例えば10〜15%のものが得られる。
【0019】実施例を挙げて本発明を具体的に説明する
が、本発明はこれらにより、何ら制限されるものではな
い。
【0020】
【実施例】
実施例1 市販の赤ワイン(徳用メルシャン、メルシャン株式会社
製)300mlをサンプルとし、循環冷却器(クール・エ
ース、東京理科機械株式会社製)にて−4.5℃に冷却
し、そのまま保持した。10分後に小氷片(約5g)1
つをサンプル中に投入し、氷結晶を形成させた。氷結晶
形成確認2分後に小氷片を回収し、次々と形成される氷
結晶を掻き出して除去し、濾紙上に載せた後、下から吸
引して未凍結液を除去した。その後未凍結液を再び冷却
槽内に戻し、濾紙上に残った氷結晶は別の容器内で融解
させた。以上のようにして氷片添加後3時間でワインを
5倍まで濃縮した。即ち、冷却槽内に残った濃縮ワイン
60mlと氷結晶を融解させた後の希薄ワイン240mlを
得た。この濃縮および希薄ワインを第3回改正、国税庁
所定分析法注解のワイン分析方法に準じて分析した。結
果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】実施例1において、氷結晶の形成は氷片添
加後3分後に認められた。得られた濃縮ワインの分析値
はアルコール分が18.4%、エキス分が4.4%、直
接還元糖が0.82%と濃縮前よりも高くなり、濃厚な
味で香りも強く、どっしりとしていた。希薄ワインは
味、香り共に淡白で、爽やかな飲みごこちであった。
【0023】実施例2 氷片添加の代わりに、10g/lのエルウィニア・ウレ
ドボラ由来の氷核活性蛋白懸濁液0.02mlを冷却容器
内のワイン中の三か所に投下した以外は実施例1と同様
にして濃縮および希薄ワインの製造および分析を行なっ
た。結果を表2に示す。尚、エルウィニア・ウレドボラ
由来の氷核活性蛋白懸濁液は、特開平2−76595号
に記載の方法に従って調製した。
【0024】
【表2】
【0025】実施例2において氷結晶の形成は氷核活性
蛋白懸濁液添加後13分後に認められた。実施例1の場
合と同様に、実施例2において得られた濃縮ワインはア
ルコール分、エキス分が高くなるためこくのある味わい
となった。希薄ワインは軽い感覚で飲めるすっきりとし
た風味の飲料となった。
【0026】なお実施例1および2の対照として氷晶核
無添加の区を設けた。しかし、この場合−4.5℃に保
持後6時間たっても氷結晶の析出は認められなかった。
このことから、氷晶核添加によって氷結晶の析出による
濃縮が高温度および短時間で成し遂げられることが明ら
かとなった。
【0027】
【発明の効果】本発明の方法によれば、ワイン等のアル
コール飲料の本来持つ風味を損なうことなく、飲用とし
て有用な濃縮および希薄ワイン等のアルコール飲料が得
られる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 過冷却状態のアルコール飲料に氷晶核を
    添加して氷結晶を析出させ、析出した氷結晶を除去する
    ことを特徴とする濃縮アルコール飲料の製造方法。
  2. 【請求項2】 過冷却状態のアルコール飲料に氷晶核を
    添加して氷結晶を析出させ、析出した氷結晶を分離し、
    分離した氷結晶を融解することを特徴とする希薄アルコ
    ール飲料の製造方法。
  3. 【請求項3】 氷晶核が氷核活性蛋白である請求項1又
    は2記載の製造方法。
JP34398691A 1991-12-02 1991-12-02 氷晶核添加による濃縮または希薄アルコール飲料の製造方法 Pending JPH05153953A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07308503A (ja) * 1994-05-17 1995-11-28 Kyushu Kogyo Univ 氷結晶の製造方法
JP2005296006A (ja) * 2004-03-18 2005-10-27 Mayekawa Mfg Co Ltd 多種濃度アルコール飲料の製造方法及び装置
JP2007228948A (ja) * 2006-03-03 2007-09-13 Mayekawa Mfg Co Ltd 発泡性低アルコール日本酒とその製造方法
US7856832B2 (en) * 2006-01-14 2010-12-28 Samsung Electronics Co., Ltd. Refrigerator with supercooled beverage dispenser and method for controlling the same

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