JPH05146504A - 生体インプラント材とその製法 - Google Patents
生体インプラント材とその製法Info
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- JPH05146504A JPH05146504A JP3315679A JP31567991A JPH05146504A JP H05146504 A JPH05146504 A JP H05146504A JP 3315679 A JP3315679 A JP 3315679A JP 31567991 A JP31567991 A JP 31567991A JP H05146504 A JPH05146504 A JP H05146504A
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Abstract
(57)【要約】
【構成】 チタンまたはチタン合金からなる基体の少な
くとも骨との接合面上に酸素を0.8〜2.8wt%、
窒素を6.1〜9.6wt%を含む厚さ100μm 〜3
mmのチタンを主要成分とするチタン組成物のポ−ラス
層を具備してなることを特徴とする生体インプラント材
とその製法。 【効果】 チタン組成物のポ−ラス層が基体から脱落し
にくく、イオン溶出も少ないばかりでなく、疲労強度も
改善され、骨の増生侵入による良好な固定が得られる優
れた生体材料をもたらすことができる。
くとも骨との接合面上に酸素を0.8〜2.8wt%、
窒素を6.1〜9.6wt%を含む厚さ100μm 〜3
mmのチタンを主要成分とするチタン組成物のポ−ラス
層を具備してなることを特徴とする生体インプラント材
とその製法。 【効果】 チタン組成物のポ−ラス層が基体から脱落し
にくく、イオン溶出も少ないばかりでなく、疲労強度も
改善され、骨の増生侵入による良好な固定が得られる優
れた生体材料をもたらすことができる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は疾病、災害などにより、
骨機能や手足の関節機能が失われた場合にこれらを修復
するために用いられる整形外科用人工骨及び人工関節、
あるいは老齢、疾病などによって失われた歯牙を復元す
るために用いられる人工歯根等を構成する生体インプラ
ント材とその製法に関するものであり、更に詳しく述べ
ると、金属の基体にポーラス層を被着してなる生体イン
プラント材及びチタン又はチタン基合金からなる基体の
表面にチタンの窒化物や酸化物を被覆してなる生体イン
プラント材とその製法に関するものである。
骨機能や手足の関節機能が失われた場合にこれらを修復
するために用いられる整形外科用人工骨及び人工関節、
あるいは老齢、疾病などによって失われた歯牙を復元す
るために用いられる人工歯根等を構成する生体インプラ
ント材とその製法に関するものであり、更に詳しく述べ
ると、金属の基体にポーラス層を被着してなる生体イン
プラント材及びチタン又はチタン基合金からなる基体の
表面にチタンの窒化物や酸化物を被覆してなる生体イン
プラント材とその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、インプラントロジ−の発展は目覚
ましいものがあり、人工心臓、人工血管、人工肺など様
々な人工臓器が医療の世界で活躍している。特に整形外
科の分野では、失われた関節機能を復元するための人工
関節が広く用いられ、また、歯科医療の分野では人工歯
根が脚光を浴びている。
ましいものがあり、人工心臓、人工血管、人工肺など様
々な人工臓器が医療の世界で活躍している。特に整形外
科の分野では、失われた関節機能を復元するための人工
関節が広く用いられ、また、歯科医療の分野では人工歯
根が脚光を浴びている。
【0003】人工関節のうち、最も多用されている人工
股関節を例に取ると、その本格的な発展は60年代のチ
ャンレ−型人工股関節に始まる。その後、毒性などの問
題から、手術時にボ−ンセメントを用いないセメントレ
ス人工股関節が開発された。
股関節を例に取ると、その本格的な発展は60年代のチ
ャンレ−型人工股関節に始まる。その後、毒性などの問
題から、手術時にボ−ンセメントを用いないセメントレ
ス人工股関節が開発された。
【0004】セメントレス人工股関節は、患者自身の骨
によってインプラントを固定しようとする考えによるも
のであり、骨内での固定力向上のため、インプラント表
面にビ−ズやメッシュによるポ−ラスコ−ティング処理
を施したものが開発され、80年代後半には最盛期を迎
えた。
によってインプラントを固定しようとする考えによるも
のであり、骨内での固定力向上のため、インプラント表
面にビ−ズやメッシュによるポ−ラスコ−ティング処理
を施したものが開発され、80年代後半には最盛期を迎
えた。
【0005】インプラントの表面をポ−ラス化する技術
としては、上述のビ−ズコ−ト、メッシュコ−トの他
に、減圧プラズマ溶射やサンドブラスト処理、酸エッチ
ング処理などの方法がある。
としては、上述のビ−ズコ−ト、メッシュコ−トの他
に、減圧プラズマ溶射やサンドブラスト処理、酸エッチ
ング処理などの方法がある。
【0006】また、チタンまたはチタン基合金からなる
基体の表面にチタンの酸化物や窒化物をCVD法、PV
D法、さらにプラズマCVD法、そしてイオン注入法等
を用いてコーティングしたものとして、特開昭62−1
22669号公報で説明される生体用インプラント部材
がある。
基体の表面にチタンの酸化物や窒化物をCVD法、PV
D法、さらにプラズマCVD法、そしてイオン注入法等
を用いてコーティングしたものとして、特開昭62−1
22669号公報で説明される生体用インプラント部材
がある。
【0007】
【従来技術の課題】上記の従来技術のうち、インプラン
トの表面をポーラス化するものには各方法共に一長一短
があるものの、以下のような問題点が共通してある。
トの表面をポーラス化するものには各方法共に一長一短
があるものの、以下のような問題点が共通してある。
【0008】金属イオン溶出量の増大 ポ−ラスコ−ティングにより表面積が増大することか
ら、金属イオンの溶出量が増大する。また金属チタンは
耐摩耗性に劣るため、術後短期間でのインプラントのマ
イクロム−ブメントにより、さらに金属イオンの溶出量
が増加する。これらの溶出金属イオンは、発ガン性が有
するばかりでなく、インプラントの固定性を低下させ、
抜去再手術を余儀なくする原因となる。
ら、金属イオンの溶出量が増大する。また金属チタンは
耐摩耗性に劣るため、術後短期間でのインプラントのマ
イクロム−ブメントにより、さらに金属イオンの溶出量
が増加する。これらの溶出金属イオンは、発ガン性が有
するばかりでなく、インプラントの固定性を低下させ、
抜去再手術を余儀なくする原因となる。
【0009】疲労強度の低下 インプラント材料は生体に利用されるので、十分な疲労
強度が必要とされるが、ビ−ズコ−トなどのポ−ラスコ
−トにおいては、疲労強度が60〜70%も低下するこ
とが知られている。疲労強度の低下は生体内でのインプ
ラントの破損を招く危険がある。
強度が必要とされるが、ビ−ズコ−トなどのポ−ラスコ
−トにおいては、疲労強度が60〜70%も低下するこ
とが知られている。疲労強度の低下は生体内でのインプ
ラントの破損を招く危険がある。
【0010】粒子の脱落 一般にポ−ラス層はバルク材質に比べて脆いため、手術
時の打ち込みの際などにしばしば脱落を起こす。手術後
のインプラントの下面に数個の脱落粒子が認められる例
もある。これらの脱落粒子が摺動面に入り込んだ場合に
は、異常摩耗を引き起こし、人工関節は短期間でその機
能を失うことになる。
時の打ち込みの際などにしばしば脱落を起こす。手術後
のインプラントの下面に数個の脱落粒子が認められる例
もある。これらの脱落粒子が摺動面に入り込んだ場合に
は、異常摩耗を引き起こし、人工関節は短期間でその機
能を失うことになる。
【0011】また、上記特許公報の生体用インプラント
はチタンの酸化物や窒化物よりなる緻密な表面層が平均
厚さ僅か0.1〜30μm に被着してなるものであるが
表面層が薄く、緻密であるため骨の増殖生成が発生せ
ず、また強度、耐蝕性も十分なものではなかった。
はチタンの酸化物や窒化物よりなる緻密な表面層が平均
厚さ僅か0.1〜30μm に被着してなるものであるが
表面層が薄く、緻密であるため骨の増殖生成が発生せ
ず、また強度、耐蝕性も十分なものではなかった。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述の問題点
を解決すべく、チタンまたはチタン合金からなる基体の
少なくとも骨との接合面に酸素を0.8〜2.0wt
%、窒素を6.1〜9.6wt%を含む厚さ100μm
〜3mmのチタンを主要成分とするポ−ラス層を具備し
た生体インプラント材および、チタンまたはチタン合金
からなる基体の少なくとも骨との接合面に対してチタン
またはチタン合金を大気中、或いは大気と窒素ガスの混
合比が1:2〜2:1の雰囲気中または大気と酸素の混
合比が2:1〜4:1の雰囲気中にてアーク溶射法、フ
レーム溶射法、プラズマ溶射法或いはレーザー溶射法に
て溶射し厚さ100μm 〜3mmのチタンを主要成分と
するポーラス層を形成し、さらにこれを300〜165
0℃の温度にて熱処理を行なうことを特徴とする生体イ
ンプラント材の製法を提供する。
を解決すべく、チタンまたはチタン合金からなる基体の
少なくとも骨との接合面に酸素を0.8〜2.0wt
%、窒素を6.1〜9.6wt%を含む厚さ100μm
〜3mmのチタンを主要成分とするポ−ラス層を具備し
た生体インプラント材および、チタンまたはチタン合金
からなる基体の少なくとも骨との接合面に対してチタン
またはチタン合金を大気中、或いは大気と窒素ガスの混
合比が1:2〜2:1の雰囲気中または大気と酸素の混
合比が2:1〜4:1の雰囲気中にてアーク溶射法、フ
レーム溶射法、プラズマ溶射法或いはレーザー溶射法に
て溶射し厚さ100μm 〜3mmのチタンを主要成分と
するポーラス層を形成し、さらにこれを300〜165
0℃の温度にて熱処理を行なうことを特徴とする生体イ
ンプラント材の製法を提供する。
【0013】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳述する。図1
に示す如く、チタンまたはチタン合金の基体A上に、大
気中或いは大気と窒素ガスまたは大気と酸素ガスを混合
した雰囲気中でア−ク溶射法などの方法でチタンまたは
チタン合金を溶射してポーラス層Bを形成し生体移植材
1を作製する。溶射法はフレ−ム溶射、プラズマ溶射及
びレ−ザ−溶射でも良いが、ア−ク溶射が最も粗いポ−
ラス面が得られる。なお、上記の溶射方法は単独でも、
2つ以上の方法を組合わせて用いても良い。なお、溶射
条件は、可及的に粗い面となるように選定されている。
に示す如く、チタンまたはチタン合金の基体A上に、大
気中或いは大気と窒素ガスまたは大気と酸素ガスを混合
した雰囲気中でア−ク溶射法などの方法でチタンまたは
チタン合金を溶射してポーラス層Bを形成し生体移植材
1を作製する。溶射法はフレ−ム溶射、プラズマ溶射及
びレ−ザ−溶射でも良いが、ア−ク溶射が最も粗いポ−
ラス面が得られる。なお、上記の溶射方法は単独でも、
2つ以上の方法を組合わせて用いても良い。なお、溶射
条件は、可及的に粗い面となるように選定されている。
【0014】ポーラス層Bは、チタンまたはチタン合金
が上記雰囲気中酸素や窒素と反応し、酸化チタンや窒化
チタンを含みチタンを主要成分とするチタン組成物とな
っている。なお、このように形成したポーラス層Bにお
いて酸化チタン、窒化チタンの分布は表面部分に最も多
く集中する。特に表面には酸化チタンを主要成分とする
ミクロンオーダーの膜厚を有する被覆膜B1 が形成され
ているため、生体インプント1が耐蝕性に優れたものと
なっているとともに金属チタンの溶出が抑制され、また
ポーラス層B表面近傍に多く存在する窒化チタンによっ
て耐摩耗性にも優れ、またポーラス層B全体にわたって
存在している残りの窒化チタンによってポーラス層Bの
強度が強化され破壊が起こり難くなってており、更には
基体Aとの接合強度も十分なものとなっている。なおこ
のように溶射中に化学反応を起こさせる反応溶射を用い
て形成したポーラス層Bを具備することが、本発明の生
体インプラント材1の最も大きな特長である。
が上記雰囲気中酸素や窒素と反応し、酸化チタンや窒化
チタンを含みチタンを主要成分とするチタン組成物とな
っている。なお、このように形成したポーラス層Bにお
いて酸化チタン、窒化チタンの分布は表面部分に最も多
く集中する。特に表面には酸化チタンを主要成分とする
ミクロンオーダーの膜厚を有する被覆膜B1 が形成され
ているため、生体インプント1が耐蝕性に優れたものと
なっているとともに金属チタンの溶出が抑制され、また
ポーラス層B表面近傍に多く存在する窒化チタンによっ
て耐摩耗性にも優れ、またポーラス層B全体にわたって
存在している残りの窒化チタンによってポーラス層Bの
強度が強化され破壊が起こり難くなってており、更には
基体Aとの接合強度も十分なものとなっている。なおこ
のように溶射中に化学反応を起こさせる反応溶射を用い
て形成したポーラス層Bを具備することが、本発明の生
体インプラント材1の最も大きな特長である。
【0015】上記ポーラス層Bは溶射後に熱処理を施す
事によって、さらに特性を改善することができるので、
300℃〜1650℃で熱処理を行う。熱処理は基体A
の酸化を防止するため、真空中、または不活性ガス雰囲
気中で行われる。なお、上記熱処理温度については30
0℃以下ではポーラス層Bの歪み取り効果が無く、一方
1650℃以上では基体Aが溶解してしまうので不適当
である。なお、最も好ましい熱処理温度領域は850℃
〜1250℃である。また、ポーラス層Bの厚みとして
は、100μm 〜3mmの範囲が適当である。100μ
m 以下では十分な骨の増殖生成が発生せず、またインプ
ラント材としての寸法制約上、3mmを超す厚みのチタ
ン溶射層は不適当である。
事によって、さらに特性を改善することができるので、
300℃〜1650℃で熱処理を行う。熱処理は基体A
の酸化を防止するため、真空中、または不活性ガス雰囲
気中で行われる。なお、上記熱処理温度については30
0℃以下ではポーラス層Bの歪み取り効果が無く、一方
1650℃以上では基体Aが溶解してしまうので不適当
である。なお、最も好ましい熱処理温度領域は850℃
〜1250℃である。また、ポーラス層Bの厚みとして
は、100μm 〜3mmの範囲が適当である。100μ
m 以下では十分な骨の増殖生成が発生せず、またインプ
ラント材としての寸法制約上、3mmを超す厚みのチタ
ン溶射層は不適当である。
【0016】実施例1 直径6mm、長さ23mmのチタン合金製円柱である基
体Aの表面をサンドブラストによって粗面化した後、ア
ーク溶射法にて純チタンを溶射した。溶射は大気中また
は表1に示すような比率によって大気と窒素ガスを混合
した雰囲気中或いは大気と酸素ガス混合した雰囲気中で
行った後950℃にて真空熱処理を行い、それぞれの雰
囲気条件につき2個の円柱状試験体を作製した。なおチ
タンは反応性が高いため、多量の酸素ガスの添加は危険
であり添加の上限は20%(大気:O 2 ガス=4:1)
とした。なお、ポーラス層Bの厚みは0.3〜0.4m
mであった。
体Aの表面をサンドブラストによって粗面化した後、ア
ーク溶射法にて純チタンを溶射した。溶射は大気中また
は表1に示すような比率によって大気と窒素ガスを混合
した雰囲気中或いは大気と酸素ガス混合した雰囲気中で
行った後950℃にて真空熱処理を行い、それぞれの雰
囲気条件につき2個の円柱状試験体を作製した。なおチ
タンは反応性が高いため、多量の酸素ガスの添加は危険
であり添加の上限は20%(大気:O 2 ガス=4:1)
とした。なお、ポーラス層Bの厚みは0.3〜0.4m
mであった。
【0017】
【表1】
【0018】これらの円柱状試験体のうち各雰囲気条件
によるものにつき各1個を用いチャンバー内で塩水を3
日間にわたって噴霧し、腐食の発生状態を目視で評価す
る塩水噴霧法によるの加速腐食試験を行い耐蝕性を評価
した。その際の評価基準としては、A:腐食発生認めら
れず、B:一部分のみに腐食が認められる、C:ステン
レスと同等またはやや良好な腐食状態が認められる、
D:ステンレスより劣る腐食状態が認められる、以上の
4段階を用いた。その評価結果を表1に示す。
によるものにつき各1個を用いチャンバー内で塩水を3
日間にわたって噴霧し、腐食の発生状態を目視で評価す
る塩水噴霧法によるの加速腐食試験を行い耐蝕性を評価
した。その際の評価基準としては、A:腐食発生認めら
れず、B:一部分のみに腐食が認められる、C:ステン
レスと同等またはやや良好な腐食状態が認められる、
D:ステンレスより劣る腐食状態が認められる、以上の
4段階を用いた。その評価結果を表1に示す。
【0019】また、上記の円柱状試験体のうち各雰囲気
条件によるものつき各残りの1個について各試験体をボ
ーンセメントに固定して押し出し試験を行い、目視によ
って試験体のポーラス層Bがボーンセメントと付着した
ままで、ボーンセメント内に破壊専断がおこっている
か、またはポーラス層Bとボーンセメントとの界面が剥
離専断しているのかについて、すなわちボーラス層Bの
ボーンセメントに対する付着性についての評価をした。
その際の評価基準としては、A:ポーラス層Bの剥離全
く認められず、B:ポーラス層Bのごく一部のみに剥離
が認められる、C:ポーラス層Bが全体にわたって剥離
した、以上の3段階を用い、その評価の結果を表1に示
す。生体インプラント1として用いるためには耐蝕性及
び付着性のの評価が両方ともB以上であることが必要と
される。表1よりボーラス層Bとして好ましい酸素含有
率は0.8〜2.8wt%、また好ましい窒素含有率は
6.1〜9.6wt%であることが判る。
条件によるものつき各残りの1個について各試験体をボ
ーンセメントに固定して押し出し試験を行い、目視によ
って試験体のポーラス層Bがボーンセメントと付着した
ままで、ボーンセメント内に破壊専断がおこっている
か、またはポーラス層Bとボーンセメントとの界面が剥
離専断しているのかについて、すなわちボーラス層Bの
ボーンセメントに対する付着性についての評価をした。
その際の評価基準としては、A:ポーラス層Bの剥離全
く認められず、B:ポーラス層Bのごく一部のみに剥離
が認められる、C:ポーラス層Bが全体にわたって剥離
した、以上の3段階を用い、その評価の結果を表1に示
す。生体インプラント1として用いるためには耐蝕性及
び付着性のの評価が両方ともB以上であることが必要と
される。表1よりボーラス層Bとして好ましい酸素含有
率は0.8〜2.8wt%、また好ましい窒素含有率は
6.1〜9.6wt%であることが判る。
【0020】実施例2 直径6mm,長さ23mmのチタン合金製円柱体である
3個の基体Aの表面をサンドブラストによって粗面化し
た後、大気中でア−ク溶射法を用いて純チタンを溶射し
た。溶射後、それぞれに650℃、850℃及び125
0℃にて真空熱処理を施し3個の試験体を得た。なお、
試験体の窒素含有率は7.0wt%、酸素含有率は2.0
wt%、またポーラス層Bの厚みは約300μmであっ
た。
3個の基体Aの表面をサンドブラストによって粗面化し
た後、大気中でア−ク溶射法を用いて純チタンを溶射し
た。溶射後、それぞれに650℃、850℃及び125
0℃にて真空熱処理を施し3個の試験体を得た。なお、
試験体の窒素含有率は7.0wt%、酸素含有率は2.0
wt%、またポーラス層Bの厚みは約300μmであっ
た。
【0021】これらの円柱状試験体を用いて電気化学的
腐食試験を行い、孔食電位を測定した。液は37℃の温
度に維持した生理食塩水を用い、掃引速度は5mV/s
ecで行った。また、同じように円柱状をした溶射なし
のチタン合金製基体Aについても比較のため測定を行っ
たが、両方の結果を表2に示す。
腐食試験を行い、孔食電位を測定した。液は37℃の温
度に維持した生理食塩水を用い、掃引速度は5mV/s
ecで行った。また、同じように円柱状をした溶射なし
のチタン合金製基体Aについても比較のため測定を行っ
たが、両方の結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】表2から基体Aの孔食電位2.00Vに対
し、1250℃で熱処理を施した円柱状試験体では極め
て高い電位が得られ、耐蝕性が大きく改善されているこ
とがわかる。また、他の試験体についても十分な耐蝕性
が認められた。一方、上述の方法で純チタンを溶射し8
50℃で熱処理を施した円柱状試験体と別途用意したチ
タン合金製の基体Aをオ−トクレ−ブを用いたイオン溶
出試験を行ったところ、同等レベルのイオン溶出量しか
示さなかった。従来のビ−ズコ−トなどによるポ−ラス
コ−トでは、チタン合金製の基体Aの10倍以上のイオ
ン溶出がある事が知られており、この実験から本発明の
生体インプラント1が優れ耐蝕性を有していることが証
明された。
し、1250℃で熱処理を施した円柱状試験体では極め
て高い電位が得られ、耐蝕性が大きく改善されているこ
とがわかる。また、他の試験体についても十分な耐蝕性
が認められた。一方、上述の方法で純チタンを溶射し8
50℃で熱処理を施した円柱状試験体と別途用意したチ
タン合金製の基体Aをオ−トクレ−ブを用いたイオン溶
出試験を行ったところ、同等レベルのイオン溶出量しか
示さなかった。従来のビ−ズコ−トなどによるポ−ラス
コ−トでは、チタン合金製の基体Aの10倍以上のイオ
ン溶出がある事が知られており、この実験から本発明の
生体インプラント1が優れ耐蝕性を有していることが証
明された。
【0024】実施例3 図2に示すような、直径12mm,長さ90mmで、中
央部A1 のみ直径8mmに削った3個の亜鈴型試験用の
基体A(チタン合金製)の中央部A1 に、大気中でレー
ザー溶射法を用いて純チタンの溶射を行い、それぞれに
650℃、850℃及び1250℃で真空熱処理を行い
厚み約2mmのポーラス層Bを具備する試験体を作製し
た。なお、試験体の窒素含有率は7.0wt%、酸素含有
率は2.0wt%、であった。
央部A1 のみ直径8mmに削った3個の亜鈴型試験用の
基体A(チタン合金製)の中央部A1 に、大気中でレー
ザー溶射法を用いて純チタンの溶射を行い、それぞれに
650℃、850℃及び1250℃で真空熱処理を行い
厚み約2mmのポーラス層Bを具備する試験体を作製し
た。なお、試験体の窒素含有率は7.0wt%、酸素含有
率は2.0wt%、であった。
【0025】これらの試験体に対し、回転曲げ疲労試験
を行い、そのS−Nカ−ブから疲労限を求めた。また比
較のため上記亜鈴型試験用の基体Aのみの疲労試験も行
った。その結果を表3に示す。
を行い、そのS−Nカ−ブから疲労限を求めた。また比
較のため上記亜鈴型試験用の基体Aのみの疲労試験も行
った。その結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】表3が示すように、本発明の方法によるポ
−ラスコ−ティングでも基体の疲労強度の低下は多少あ
る。しかしながら、従来のビ−ズコ−トやメッシュコ−
トの場合、1200℃の熱処理によって約70%もの疲
労強度の低下があったのに比較すると、低下率は650
℃、850℃の熱処理の場合、45%、1250℃の熱
処理の場合でも51%と大きく改善されている。この疲
労強度の改善は、インプラントの安全性を向上させるも
のであり極めて重要である。
−ラスコ−ティングでも基体の疲労強度の低下は多少あ
る。しかしながら、従来のビ−ズコ−トやメッシュコ−
トの場合、1200℃の熱処理によって約70%もの疲
労強度の低下があったのに比較すると、低下率は650
℃、850℃の熱処理の場合、45%、1250℃の熱
処理の場合でも51%と大きく改善されている。この疲
労強度の改善は、インプラントの安全性を向上させるも
のであり極めて重要である。
【0028】実施例4 直径24mm,厚み2mmのチタン円板よりなる基体A
に大気中でフレーム溶射法を用いてチタン合金溶射し続
いてそれらの試験体を650℃で熱処理し、表4に示す
ような層厚のポーラス層Bを具備する複数の試験体を作
製した。なお、試験体の窒素含有率は7.0wt%、酸素
含有率は2.0wt%、であった。
に大気中でフレーム溶射法を用いてチタン合金溶射し続
いてそれらの試験体を650℃で熱処理し、表4に示す
ような層厚のポーラス層Bを具備する複数の試験体を作
製した。なお、試験体の窒素含有率は7.0wt%、酸素
含有率は2.0wt%、であった。
【0029】
【表4】
【0030】上述のようにチタンのフレーム溶射によっ
て形成され、熱処理されたポーラス層Bの面粗さを測定
した結果を表4に示す。
て形成され、熱処理されたポーラス層Bの面粗さを測定
した結果を表4に示す。
【0031】表3から明らかなように、層厚が50μm
の時の最大面粗さはRmax=21.37μm とRma
x25μm 以下であり骨の増殖生成を誘導するには不十
分であるが、100μm では31.33と骨の増殖生成
を誘導することが可能である。また、膜厚が300μm
の時には、平均中心線面粗さ(Ra)19.9μm 、最
大面粗さ(Rmax )151.6μm と非常に理想的な値
を得た。また、この時の表面状態はは図3の表面SEM
像に示すような粗面になっていた。
の時の最大面粗さはRmax=21.37μm とRma
x25μm 以下であり骨の増殖生成を誘導するには不十
分であるが、100μm では31.33と骨の増殖生成
を誘導することが可能である。また、膜厚が300μm
の時には、平均中心線面粗さ(Ra)19.9μm 、最
大面粗さ(Rmax )151.6μm と非常に理想的な値
を得た。また、この時の表面状態はは図3の表面SEM
像に示すような粗面になっていた。
【0032】従来のビ−ズコ−トによるポ−ラスコ−ト
では、ポ−ラス層を構成するビ−ズの粒径が0.25m
m〜1mmもあったため、手術時に骨に引っかかり粒子
の脱落を起こしていた。しかしながら、本発明の生体イ
ンプラント1の微細なポ−ラス層Bではこのような引っ
かかりは発生せず、ポ−ラス層の脱落は発生しない。
では、ポ−ラス層を構成するビ−ズの粒径が0.25m
m〜1mmもあったため、手術時に骨に引っかかり粒子
の脱落を起こしていた。しかしながら、本発明の生体イ
ンプラント1の微細なポ−ラス層Bではこのような引っ
かかりは発生せず、ポ−ラス層の脱落は発生しない。
【0033】実験例(動物実験) 直径3mm,長さ50mmのチタン合金棒の基体Aにチ
タン合金を大気中でアーク溶射を用いて溶射して後85
0℃で熱処理し、厚さ300μm 及び500μm のポー
ラス層Bを具備する2つの試験体を作製し、さらにプラ
ズマ溶射法を用いて溶射して後850℃で熱処理し、厚
さ50μm 及び100μm のポーラス層Bを具備する2
つの試験体を作製した。続いてこれらの試験体をウサギ
の脛骨に埋入し、現在術後観察中であるが、50μm の
ポーラス層Bのもの以外については骨の増生侵入による
と思われる良好な固定性が得られている事が確認されて
いる。
タン合金を大気中でアーク溶射を用いて溶射して後85
0℃で熱処理し、厚さ300μm 及び500μm のポー
ラス層Bを具備する2つの試験体を作製し、さらにプラ
ズマ溶射法を用いて溶射して後850℃で熱処理し、厚
さ50μm 及び100μm のポーラス層Bを具備する2
つの試験体を作製した。続いてこれらの試験体をウサギ
の脛骨に埋入し、現在術後観察中であるが、50μm の
ポーラス層Bのもの以外については骨の増生侵入による
と思われる良好な固定性が得られている事が確認されて
いる。
【0034】
【発明の効果】上述のように本発明の生体インプラント
材は適量の酸素及び窒素を含むチタン合金の溶射層を含
んでいるため、生体内でのイオン溶出も少なく、インプ
ラント材として十分な疲労強度を持ち、ポ−ラス層の脱
落も起こしにくく、骨の増生侵入による良好な固定が得
られる優れた生体材料をもたらすことができる。
材は適量の酸素及び窒素を含むチタン合金の溶射層を含
んでいるため、生体内でのイオン溶出も少なく、インプ
ラント材として十分な疲労強度を持ち、ポ−ラス層の脱
落も起こしにくく、骨の増生侵入による良好な固定が得
られる優れた生体材料をもたらすことができる。
【図1】本発明の生体インプラント材の部分側面図であ
る。
る。
【図2】本発明実施例による回転曲げ試験に用いた試験
用の基体の側面図。
用の基体の側面図。
【図3】本発明の生体インプラント材のポーラス層表面
を示す表面SEM像図である。
を示す表面SEM像図である。
A :基体 A1 :中央部 B :ポーラス層 B1 :皮膜層 1 :生体インプラント材
Claims (2)
- 【請求項1】 チタンまたはチタン合金からなる基体の
少なくとも骨との接合面に、酸素を0.8〜2.8wt
%、窒素を6.1〜9.6wt%を含む厚さ100μm
〜3mmのチタンを主要成分とするポ−ラス層を具備し
た生体インプラント材。 - 【請求項2】 チタンまたはチタン合金からなる基体の
少なくとも骨との接合面に対してチタンまたはチタン合
金を大気中、或いは大気と窒素ガスの混合比が1:2〜
2:1の雰囲気中または大気と酸素の混合比が2:1〜
4:1の雰囲気中にてアーク溶射法、フレーム溶射法、
プラズマ溶射法或いはレーザー溶射法にて溶射し厚さ1
00μm 〜3mmのチタンを主要成分とするポーラス層
を形成し、さらにこれを300〜1650℃の温度にて
熱処理を行なうことを特徴とする生体インプラント材の
製法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3315679A JP2984118B2 (ja) | 1991-11-29 | 1991-11-29 | 生体インプラント材とその製法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3315679A JP2984118B2 (ja) | 1991-11-29 | 1991-11-29 | 生体インプラント材とその製法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05146504A true JPH05146504A (ja) | 1993-06-15 |
JP2984118B2 JP2984118B2 (ja) | 1999-11-29 |
Family
ID=18068261
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3315679A Expired - Fee Related JP2984118B2 (ja) | 1991-11-29 | 1991-11-29 | 生体インプラント材とその製法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2984118B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH10513378A (ja) * | 1995-02-07 | 1998-12-22 | フィディア・アドバンスト・バイオポリマーズ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ | ヒアルロン酸、その誘導体、および半合成ポリマーで物体を被覆する方法 |
EP1251973A4 (en) * | 1999-12-22 | 2003-07-23 | Biosurface Eng Tech Inc | PLASMA APPLIED COATING, DEVICE AND METHOD |
WO2013157750A1 (ko) * | 2012-04-20 | 2013-10-24 | 오스템임플란트주식회사 | 치과용 임플란트 표면의 ha 코팅층 후처리 장치 |
WO2014098344A1 (ko) * | 2012-12-20 | 2014-06-26 | (주)오티스바이오텍 | 생체 임플란트 및 이의 제조방법 |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR102562983B1 (ko) * | 2021-10-08 | 2023-08-03 | 재단법인 포항산업과학연구원 | 다공성 티타늄계 분말 및 이의 제조방법 |
-
1991
- 1991-11-29 JP JP3315679A patent/JP2984118B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH10513378A (ja) * | 1995-02-07 | 1998-12-22 | フィディア・アドバンスト・バイオポリマーズ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ | ヒアルロン酸、その誘導体、および半合成ポリマーで物体を被覆する方法 |
EP1251973A4 (en) * | 1999-12-22 | 2003-07-23 | Biosurface Eng Tech Inc | PLASMA APPLIED COATING, DEVICE AND METHOD |
WO2013157750A1 (ko) * | 2012-04-20 | 2013-10-24 | 오스템임플란트주식회사 | 치과용 임플란트 표면의 ha 코팅층 후처리 장치 |
WO2014098344A1 (ko) * | 2012-12-20 | 2014-06-26 | (주)오티스바이오텍 | 생체 임플란트 및 이의 제조방법 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2984118B2 (ja) | 1999-11-29 |
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