JPH0481045B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、高温、高真空、特殊雰囲気等、油
やグリースのような潤滑剤を使用した従来のころ
がり軸受では役立たない使用条件下でも、使用可
能な自己潤滑能力をもつたころがり軸受に関する
ものである。

〔従来の技術〕

ころがり軸受を高温、高真空、特殊雰囲気等の
通常の潤滑剤（油、グリース）では役に立たない
条件の下で使用する場合、ころがり軸受を構成す
る軌道輪、転動体、保持器等の部品に固体潤滑剤
を被覆する方法がとられたり、固体潤滑剤粉末を
気体媒体と共にころがり軸受の軌道面、転動面等
の必要箇所に吹付ける等の技術が採用されてい
た。

〔発明が解決しようとする問題点〕

ところが上記のような従来の技術においては、
次のような問題点があつた。

ころがり軸受を使用中、被覆した固体潤滑剤が
剥げ落ちて、転走面で消耗された後は、無潤滑状
態となる。そのため被覆の剥げ落ち方が耐久性を
支配するので、偶然性に支配され易く、耐久性の
ばらつきが大きく、非常に短寿命のことも起り得
た。

また固体潤滑剤の被覆は剥げ落ちて転走面に入
つた状態では大きさが不揃いであり、中でも大き
いものは、異物として接触応力を高める作用が大
きいので、ころがり疲れ寿命を短縮する可能性が
あつた。

さらに固体潤滑剤粉末を吹付ける場合は、軸受
の転走面に有効に付着させ潤滑に与らせることが
容易ではなく、多過ぎると堆積し、少な過ぎると
必要箇所に固体潤滑剤粉末が到達せず、気体媒体
と共に流出してしまう等の問題があつた。

〔問題点を解決するための手段〕

この発明のころがり軸受は、保持器に封入潤滑
剤を保有するための収納室と、封入潤滑剤を遠心
力を利用して放出するため前記収納室に穿設され
た小孔とがあり、前記収納室には封入潤滑剤が保
有され、しかも前記小孔は当初固体潤滑剤により
被覆されている。

〔作用〕

この発明のころがり軸受は、保持器の外径面ま
たは外側面が固体潤滑剤で被覆されているので、
使用開始後、相当期間はその被覆のみで潤滑が可
能である。そしてそれらの被覆が摩擦や押圧力に
よる機械的破壊によつて剥げ落ちたり、金属被覆
については、軸受の回転や高温の雰囲気、あるい
はこれらの相乗作用によつて融触する場合も生じ
たりして潤滑剤が消耗された時に、丁度収納室の
小孔がそれによつて開くので、収納室中の封入潤
滑剤がそのときから新たに転走面に供給され、潤
滑が継続される。

この封入潤滑剤は収納室の小孔から適量ずつ出
て来るので、堆積したり無駄になることが少い。

またこの小孔からの封入潤滑剤の放出は、軸受
の回転、直接的には保持器の回転に伴う遠心力に
よるので、潤滑剤の不要な静止時には、遠心力が
零のため潤滑剤は供給されず、回転速度が増大し
て必要な潤滑剤の量が増すほど、遠心力の増大に
よつて潤滑剤の供給量が増加する。しかも必要な
部分に有効に供給される。

〔実施例〕

第１図はこの発明の第１の実施例を示すもの
で、内輪１と外輪２との間に装入された転動体と
しての複数個の円筒ころ３およびこれらの円筒こ
ろ３を適宜の間隔をあけて保持するための保持器
４とからなる円筒ころ軸受において、保持器４に
は封入潤滑剤（例えば固定潤滑剤）を保有するた
めの収納室４２が設けられている。この収納室４
２の大きさや形状は、保持器の大きさや、円筒こ
ろのピツチ間隔等に左右される場合や、逆に収納
室４２を大きくするために、円筒ころ３の数を減
したり、細くすることも考えられる。使用箇所、
使用条件等によりいずれを優先するかにより収納
室の大きさは左右される。形状については、加工
の難易やコストの点も考慮してきめる必要があ
る。

上記の収納室４２には、封入潤滑剤４１が保有
されるが、この封入潤滑剤４１を外輪２の軌道面
２１や、保持器４の外径面４３等の潤滑を必要と
する箇所に供給するために、収納室４２には小孔
４４が設けられ、この小孔４４から円筒ころ軸受
の回転時に、遠心力により上記の封入潤滑剤４１
が供給されるようになつている。

従つて小孔４４は収納室４２の大きさや潤滑剤
の供給量を加味して１個の場合や、複数個の場合
もあり、小孔４４の方向も軸受の中心から放射方
向に設ける場合、軸受の回転方向が一方向のとき
は、回転方向を考慮して角度をつける場合等潤滑
を必要とする箇所に容易に封入潤滑剤が到達する
ように配慮する。

上記の小孔４４は当初保持器４の外径面４３に
被覆された固体潤滑剤４５によつて塞さがれる
か、または高温で潤滑能力のある金属例えば銀、
金等の固体潤滑剤４５の被膜によつて密閉された
状態となつている。この固体潤滑剤の厚さは、軸
受自体の大きさや、使用条件等を考慮してきめら
れるものである。

上記のように構成された円筒ころ軸受は、高
温、高真空等の条件において使用された場合、初
期における潤滑は、保持器４の外径面４３に被覆
された固体潤滑剤４５によつて行われ、この固体
潤滑剤４５が使用しつくされると、当初は密封さ
れていた小孔４４が開口し、保持器４の回転に従
つて、収納室４２に保有されている封入潤滑剤４
１が遠心力によつて小孔４４から放出され、潤滑
に寄与する。

従つて封入潤滑剤が放出し終るまでは必要箇所
へ潤滑が続行される。

次に示す第２の実施例は玉軸受、詳しくはアン
ギユラ玉軸受の場合で、第２図において１は内
輪、２は外輪、３は転動体としての玉であり、４
は保持器である。

このアンギユラ玉軸受においては、保持器４に
設けられた封入潤滑剤４１の収納室４２には、２
個の小孔４４が穿設されており、収納室４２に保
有されている封入潤滑剤４１の放出口となる小孔
４４を密閉する固体潤滑剤４５は、保持器４の外
径面４３の全面を被覆するわけではなく、外輪２
の内径面２１と接触する可能性のある部分および
それに近い部分に被覆され、保持器４の外径面４
３の中央部分には被覆されていない。

このアンギユラ玉軸受においても、当初は保持
器４の外径面４３における固体潤滑剤が潤滑作用
をなし、軸受の使用に伴つてこの潤滑作用が終了
した時点で、小孔４４が開口し、この小孔４４か
ら収納室４２に保有されていた封入潤滑剤４１
が、遠心力によつて放出され、必要箇所を潤滑す
る。

次に示す第３の実施例は、スラスト円筒ころ軸
受の場合であり、１は内輪、２は外輪、３は転動
体としての円筒ころ、４は保持器である。このス
ラスト円筒ころ軸受においては、保持器４の封入
潤滑剤４１の収納室４２には、第３図において上
方部分に小孔４４が２個、下方部分にも小孔４４
が２個、合計４個の小孔４４が穿設されており、
しかも収納室４２に保有されている封入潤滑剤４
２が遠心力によつて放出され易いように前記の小
孔４４は軸中心線−に対してある角度傾けて
開口するように設けられている。その保持器４の
上面４６と下面４７には、それぞれ収納室４２に
保有されている封入潤滑剤４１の放出口となる小
孔４４を密閉するように固体潤滑剤が被覆されて
いて、使用初期の潤滑は被覆された潤滑剤によつ
て行われる。被覆された潤滑剤による潤滑が終了
してからは、上記の二実施例と同様に収納室の封
入潤滑剤が小孔から順次放出されて、潤滑作用が
営まれる。

〔発明の効果〕

この発明のころがり軸受は、上記のように構成
されているので、高温、高真空等の条件の下にお
いて、単に固体潤滑剤を被覆した軸受に比較し
て、潤滑剤の供給される期間が長くなり、その分
寿命延長が期待される。

しかも、被覆の厚さや、収納室の大きさ、形、
小孔の数、大きさ、位置等を収納室ごとに変えて
おけば、被覆の摩耗による小孔の開口する時期を
ずらせたり、収納室からの潤滑剤の供給量を時期
によつて変更したりすることが可能となり、その
軸受の総運転期間を通じて最適の状態に潤滑され
るように設計することも可能である。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図はいずれもこの発明の実施
例を示す要部の断面図で、第１図はこの発明を円
筒ころ軸受に適用した第１の実施例を示し、第２
図は同じく玉軸受に適用した第２の実施例を示
し、第３図は同じくスラスト円筒ころ軸受に適用
した第３の実施例を示すものである。 符号の説明、１は内輪、２は外輪、３は転動
体、４は保持器、４１は封入潤滑剤、４２は収納
室、４４は小孔、４５は固体潤滑剤。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 内輪、外輪、内輪と外輪との間に装入された
   転動体およびこの転動体を適宜の間隔に保持する
   ための保持器を備えたころがり軸受において、前
   記保持器は封入潤滑剤を保有するための収納室と
   この収納室における封入潤滑剤を遠心力を利用し
   て放出するための小孔とを有し、しかも前記小孔
   は当初固体潤滑剤により被覆されていることを特
   徴とする自己潤滑能力をもつたころがり軸受。