JPH05106044A - 金属極薄膜の形成方法及び金属極薄膜形成装置 - Google Patents

金属極薄膜の形成方法及び金属極薄膜形成装置

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JPH05106044A
JPH05106044A JP26453491A JP26453491A JPH05106044A JP H05106044 A JPH05106044 A JP H05106044A JP 26453491 A JP26453491 A JP 26453491A JP 26453491 A JP26453491 A JP 26453491A JP H05106044 A JPH05106044 A JP H05106044A
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forming
metal
thin film
film
ultrathin
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JP26453491A
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Hidekazu Okudaira
秀和 奥平
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】膜厚数10nm以下で連続した金属極薄膜を形
成する方法及びこの形成を行うに適した金属極薄膜形成
装置を提供すること。 【構成】絶縁物上に第一の金属元素の酸化物薄膜1を形
成した後、これを酸化数の低い第一の金属元素の酸化物
薄膜4に還元し、続いてこれにより第二の金属元素を含
む原料分子を還元することで、下地絶縁物2上に第二の
金属元素の単原子核5を形成し、これを真空蒸着法、ス
パッタリング法、CVD法等で成長させ、膜厚数10n
m以下で連続した金属極薄膜を形成する。この反応は、
真空の反応容器と、原料を導入する手段と、反応容器内
に光を照射する手段とよりなる金属極薄膜形成装置など
で行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属極薄膜の形成方法
及びそれを行なうに適した金属極薄膜形成装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】金属薄膜を形成する一般的な方法は、真
空蒸着法とスパッタリング法であり、金原粲、藤原英夫
著「薄膜」第1頁〜第29頁(1975)(応用物理学
選書3、裳華房)で詳しく説明されている。これらの方
法は、原料である金属の塊や線材を真空中で加熱した
り、希ガス原子等を衝突させて金属原子を蒸発させ、基
板上で再び凝集させることで金属薄膜を形成する方法で
ある。また、金属薄膜を化学気相成長法により形成する
方法もある。この方法は、金属原子を含む原料ガスから
化学反応により金属原子を発生させ、基板上に金属薄膜
を形成する方法である。このような形成方法は、膜厚数
十nmから数千nmの金属薄膜の形成に適しており、広
くLSI(大規模集積回路)の配線用の金属膜等の形成
に適用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、膜厚
数十nm以下の金属極薄膜を絶縁物上に形成することは
配慮されておらず、連続した金属極薄膜を絶縁物上に形
成することは困難であった。従来の真空蒸着法やスパッ
タリング法で金属薄膜を絶縁物上に形成した場合、 (重量)膜厚が数十nmを超える膜は連続した金属薄膜
とみなすことができ、電気抵抗の値もバルクの値と同程
度から数百倍程度である。しかし、(重量)膜厚が数十
nm以下の金属膜では、電気抵抗の値がバルクの値の数
万倍以上にもなってしまう。これは膜が島状構造になっ
てしまい、もはや連続した膜とはみなせないからであ
る。
【0004】絶縁膜上の金属極薄膜が島状構造になるの
は、三次元核生成によって膜形成が進行するからであ
る。すなわち、基板表面に到達した金属原子は、まず複
数個(一般的には数個)集まって核(クラスター)を形
成する。この核にはある臨界の大きさ(原子の数)があ
って、臨界より小さい核はエネルギー的に不安定なため
より小さな核に分裂し、再蒸発して消滅する。一方、一
旦臨界より大きくなった核(安定核)は、基板表面を移
動しながら他の吸着金属原子を捕獲したり、他の核と融
合したりしてより大きな核に成長していく。ある程度成
長した核は基板表面を移動しにくくなり、やがて静止し
て成長を続ける。金属薄膜は、このように核が成長して
島状構造を形成し、やがて島同士が接触して網目構造を
経て連続になることで形成される。以上のような過程は
金属薄膜の化学気相成長法でも同様と考えらる。従っ
て、三次元核生成により金属薄膜の形成が進行する限
り、金属極薄膜は島状構造になってしまい、連続薄膜の
形成は不可能である。
【0005】本発明の目的は、膜厚数十nm以下で連続
した金属極薄膜を絶縁物上に形成する方法を提供するこ
とにある。本発明の他の目的は、そのような金属極薄膜
の形成に適した金属極薄膜形成装置を提供することにあ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的は、(1)複数
の酸化数を持つ第一の金属元素の最大ではない酸化数の
第1の酸化物薄膜を形成する第1の工程と、還元されて
第二の金属元素となる原料ガスを該第1の酸化物薄膜に
接触させ、該第二の金属元素の極薄膜を形成する第2の
工程とを含むことを特徴とする金属極薄膜の形成方法、
(2)上記1記載の金属極薄膜の形成方法において、上
記第1の工程は、上記第一の金属元素の最小ではない酸
化数の第2の酸化物薄膜を形成する工程と、該第2の酸
化物薄膜を上記第1の酸化物薄膜に還元する工程とより
なることを特徴とする金属極薄膜の形成方法、(3)上
記2記載の金属極薄膜の形成方法において、上記第2の
酸化物薄膜は、化学気相成長法により形成されることを
特徴とする金属極薄膜の形成方法、(4)上記3記載の
金属極薄膜の形成方法において、上記化学気相成長法
は、熱反応を利用した化学気相成長法であることを特徴
とする金属極薄膜の形成方法、(5)上記3記載の金属
極薄膜の形成方法において、上記化学気相成長法は、光
励起反応を利用した化学気相成長法であることを特徴と
する金属極薄膜の形成方法、(6)上記2から5のいず
れか一に記載の金属極薄膜の形成方法において、上記第
2の酸化物薄膜の上記第1の酸化物薄膜への還元は、還
元性雰囲気中での処理によって行うことを特徴とする金
属極薄膜の形成方法、(7)上記6記載の金属極薄膜の
形成方法において、上記還元性雰囲気は、水素雰囲気で
あることを特徴とする金属極薄膜の形成方法、(8)上
記2から5のいずれか一に記載の金属極薄膜の形成方法
において、上記第2の酸化物薄膜の上記第1の酸化物薄
膜への還元は、光照射によって行うことを特徴とする金
属極薄膜の形成方法、(9)上記8記載の金属極薄膜の
形成方法において、上記光照射は、還元性雰囲気中で行
うことを特徴とする金属極薄膜の形成方法、(10)上
記9記載の金属極薄膜の形成方法において、上記還元性
雰囲気は、水素雰囲気であることを特徴とする金属極薄
膜の形成方法、(11)上記2から10のいずれか一に
記載の金属極薄膜の形成方法において、上記第2の工程
は、光励起反応によって行うことを特徴とする金属極薄
膜の形成方法、(12)上記11記載の金属極薄膜の形
成方法において、上記第2の工程は、基板を冷却して行
うことを特徴とする金属極薄膜の形成方法、(13)上
記2から12のいずれか一に記載の金属極薄膜の形成方
法において、上記第2の工程は、上記原料ガスを上記第
1の酸化物薄膜により第二の金属元素に還元する工程
と、さらに第二の金属元素を成長させる工程とを有する
ことを特徴とする金属極薄膜の形成方法、(14)上記
13記載の金属極薄膜の形成方法において、上記第2の
酸化物薄膜を上記第1の酸化物薄膜に還元する工程と上
記原料ガスを上記第1の酸化物薄膜により第二の金属元
素に還元する工程とは実質的に同時に行うことを特徴と
する金属極薄膜の形成方法、(15)上記13又は14
記載の金属極薄膜の形成方法において、上記第二の金属
元素を成長させる工程は、光励起反応を利用した化学気
相成長法により行うことを特徴とする金属極薄膜の形成
方法、(16)上記13又は14記載の金属極薄膜の形
成方法において、上記第二の金属元素を成長させる工程
は、基板を冷却して第二の金属元素を蒸着して行うこと
を特徴とする金属極薄膜の形成方法、(17)複数の酸
化数を持つ第一の金属元素の最小ではない酸化数の第2
の酸化物薄膜を形成する工程と、該第2の酸化物薄膜を
より低い酸化数の第1の酸化物薄膜に還元するととも
に、還元されて第二の金属元素となる原料ガスを該第1
の酸化物薄膜に接触させる工程と、該第二の金属元素を
成長させる工程とを有することを特徴とする金属極薄膜
の形成方法、(18)上記1から17のいずれか一に記
載の金属極薄膜の形成方法において、上記第一の金属元
素は、IVa族元素であることを特徴とする金属極薄膜
の形成方法によって達成される。
【0007】上記他の目的は、(19)金属極薄膜を形
成するための基板を内部に保持し、真空に保つための反
応容器、複数の酸化数を持つ第一の金属元素の最小では
ない酸化数の酸化物を化学気相成長法により形成するた
めの原料を該反応容器に導入する手段及び該反応容器内
に光を照射する手段を有し、上記1から18のいずれか
一に記載の金属極薄膜の形成方法を行うための金属極薄
膜形成装置、(20)金属極薄膜を形成するための基板
を内部に保持し、真空に保つための反応容器、複数の酸
化数を持つ第一の金属元素の最小ではない酸化数の酸化
物を化学気相成長法により形成するための原料を該反応
容器に導入する手段及び該反応容器内に光を照射する手
段を有する第1の装置並びに該第1の装置と連結し、内
部を真空に保つための第2の反応容器、該第2の反応容
器内に光を照射する手段、金属極薄膜を形成するための
基板を該第2の反応容器内に保持し、該基板を冷却する
手段及び該第2の反応容器内に置かれた蒸着源を有する
ことを特徴とする金属極薄膜形成装置によって達成され
る。
【0008】本発明において、複数の酸化数を持つ第一
の金属元素の最大ではない酸化数の第1の酸化物薄膜を
形成する第1の工程は、そのような酸化物薄膜を直接形
成してもよいし、第一の金属元素の最小ではない酸化数
の第2の酸化物薄膜を形成し、ついで第2の酸化物薄膜
を還元して第1の酸化物薄膜としてもよい。
【0009】後者の方法で第一の金属元素の最小ではな
い酸化数の第2の酸化物薄膜を形成する方法は、一般に
用いられている薄膜形成方法のどのような方法を用いて
もよい。例えば、熱反応や光励起を利用した化学気相成
長法、プラズマ中での物理過程、化学過程を利用した化
学気相成長法、金属酸化物を用いた真空蒸着法、金属元
素を用いた酸化性雰囲気中での真空蒸着法、金属酸化物
を用いたスパッタリング法、金属元素を用いた酸化性雰
囲気中でのスパッタリング法等を用いることができる。
【0010】第2の酸化物薄膜を還元して第1の酸化物
薄膜とする方法も種々の方法を用いることが出来る。例
えば、還元性雰囲気中での加熱や光照射、水素分子、水
素分子ビーム、水素原子、水素原子ビームの照射、水素
を含むプラズマとの接触等の方法を用いることができ
る。
【0011】さらに、第二の金属元素を成長させる方法
も真空蒸着法、スパッタリング法等を用いることができ
る。第一の金属元素は、IVa族元素、例えばTi、Z
r、Hf等を用いることが好ましい。また、第二の金属
元素はW、Cr、Mo等をフッ化物等の形で用いること
が好ましい。
【0012】今後、量子効果を利用した素子が重要にな
ると予想され、その場合膜厚数10nm以下の金属極薄
膜も必要になると考えられる。しかし、先に説明したよ
うに、金属薄膜の成長は三次元核生成によって始まるた
め、従来の技術では連続した金属極薄膜の形成は不可能
である。本発明を適用することによって、そのような素
子が容易に完成できる。
【0013】
【作用】薄膜形成の過程は次の3つに分類される。 (1)三次元核生成(Volmer−Weber)型 (2)単層成長(Frank−van der Mer
we)型 (3)単層上核生成(Stranski−Krasta
nov)型 三次元核生成型は先に示した通りである。単層成長型で
は、基板上に一層づつ膜が形成されていく。単層上核生
成では、数層の単層成長の後に三次元核生成へと移行す
る。三次元核生成型になるか単層成長型になるかは、基
板と膜を構成している原子間の相互作用と、膜を構成し
ている原子同士の相互作用の大きさの大小関係に依存し
ている。
【0014】基板と膜を構成している原子間の相互作用
が相対的に弱い場合には、三次元核生成が生じる。例え
ば絶縁膜上にファンデルワールス力で金属膜が付着する
場合、金属原子間の金属結合が相対的にファンデルワー
ルス力より強い。そのため基板上で金属原子が凝集して
クラスターを作りやすく、クラスターは、金属原子と基
板の相互作用が弱いため、サイズが小さいうちは基板表
面を自由に移動でき、他のクラスターと融合したり金属
原子を捕獲して三次元的に成長していく。よって、膜形
成は三次元核生成型で進行する。
【0015】一方、基板と膜を構成している原子間の相
互作用が相対的に強い場合には、単層成長になる。基板
と膜を構成している原子が化学反応して共有結合やイオ
ン結合が生じる場合がこれに相当する。この場合、基板
表面に到達した原子が一旦基板と化学結合をすると基板
上を移動しない。また膜を構成する原子同士の相互作用
より基板原子との相互作用が強いため、膜成長の初期段
階で基板の被覆率が小さい場合は基板と優先的に結合す
る。このため単層成長になる。
【0016】金属極薄膜を形成するためには、理想的に
は単層成長を起こさせればよいが、先に述べたように絶
縁物上に金属薄膜を形成する場合、ほとんど三次元核生
成が起こる。しかし、隣り合う安定核間の距離が目的と
する金属極薄膜の膜厚より十分短く(つまり、安定核の
密度が高く)、また基板上を自由に動き回らなければ、
目的とする膜厚で連続した金属極薄膜の形成が可能とな
る。
【0017】そこで本発明では、例えば、基板の絶縁物
に対して平坦形成可能な第一の金属元素の酸化物薄膜を
先ず形成し、これを部分的に還元して低酸化状態にし、
これにより目的とする第二の金属元素を含む原料分子を
還元して、自由に動き回らない安定核を高密度に発生さ
せることで、絶縁物上に金属極薄膜の形成を可能とし
た。
【0018】本発明における第一の金属元素の酸化物薄
膜の作用を、下地絶縁膜がSiO2であって、第一の金
属元素がTi、第二の金属元素がWの場合について、図
1に従ってさらに説明する。
【0019】まず、図1(a)に示すようにSi基板3
上に設けられたSiO2膜2上に、TiO2膜1を形成す
る。SiO2膜2はSi基板3を熱酸化して形成したも
のである。Tiには+4の酸化状態と+3の酸化状態が
あり、通常+4の酸化状態であるTiO2が形成され
る。TiO2膜1に真空中で紫外光を照射すると部分的
に還元され、図1(b)に示すように表面が+3の酸化
状態であるTi23膜4に変化する。
【0020】 4TiO2→2Ti23+O2 (1) このTi23膜4は低酸化状態にあるため他の酸化物を
還元する能力があり、化2に示すようにWF6を紫外光
照射下で還元する。
【0021】 4WF6+3Ti23→W+6TiOF2+3WOF4 (2) この還元反応によりW原子が形成される。TiOF2
WOF4は揮発性なので、気相中に脱離していく。この
W原子はTi23膜4との化学反応の結果生成されたの
で下地と強く結び付いて基板表面をほとんど移動しない
と考えられ、従って理想的には図1(c)に示すように
W単原子核5となることができる。
【0022】このとき発生するW単原子核5の面密度を
反応の化学量論係数より推定すると次のようになる。式
1と式2より、全体の反応は次のように表わされる。
【0023】 8WF6+12TiO2 →2W+12TiOF2+6WOF4+3O2 (3) つまり、6個のTiO2から一個の割合でW単原子核5
が形成されることになる。TiO2の密度をルチル型の
結晶と同じ単位立法メートル当たり4.3×10の3乗
Kgとし、TiO2を一分子とみなすと、TiO2膜内の
分子密度は単位立法メートル当たり3.2×10の28
乗個になる。ここで式3の反応に最表面の一分子層相当
が関与すると仮定すると、一分子層内の分子の面密度が
単位平方メートル当たり1.0×10の19乗個なの
で、生成されるW原子の面密度は単位平方メートル当た
りその1/6の1.7×10の18乗個となり、これが
そのままW単原子核5の密度となる。
【0024】このW単原子核5が正方格子状に並んでい
ると仮定すると、隣り合う核間の距離は0.77nmに
なる。この状態から半球状に核が成長すると想定する
と、図1(d)に示すように、W単原子核間距離の半分
で隣同士のW核6が接触し始めるから、0.5nm程度
の膜厚で連続した金属極薄膜が形成される。
【0025】核の成長には、W極薄膜を形成しようとす
る場合、水素還元反応を利用した化学気相成長法を利用
することができる。水素分子がW原子上で選択的に解離
して水素原子が生成され、その水素原子がWF6を還元
する反応で核が成長し、W金属極薄膜が形成される。 WF6 + 3H2 → W + 6HF (4) 実際の過程では、基板が加熱されていることもあり、核
が再蒸発したり、基板表面を移動して他の核と融合し
て、核の密度が低下することも考えられる。
【0026】以上、第一の金属元素の酸化物薄膜の作用
を、下地の絶縁膜がSiO2、第一の金属元素がTi、
第二の金属元素がWの場合について説明した。なお、最
初からTi23膜を形成することも充分効果がある。
【0027】第一の金属元素の満たすべき条件は次のと
おりである。 (1)異なる酸化数の状態が存在すること。
【0028】(2)低酸化状態の酸化物が第二の金属元
素を含む原料分子を還元できること。
【0029】また、第一の金属元素の酸化物薄膜が基板
の絶縁物に対して、目的とする第二の金属元素の金属極
薄膜の膜厚程度以下で連続に形成できることが必要であ
るが、酸化物上に他の酸化物の薄膜を数nm以下で連続
に形成することは、一般的には容易である。
【0030】第二の金属元素を含む原料分子を還元する
行程において、基板を冷却して低温に保っておくこと
は、極めてこのましい。基板を低温に保つことで還元反
応によって発生した金属原子が熱的に基板表面から再蒸
発することを抑制できる。また、金属原子が熱運動で基
板表面を移動することも抑制できる。上記に示したTi
23によるWF6の還元の場合、光励起反応であるの
で、式4の還元反応を低温で進行させることができる。
【0031】
【実施例】
<実施例1>本実施例は、第一の金属元素がTi、第二
の金属元素がW、第二の金属元素を含む原料分子がWF
6の場合についての例であって、TiO2の薄膜をO2
囲気中でのTiCl4の熱分解により形成し、続いてこ
れにWF6雰囲気中で低圧水銀灯の光を照射することで
TiO2のTi23への光還元とTi23によるWF6
還元を同時に起こし、引続き水素還元法により核を成長
させて、Wの金属極薄膜をSiO2上に形成するもので
ある。
【0032】本実施例で使用した装置の概略を図2に示
す。ステンレス製の反応容器8にはTiCl4、O2、W
6、H2を供給するための配管系17が接続されてい
る。反応容器8内の排気は、メカニカルブースターポン
プ15とロータリーポンプ16の組合せで行う。低圧水
銀灯9の光は溶融石英製窓10を通して基板14に垂直
に照射されるようにした。
【0033】基板14には、Siウエーハ表面に膜厚1
00nmの熱酸化膜を形成したものを用い、反応容器8
内に設置する直前にHF/H2O=1/10のエッチン
グ液で約10秒表面の汚染層を除去した。そして、反応
容器8内を1mTorr以下に排気した。
【0034】第一の金属元素であるTiの酸化膜TiO
2は、次のような手順で形成した。まず基板14の温度
を約600℃に加熱した。次に、TiCl4、O2の順番
で反応容器8内にガスを導入した。このときガスの各分
圧はTiCl4が10mTorr、O2が100mTor
rとした。このようにしてSiO2上に約2nmのTi
2の膜を形成した。膜厚は、膜厚モニターのため基板
14の横にセットしておいたSi片13上に形成される
TiO2膜の膜厚をエリプソメーター(レーザ光12を
発するレーザ発振器7、受光部11よりなる)により測
定し、その膜厚が2nmに達したとき反応ガスの供給を
停止することで、制御した。
【0035】所定の膜厚のTiO2膜が形成されたとこ
ろで基板温度を300℃に下げ、反応容器8内にWF6
を0.1mTorr導入、基板14に低圧水銀灯9の光
を3分間照射した。この段階でTiO2がTi23とい
う酸化数の低い酸化膜に還元されが、このTi23がW
6を還元することで、Wの安定核が形成される。続い
て基板温度を300℃のままで、H2を6分間導入し
た。これによりWF6の水素還元反応により安定核が成
長して、Wの金属極薄膜が形成された。
【0036】本実施例1の手順によって形成された膜厚
8nmのWの金属極薄膜の抵抗率は、バルクの値5.3
μΩ・cmの約20倍から40倍であり、この金属極薄
膜が連続した膜であることが確認された。よって、本実
施例により、膜厚10nm以下の連続したWの金属極薄
膜が得られたことが分かった。
【0037】<実施例2>本実施例は、TiO2膜の形
成に低圧水銀灯を光源にした光CVD法を用い、TiO
2のTi23への還元を水素雰囲気中での低圧水銀灯の
光照射で行うものである。用いた装置の概略は実施例1
と同様に図2に示した装置である。
【0038】TiO2膜形成の原料ガスにはTiCl4
2Oを用いた。実施例1と同様に基板14を処理した
後、反応容器8内に基板14を設置して排気した。反応
容器内の圧力が1mTorr以下になったところで基板
14を200℃に加熱し、TiCl4とN2Oを導入し
た。このときのガスの各分圧はTiCl4が10mTo
rr、N2Oが200mTorrとした。この後、2分
間低圧水銀灯9の光を基板14に照射して、SiO2
上に約0.5nmのTiO2膜を形成した。この場合T
iO2の膜厚の制御は、あらかじめ膜厚と光を照射する
時間の関係を測定しておき、そのデータに基づいて行っ
た。低圧水銀灯9の光照射終了後、TiCl4とN2Oの
供給を停止した。
【0039】その後、基板14の温度を200℃に保っ
たままで反応容器内に水素を10Torr導入し、再び
低圧水銀灯9の光の照射を開始した。ここで水素は式1
で発生するO2を効率よく反応容器外に排出する役割を
果たす。
【0040】2分経過した後、水素の供給を停止して、
光の照射を継続したままでWF6を0.1mTorr導
入した。この段階で、安定核が形成される。つづいて、
光の照射を継続したままで再び水素を導入して、WF6
の水素還元反応により安定核を成長させてWの金属極薄
膜を形成した。ここでは、光励起で水素還元反応を促進
した光CVD法を利用したので、基板温度が実施例1の
300℃より100℃低温の200℃で安定核の成長が
可能であった。
【0041】本実施例によって形成された膜厚5nmの
Wの金属極薄膜は、表面をオージェ電子分光法で分析し
た結果、下地のSi、Tiからのオージェ電子は全く観
測されなかったことから、基板表面全体がWで覆われて
いて連続した金属極薄膜になっていることが分かった。
そして、本実施例のように、光CVD法を用いてTiO
2膜を実施例1より薄く形成すれば、より薄い金属極薄
膜の形成が可能になるという効果があることが分かっ
た。これは、光CVD法を用いて形成した方が、TiO
2膜の均一性が高いためと考えられる。
【0042】<実施例3>本実施例は、実施例2と同様
にして低圧水銀灯を光源にした光CVD法でTiO2
を形成した後、基板を超高真空容器内に搬送し、その中
でTiO2のTi23へ還元、Ti23によるWF6の還
元での単原子核の生成、電子ビーム蒸着法(真空蒸着法
の一種)による核の成長を行うものである。単原子核の
生成、単原子核の成長は、基板を液体窒素温度まで冷却
して行う。
【0043】本実施例で使用した装置の概略を図3に示
す。超高真空容器19には、ロードロック方式で基板が
搬送できるように、実施例1、2で使用した金属極薄膜
形成装置18が接続されている。超高真空容器19内の
基板14は液体窒素温度に冷却可能な基板ホルダー20
にセットされる。また、その周りは液体ヘリウムシュラ
ウド21で囲まれている。これは、超高真空容器19内
の残留ガスが液体窒素温度に冷却されている基板14の
表面に物理吸着するのを防ぐためである。ArFエキシ
マレーザ装置25からのレーザ光26は、溶融石英製窓
10を通して超高真空容器19内に導入され全反射ミラ
ー24で基板14に対しほぼ垂直に照射されるようにな
っている。超高真空容器内の背圧は10のマイナス9乗
Torr以下である。
【0044】まず、実施例2と同様に基板のSiO2
上に約0.5nmのTiO2膜を形成した後、基板を超
高真空容器19内の基板ホルダー20に搬送した。次
に、ArFエキシマレーザ装置25からのレーザ光26
を基板14に照射し、TiO2をTi23に還元した。
この際、液体ヘリウムシュラウド21は液体ヘリウム温
度にしておいた。次に、基板温度を液体窒素温度にまで
下げてから、WF6配管27よりWF6を超高真空容器1
9内に導入し、同時にレーザ光26を照射した。このと
きのWF6の分圧は10のマイナス6乗Torrとし
た。この段階で安定核が形成される。この後、基板温度
を液体窒素温度に保ったままで、電子ビーム蒸着源22
よりWを基板14の表面に蒸着し、Wの金属極薄膜を形
成した。この際、電子ビーム蒸着源からの熱幅射により
基板温度が上がらないように、蒸着速度を充分遅く保っ
た。
【0045】本実施例によって形成された膜厚2nmの
W金属極薄膜は、表面をオージェ電子分光法で分析した
結果、下地のSi、Tiからのオージェ電子は全く観測
されなかったことから、基板表面全体がWで覆われてい
て、連続した金属極薄膜になっていることが分かった。
そして本実施例の様に、基板を冷却した状態で核生成、
核成長を行えば、より薄い連続した金属極薄膜の形成が
可能であることが分かった。
【0046】<実施例4>本実施例は第一の金属元素が
Zrで、第二の金属元素がCrの場合である。使用した
装置は、実施例1と同様の図2に示したものである。Z
rO2膜形成の原料ガスにはZr(BH)4とN2Oを用
いた。実施例1と同様に基板14を処理した後、反応容
器8内に基板14を設置して、反応容器8内の圧力が1
mTorr以下になるまで排気した。その後基板14を
250℃に加熱し、Zr(BH)4とN2Oを導入し、低
圧水銀灯9の光を1分間照射して、基板のSiO2膜上
に厚さ0.7のnmのZrO2膜を形成した。このとき
のガスの各分圧は、Zr(BH)4を20mTorr、
2Oを200mTorrとした。
【0047】その後、基板14の温度を250℃に保っ
たままで反応容器8内に水素を5mTorr導入し、再
び低圧水銀灯9を点灯してZrO2を還元した。時間は
3分間である。この後一旦水素の供給を停止し、CrF
6を0.3mTorr導入してCrの安定核を形成し
た。
【0048】続いて低圧水銀灯9を点灯したまま、再び
水素を反応容器8内に導入して、CrF6の水素還元反
応によりCrの安定核を4分間成長させ、Crの極薄膜
を形成した。形成した膜厚は7nmであった。
【0049】以上本発明の実施例1から3では、第一の
金属元素がTi、第二の金属元素がWで第二の金属元素
を含む原料分子がWF6の場合について、実施例4で
は、第一の金属元素がZrで、第二の金属元素がCrで
第二の金属元素を含む原料分子がCrF6の場合につい
て説明したが、第一の金属元素としてHfを、第二の金
属元素としてMoを、第二の金属元素を含む原料分子と
してMoF6を用いても同様の結果が得られた。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、真空蒸着法、スパッタ
リング法、CVD法では不可能だった膜厚数10nm以
下で連続した金属極薄膜の絶縁物上への形成が可能にな
った。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理図である。
【図2】本発明の一実施例の金属極薄膜形成装置の概略
図である。
【図3】本発明の他の実施例の金属極薄膜形成装置の概
略図である。
【符号の説明】
1 TiO2膜 2 SiO2膜 3 Si基板 4 Ti23膜 5 W単原子核 6 W核 7 レーザ発振器 8 反応容器 9 低圧水銀灯 10 溶融石英製窓 11 受光部 12 レーザ光 13 Si片 14 基板 15 メカニカルブースターポンプ 16 ロータリーポンプ 17 配管系 18 金属極薄膜形成装置 19 超高真空容器 20 基板ホルダー 21 液体ヘリウムシュラウド 22 電子ビーム蒸着源 23 イオンポンプ 24 全反射ミラー 25 ArFエキシマレーザ装置 26 レーザ光 27 WF6配管

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の酸化数を持つ第一の金属元素の最大
    ではない酸化数の第1の酸化物薄膜を形成する第1の工
    程と、還元されて第二の金属元素となる原料ガスを該第
    1の酸化物薄膜に接触させ、該第二の金属元素の極薄膜
    を形成する第2の工程とを含むことを特徴とする金属極
    薄膜の形成方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の金属極薄膜の形成方法にお
    いて、上記第1の工程は、上記第一の金属元素の最小で
    はない酸化数の第2の酸化物薄膜を形成する工程と、該
    第2の酸化物薄膜を上記第1の酸化物薄膜に還元する工
    程とよりなることを特徴とする金属極薄膜の形成方法。
  3. 【請求項3】請求項2記載の金属極薄膜の形成方法にお
    いて、上記第2の酸化物薄膜は、化学気相成長法により
    形成されることを特徴とする金属極薄膜の形成方法。
  4. 【請求項4】請求項3記載の金属極薄膜の形成方法にお
    いて、上記化学気相成長法は、熱反応を利用した化学気
    相成長法であることを特徴とする金属極薄膜の形成方
    法。
  5. 【請求項5】請求項3記載の金属極薄膜の形成方法にお
    いて、上記化学気相成長法は、光励起反応を利用した化
    学気相成長法であることを特徴とする金属極薄膜の形成
    方法。
  6. 【請求項6】請求項2から5のいずれか一に記載の金属
    極薄膜の形成方法において、上記第2の酸化物薄膜の上
    記第1の酸化物薄膜への還元は、還元性雰囲気中での処
    理によって行うことを特徴とする金属極薄膜の形成方
    法。
  7. 【請求項7】請求項6記載の金属極薄膜の形成方法にお
    いて、上記還元性雰囲気は、水素雰囲気であることを特
    徴とする金属極薄膜の形成方法。
  8. 【請求項8】請求項2から5のいずれか一に記載の金属
    極薄膜の形成方法において、上記第2の酸化物薄膜の上
    記第1の酸化物薄膜への還元は、光照射によって行うこ
    とを特徴とする金属極薄膜の形成方法。
  9. 【請求項9】請求項8記載の金属極薄膜の形成方法にお
    いて、上記光照射は、還元性雰囲気中で行うことを特徴
    とする金属極薄膜の形成方法。
  10. 【請求項10】請求項9記載の金属極薄膜の形成方法に
    おいて、上記還元性雰囲気は、水素雰囲気であることを
    特徴とする金属極薄膜の形成方法。
  11. 【請求項11】請求項2から10のいずれか一に記載の
    金属極薄膜の形成方法において、上記第2の工程は、光
    励起反応によって行うことを特徴とする金属極薄膜の形
    成方法。
  12. 【請求項12】請求項11記載の金属極薄膜の形成方法
    において、上記第2の工程は、基板を冷却して行うこと
    を特徴とする金属極薄膜の形成方法。
  13. 【請求項13】請求項2から12のいずれか一に記載の
    金属極薄膜の形成方法において、上記第2の工程は、上
    記原料ガスを上記第1の酸化物薄膜により第二の金属元
    素に還元する工程と、さらに第二の金属元素を成長させ
    る工程とを有することを特徴とする金属極薄膜の形成方
    法。
  14. 【請求項14】請求項13記載の金属極薄膜の形成方法
    において、上記第2の酸化物薄膜を上記第1の酸化物薄
    膜に還元する工程と上記原料ガスを上記第1の酸化物薄
    膜により第二の金属元素に還元する工程とは実質的に同
    時に行うことを特徴とする金属極薄膜の形成方法。
  15. 【請求項15】請求項13又は14記載の金属極薄膜の
    形成方法において、上記第二の金属元素を成長させる工
    程は、光励起反応を利用した化学気相成長法により行う
    ことを特徴とする金属極薄膜の形成方法。
  16. 【請求項16】請求項13又は14記載の金属極薄膜の
    形成方法において、上記第二の金属元素を成長させる工
    程は、基板を冷却して第二の金属元素を蒸着して行うこ
    とを特徴とする金属極薄膜の形成方法。
  17. 【請求項17】複数の酸化数を持つ第一の金属元素の最
    小ではない酸化数の第2の酸化物薄膜を形成する工程
    と、該第2の酸化物薄膜をより低い酸化数の第1の酸化
    物薄膜に還元するとともに、還元されて第二の金属元素
    となる原料ガスを該第1の酸化物薄膜に接触させる工程
    と、該第二の金属元素を成長させる工程とを有すること
    を特徴とする金属極薄膜の形成方法。
  18. 【請求項18】請求項1から17のいずれか一に記載の
    金属極薄膜の形成方法において、上記第一の金属元素
    は、IVa族元素であることを特徴とする金属極薄膜の
    形成方法。
  19. 【請求項19】金属極薄膜を形成するための基板を内部
    に保持し、内部を真空に保つための反応容器、複数の酸
    化数を持つ第一の金属元素の最小ではない酸化数の酸化
    物を化学気相成長法により形成するための原料を該反応
    容器に導入する手段及び該反応容器内に光を照射する手
    段を有し、請求項1から18のいずれか一に記載の金属
    極薄膜の形成方法を行うための金属極薄膜形成装置。
  20. 【請求項20】金属極薄膜を形成するための基板を内部
    に保持し、真空に保つための反応容器、複数の酸化数を
    持つ第一の金属元素の最小ではない酸化数の酸化物を化
    学気相成長法により形成するための原料を該反応容器に
    導入する手段及び該反応容器内に光を照射する手段を有
    する第1の装置並びに該第1の装置と連結し、内部を真
    空に保つための第2の反応容器、該第2の反応容器内に
    光を照射する手段、金属極薄膜を形成するための基板を
    該第2の反応容器内に保持し、該基板を冷却する手段及
    び該第2の反応容器内に置かれた蒸着源を有することを
    特徴とする金属極薄膜形成装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10158833A (ja) * 1996-12-02 1998-06-16 Fuji Electric Co Ltd マグネトロンスパッタ成膜装置および成膜方法
JP2004311922A (ja) * 2002-12-24 2004-11-04 Seiko Epson Corp 電極膜およびその製造方法、ならびに強誘電体メモリおよび半導体装置

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