JPH05141896A - 熱交換器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、給湯機器や暖房機器の熱交換器に
関するもので、銅及び銅合金の素地金属を排ガスの結露
水と高温排ガスによる高温酸化から保護して大幅に防腐
食性を向上させることを目的としている。 【構成】 吸熱フィン１と熱交換チューブ３と筒状のド
ラム２からなる熱交換器は銅又は銅合金の素材表面にス
テンレス材料をクラッドし、さらにその表面をポリフェ
ニレンサルファイド樹脂で塗装したものである。そし
て、排ガスの結露水と高温排ガスによる高温酸化から熱
交換器の表面を保護するものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、給湯機器や暖房機器な
どに使用される、銅及び銅合金を素地とする熱交換器に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の給湯機器や暖房機器等に使用され
ている熱交換器には、銅や銅合金の素材表面に、鉛もし
くは鉛に少量のすずを添加した合金の溶融鉛めっき（以
下、鉛めっきと示す）が使用されていた。

【０００３】また、一部では、鉛を主成分としたものに
変わり、すずに少量のビシマス（Ｂｉ）もしくはアンチ
モン（Ｓｂ）を添加した合金の溶融すずめっき（以下、
すずめっきと示す）が使用されていた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような構成では、給湯機器や暖房機器の熱交換器の耐腐
食性などから、効率をアップしてコンパクト化を図るこ
とができなかった。これは、燃焼排ガスの温度が、高温
域から、低温域まで広い範囲内での使用できることが必
要であるが、低温域では、結露水生成による腐食、高温
域では鉛めっき層の溶融に伴う、銅素地の露出により銅
が高温酸化腐食を起こす問題を有していた。

【０００５】排ガス温度が低温域では、熱交換器の吸熱
フィン１で腐食性の強い結露水の生成が多くなる。

【０００６】この腐食性の強い結露水の生成原因は、排
ガス中に含まれているＮＯ_X ，ＳＯ _X ，ＣＯ₂ ，水蒸気
などが凝縮結露して酸性の強い溶液となるためである。

【０００７】従来の、鉛めっきは、燃料中に含まれてい
るＳ分（イオウ及びイオウ化合物）が燃焼して生成す
る、ＳＯ_X に対して耐腐食性の強い金属であった。しか
し、最近の燃料ガス種は、低Ｓ分の１３Ａが主流になっ
てきているため、適した表面処理方法ではなくなってい
る。これは、燃料ガス種の１３Ａの排ガスから生成する
排ガス結露水に溶解している結露は、ＮＯ_X ，ＣＯ₂ が
主体になっているため、耐腐食の効果が弱くなってい
る。

【０００８】また、高温域では、鉛めっき層は、溶融温
度３２０℃程度と低いため、鉛が溶融して下部に落下し
て、銅素地金属が露出し、銅が高温酸化腐食を起こす。
高温酸化による生成した酸化スケールは、生成と剥離を
繰り返して、銅素地の板厚を減少させたため、鉛の溶融
温度以上の高温排ガスとの接触ができなかった。

【０００９】結露水により生成した腐食生成物や高温酸
化により生成した酸化スケールは、吸熱フィン１に付着
堆積して、排ガスの通過を妨げ圧力損失となる。この圧
力損失により、バーナ火炎の燃焼が不安定となり不完全
燃焼を起こし、給湯器としての機能を失う。

【００１０】すずめっきの場合には、燃焼により生成す
るＮＯ_X を主成分とする、排ガス結露水を対象とした、
表面処理であるが、鉛に比較して、溶融温度２３０℃程
度とさらに低いため、低温域での排ガスにしか使用でき
ない。

【００１１】また、すずめっきは、ＳＯ_X に対する耐腐
食性は、鉛めっきに比較して弱くなっている。

【００１２】鉛めっき工程は、脱脂、酸処理、フラック
ス処理、鉛めっきなどの工程作業を含んでいるが、特
に、酸処理、フラックス処理工程は、強酸を使用し、鉛
めっき工程は、試料に液体が付着した状態で、３８０℃
程度の高温な溶融鉛めっき槽に浸漬しなければならず非
常に危険な作業である。

【００１３】本発明は、かかる従来の課題を解消するも
ので、排ガスの高温域から低温域まで高範囲にわたる温
度領域において、耐腐食性を向上することを目的とする
ものである。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、本発明の熱交換器は、銅及び銅合金の素
材の銅表面に鉄、クロム、ニッケルを主成分とした合金
であるステンレスをクラッドしたフィン１で構成した熱
交換器に、さらに、その熱交換器の表面全体もしくは、
表面の一部をポリフェニレンサルファイド樹脂で塗装し
たものである。

【００１５】

【作用】本発明は上記した構成により、結露水や高温酸
化による耐腐食性が優れているため、前記の腐食から素
地を保護する。したがって、熱交換器の寿命を大幅に改
善することができる。

【００１６】クラッドする、ステンレス材料としては、
耐腐食性の面から、オーステナイト系が適しており、例
えば、ＳＵＳ３０１、ＳＵＳ３０４、ＳＵＳ３０４Ｌ、
ＳＵＳ３２１、ＳＵＳ３２１Ｌ、ＳＵＳ３１６、ＳＵＳ
３１６Ｌなどである。また、フェライト系のステンレス
としては、ＳＵＳ４４４系などが適している。

【００１７】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図に基づいて説明
する。図１において、多数枚を横に並べて設けた吸熱フ
ィン１は、厚さｔ０．６のリン脱酸銅（ＪＩＳ，Ｃ１２
２０）に、片面５０μｍのＳＵＳ３０４を両面にクラッ
ドした。そして、この吸熱フィン１を上端開口に設けた
ドラム２は、厚さｔ０．８のりん脱酸銅板で筒状に加工
した。そしてまた、ドラム２に巻きつけ、吸熱フィン１
を貫通した熱交換チューブ３は、外径φ８、内径φ６の
リン脱酸銅パイプである。

【００１８】上記に加工した、熱交換器にポリフェニレ
ンサルファイド樹脂を粉体塗装後、３２０℃程度で焼付
けした。

【００１９】上記実施例の構成において、図に示す熱交
換器のドラム２内の燃焼室の下部に配置されたバーナ
（図示せず）が燃焼した際には、吸熱フィン１が熱交換
器チューブ３内を流れる流体によって部分的に冷却され
るために、これらの表面に結露が発生し、燃焼排ガス中
に含まれるＮＯ_X ，ＳＯ_X ，ＣＯ₂ が溶解し、濃縮され
て、腐食性の強い、例えば、硝酸イオン、硫酸イオンな
どの含む酸性結露水が発生する。

【００２０】クラッド層を形成した吸熱フィン１は硝酸
イオン、硫酸イオンなどの酸にも十分耐え得る優れた耐
腐食性を有し、吸熱フィン１が腐食されないため、初期
の特性が保持できる。

【００２１】しかし、この吸熱フィン１の端面（切断
面）には、僅かに、銅が露出しているため、この部分か
ら、局部的な腐食が発生して、クラッド層が剥離する欠
点がある。

【００２２】しかしながら、本発明の熱交換器は、さら
に、ポリフェニレンサルファイド樹脂で塗装しているた
め、これらの端面からの腐食が発生しない。

【００２３】また、排ガスとの接触面がポリフェニレン
サルファイド樹脂であるため、高温状態でも高温酸化が
起こし難い。

【００２４】この吸熱フィン１の、ステンレスのクラッ
ド層の厚さは、熱伝導率から考慮して、５〜２００μｍ
程度が適当である。

【００２５】ポリフェニレンサルファイド樹脂塗装の膜
厚は、５〜５００μｍ程度が適している。

【００２６】また、上記構成の熱交換器で、ドラム２と
ドラム２に接触した熱交換チューブ３のみにポリフェニ
レンサルファイド樹脂を塗装した場合においても、熱交
換器の実用の耐久性には問題がなかった。

【００２７】さらに、ポリフェニレンサルファイド樹脂
塗装の色は、赤、緑、黄、黒など自由に選定できるた
め、従来の、鉛めっきのような銀白色のみではなく、デ
ザイン的にも優れている。

【００２８】

【発明の効果】以上のように本発明の熱交換器によれば
次のような効果が得られる。 （１）排ガスの酸性の強い結露水に対する、防腐食性が
大幅に向上する。 （２）排ガスの温度が高温域から低温域まで、高範囲で
使用できる。

【００２９】従って、従来より、吸熱フィンをバーナに
接近させることができるため、熱交換器をコンパクトに
することができる。また、吸熱フィンの面積も大幅に大
きくすることも可能となる。 （３）熱交換器の吸熱フィンへの腐食生成物や酸化物の
生成による堆積がなくなり、したがって圧力損失を発生
させ、バーナ火炎の燃焼が不安定となり不完全燃焼を起
こすようなことを解消できるとともに、不完全燃焼によ
るＣＯの発生も防止することができる。

【００３０】また、吸熱フィンへの腐食生成物の堆積が
なくなるため、吸熱フィン間の距離も、従来より短くす
ることができる。 （４）長期間にわたり、初期の優れた熱交換性能を維持
することができる。 （５）熱交換器の色を自由に選定できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例における熱交換器の外観斜視
図

【符号の説明】

１ 吸熱フィン ２ ドラム ３ 熱交換チューブ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】銅及び銅合金表面に、鉄、クロム、ニッケ
   ルを主成分とする合金であるステンレスをクラッドした
   熱交換器に、さらに、その表面の全体もしくは、その一
   部をポリフェニレンサルファイド樹脂を塗装した熱交換
   器。