JPH0462694B2 - - Google Patents

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JPH0462694B2
JPH0462694B2 JP1255435A JP25543589A JPH0462694B2 JP H0462694 B2 JPH0462694 B2 JP H0462694B2 JP 1255435 A JP1255435 A JP 1255435A JP 25543589 A JP25543589 A JP 25543589A JP H0462694 B2 JPH0462694 B2 JP H0462694B2
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callus
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rice
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somatic embryos
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Masayoshi Tsukahara
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NAASARII TEKUNOROJII KK
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、植物組織培養技術を用いた、イネ
(Oryza sativa L.)植物体のカルスからの植物
体再分化法に関するものである。 〔従来の技術〕 近年、組織培養技術の発達により、多数の植物
で大量増殖による商業化の可能性が拓けつつあ
る。イネ(Oryza sativa L.)についても、大量
増殖の可能性を示唆する技術がいくつか報告され
ているが、商業的に適用可能な技術に至つている
とは言い難い。 イネを組織培養によつて増殖しようとする場
合、次の2通りが考えられる。まず、第1の方法
としては、イネ植物体組織片より、直接、不定芽
または不定胚を分化・誘導してイネを増殖する方
法が考えられる。この技術については既にD.H.
Lingら〔Plant Cell Rep.、2172(1983)〕、W.
Wernickeら〔Z.Pflanzen physiol.、103361
(1981)、Eur.J.Cell Biol.24347(1981)〕、D.A.
Stuart and S.G.Strickland〔国際公開公報
WO87/02701〕などによつて報告されているが、
個体もしくは不定胚の分化・誘導率は大変低く、
増殖効率の点から、商業的な大量増殖技術には至
つていない。 第2の方法として、イネ植物体組織片より、カ
ルスを誘導・増殖し、カルスから不定胚または不
定胚を誘導・作出し、それらを植物体に再生する
方法がある。イネカルスの誘導には、子房、葯、
未熟胚、完熱種子、幼若葉、根、茎頂、幼穂等多
くの部位が外植片として用いられているが、いず
れも再分化率が低く、少量の外値片から多数の再
生個体を得る大量増殖技術は開発されていない。
これらは、W.M.Nabors and J.W.Heyser
〔Planta、157385(1983)〕、S.Sir、wardana and
M.W.Nabors〔Plant Physiol.、73143(1983)〕な
どが指摘するように、外植片から誘導されるカル
スには不定胚形成能を持つカルス、即ちエンブリ
オジエニイクなカルス(以下、Eカルスと言う)
と、不定胚形成能を持たないカルス、即ちノンエ
ンブリオジエニイクなカルス(以下、NEカルス
と言う)の2つがあり、多くの場合、両者は混在
している。Eカルスの占める割合が高いほど、カ
ルス全体としての個体再生能力は高いが、通常
は、継代・増殖が進むに従つてNEカルスの占有
率が高くなり、個体再生能力は低下する傾向にあ
る。これは、EカルスよりもNEカルスの方が増
殖速度が早く、またEカルスはNE化するが、逆
にNEカルスがE化することはないためと考えら
れている。 そこで、再分化率を向上させるためには、外植
片からEカルスだけを誘導し、これをNE化させ
ないように継代・増殖させること、または誘導さ
れたカルスからEカルスだけを選別すること、ま
たはEカルスだけが増殖する選択的培地を考案す
ることなどが有効と思われるが、各々で実効性の
ある技術を確立したという報告は未だない。 高率で不定胚を誘導した報告例としては、K.
Ozawa and A.Komamine〔Bio Industry 6343
−350(1989)、Theor.Appl.Genet.、77205−211
(1989)〕が、外植片として「Konansou」未熟胚
を用い、誘導したカルスをプロリン及びカゼイン
加水分解物を添加した液体増殖培地で3日毎に継
代維持することによりEカルス誘導・増殖させ、
個体培地で培養することにより、最高で移植した
カルスの100%から不定胚を誘導している。しか
し、カルスを誘導する外植片が未熟胚に限定され
ており、他の部位を外植片とした場合は当該技術
は適用できないことが明らかになつている。未熟
胚を外植片とする場合、外植片の供給が時間的制
約を受け、且つ、多大な労力を要する。外植片と
し未熟胚を用いても適用範囲が特定の品種に限ら
れており、通常の栽培品種には適用できないこと
が明らかになつている。また、不定胚からの植物
体の再生については一切開示されていない。 比較的高率で植物体を再生した報告例として
は、T.Abe and Y.Futsuhara〔J.Plant Physiol.、
121111−118(1985)〕が、「Gaiya Dhan Tosar」
の根由来カルスを2,4−D 3ppmを含むMS
寒天培地上で継代・増殖させ、これを再分化培地
(Kinetin 1ppm、Casein 2000ppmを含むMS寒
天培地)に移植することにより、移植した60%の
カルスから植物体が再生し、最高で約0.45gのカ
ルスから89本の植物体(200個体/1gカルスに
相当)を得ている。N.V.Raghava Ram and M.
W.Nabors〔Plant Cell Tissue Organ Culture、
4241−248(1985)〕は、「Pokkali」の胚盤由来カ
ルスにおいて、再分化培地(BA 0.5ppmを含む
MS寒天培地)へのカルスの置床密度を6.5mg/1
mlとすること、及び培地のコンデイシヨニング
(Eカルスを2週間置床後除去する)を行うこと
により、計算上、1gのカルスから220本の植物
体を得ている。しかし、これらの報告は特定の品
種に関するものであり、彼等の方法を通常の栽培
品種に適用したところ、十分な再分化率は得られ
なかつた。 また、液体培地での不定胚及び胚様体の誘導に
ついては、前述のK.Ozawa and A.Komamine
(1989)、T.Yoshida〔BRAINテクノニユース13、
1−2(1988)〕、吉田ら〔育種学雑誌(別2)、
140−141(1988)、同(別1)、62−63(1989)、T.
Abe and Y.Futsuhara(Japan.J.Breed.、36,1
−6(1986)〕等があるが、適応可能な品種が限ら
れている、不定胚・胚様体からの苗化については
一切開示されていない、イネ植物体の生産効率が
非常に低いといつた問題点があげられる。T.
Yoshidaの報告によれば1gの培養物から得られ
る植物体数は18個体と非常に低い値となつてい
る。 〔発明が解決しようとする課題〕 本発明は、外植片の胚盤よりEカルスを誘導
し、浸透圧調節剤を含む増殖培地において極めて
高い再分化能を保持したまま増殖させることによ
り、植物の種類、品種に制約されることなく、不
定胚誘導の特別な過程を経ず、固体培地に移植し
たカルスから直接的に、高頻度で安定し、しかも
短期間に植物体の再生を可能とするものである。 また、本発明は液体培地においても、高頻度で
安定して植物体再生能の高い良質の不定胚の誘導
を可能とするものであり、ジヤーフアーメンター
等を用いた大量培養への応用を容易にするもので
ある。さらに、得られた不定胚は高頻度で植物体
に再分化させることが可能である。 〔問題解決のための手段〕 本発明者は、イネ植物体の大量増殖方法、即
ち、イネカルスの誘導方法、イネカルスの増殖方
法、再分化方法を鋭意検討することにより、本発
明を完成するに至つた。 即ち、本発明によりイネ植物体の作出方法は、
まず外植片の胚盤からカルスを誘導しこれを前記
胚盤より摘出し、得られた該カルスを、少なくと
も無機塩類、炭素源、浸透圧調節剤、及び1種若
くは2種以上のオーキシンを含む液体培地で培養
し増殖させる。さらに好ましくは、Eカルスの
NE化の防止、増殖効率をふまえ増殖培地でのい
継代培養を1週間毎に行う。ついで増殖した該カ
ルスから、効率よく再分化させるために、少なく
とも無機塩類、炭素源を含む培地へ該カルスを移
植し培養すること、を特徴とするものである。 〔発明の具体的説明〕 (1) カルスの誘導に用いる植物体 本発明において、適応可能なイネ品種は、特
に限定されるものではなく、例えばジヤボニ
カ、インデイカ、ジヤパニカ、アフリカ稲及び
これらの雑種等を挙げることができる。 (2) カルスの誘導に用いる外植片 カルスの誘導に用いる外植片として、イネの
胚盤を含む外植片を用いる。前記外植片として
は、イネの種子自体、前記種子より胚盤部分を
摘出したもの、不定胚より得られたもの等があ
る。 (3) Eカルスの誘導 外植片からカルスを誘導するための培地(以
下、「誘導培地」という)は、少なくとも無機
塩類、1種若くは2種以上のオーキシン、炭素
源、及び浸透圧調節剤を必須成分とし、ビタミ
ン類、アミノ酸類、カゼイン加水分解物、PH調
節剤等を必要に応じて添加したものである。具
体的には従来から植物の組織培養に用いられて
いる基本培地、例えば、MS培地(Murasige、
Skoog:Physiol.Plant.、15473−497(1962)〕、
N6培地〔Chu et al.:Scl.Sin.、18658−668
(1975)〕等にオーキシンを添加して調整される
液体培地もしくは固体培地を例示することがで
きる。これらの従来公知の培地の組成等は、例
えば、原田及び駒嶺著「植物細胞組織培養」
p390−391、理工学社、1984年に記載されてい
る。培地の炭素源としてはシユークロース、グ
ルコース、フルクトース、マルトース等を例示
でき、その濃度は、0.1%〜10%が好ましく、
0.5%〜6%で用いることが特に好ましい。オ
ーキシンとしては、2,4−ジクロロフエノキ
シ酢酸(2,4−D)、インドール−3−酢酸
(IAA)、ナフタレン酢酸(NAA)等を例示で
き、これらを単独で使用することができるが、
組み合わせて使用することもできる。その添加
濃度は、2,4−Dの場合、0.1〜20ppmで用
いることが好ましく、2〜6ppmが特に好まし
い。浸透圧調節剤としてはソルビトール、マン
ニトール等を例示でき、濃度としては0.5〜12
%(W/V)が好ましく、1〜6%が特に好ま
しい。アミノ酸類としてはL−プロリン等を例
示でき、1〜100mMの濃度で添加することが
好ましい。カゼイン加水分解物は、10〜
500ppmの濃度で添加することが好ましい。PH
調節剤としてはMES〔2−(N−Morpholino)
ethanesulfonic acid、monohydrate〕等を例
示でき、培地のPHは5.4〜6.4に調整することが
好ましい。固体培地を調整する際の培地のゲル
化剤としては寒天、ゲルライト等を例示でき、
これらの濃度は寒天0.8%〜1%、ゲルライト
0.2〜0.3%が好ましい。 次に、外植片からEサルスを誘導するための
具体的な培養条件を以下に記す。上述した誘導
培地をまず調整し、無菌の、または無菌化した
外植片を置床する。外植片の無菌化は、常法に
従いエチルアルコール、次亜塩素酸ナトリウム
水溶液等を用い実施できる。外植片を置床後、
15〜35℃(好ましくは25〜32℃)の温度下、静
置もしくは振とう培養することによりEカルス
が得られる。 (4) Eカルスの増殖 Eカルスを増殖させるための培地(以下、
「増殖培地」という)は、少なくとも無機塩類、
1種若くは2種以上のオーキシン、炭素源、及
び浸透圧調節剤を必須成分とし、ビタミン類、
アミノ酸類、カゼイン加水分解物、PH調節剤等
を必要に応じて添加したものである。具体的に
は上記の誘導培地に浸透圧調節剤を添加した液
体培地を例示できる。浸透圧調節剤としてはソ
ルビトールまたはマンニトール等を例示でき、
濃度としては1〜10%(W/V)が好ましく、
1〜6%が特に好ましい。Eカルスを誘導する
際に、誘導培地に添加すると好ましい結果が得
られるビタミン類、アミノ酸類、カゼイン加水
分解物、PH調節剤等は、Eカルスの増殖におい
ても同様な結果を有する。 誘導されたEカルスの具体的培養条件を以下
に示す。上記の誘導工程により、外植片からカ
ルスが誘導されたら、カルスを外植片から取り
除き、増殖培地に移植し、誘導工程と同じ条件
で培養することによりEカルスが増殖される。
また、増殖培地でのカルスの継代を1週間毎に
行うことにより、より好ましい結果が得られ
る。 このようにして得られたカルスは従来知られ
ている0.2〜0.3%ゲルライト等でゲル化した固
体の不定胚誘導培地に塗布した場合、極めて高
い効率で不定胚が得られる。さらに、この高い
不定胚形成能力は2年以上保つことができた。
また、当該カルスは次に述べるような液体培地
においても極めて効率よく不定胚を誘導するこ
とができる。 (5) Eカルスからの不定胚の誘導 不定胚誘導培地は、少なくとも無機塩類、炭
素源、及び浸透圧調節剤を必須成分とし、必要
に応じて植物成長調節物質、ビタミン類、アミ
ノ酸類、カゼイン加水分解物、PH調節剤等を添
加した液体培地である。具体的には前記MS培
地、N6培地等を例示することができ、その無
機塩類は1/8〜4倍の濃度で用いることが好ま
しく、1/4〜2倍の濃度で用いることが特に好
ましい。炭素源としてはシユークロース、グル
コース、フルクトース、マルトース等を例示で
き、その濃度は、0.1%〜10%が好ましく、0.5
%〜6%で用いることが特に好ましい。植物成
長調節物質としてオーキシン、サイトカイニ
ン、アブシジン酸(ABA)を例示することが
でき、これらを単独で使用することができるが
組み合わせることにより、より良好な結果が得
られる。オーキシンとしてNAA、IAA、2,
4−D等を例示することができ、濃度としては
NAA及びIAA0.01〜10ppm、2,4−D0.001
〜0.1ppmが好ましく、NAA0.04〜0.5ppmが特
に好ましい。また、これらを単独で使用するこ
とができるが、組み合わせて使用することもで
きる。サイトカイニンとしてKinetin、ベンジ
ルアデニン(BA)、Zeatin等を例示すること
ができ、0.01〜10ppmの濃度が好ましく、これ
らを単独で使用することができるが、組み合わ
せて使用すこともできる。ABAは0〜0.3ppm
の濃度が好ましい。浸透圧調節剤としてはソル
ビトール、マンニトール等が挙げられ、特にソ
ルビトールを用いるのが不定胚誘導を効率的に
行ない得るという点において好ましい。濃度と
して、0.5〜12%(W/V)が好ましく、1〜
6%が特に好ましい。アミノ酸類としてはL−
プロリン等を例示でき、1〜100mMの濃度で
添加することが好ましい。カゼイン加水分解物
は、10〜5000ppmの濃度で添加することが好ま
しい。PH調節剤としてはMESが挙げられ、濃
度は1mM〜40mMが好ましい。次に、不定胚
を誘導するための具体的な方法を以下に記す。
増殖工程で得られたEカルスを収穫し、不定胚
誘導培地に移植し、15〜35℃(好ましくは25〜
32℃)の温度で培養することにより不定胚が誘
導される。 (6) 不定胚からの植物体への再生 上述の不定胚誘導工程で得られた不定胚を下
記の植物体再生培地(以下、「苗化培地」と記
す)へ移植し培養することにより、イネ植物体
を得ることができる。 苗化培地は、少なくとも無機塩類、炭素源を
必須成分とし、必要に応じて植物成長調節物
質、浸透圧調節剤、ビタミン剤、アミノ酸類、
カゼイン加水分解物、PH調整剤等を添加した固
体培地である。具体的に前記MS培地、N6培地
等を例示することができ、炭素源としてはシユ
ークロース、グルコース、フルクトース、マル
トース等を例示でき、その濃度は、0.1%〜10
%が好ましく、0.5%〜6%で用いることが特
に好ましい。 植物成長調節物質としてオーキシン、サイト
カイニンを例示することができ、これらを単独
で使用することがきるが組み合わせることによ
り、より良好な結果が得られる。オーキシとし
てはNAA、IAA、2,4−D等を例示するこ
とができ、濃度としてはNAA及びIAA0.01〜
10ppm、2,4−D0.001〜0.1ppmが好ましく、
また、これらを単独で使用することができる
が、組み合わせて使用することもできる。サイ
トカイニンとしてKinetin、BA、Zeatin等を例
示することができ、0.01〜10ppmの濃度が好ま
しい。浸透圧調節剤としてはソルビトール、マ
ンニトール等を例示でき、濃度としては0.5〜
12%(W/V)が好ましく、1〜6%が特に好
ましい。アミノ酸塩といてはL−プロリン等を
例示でき、1〜100mMの濃度で添加すること
が好ましい。カゼイン加水分解物は、10〜
5000ppmの濃度で添加することが好ましい。培
地のゲル化剤としては寒天、ゲルライト等を例
示することができ、その濃度は寒天0.8〜1.8
%、ゲルライト0.2〜0.9%で用いることが好ま
しい。特に、固体培地の通常用いられるゲル化
剤の濃度の約1.5倍以上の、寒天1.2〜1.6%、ゲ
ルライト0.4〜0.8%で用いることにより、より
好ましい結果が得られる(後記実施例6参照)。
また、ゲル化剤の代わりに市販のポリエステル
等の培地支持体も利用でき、例えば、ブランテ
ツクス(東洋紡)を例示できる。 上記の苗化培地に、不定胚を置床し、15〜35
℃(好ましくは25〜32℃)の温度で培養するこ
とにより、イネ植物体が作出できる。また、苗
化培地に不定胚を置床する前に不定胚の脱水処
理を行なうことにより、より好ましい結果が得
られる。 なお、不定胚を固体灰地で培養する前に、脱
水処理を行うと、苗化率の向上が見られ、この
場合の脱水処理は、例えば風乾処理でよい。 (7) カルスからの直接的植物体再生 Eカルスを下記の直接的植物体再生培地(以
下、「直接苗化培地」と記す)に移植すること
により特別な不定胚誘導の過程を経ずに直接的
にイネ植物体を得ることができる。 直接苗化培地は、少なくとも無機塩類、炭素
源を必須成分とし、必要に応じて、植物成長調
節物質、浸透圧調節剤、ビタミン類、アミノ酸
類、カゼイン加水分解物、PH調節剤、ゲル化剤
等を添加したものである。具体的には前記の
MS培地、N6培地等を例示することができる。
炭素源としてはシユークロース、グルコース、
フルクトース、マルトース等を例示でき、その
濃度は、0.1%〜10%が好ましく、0.5%〜6%
で用いることが特に好ましい。 植物成長調節物質としてはオーキシン、サイ
トカイニンを例示することができ、これらを単
独で使用することができるが組み合わせること
により、より良好な結果が得られる。オーキシ
ンとしてはNAA、IAA、2,4−D等を例示
することができ、濃度としてはNAA、及び
IAA0.01〜10ppm、2,4−D 0.001〜
0.1ppmが好ましく、また、これらを単独で使
用することができるが、組み合わせで使用する
こともできる。サイトカイニンとしてKinetin、
BA、Zeatin等を例示することができ、0.01〜
10ppmの濃度が好ましく、ABAは0〜0.3ppm
の濃度が好ましい。浸透圧調節剤としてはソル
ビトール、マンニトール等を例示でき、濃度と
しては0.5〜12%(W/V)が好ましく、1〜
6%が特に好ましい。アミノ酸類としてはL−
プロリン等を例示でき、1〜100mMの濃度で
添加することが好ましいが、1〜20mMが特に
好ましい。カゼイン加水分解物は、10〜
5000ppmの濃度で添加することが好ましいが、
100〜2000ppmが特に好ましい。培地のゲル剤
としては、寒天、ゲルライト等が例示すること
ができ、その濃度は寒天0.8〜1.8%、ゲルライ
ト0.2〜0.9%で用いることが好ましいが、特
に、固体培地の通常用いられるゲル化剤の濃度
の約1.5倍以上の、寒天1.2〜1.6%、ゲルライト
0.4〜0.8%で用いることにより、より好ましい
結果が得られる(後記実施例7参照)。また、
ゲル化剤の代わりに市販のポリエステル製等の
培地支持体も利用でき、例えば、プランテツク
ス(東洋紡)を例示できる。 上記の直接苗代培地に、Eカルスを置床し、15
〜35℃(好ましくは25〜32℃)の温度で培養する
ことにより、イネ植物体が作出できる。 〔実施例〕 実施例 1 イネ品種「sasanishiki」の完熟種子を剥皮後、
70%エタノールで5秒間処理し、次亜鉛素酸ナト
リウム(有効塩素濃度10%)で30分間処理するこ
とにより殺菌し、滅菌水でよく洗浄した後、下記
の誘導培地上に置床した。27℃、暗黒下で10日間
培養した。なお、培養培地中、浸透圧調節剤とし
て、3%のソルビトールを含有させた誘導培地−
1と同一の培養条件における、これを含有しない
以外は全く同一の培地でのカルス増殖率を、浸透
圧調節剤を添加しない場合を1として、表1に示
した。 【表】 得られたカルスを、カルス誘導培地と同一の培
地に移植し、14日間さらに培養を続け、下記の増
殖培地に移植した。カルスは1週間毎に新鮮な増
殖培地に移植し、16時間日長下(明期30℃、暗期
25℃)、90rpmで旋回培養を行ない継代維持した。
液体増殖培地1L当り約10gのカルスを置床し、
1週間当りのカルスの生産量の増加は約50週間に
亘り、3.7〜4.7倍で安定していた。 <誘導培地−1> 1% シユークロース、3% ソルビトール、
12 mMプロリン、100ppm カゼイン加水分解
物、5mM MES、4ppm2,4−D、0.2% ゲ
ルライトを含むN6固体培地。 <増殖培地> 1% シユークロース、3% ソルビトール、
12mM プロリン、100ppmカゼイン加水分解物、
5mM MES、4ppm2,4−Dを含むN6液体培
地。 液体増殖培地で数代継代したカルスを下記の不
定誘導培地に移植し、16時間日長下(明期30℃、
暗期25℃)、120rpmで旋回培養を行つたところ、
約1週間目から不定胚が観察され、その後4週間
程度連続して観察され、結果として、カルス20mg
当り60個体の不定胚(カルス1g当り3000個の不
定胚に相当)が得られた。 なお、下記の浸透圧調節剤として、3%のソル
ビトールを含有させた不定胚誘導培地−1と同一
の培養条件における、これを含有しない以外は全
く同一の培地での不定胚誘導率とをソルビトール
無添加培地の不定胚誘導率を比較した結果を表2
に示す。 【表】 また、得られた不定胚を下記の苗化培地で16時
間日長下(明期30℃、暗期25℃)で静置培養した
結果、不定胚の約15%が茎葉が1cm以上の幼植物
体へと再生した。 <不定胚誘導倍値−1> 1% シユークロース、3% ソルビトール、
2000ppmカゼイン加水分解物、5mM MESを
含むMS液体培地。 <苗化培地> 3% シユークロース、2000ppm カゼイン加
水分解物、5mM MES、0.5ppmカイネチン、
0.3% ゲルライトを含むMS固体培地。 実施例 2 実施例1と同様に殺菌した完熟種子を下記の誘
導培地(誘導培地−2)に置床し、16時間日長下
(明期30℃、暗期25℃)、90rpmで14日間旋回培養
を行ない、胚盤よりカルスの誘導を行つた。培地
中に遊離してきたカルスを回収し、下記の誘導培
地(指導培地−2)と同一の培地で継代・増殖さ
せた。このカルスを用いて実施例1と同様に不定
胚を誘導した結果、実施例1の結果と同様に不定
胚が誘導された。 <誘導培地−2> 1% シユークロース、3% ソルビトール、
100ppmカゼイン加水分解物、4ppm 2,4−D
を含むMS液体培地 実施例 3 実施例1において誘導し増殖させたカルスを用
い、実施例1に示した不定胚の誘導を行う際に不
定胚誘導胚培地中のMS無機塩類をN6無機塩類に
変更しても同様の結果が得られた。 実施例 4 実施例1において誘導し増殖させたカルスを用
い、実施例1に示した不定胚の誘導を行う際に不
定胚誘導培地にNAAを0.04〜0.4ppmに範囲で添
加したところ、不定胚誘導培地に移植したカルス
当りの不定胚数が向上した。 実施例 5 実施例1において誘導し増殖させたカルスを用
い、実施例1に示した否定胚の誘導を行う際に不
定胚誘導培地にNAAを0.4ppm、カイネチンを
0.5ppm、プロリンを12mM添加した培地(不定
胚誘導培地−2)で培養したところ、さらに良好
な結果が得られ、カルス20mg当たり72個体の不定
胚(カルス1g当り3600個の不定胚に相当)が得
られた。 <不定胚誘導培地−2> 1% シユークロース、3% ソルビトール、
0.4ppmNAA、0.5ppmカイネチン、12mM プ
ロリン、200ppmカゼイン加水分解物、5mM
MESを含むMS液体培地 実施例 6 実施例5に示した不定胚誘導培地(不定胚誘導
培地−2)で得られた不定胚を脱水処理の有無、
下記の苗化培地のゲルライト濃度を0.3%及び0.6
%と変更したもので16時間日長下(明期30℃、暗
期25℃)で静置培養した結果を表3に示す。な
お、脱水処理は不定胚をろ紙上に2日間置き、風
乾することにより実施した。 【表】 <苗化培地> 3% シユークロース、2000ppmカゼイン加水
分解物、5mM MES、0.5ppmカイネチン、0.3
%ゲルライトを含むMS固体培地 (結果)脱水処理及びゲルライトの濃度を0.6
%と高くすることにより、不定胚の苗化率が向上
し、両者を同時に実施することにより不定胚の75
%が茎葉部が1cm以上の幼植物体へと再生した。 実施例 7 実施例1において誘導し増殖させたカルスを用
い、下記の直接苗化培地のゲル化剤(寒天、ゲル
ライト)の濃度を変更した培地に移植し、16時間
日長下(明期30℃、暗期25℃)で静地培養を行つ
た結果を表4に示す。 表4 カルスからの直接苗化 (1) 0.2%ゲルライトの時得られる植物体数を1
とした時の相対再分化率 ゲルライト濃度(%)0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
0.9 1 4 5.2 4.8 5.2 3.6 2.6
2.2 (2) 0.8%寒天の時得られる植物体数を1とした
時の相対再分化率 寒天濃度(%) 0.8 1.4 1 1.2 <直接苗化培地−1> 3% シユークロース、2000ppmカゼイン加水
分解物、5mM MES、0.5ppmカイネチン、ゲ
ル化剤を含むMS固体培地 (結果)ゲルライト、寒天の濃度を通常用いら
れる濃度より高くすることにより、再分化率が向
上した。 実施例 8 実施例1において誘導し増殖させたカルスを用
い、実施例1に示したように液体増殖培地で数代
継代したカルスを下記の直接苗化培地に移植し、
16時間日長下(明期30℃、暗期25℃)で静地培養
を行つたところ、カルス20mg当り68個体の植物体
(カルス1g当り3400個体に相当)が得られた。 <直接苗化培地−2> 1% シユークロース、3% ソルビトール、
100ppmカゼイン加水分解物、5mM MES、
0.5ppmNAA、2ppmカイネチン、0.3%ゲルライ
トを含むMS個体培地 実施例 9 実施例8の直接苗化培地のカゼイン加水分解物
の濃度を1000ppmに改変し、さらに1mMのプロ
リンを添加することにより(下記の直接苗化培地
−3)、カルス12mg当り45個体の植物体(カルス
1g当り3750個体に相当)が得られた。 <直接苗化培地−3> 1% シユークロース、3% ソルビトール、
1mM プロリン、1000ppmカゼイン加水分解
物、5mM、MES、0.5ppmNAA、2ppmカイネ
チン、0.3%ゲルライトを含むMS固体培地 〔発明の効果〕 本発明により、Eカルスを誘導・増殖させるこ
とが可能となり、植物体の再生率・液体培地中で
の不定胚誘導率は従来法に比べ著しく向上した。
また、良質の不定胚が得られるようになり、不定
胚からの植物体再生率も著しく向上した。すなわ
ち、本発明は、本発明で得たEカルスから植物体
を誘導することにより、イネのクローン増殖を可
能とする。また、本発明により不定胚誘導の過程
を液体培地で行うことが可能となりタンク培養等
による大量生産が可能となつた。組織培養による
クローン増殖技術は採取のための圃場を必要とせ
ず、自然条件にも左右されることなく、工業的に
イネ幼植物体(即ち苗)を生産することを可能と
する。また、本発明では固定品種のみならず未固
定品種にも適用可能であり、従来、品種となり得
なかつた交配後代の未固定系統等をも品種ならし
めることが可能である。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 イネの胚盤を含む外植片を、少なくとも無機
    塩類、炭素源、浸透圧調節剤、及び1種若しくは
    2種以上のオーキシンを含む培地で培養して、前
    記胚盤からカルスを誘導し、前記カルスを前記の
    胚盤の部分より摘出することを特徴とする、再分
    化能の極めて高いカルスの生産方法。 2 請求項1記載の方法でイネカルスを生産し、
    ついで、このカルスを少なくとも無機塩類、炭素
    源、1種若しくは2種以上のオーキシン及び浸透
    圧調節剤を含む液体培地で培養することを特徴と
    するイネカルスの増殖方法。 3 請求項2記載の方法でイネカルスを増殖し、
    このカルスを少なくとも無機塩類、炭素源、及び
    ソルビトールを含む液体培地で培養し、イネの不
    定胚を誘導する方法。 4 請求項3記載の方法でイネの不定胚を誘導
    し、この不定胚を、少なくとも無機塩類、炭素源
    を含む固体培地で培養し、イネの植物体を得る方
    法。 5 請求項4記載の方法において、固体培地の調
    製に用いるゲル化剤として、寒天又はゲルライト
    を用い、かつ寒天を用いる場合には、1.2〜1.6
    %、ゲルライトを用いる場合には、0.4〜0.8%の
    濃度になるように夫々当該固体培地中に添加する
    ことを特徴とするイネの植物体を得る方法。 6 不定胚を固体培地で培養する前に、脱水処理
    することを特徴とする請求項4記載の方法。 7 請求項2記載の方法でイネカルスを増殖し、
    このカルスを少なくとも無機塩類、炭素源を含む
    固体培地で培養し、イネの植物体を得る方法。 8 請求項7記載の方法において、固体培地の調
    製に用いるゲル化剤として、寒天又はゲルライト
    を用い、かつ寒天を用いる場合には、1.2〜1.6
    %、ゲルライトを用いる場合には、0.4〜0.8%の
    濃度となるように夫々当該固体培地中に添加する
    ことを特徴とするイネの植物体を得る方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61265022A (ja) * 1985-05-21 1986-11-22 三井東圧化学株式会社 イネプロトプラストからの植物体の再生方法

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