JPH0473941B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 (イ) 産業上の利用分野 本発明は、支持体上に感光性樹脂が塗布された
感光性平版印刷版材に関するものである。

(ロ) 従来の技術及び発明が解決しようとする問題
点 従来より、光硬化型樹脂（ネガ型感光性樹脂）
や光分解型樹脂（ポジ型感光性樹脂）を支持体上
に塗布した感光性平版印刷版材が各種用いられて
いる。感光性樹脂は光によつて反応し、その性質
が変化する樹脂のことであるが、感光性樹脂の種
類、特に光硬化型感光性樹脂（ネガ型感光性樹
脂）において樹脂組成中に不飽和化合物を含有す
るものは光でラジカル重合する際、空気中の酸素
による重合阻害が起こり、結果として減感してし
まうことがあつた。減感すると、印刷版の製造に
当たつてより多重の光エネルギーを必要とし製版
時間が延長され平版印刷版の作成に長時間を要し
生産性が低下するという欠点を生じる。

このような空気中の酸素の影響を防止するた
め、感光性樹脂層の表面に更に保護層として水溶
性高分子層を塗布することが行われている。しか
し、これは支持体上に感光性樹脂を塗布、乾燥し
更にその後水溶性高分子溶液を塗布しなければな
らず、感光性平版印刷版材の製造が煩雑であると
いう欠点を有している。

そこで、本発明は支持体上に一回塗布するのみ
で感光性樹脂層上に保護層を設けることができる
感光性平版印刷版材の製造方法を提供しようとす
るものである。

(ハ) 問題点を解決するための手段及び作用 即ち本発明は、ポリビニルアルコールと硝酸ジ
ルコニウムとよりなる水溶液中に、沸点100〜150
℃の有機溶剤に溶解させた感光性樹脂を分散して
エマルジヨンを作成し、次いで該エマルジヨンを
支持体上に塗布した後乾燥して水及び有機溶剤を
蒸発させることを特徴とする感光性平版印刷版材
の製造方法に係るものである。

まず本発明においては、ポリビニルアルコール
と硝酸ジルコニウムを含有する水溶液を準備す
る。ポリビニルアルコール及び硝酸ジルコニウム
は水溶性であるために水溶解する。硝酸ジルコニ
ウムは水が蒸発しポリビニルアルコール膜が形成
された時、ポリビニルアルコールとキレート化合
物を生成し、ポリビニルアルコールの吸湿性を低
下させる作用をするものである。本発明において
作成する水溶液の組成割合は、ポリビニルアルコ
ール100重量部に対して硝酸ジルコニウム２〜10
重量部程度が好ましい。また、水の割合はポリビ
ニルアルコール100重量部に対して1500〜5000重
量部程度が好ましい。

この水溶液中に沸点100〜150℃の有機溶剤に溶
解させた感光性樹脂を分散させてエマルジヨンを
作成する。沸点100〜150℃の有機溶剤としては、
キシレン、エチルベンゼン、トルエン等が用いら
れる。ここで、沸点100℃以上の有機溶剤を用い
る理由は、乾燥工程で水を先に蒸発させるためで
ある。また感光性樹脂としては、ジアゾ化合物、
キノンジアジド化合物、アジド化合物、ｐ−フエ
ニレンジアクリル酸構成を持つ光二量型ポリエス
テル、不飽和ポリエステル等のポリマーとポリエ
チレングリコールジアクリレート等とからなるも
の、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルア
クリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレ
ート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアク
リレート等の多官能ビニル基を持つオリゴマーか
らなるもの等が用いられる。光ラジカル重合型樹
脂を含有してなる場合は、ベンゾイン、２−エチ
ルアンスラキノン、ベンゾインエチルエーテル、
ジーｔ−ブチルパーオキシド、アゾビスイソブチ
ロニトリル、ジベンゾチアゾリルスルフイド等の
光重合開始剤を併用して感光性樹脂とするのが好
ましく、また非架橋型樹脂の場合にはジエチレン
グリコールジアクリレート等の架橋剤を併用して
感光性樹脂とするのが好ましい。

感光性樹脂を溶解させる有機溶剤の量は、感光
性樹脂100重量部に対して200〜400重量部程度が
好ましい。また、ポリビニルアルコール及び硝酸
ジルコニウムを溶解させた水溶液と感光性樹脂を
溶解させた有機溶剤との配合割合は、前者が100
重量部に対して後者は50〜100重量部程度が好ま
しく、このような割合の場合Ｏ／Ｗ型エマルジヨ
ンが得られる。

次いで得られたエマルジヨンを支持体に塗布す
る。支持体としては、アルミニウム箔又は板、プ
ラスチツクスフイルム、紙等が用いられる。又、
アルミニウム箔とプラスチツクスフイルム、アル
ミニウム箔と紙、プラスチツクスフイルムと紙と
を貼合した二層構造物やアルミニウム箔とプラス
チツクスフイルムと紙とを貼合した三層構造物等
も用いることができる。

支持体にエマルジヨンが塗布された後、このエ
マルジヨンを乾燥する。乾燥温度は適宜決められ
るが、100℃より若干高温が好ましく、110〜140
℃程度が好ましい。この乾燥工程において水と有
機溶剤が蒸発する。有機溶剤の沸点は100℃以上
であるから、水の沸点より高く水が先に蒸発する
ことになる。これにより、いわゆるマイグレーシ
ヨン効果で水に溶解しているポリビニルアルコー
ルと硝酸ジルコニウムはエマルジヨンの上層即ち
表面に移行して、ポリビニルアルコール膜が形成
される。そして、感光性樹脂はエマルジヨンの下
層即ち支持体と接触している側に留まることにな
る。従つて、得られた感光性平版印刷版材は支持
体上に主な感光性樹脂が存在し、感光性樹脂層上
に主にポリビニルアルコール膜が存在することに
なる。

(ニ) 実施例 まず下記の組成よりなる水溶液を作成した。

ポリビニルアルコール（信越化学工業(株)製Ｃ−
17） ３重量部 硝酸ジルコニウム 0.2重量部 水 100重量部 次いでこの水溶液60重量部を撹拌しながら、下
記組成よりなる感光性樹脂を溶解させた有機溶剤
を40重量部加えてＯ／Ｗ型エマルジヨンを作成し
た。

ポリエステルアクリレート（サンノプコ(株)製フ
オトマー5018） 15重量部 アクリル系樹脂（ポリブタジエン−メチルメタ
アクリレート−スチレン−アクリル酸四元共重
合体、分子量約35000） 10重量部 架橋剤（共栄社油脂(株)製TMP） ５重量部 架橋剤（共栄社油脂(株)製2EG） ５重量部 光重合開始剤（ベンゾイン） 0.5重量部 光重合開始剤（２−エチルアンスラキノン）
0.5重量部 キシレン 100重量部 このようにして得られたエマルジヨンを＃８の
バーコーターを用いて、予め脱脂して表面目立て
された0.25mmの厚さアルミニウム板上に塗布した
後、温度120℃の熱風乾燥機にて１分間乾燥し、
感光性平版印刷材を得た。この感光性平版印刷版
材を暗室にて３日間そのまま放置した。その後、
この感光性平版印刷版材にネガフイルムを重ねて
2KW超高圧水銀灯を用いて露光した後、現像液
（日本製箔(株)製Ｎ−221）を用いて現像し、水洗し
て平版印刷版を得た。この平版印刷版には鮮明な
画像が形成されており、この平版印刷版を用いて
印刷機（小森印刷機械(株)製オフセツト印刷機）に
て印刷した結果、再現性の良好な印刷物10万枚を
得ることができた。

(ホ) 発明の効果 本発明に係る感光性平版印刷版材の製造方法
は、ポリビニルアルコールと硝酸ジルコニウムと
よりなる水溶液中に沸点100以上の有機溶剤に溶
解させた感光製樹脂を分散させてエマルジヨンを
支持体上に塗布し、その後乾燥することにより、
水が先に蒸発しいわゆるマイグレーシヨン効果に
よつてポリビニルアルコールが塗布されたエマル
ジヨンの上層に偏在し、感光性樹脂が塗布された
エマルジヨンの下層（支持体と接触している側）
に偏在することになる。従つて、感光性樹脂層の
上にポリビニルアルコール膜が積層された状態に
なり、空気中の酸素が感光性樹脂のラジカル重合
を阻害することがないので、露光時に減感するこ
とがなく、また長期間放置しておいても空気中の
酸素の影響によつて減感することがない。

また本発明の方法によれば、支持体に一回塗布
するのみで感光性樹脂層上にポリビニルアルコー
ルよりなる保護層が形成できるので、、従来の如
く感光性樹脂の塗布とポリビニルアルコールの塗
布とを二回行うことがなく、感光性平版印刷版材
の製造を合理化することができるという特有の効
果を奏する。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ポリビニルアルコールと硝酸ジルコニウムと
   よりなる水溶液中に、沸点100〜150℃の有機溶剤
   に溶解させた感光性樹脂を分散してエマルジヨン
   を作成し、次いで該エマルジヨンを支持体上に塗
   布した後乾燥して水及び有機溶剤を蒸発させるこ
   とを特徴とする感光性平版印刷版材の製造方法。