JPH0510563B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、都市ゴミを焼却炉により、焼却処理
する際に発生する焼却灰、ダスト等の廃棄物を溶
融処理する都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉の改良に
関するものである。

［従来の技術］ 都市ゴミを焼却炉により、焼却処理する際に発
生する焼却灰、ダスト等の廃棄物には、例えばク
ロム、ニツケル、マンガン、カドミウム、水銀、
銅等人体や生物に有害な重金属を含むものがあ
り、その廃棄処理については国家的規制措置がと
られていることは知られている。

これら廃棄物は従来、地中に直接埋立て処分し
たり、重金属類を、活性炭に吸着させたり、アル
カリを加えて水酸化物として沈降分離したり、イ
オン交換樹脂に結合させたりして捕捉除去後、地
中に埋立処分する方法がとられてきた。しかし、
いずれの場合も、埋立地の確保が次第に困難にな
りつつあるばかりでなく、直接埋立処分する場合
は重金属類が地中に溶出して周辺を汚染する恐れ
があり、また重金属類を捕捉後埋立処分する方法
は、生成する重金属吸着活性炭、重金属水酸化
物、重金属結合イオン交換樹脂などを含有するス
ラツジの処理をどうするかが問題となり、その廃
棄の仕方如何によつては、二次公害発生の危険性
がある。本問題解決にあたつては、たとえば燃料
を用いて溶融処理する提案もあるが本出願人は、
叙上のような問題点を解決するものとして特開昭
52−143965に示す方法を提案した。この方法は、
電気アーク炉中で溶融したベースメタル例えば鉄
よりなる金属湯に、還元雰囲気下、産業廃棄物等
の処理の結果生ずる重金属含有焼却残渣或いはス
ラツジを添加して重金属類をベースメタル中に溶
解させると共に、ベースメタル上に浮遊する溶融
スラグ中にも捕捉固定するものである。

この方法を実施する装置としては例えば第４図
の断面図、および第５図の平面図で示すような製
鋼用アーク炉をベースにして改造した炉１を使用
する。この炉１は密閉構造形で、上部から炉蓋２
を貫通してアーク熱発生用の人造黒鉛製電極３が
同じ円上に３本装入され、炉１内には、予めスク
ラツプ（例えば鉄屑）を投入しておき、アーク熱
により溶融し、いわゆるベースメタル４層を形成
させる。ベースメタル４を温度1450〜1550℃の高
温溶融状態を保つておき、投入口５により産業廃
棄物例えば都市ゴミ焼却残渣を投入して溶融す
る。ベースメタル４は炉１の運転初期のアーク熱
発生源となると同時に、上記残渣溶融の熱源にも
なり、又残渣中の鉄分その他の各種重金属類吸収
母体の機能も備えている。残渣中の大部分を占め
る無機物質は、溶融スラグ６となりベースメタル
４上に浮遊し鉄を始めCr、Niなどの重金属類の
大部分はベースメタル４中に移行して、一部はス
ラグ６中に固定され、炉体１に放射状に設けられ
た３個の出滓口８より炉１外へ排出される。な
お、溶融過程で、炉１内では若干のガスが発生
し、排気口７より排出される。

このような電気アーク炉による溶融固化法は以
下のような特徴がある。即ち、 (1) 高温のアーク熱を利用するので焼却残渣の溶
融が完全に行われ、組織の均一なスラグが得ら
れる。

(2) ベースメタルを使用しているので、焼却残渣
中のFe、Cr、Niなどの大部分の重金属類はベ
ースメタル中に移行し、スラグと分離すること
ができる。

(3) スラグが高温で溶融するので、スラグ中の残
りの重金属類はそのマトリツクス中に完全に入
り込み、溶出の恐れがない。

(4) アーク熱を利用するので、燃焼炉と比較して
発生ガス量が少なく、排ガス処理設備がコンパ
クトでよい。又、排ガスによる熱損失が小さい
ので、炉の熱効率がよい。

(5) 炉の溶融制御は電力量の制御のみで行えるの
で、炉の運転操作が簡単である。

(6) 都市ゴミ焼却炉の廃熱を使つて発電した電気
を利用できる。

［発明が解決しようとする問題点］ ところで、以上のような利点を有する電気アー
ク炉でも、それ自体が平面図でみた場合、円形を
しているため（以下円形炉と称して説明する）構
造的に次のような改善すべき点がある。

(1) 廃棄物処理量の増大に対処して、一旦設置し
た円形炉をより大規模容量のものに改造を行つ
ていく場合、始めの円形炉の同心円形状に容量
の拡大改造を行うので、スペース的にも無駄が
あり、又改造のステツプ毎に、電極と炉内溶融
域との関係が異なつてくる。従つて、改造のた
めの設計変更は厄介である。

(2) 廃棄物の搬入系、処理物の出滓排出系設備の
配置が繁雑となる。即ち、円形炉では、廃棄物
の搬入系を同心円形状に、排出系を円形炉の中
心より放射状に配列するので、そのメンテナン
スに当つては、炉の円周に沿つて360゜移動しな
ければならない。

(3) 円形炉は、処理容量が小さく、せいぜい
100t／dayに過ぎず、処理効率が劣る。その理
由は、円形炉は炉蓋がアーチ構造であるため、
内張り耐火れんがの張設面積に限度があり、従
つて、炉全体容量の拡大改造には一定の制約が
ある等である。

［問題を解決するための手段］ 本発明者は、円形炉にみられる上記の問題を解
決するため鋭意検討の結果、円形炉に代るものと
して、長手の直方体型をした溶融処理炉に着目し
た。しかして、電極、残渣、投入口及び排出口を
直線位置に並設することによつて、炉の配置、設
置上の面積、容量拡大に伴う改造工事上の諸懸案
事項の解消をはかりうるとの知見を得て本発明に
到達した。

即ち、本発明は、アーク熱を発生させる電極を
内設し、アーク熱により溶融させたベースメタル
又は導電材上に、焼却残渣を投入し、溶融処理す
る都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉において、炉体が
長手直方体形状をなし、炉蓋の長手方向に沿う直
線上に前記電極と、電極と交互に位置して焼却残
渣投入口が並設され、更に出滓口が炉体の長手方
向の一側面に複数個並設されてなることを特徴と
する都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉を要旨とするも
のである。

即ち、本発明の都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉
は、円形溶融処理炉と同じく、電気アーク熱を用
いる溶融処理炉であるが、第１図〜第３図に示す
ように、炉本体１１が長手直方体形状としてな
る。そして、炉本体１１の長手方向に沿うＹ直線
上に複数の電極１４と、焼却残渣投入口１５を電
極１４をはさむようにして、これと交互に並設す
る。又、溶融処理後のスラグ出滓口１９を複数
個、炉本体１１の一側面のみに並設した構造とし
てなるものである。更に、上記電極１４、焼却残
渣投入口１５、出滓口１９のうち、電極１４の複
数設置数とは、三相交流電源を用いる場合は3n
個（但しｎは２以上の整数。以下同じ）単相の交
流電源を用いる場合は、2n個（但しｎは１以上
の整数）とし、これに伴つて焼却残渣投入口１５
は電極１４設置数より１つ多い数、又、出滓口１
９は電極１４設置数の1/2乃至それ以上設置した
構造としたものである。

［作用］ 本発明の都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉は以上の
ような構成よりなる電気アーク炉であつて、電極
揚降装置を炉本体１１の裏側に一直線に配設でき
るので増設の際の設計が楽であるし、又、電極の
消耗による継ぎ足し、取替え等のメンテナンスが
容易となる。一方、円形炉に較べて、溶融処理さ
れるべき焼却残渣の搬入系設備配置が簡素化され
る。しかして、焼却残渣投入口１５は１炉当り、
複数個設置されているので、投入口１個当りの投
入負荷を分散軽減せしめることができる。更に、
焼却残渣投入口１５は、その各々の位置が電極１
４をはさむように、言い換えれば電極１４と電極
１４との間に配置されるので、溶融エネルギーの
最も大きい電極間に焼却残渣が投入されることに
なり、溶融処理効率がよい。又、出滓口１９を一
側面に開口させた構成としてなるので、溶融スラ
グの排出作業が容易となり、複数個設置したこと
によつて、出滓口１９およびその近傍にみられる
耐火構造物の１つ毎の出滓口１９における溶損負
荷が軽減されメンテナンスが容易となる。即ち、
一般に出滓口１９を構成する耐火構造物の溶損率
は出滓するスラグ量に比例する。そこで出滓口１
９の１個当りのスラグ排出量を各々一定レベルに
する必要があり、出滓口１９を複数個設置するこ
とによつて、耐火構造物の耐用寿命を一定期間以
上に延ばすことができる。

［実施例］ 以下、本発明を図面に基いて説明する。第１図
〜第３図は、本発明に係わる都市ゴミ焼却残渣溶
融処理炉の一例を示す図で、第１図は平面図、第
２図は第１図におけるＸ−X′線の部分断面図、
第３図は平面図である。

図において、１１は炉本体で、全体が長手の直
方体形状をなし、耐火れんがのような耐火物によ
り構築され、その外側が枠組み１２により補強さ
れている。炉本体１１が直方体形状をなしている
故、炉本体１１の内壁はその天井部１１ａ即ち、
炉蓋１３の裏側、側壁部１１ｂ及び炉床部１１ｃ
は、それぞれ長方形をなしている。炉蓋１３に
は、これを貫通する3n個即ち、６個の三相交流
アーク熱発生用の人造黒鉛製電極１４と、3n＋
１個、即ち７個の溶融処理されるべき焼却残渣投
入口１５とが互いに隣り合つて交互にはさみ合う
ように位置し、炉本体１１の長手方向に沿うＹ直
線上に並設されている。尚、第１図及び第３図に
おける両端部の２つの焼却残渣投入口１５ａは、
１つの電極１４とのみ隣接し、電極間にはさまれ
てはいない位置に設置されているが、ここから投
入される焼却残渣が溶融残渣の表面をカバーし、
溶融物を保温する機能をなすので、その必要のた
めに配置されるものである。１６は電極支持アー
ム、１７は電極揚降装置である。炉蓋１３には、
上記のほか、ガス排気口１８、炉本体１１内部と
外気を遮断する水封管（図示せず）等が設けられ
る。９は保守点検用作業扉で保守点検時にここを
開け作業をするための扉である。

１９は、炉本体１１の一側面のみに並設された
３個、即ち電極設置数の1/2個の溶融スラグ排出
口である。そしてその設置位置は、どの電極位置
からも等間隔になるように且つ互いに等間隔で設
けられる。

本発明の都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉は、電気
アーク熱を用いる溶融炉であるから、溶融処理は
先にのべた公知の円形をした電気アーク炉と変ら
ない方法によつて運転される。

即ち、第２図に示すように、炉本体１１内に、
予め、鉄屑等を入れて、アーク熱により溶融し、
ベースメタル２０を形成させ、その温度を1450〜
1550℃の高温状態に保つておき、例えばコンベヤ
ーのような１本の搬送系（図示せず）により分散
して各投入口１５より、都市ゴミ焼却残渣２１を
投入溶融させる。ベースメタル２０は炉の運転初
期のアーク熱発生源となると同時に、上記残渣溶
融の熱源となり、又、残渣中の鉄分その他の有害
重金属類吸収母体としての機能も備えている。残
渣中の大部分を占める無機物質は、溶融スラグ２
２となり、ベースメタル２０上に浮遊し、鉄を始
め、Cr、Niなどの重金属類の大部分はベースメ
タル２０中に移行し、一部はスラグ２２中に固定
され、出滓口１５より炉外に排出される。

［発明の効果］ 本発明の都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉は以上の
ような構成よりなり、従来の円形をしたアーク溶
融処理炉に較べて次のようなすぐれた長所を有す
る。

(1) 炉体が長手の直方体形状をしているので、増
産のための改造に当つては横方向に１ユニツト
づつ継ぎ足しをやるだけで済むので工事が簡
単、且つスペースに無駄がない。

(2) 電極ならびに付帯設備を直線上に並設してな
るので、運転管理、保全が簡単に行える。

(3) 溶融処理されるべき焼却残渣の搬入系ならび
に出滓系が一直線上に設置できるので、運転操
作がやり易く、保全管理も容易である。

(4) 電極、焼却残渣投入口を一直線上に交互に設
置されてなるので溶融処理効率がよい。

(5) 炉内壁には曲面がないのでより広い面積で耐
火構造物を張設でき、従つて、炉体容量の大き
い、より大きな処理能力が確保できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の都市ゴミ焼却残渣溶融処理
炉の一例の平面図、第２図は第１図のＸ−X′線
における部分断面図、第３図は正面図、第４図は
公知の円形炉の断面略図、第５図は同じく平面略
図である。 １……炉、２……炉蓋、３……電極、４……ベ
ースメタル、５……投入口、６……スラグ、７…
…排気口、８……出滓口、９……保守点検用作業
扉、１１……炉本体、１２……枠組み、１３……
炉蓋、１４……電極、１５，１５ａ……焼却残渣
投入口、１６……電極支持アーム、１７……電極
揚降装置、１８……ガス排気口、１９……出滓
口、２０……ベースメタル、２１……焼却残渣、
２２……溶融スラグ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ アーク熱を発生させる複数の電極を内設し、
   アーク熱により溶融させたベースメタル又は導電
   材上に、焼却残渣を投入し、溶融処理する都市ゴ
   ミ焼却残渣溶融処理炉において、炉体が長手直方
   体形状をなし、炉蓋の長手方向に沿う直線上に、
   前記電極と、電極と交互に位置して焼却残渣投入
   口とが並設され、更に、出滓口が炉体の長手方向
   の一側面に複数個並設されてなることを特徴とす
   る都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉。 ２ 溶融処理炉が電気アーク炉である特許請求の
   範囲第１項記載の都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉。 ３ 電極が3n個（但しｎは２以上の整数。以下
   同じ）と、電極と交互に位置して3n＋１個の焼
   却残渣投入口とが並設されてなる特許請求の範囲
   第１項記載の都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉。 ４ 出滓口がｎ／２個乃至それ以上、炉体の長手
   方向の一側面に並設されてなる特許請求の範囲第
   １項記載の都市ゴミ焼却残渣溶融処理炉。