JP4462873B2 - 生体インプラント材 - Google Patents

生体インプラント材 Download PDF

Info

Publication number
JP4462873B2
JP4462873B2 JP2003304804A JP2003304804A JP4462873B2 JP 4462873 B2 JP4462873 B2 JP 4462873B2 JP 2003304804 A JP2003304804 A JP 2003304804A JP 2003304804 A JP2003304804 A JP 2003304804A JP 4462873 B2 JP4462873 B2 JP 4462873B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating layer
layer
coating
metal
ceramic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003304804A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005073752A (ja
Inventor
岩男 野田
宏幸 北野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyocera Corp
Original Assignee
Kyocera Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyocera Corp filed Critical Kyocera Corp
Priority to JP2003304804A priority Critical patent/JP4462873B2/ja
Publication of JP2005073752A publication Critical patent/JP2005073752A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4462873B2 publication Critical patent/JP4462873B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Prostheses (AREA)
  • Dental Prosthetics (AREA)

Description

本発明は、疾病、災害などにより骨機能や手足の関節機能が失われた場合などに、これらを修復するために治療に用いられる整形外科用人工骨及び人工関節、あるいは老齢、疾病などによって失われた歯牙を復元するために用いられる人工歯根等の生体インプラントを構成する生体インプラント材に関し、特にセラミック製の生体インプラント材に関するものである。
近年、インプラントロジーの発展は目覚ましいものがあり、人工心臓、人工血管、人工肺など様々な人工臓器が医療の世界で活躍している。特に整形外科の分野では、失われた関節機能を復元するための人工関節が広く用いられ、また、歯科医療の分野では人工歯根が脚光を浴びている。
この様な人工関節、人工骨、人工歯根などの骨内挿入型の生体インプラントは高強度を必要とすることから、ステンレス鋼やコバルト・クロム合金、チタン合金などが主流であるが、生体内での耐食性や摺動特性に優れたアルミナ、ジルコニアなどのセラミック材料も広く用いられようになってきた。
これらの生体インプラントを骨内に固定する方法は、骨セメントと呼ばれるアクリル樹脂で骨と接着する方法と、セメントレスと呼ばれる患者の骨の修復作用を利用して固定する方法がある。前者は簡便で、固定性も良好であり、早期の離床が可能となる反面、アクリルモノマーの毒性や重合時の発熱による骨組織の壊死などの問題があった。一方後者は毒性などの問題がなく、生体作用を利用する点でも生体に対して好ましい固定法である反面、手術が難しく、安定な固定が得られにくいなどの問題点があった。
そこでセメントレス固定のインプラントの骨内固定性を向上させるため、金属製インプラントでは、最近、骨との接合面にポーラスコーティングやハイドロキシアパタイトコーティングが行われるようになり、優れた臨床成績を修めるようになってきた。
セラミックでも、本発明者等は、セラミック材で構成された生体インプラントの基体と、基体表面に低熱衝撃製のコーティング法により形成された第1のコーティング層、第1のコーティング層上に溶射法により形成された金属層を介して第2のコーティング層を形成することで、クラック発生によるセラミック基体の強度低下を来すことなく、大きな接合強度でもってコーティング層を形成した生体インプラント材を提案している(特許文献1)。
なお、この特許文献1において、クラック防止効果および層内破壊防止の観点から第1のコーティング層は0.001mm〜1.0mmであることが好ましいことが記載されている。
特開2001−269357号公報
このような従来技術の構成に対して、本発明者等は、さらに基体強度を溶射前と同等およびそれ以上にすることを試みた。
前記課題を解決するため本発明者等は、第1のコーティング層の厚みに着目し、鋭意検討の結果、第1のコーティング層の厚みを一定範囲内にしたときに、生体インプラント材の抗折強度が顕著に大きくなることを見出した。
すなわち、本発明の生体インプラント材は、セラミック材で構成された基体と、金属を含み、かつ該基体表面に低熱衝撃性のコーティング法により形成された平均厚み0.1mm〜0.3mmの第1のコーティング層と、第1のコーティング層上に溶射法によって形成された金属層と、該金属層上に形成された第2のコーティング層とからなり、前記第1のコーティング層の表面から40mm×4mm×3mmの大きさで切り出した試験片の抗折強度が、JIS R 1601により規定される4点曲げ試験にて1177MPa〜1434MPaであることを特徴とする。
本生体インプラント材の第1のコーティング層は低熱衝撃性のコーティング法により形成したので、基体にクラックを発生させることなく設けることが可能なものである。また、この第1のコーティング層は、金属層を溶射形成する際に熱を遮蔽し、基体に大きな熱衝撃が加わることを防止する作用を有するとともに、金属層とセラミック基体間のボンディング層として両者の密着性の確保する作用を有する。これは、溶射法によって基体に金属層を形成した場合に前述のように両者の密着力が低い傾向があるのに対して、低熱衝撃性のコーティング法では、大きな密着力が得られ、この層(第1のコーティング層)を介して溶射法による金属層を形成した場合、基体と溶射金属層(金属層)との密着力が飛躍的に向上するためである。
また、本発明の生体インプラント材は、金属層を介して生体親和性を有するリン酸カルシウム系材料をコーティング(第2のコーティング層)したものであり、その表面を溶射法(例えばプラズマ溶射法やフレーム溶射法等)により素面として形成したので、機械的アンカリング作用により、第2コーティング層の第1のコーティング層に対する付着力が大きい。
このような構成において、第1のコーティング層を比較的厚く、平均厚み0.1mm以上としたことにより、金属層を形成する際に起こる金属層の収縮を原因とする生体インプラント材の抗折強度劣化に対して、第1のコーティング層が保護層として効果的に作用し、生体インプラント材の強度を、セラミック基体単体とほぼ同等、或いは、それ以上とすることができる。
なお、前記第1のコーティング層の平均厚みは0.3mm以下とする。その理由は、第1のコーティング層の厚みを大きくすると、生体インプラント材を一定サイズの大きさとするためには、セラミック基体の厚みをその分小さくすることになる。そのような場合、生体インプラント材の基体強度(破壊荷重)が小さくなるので、前記第1のコーティング層により生体インプランント材の抗折強度を大きくするという作用を相殺してしまう恐れがあるためである。
以下、本発明に係る生体インプラント材の実施形態を詳しく説明する。
本発明の生体インプラント材は、セラミック材で構成された生体インプラントの基体と、基体表面に低熱衝撃性のコーティング法により形成された第1のコーティング層、第1のコーティング層上に溶射法により形成された金属層を介して第2のコーティング層を形成した構成である。
セラミック基体としては酸化物系セラミック(アルミナ、ジルコニア、チタニア)、窒化物系セラミック(窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ)もしくは炭化物系セラミック(炭化珪素)や、アルミナ分散ジルコニアやチタニア分散アルミナなど、素材強度を改善した混合セラミックを使用することができる。この中でも、アルミナ、ジルコニアが生体親和性の点で好ましく、さらに機械的強度の点で、ジルコニアがより好ましい。
また、これらセラミック基体に対して、イオン注入を行っても良い。すなわち、セラミック基体へ第1のコーティング層を構成する材種のイオンを予め注入しておくことにより、基体と第1のコーティング層との密着性を向上させることが可能である。例えば、アルミナ基体に予めチタンを注入しておくと、第1のコーティング層としてチタンをコーティングした場合、密着強度を20%ほどアップさせることができる。
次に、基体表面に形成するコーティング層について説明する。
本発明のコーティング層は機能的には3つの層から構成されている。即ち、第1のコーティング層、金属溶射層、第2のコーティング層である。
まず、第1のコーティング層について説明する。
この第1のコーティング層は、
・ 金属
・ セラミック
・ 金属+セラミック
で構成できる。
先ず、この第1のコーティング層が金属からなる場合を説明する。
前記第1のコーティング層が金属単層である場合には、チタン、タンタル、タングステン、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、アルミニウム、珪素、金、銀、パラジウム及びこれらを主成分とする合金もしくはコバルト・クロム合金、ステンレス鋼のうち一種または二種以上の混合物から構成される。また金属複層である場合には、これらのうち2種以上の組み合わせ、または二種以上の混合物と組み合わせとなる。
第1のコーティング層に金属層を用いた場合は、特に基本的な作用として、セラミック基体の金属に対するぬれ性を改善し、金属層との密着性を大きく改善することが最大のメリットとなる。また複層を用いるメリットはそれぞれの材料にて、より親和性の高い材料を組み合わせることにより、さらに密着性を向上させることである。例えば、ジルコニア基体に対して、金属層がチタンである場合、第1のコーティング層としては、ジルコニウムとチタンの複層を使用した場合の方がジルコニウムもしくはチタンの単層を利用した場合よりも高い密着性を得ることができる傾向がある。もちろん、ジルコニア基体側がジルコニウム、金属層(チタン)側がチタンである。複層の一部もしくは全体に混合物層が用いられる場合も同様に個々の材料と同系の材料を有する隣接層との親和性の向上に伴って層間の密着性が向上する。
一方、第1のコーティング層はセラミックで形成することもできる。この場合は、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、炭化珪素、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、TiCNのいずれか一種または二種以上の混合物からからなる単層、もしくはこれらのうちの二種以上からからなる複層または二種以上の混合物からからなる複層を使用することができる。第1のコーティング層をセラミック層で構成した場合の最大のメリットは、熱衝撃や溶射粒子の衝突衝撃の遮蔽効果である。セラミック層は耐熱性や硬度に優れているため、第1のコーティング層を金属で構成した場合よりも、金属層の溶射時の熱衝撃や溶射粒子による衝突衝撃によく耐えることができる。
また、セラミック基体に対するセラミック層の密着性を高めるために、セラミック複層や混合物層を利用することができる。例えば、ジルコニア基体とチタン合金の金属層を有する生体インプラント材の場合、第1のコーティング層をチタニアとジルコニアの混合層とすることにより、同種元素の親和性により、密着性が高まる。
さらにこの第1のコーティング層は前記金属材とセラミック材の複層またはそれらの混合物の複層とし、金属層、セラミック層それぞれが持つメリットがミックスされたものとすることができる。すなわち、第1のコーティング層は金属層の有する密着性改善効果とセラミック層の持つクラック遮蔽効果の双方を発揮することが可能となる。密着力試験では、これらの複層や混合物を使用する場合、平均して20%ほどの密着性の向上が得られた。またクラック遮蔽効果についても、金属顕微鏡観察による定性的な評価ではあるが、改善が認められている。
また、前記第1のコーティング層は、セラミック材と金属材との組成比を層の厚み方向に粗って傾斜的に変化させたものであっても良い。
例えば、窒化チタン基体へチタンを金属層としてコーティングするとき、第1のコーティング層として窒化チタンとチタンの傾斜層を利用することができる。これはイオンプレーティング法にて、最初は窒素ガスを多く流して、窒化チタン基体上に窒化チタン層を形成させ、序々に窒素ガスの量を減らして窒化チタンとチタンの混合層の組成を変化させ、最終的には窒素ガスを止めてチタン層表面となるように仕上げる。これによって、その上にコーティングする金属層のチタン溶射層の密着強度を30%以上アップさせることができる。
ここで低熱衝撃性というのは、コーティング層を形成する際にベースとなるもの、具体的にはセラミック基体に対して熱的な衝撃を加えることがない、或いは、セラミック基体に対して、コーティング時のコーティング層の冷却収縮による応力衝撃を与えない場合をいう。コーティング方法としては、真空蒸着、イオンビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、ダイナミックミキシング法などのPVD法や、TiCNやTiCなどをCVD法でコーティング、或いは、また、電気メッキや無電解メッキなどの湿式コーティング法を例示することができる。勿論、これらの方法を組み合わせて使用することもできる。例えば、窒化珪素基体の上にシリカを真空蒸着し、その上に電気メッキにてチタンをコーティングして、第1のコーティング層を形成することができる。中でも、スパッタリングやイオンプレーティングがコーティング層の密着強度や均質性、並びに生産コストの見地から特に有効である。
そして、前記第1のコーティング層は、次に説明する金属層を溶射形成する際に熱を遮蔽し、基体に大きな熱衝撃が加わることを防止する作用を有するとともに、金属層とセラミック基体間のボンディング層として両者の密着性の確保する作用を有する。そして、この第1のコーティング層自体、低熱衝撃性のコーティング法により形成したもので、基体にクラックを発生させることなく設けることが可能である。
本発明における特徴は、第1のコーティング層の平均厚みを0.1mm〜0.3mmとしたことである。第1のコーティング層を比較的厚く、平均厚み0.1mm以上とすることで、金属層を形成する際に起こる金属層の収縮を原因とする生体インプラント材の抗折強度低下に対して、第1のコーティング層が保護層として効果的に作用し、生体インプラント材の抗折強度を、セラミック基体単体とほぼ同等、或いは、それ以上とすることができる。
ここで、平均厚みが0.1mm未満の場合、基体表面に発生する残留応力が引っ張り応力となっていて、抗折強度を劣化させるのに対して、0.1mm以上の場合、この残留応力が圧縮応力となることで、抗折強度が顕著に大きくなることが考えられる。第1のコーティング層の平均厚みは、0.15mm以上であることがより好ましい。
なお、前記第1のコーティング層の平均厚みは0.3mm以下とする。その理由は、第1のコーティング層の厚みを大きくすると、生体インプラント材を一定サイズの大きさとするためには、セラミック基体の厚みをその分小さくすることになる。そうすることによって、生体インプラント材の基体強度(破壊荷重)が小さくなるので、前記第1のコーティング層により生体インプランント材の抗折強度を大きくするという作用を相殺してしまう恐れがある。また、0.3mmを超えた場合、前記圧縮の残留応力が飽和状態となり、厚みを増やしていっても、更なる抗折強度の顕著な改善が望めない。
以下、セラミック基体の厚みを大きくした場合の抗折強度が小さくなってしまうことを具体的に説明する。
例えば、人工膝関節の大腿骨側部材を考えたときに、最も薄い部分の肉厚は3mm程度である。ここで、セラミックの抗折強度(曲げ強度)に関するJIS R 1601「ファインセラミックスの曲げ強さ試験法」によれば、その試験片として40mm×4mm×3mmのサイズであって厚み3mmのものを使うので、この試験片における表面の一部をチタン被膜で置換したもの(厚み3mmを維持)が、置換の全くない試験片とくらべて理論上どれぐらいの強度低下するか検討する。
JIS R 1601によれば、試験片(40mm×4mm×3mm)に荷重を加え、試験片が破断を起こした荷重で評価する。通常、4点曲げ試験を行うが、抗折強度(σ)は、
σ=3P(L-l)/2wt2 で表される。
ここで P:試験片が破断したときの最大荷重
L:下部支点間距離
l:上部荷重点間距離
w:試験片の幅
t:試験片の厚み
いま、標準条件をL=20mm、l=10mm、w=4mm、t=3mmとすると
σ=3P1(20-10)/2×4×3×3=5 P1/12=0.416P1
となる。
ここでもし、3mm厚みの試験片に0.15mmのチタン皮膜を付与させると試験片の厚みは3.15mmとなってしまうので、コーティング層厚み0.15mmを基体(セラミック厚み)から除去してやると、セラミック厚みは2.85mmとなる。
2.85mmになった場合の抗折強度σは、
σ=3P2(20-10)/2×4×2.85×2.85=0.462P2
となるが、寸法が変わっても単位面積あたりの抗折強度σは変化しないので、
よって σ=0.416P1=0.462P2 より
P2/P1=0.416/0.462=0.90 すなわち、もとの基体強度P1よりも10%強度低下する。
もし、0.2mmのチタン皮膜を付与させた場合はセラミック厚みは2.8mmとなり、同様に計算すれば、P2/P1=0.416/0.478=0.87 即ち、もとの基体強度P1よりも13%強度低下する。同様に0.3mmの場合は、セラミック厚みは2.7mmとなり、P2/P1=0.81で、19%の強度低下となる。試験片厚みが4mm、5mm、10mmの場合も同様に計算できる。
ここで、強度低下20%を目安とした場合、チタン皮膜の膜厚は0.3mm以下とすることが望ましい。
次に、金属層について説明する。
この金属層は、チタン、タンタル、タングステン、ジルコニウム、モリブデン、ニオブといった生体に対して毒性を持たない金属の単層、もしくはこれらを主成分とする合金、例えばチタン合金(Ti−6Al−4V、90%のチタンと6%のアルミニウム、4%のバナジウムの合金)、あるいはコバルト・クロム合金やステンレス鋼のような医療用合金を溶射することによって形成される。
この金属層は、第2コーティング層がいずれ溶出し、骨と置換されていくので、長期的には直接骨組織と接触することになる。したがって、これを構成する材質としては、生体内での安全性が確認されている材料であることが必須条件である。
また溶射を行うに当たっては、これらの金属材料を単独で溶射する他に、二種類以上を同時に溶射して混合層とした場合、下地の第1のコーティング層との密着性がより高くなる場合もある。例えば、第1のコーティング層がチタニアである場合には、ジルコニウム単独で金属層を製作するよりも、ジルコニウムとチタニアの混合層でこの金属層を作った方が密着性が良い傾向がある。これは、チタニアとチタンの親和性によるものである。
前記金属層を形成する溶射法としては、溶射時の酸化や窒化などの化学反応を防ぐ目的からその溶射法はシールドアーク溶射、減圧アーク溶射、減圧プラズマ溶射、減圧レーザー溶射など、大気や反応ガスとの接触を避けながら行う溶射法で行うことが好ましい。もちろん、酸化などの化学反応を100%遮断できる工業的な溶射方法は現状では存在しないので、若干の反応はやむを得ないが、30%以上の酸素や窒素などの気体元素の混入は、金属皮膜の延性を低下させ、脆性化の方向に進ませるので好ましくない。これは、手術時のコーティング層の部分的な脱落や長期的なコーティング層の破壊につながる危険性があるためである。
この金属層は、その上にコーティングされる第2コーティング層のボンディング層として作用するものである。例えば、金属層がチタン溶射層である場合、このチタン溶射層表面をサンドブラストし、第2コーティング層としてハイドロキシアパタイト(以下HAと略称する)を溶射すれば、HA層の十分な密着強度が得られる。また、このサンドブラストはセラミック基体には影響しないため、基体強度を低下させることはない。もし、金属層にセラミックを使用すれば、セラミック基体にHAを溶射するのと同じ状態になり、HA層の密着強度を確保することができなくなる。これが、金属層にセラミックが使用できない理由である。
また、この金属層を溶射法で設けたのは、金属層が、セメントレスインプラントとしてリン酸カルシウム層の生体内での溶出後でも、骨組織の増勢進入により十分な骨内固定力を維持すべく、非常に高い表面粗さを有する為である。この表面粗さとしては、骨内での固定性を発揮するために最大面粗さ(Rmax)で10μm以上の粗さが必要であるが、Rmaxで2000μmを越えるものは溶射層自体、特に突起部の強度が低下するため好ましくない。そしてこの様な高い表面粗さを付与し、且つ、大きな接合強度を得ることができるコーティング方法は現在のところ溶射法のみである。このように、金属層は、セメントレスインプラントにおける骨組織の増勢侵入を受けることのできる高い面粗さを有する層であり、セメントレスインプラントの骨内での固定性に大きく寄与するものであることが、この金属層の重要な作用の一つである。
金属層の厚みについては、0.01mmから3.0mmであることが好ましい。これは、0.01mm未満の皮膜では、骨内での固定性を得るのに必要な最大面粗さ(Rmax)10μm以上の表面粗さを得ることが難しく、他方、3.0mmを越える皮膜厚みでは残留応力のために皮膜の密着性が低下する可能性があるためである。
次に第2のコーティング層について説明する。
この層は前記金属層の上に溶射法や析出法、塗布法などの方法でコーティングされる。材質としては、ハイドロキシアパタイト(HA)やリン酸三カルシウム(TCP)、リン酸八カルシウム(OCP)の様なリン酸カルシウム結晶層、またはアパタイト・ウォラストナイト・ガラスセラミック(AWGC)などのリン酸カルシウム系ガラスセラミック、もしくはアパタイト・コンポジット・セラミック(ACC)などのリン酸カルシウム系複合セラミック、あるいは非晶質リン酸カルシウムなど、いわゆるリン酸カルシウム系材料を使用することができる。この他、第2のコーティング層の材質として、骨との親和性に優れるキチン、キトサンなどの有機物を使用することができる。これらの材料は、選ばれた一種の単層、または二種以上の複層、もしくは二種以上の混合層として使用される。例えば、第2コーティング層としてHAをプラズマ溶射法にてコーティングすることができる。このHA層の上にさらに同じプラズマ溶射法にてTCPをコーティングすることもできる。あるいは、TCPとHAの混合材料を同じプラズマ溶射法にてコーティングすることもできる。
この第2コーティング層の形成には、フレーム溶射、プラズマ溶射、高速フレーム溶射、爆発溶射、レーザー溶射などの溶射法の他、アルカリ熱処理、バイオミメティック法などの析出法、あるいはディッピング法のような塗布法を使用することができる。さらに、これらの方法を組み合わせて使用することもできる。例えば、高速フレーム溶射法にてHAを溶射した後、ディッピング法にてTCPをコーティングすることができる。
溶射法は現在HA溶射に広く用いられているコーティング技術であり、最も実用性が高い。一方、チタンなどの金属層をアルカリ溶液に漬けた後、大気中で加熱処理することにより、体内埋入後に金属層表面にHAを析出させるアルカリ熱処理法は、簡便でコストメリットも大きい。またリン酸イオンやカルシウムイオンを含む生体擬似体液中に金属層などを漬けることにより、金属層表面に直接HAを析出させるバイオミメティック法も同様である。
一方、TCPなどリン酸カルシウムを水、及びバインダーで混錬したスラリーにインプラントをディッピングし、その後必要に応じて、乾燥、焼成などを行ってリン酸カルシウムをコーティングするディッピング法などの塗布法は、溶射法に比べて結晶性の高いリン酸カルシウム層を簡便、かつ安価にコーティングできるメリットを持つ。
この第2コーティング層は、生体インプラントにおいて骨との接触面の最表層にコーティングされており、セメントレスインプラントにおいて、骨組織のポーラス層への増勢侵入を促進する作用をもつ。これは、リン酸カルシウム系材料の優れた骨伝導能によるものである。リン酸カルシウム系材料として最もよく用いられるのはHAであるが、より早く骨内での固定性を確保するため、溶出速度の速いTCPや非晶質リン酸カルシウムをコーティングする場合もある。ただしTCPなどは溶出が早い分、消失も早いため、骨の状態が悪く増勢侵入が起きにくい患者の場合には、安全をみて前述の様なHAとTCPの複層や混合層が用いた方がよい。
そして第2コーティング層の厚みは、0.001mmから2mmであることが好ましい。これは、0.001mm未満の皮膜では生体内での消失が早すぎて実用性がないためであり、他方、2mmを越える厚みでは、リン酸カルシウム系材料層内の破壊が起こる危険性が大となる傾向があるためである。
以上のように構成された前記生体インプラント材について、各コーティング層の表面粗さについて説明する。
前述のように第1のコーティング層の場合、Rmaxで200μm以下であることが好ましい。これは、Rmaxが200μmを越える場合、サンドブラストを行った場合と同様の効果が発生し、セラミック基体の強度が低下する傾向があるためである。また、金属層では、Rmaxが10μm以上2000μm以下であることが好ましい。これは、Rmaxで10μmが骨内での固定性を発揮するための下限値的な面粗さであり、他方、Rmaxで2000μmを越えるものは溶射層自体、特に突起部の強度が低下するため好ましくないためである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
JIS R 1601による、試験片(40mm×4mm×3mm)をジルコニアセラミックで作製した。何のコーティングも施していないこの試験片の抗折強度を測定したところ、結果は1175MPaであった。
次に、前記ジルコニアセラミックの試験片に対して表1に記載される皮膜厚みのチタンのコーティングをイオンプレーティング法にて設けた後、シールドアーク溶射法にて厚さ500μmのチタンを溶射し、さらにその上に厚さ20μmのHAをフレーム溶射して実験用の試験片を作製した。これら実験用試験片についてJIS R 1601による抗折強度試験を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0004462873
表1および、表1に対応する図1の棒グラフから明らかなように、皮膜厚みが100μm(0.1mm)未満の場合、厚みが厚くなるにしたがって、徐々に抗折強度の増加量が小さくなっている。ところが、皮膜厚みが100μm(0.1mm)のところで、抗折強度が大きく増加し、前記未処理の試験片とほぼ同等の抗折強度となっており、100μm(0.1mm)を超えると未処理基体よりも抗折強度が改善されていることが判る。
以上のように、抗折強度の観点から、前記第1のコーティング層の厚みが100μm(0.1mm)以上の場合に、非常に大きな抗折強度が得られることが明らであった。
なお、第1のコーティング層厚みの上限値としては、前述のようにコーティング層厚みを大きくした場合にセラミック基体の厚みを減じなければいけないことを考慮して、300μm(0.3mm)とした。
以上、本発明の実施形態および実施例を説明したが、本発明は発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができることは云うまでもない。
実施例1の実験結果を示す棒グラフである。
符号の説明
符号なし

Claims (2)

  1. セラミック材で構成された基体と、金属を含み、かつ該基体表面に低熱衝撃性のコーティング法により形成された平均厚み0.1mm〜0.3mmの第1のコーティング層と、該第1のコーティング層上に溶射法によって形成された金属層と、該金属層上に形成された第2のコーティング層とからなり、
    前記第1のコーティング層の表面から40mm×4mm×3mmの大きさで切り出した試験片の抗折強度が、JIS R 1601により規定される4点曲げ試験にて1177MPa〜1434MPaであることを特徴とする生体インプラント材。
  2. 前記第1のコーティング層に含まれる金属が、チタン、タンタル、タングステン、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、アルミニウム、珪素、金、銀、パラジウム及びこれらを主成分とする合金もしくはコバルト・クロム合金、ステンレス鋼の少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の生体インプラント材。
JP2003304804A 2003-08-28 2003-08-28 生体インプラント材 Expired - Fee Related JP4462873B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003304804A JP4462873B2 (ja) 2003-08-28 2003-08-28 生体インプラント材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003304804A JP4462873B2 (ja) 2003-08-28 2003-08-28 生体インプラント材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005073752A JP2005073752A (ja) 2005-03-24
JP4462873B2 true JP4462873B2 (ja) 2010-05-12

Family

ID=34408393

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003304804A Expired - Fee Related JP4462873B2 (ja) 2003-08-28 2003-08-28 生体インプラント材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4462873B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5393683B2 (ja) * 2007-09-13 2014-01-22 デル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング 内部人工器官部品
CN108025106A (zh) * 2015-09-29 2018-05-11 陶瓷技术有限责任公司 热喷涂的陶瓷层

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005073752A (ja) 2005-03-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4091728B2 (ja) 生体インプラント材とその製法
Sasikumar et al. Surface modification methods for titanium and its alloys and their corrosion behavior in biological environment: a review
Manivasagam et al. Corrosion and microstructural aspects of titanium and its alloys as orthopaedic devices
Bahraminasab et al. Aseptic loosening of femoral components–a review of current and future trends in materials used
Kamachimudali et al. Corrosion of bio implants
US20040002766A1 (en) Prosthetic devices having diffusion-hardened surfaces and bioceramic coatings
Yang et al. Mechanical properties and Young's modulus of plasma‐sprayed hydroxyapatite coating on Ti substrate in simulated body fluid
AU2003224334A1 (en) A dental or orthopaedic implant
Mahapatro Metals for biomedical applications and devices
KR20100112586A (ko) 표면 합금 의료용 이식물
Srivastav An overview of metallic biomaterials for bone support and replacement
Desai et al. Emerging trends in the applications of metallic and ceramic biomaterials
Shen et al. A Review of Titanium Based Orthopaedic Implants (Part-I): Physical Characteristics, Problems and the need for Surface Modification.
Gil et al. Fatigue Life of Bioactive Titanium Dental Implants Treated by Means of Grit‐Blasting and Thermo‐Chemical Treatment
US9248020B2 (en) Ceramic monoblock implants with osseointegration fixation surfaces
Kong et al. Hydroxyapatite‐based composite for dental implants: An in vivo removal torque experiment
JP4462873B2 (ja) 生体インプラント材
US20070083269A1 (en) Method of producing endosseous implants or medical prostheses by means of ion implantation and endosseous implant or medical prosthesis thus obtained
JP2883214B2 (ja) 生体インプラント材とその製法
Jubhari et al. Implant coating materials to increase osseointegration of dental implant: A systematic review
JP6045078B2 (ja) 混合酸化物辺縁領域および金属表面を有するモノリシックセラミック体、その製造方法並びに用途
de Lima et al. Tailoring surface properties from nanotubes and anodic layers of titanium for biomedical applications
JP2005530584A (ja) 拡散硬化表面と生体セラミックコーティングを有する人工装具
JP2984118B2 (ja) 生体インプラント材とその製法
Kopec et al. Microstructural analysis of fractured orthopedic implants. Materials 2021, 14, 2209

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060518

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091020

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091211

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100119

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100216

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130226

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4462873

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140226

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees