JPH0462329B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、電動工具用トルク検出器に係り、
特にトルク制御可能なクラツチ式電動ドライバー
等の電動工具において実際の締付けトルクを適正
に検出することができる電動工具用トルク検出器
に関する。

〔従来の技術〕

従来より、電動モータを駆動源として内蔵する
電動回転工具、例えば電動ドライバーが広く普及
するに至つている。この種の電動回転工具では、
作業対象物の締付作業工程が進行して被緊締物の
締上げが限界に達すると、ドライバーの作業軸は
強力な反対負荷に遭遇し強制的にその回転を停止
させられる。このため、作業軸の回転に伴い、こ
れに回転慣性として蓄積された余剰のトルクは、
作業軸からドライバービツトを経てボルトに一挙
に放出され、過締上げによるボルト頭部の折損、
ねじ山破壊等の弊害を招来すると共に反動を作業
者に直接伝達するので、作業能率を著しく低下さ
せる。そこで、このような反対負荷に伴う反動を
解消乃至低減するために、駆動軸と従動軸（作業
軸）との間にクラツチ装置を介在させて有害な反
動の逆伝達を遮断するクラツチ式電動回転工具が
種々開発されるに至つた。また、この種のクラツ
チ式電動回転工具では、所定の反対負荷に遭遇す
るとクラツチが作動してモータの駆動軸から従動
軸への動力伝達を瞬時に遮断するが、この際駆動
源であるモータは通電状態におかれるため、モー
タは空転を継続するので、例えばクラツチの作動
と同期的に連動するスイツチを設けて、このスイ
ツチによりモータへの通電を遮断するよう構成し
た電動回転工具も提案されている（例えば、特公
昭60−5428号公報）。

一方、従来より、前述した電動工具によつて締
付けられるボルトやナツト等の締付けトルクを測
定する手段としてトルクドライバー等が知られて
いる。しかるに、この種のトルクドライバーは、
締付けが完了した被緊締物についてその締上がつ
ている最大トルクまたはこれを緩めるに必要な最
大トルクを検出するものであるから、電動工具に
よつて実際にボルト等の締付けが行われた時の締
付けトルクを検出することができない難点があ
る。このような観点から、発明者は既に、電動モ
ータの回転を減速増強させる遊星減速機構を備え
た電動回転工具において、前記遊星減速機構の一
部にトーシヨンバーを固定し、このトーシヨンバ
ーにストレンゲージを設けて実際の作業に即した
トルク検出を行うトルク検出器を開発した（特開
昭56−94233号公報）。すなわち、このトルク検出
器は、回転駆動源に接続するピニオンギヤと、こ
のピニオンギヤに噛合する遊星歯者と、この遊星
歯者に内接噛合するインターナルギヤとにより構
成される遊星減速機構と、この遊星減速機構を収
納する円筒状ケーシングとからなり、前記インタ
ーナルギヤの外周に前記円筒状ケーシングに穿設
したスリツトを介して半径方向に延出するトーシ
ヨンバーを固定し、更にこのトーシヨンバーと平
行して半径方向に延在する支持体を前記円筒状ケ
ーシングに固定し、前記トーシヨンバーの自由端
部近傍においてインターナルギヤの回動を制限す
るストツパを前記支持体に取付けると共にトーシ
ヨンバーの適宜位置にストレンゲージを配設した
構成からなる。

〔発明が解決しようとする問題点〕

しかしながら、前述した従来のトルク検出器
は、電動回転工具に取付けて、ねじ等の締付け作
業に際し、ねじの締付け開始時から締付け完了時
に至るまでの間のトルク値の変動を精度よく測定
することができるが、トーシヨンバーがモータ回
転軸と直角方向外方に突出するため、電動回転工
具としての取扱いに際し、作業の邪魔になるばか
りでなく、例えばトルク制御機能を備えたクラツ
チ式電動回転工具の場合にクラツチ動作により適
正なトルク検出かできない等の難点がある。

そこで、本発明の目的は、クラツチ式電動回転
工具に対して好適に使用し得ると共に簡単な構成
でコンパクトな構成とするとすることができ、ク
ラツチ動作時のトルク検出を高精度になし得る電
動工具用トルク検出器を提供するにある。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明に係る電動工具用トルク検出器は、電動
モータの出力回転軸にピニオンギヤを介して遊星
歯車を噛合し、この遊星歯車と内接噛合するイン
ターナルギヤを円筒状ケーシング内に回転自在に
構成した遊星減速機構を設け、前記インターナル
ギヤの円形底面に対し鋼球を介して弾力調整可能
なフランジ付きのスリーブのフランジ部で保持し
たクラツチ機構を設け、前記遊星歯車を支持する
円盤に従動軸を結合してなる電動工具において、
前記インターナルギヤの円形底面と対向するケー
シングの一部に切欠を設けてここにトルク検出盤
を回転可能に遊嵌し、このトルク検出盤の一部に
通孔を設けてここに鋼球を挿入し、一方前記トル
ク検出盤の支軸にトーシヨンバーを結合すると共
にこのトーシヨンバーの他端部を前記ケーシング
に対し固定し、さらに前記トーシヨンバーの一部
にストレンゲージを取付けることを特徴とする。

なお、この場合、トルク検出盤は、その一側面
においてケーシングに対し摩擦接触することな
く、またその他側面においてフランジ付きスリー
ブのフランジ部と摩擦接触しないよう配置し、ト
ルク検出盤の支軸をインターナルギアの外周面よ
り外方に設定して鋼球に加えられるトルクにより
回動し得るように構成することができる。

〔作用〕

本発明の電動工具用トルク検出器によれば、イ
ンターナルギヤはクラツチ機構によつて通常その
回動を一時的に阻止されているが、従動軸を介し
てインターナルギヤに加わる反対負荷が次第に増
大すると、この反対負荷がクラツチ機構を構成す
る鋼球を介してトルク検出盤に対し支軸を中心に
これを回動させ、トーシヨンバーにねじ応力を加
える。これにより、トーシヨンバーに生じるねじ
応力歪は、ストレンゲージを介して所要のトルク
値として検出される。一方、前記インターナルギ
ヤに伝達される反対負荷が増大すると、クラツチ
機構を構成する鋼球に対し、コイルスプリングの
押出圧に抗してスリーブを軸方向に押下げ、イン
ターナルギヤを空転させる。この時のトルク最大
値を測定することにより、電動工具が適正なトル
ク設定値で作業を完了したか否かを確認すること
ができる。

〔実施例〕

次に、本発明に係る電動工具用トルク検出器の
実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細
に説明する。

第１図は、本発明に係るトルク検出器をクラツ
チ式電動回転工具に応用した場合の一実施例を示
す要部断面図である。第１図において、参照符号
１０は電動ドライバーの円筒状ケーシングを示
し、このケーシング１０内にはリング状部材の内
側に噛合歯を周設したインターナルギヤ１２とこ
のインターナルギヤの内歯と噛合して自転しつつ
このギヤ１２の内側を公転する遊星歯車１４とか
らなる減速機構が収納されている。遊星歯車１４
は、円盤１６に仮想的に設定した正三角形の各頂
点位置においてそれぞれ軸１８を介して回転自在
に枢着した３個の歯車群からなり、前記円盤１６
はその中心において従動軸２０に固着される。こ
の３個の遊星歯車１４には、モータの回転軸２２
に固着したピニオンギヤ２４が噛合し、また前記
従動軸２０はケーシング１０に突出成形したボス
部２６に回転自在に挿通軸支されている。従つ
て、このインターナルギヤ１２がケーシング１０
に内壁に固定されている限り、電動モータの回転
運動は、ピニオンギヤ２４→遊星歯車１４→イン
ターナルギヤ１２を経て従動軸２０に伝達され
る。すなわち、この場合、インターナルギヤ１２
と遊星歯車１４との組合せは、減速装置そのもの
として好適に作動する。

なお、インターナルギヤ１２は、その外径をケ
ーシング１０の円筒状内壁の内径よりも若干小さ
めに設定された状態で、ケーシング１２内に回転
自在に収納してあり、このインターナルギヤ１２
の一側部円形平面は長溝２８を軸中心から放射状
に１本乃至複数本削設し、この長溝２８中にはロ
ーラ３０が転動自在に嵌挿される。この時、ロー
ラ３０はその転動面の上部半体を長溝２８から外
方へ突出するよう予め設定して、インターナルギ
ヤ１２の円形平面をクラツチ面として構成する。
また、このインターナルギヤ１２のクラツチ面が
対向するケーシング１０の円形底面には、鋼球３
２を介在させ、この鋼球３２を前記ケーシング１
０のボス部２６の外周の挿通したフランジ付きの
スリーブ３６のフランジ部３８で支持するように
構成する。このスリーブ３６をケーシング１０の
底部に向けて弾力的に押付けるために、コイルス
プリング４０をスリーブ外周の同軸的に嵌挿す
る。さらに、ケーシング１０の外部底面に周設し
たねじ溝付きカラー４２にスプリングキヤツプ４
４を着脱自在に取付ける。

以上の構成は、従来のクラツチ式電動回転工具
の基本構成であり、本願発明においては前記クラ
ツチ機構部分にトルク検出機構を組合せることに
よつて、この種電動工具のトルク検出を有効化し
たものである。すなわち、本実施例においては、
ケーシング１０の円形底面の一部を略扇形状に切
欠した嵌合孔４６を設け、この嵌合孔４６に支軸
４８で回転可能に支持したトルク検出盤５０を嵌
入する。この場合、トルク検出盤５０は、その一
側面がケーシング１０の一部に開口した支軸４８
の貫通孔５２の開口面に対しワツシヤ５４を介し
滑動回転し得るよう構成すると共に、他側面はケ
ーシング１０の円形外側面より若干内方に位置す
るよう設定してトルク検出盤５０とフランジ付き
スリーブ３６のフランジ部３８とが摩擦接触しな
いよう構成する。しかるに、前記トルク検出盤５
０の一部には、前記インターナルギヤ１２のクラ
ツチ面に設けたローラ３０と対応する位置に通孔
を５６を穿設し、この通孔に前記トルク検出盤５
０の肉厚寸法より径大の鋼球３２を嵌入する（第
２図および第３図参照）。

このように構成することにより、スリーブ３６
は、ケーシング１０の底部に向けて弾力的に押圧
され、フランジ部３８において鋼球３２を通孔５
６内に保持する。この時、鋼球３２の半体部はケ
ーシング１０内に臨み、ローラ３０の転動面と接
触する。従つて、インターナルギヤ１２は、これ
に配設したローラ３０を介して鋼球３２によりト
ルク検出盤５０に対して保持される。この結果、
従動軸２０の過大な反対トルクが加わると、イン
ナーナルギヤ１２はケーシング１０内を回動し、
ローラ３０は鋼球３２を介してトルク検出盤５０
を同方向に回動させると同時にスリーブ３６をコ
イルスプリング４０の押圧力に抗して軸方向に押
下げ、インターナルギヤ１２を空転させるに至
る。

そこで、本発明においては、前記トルク検出盤
５０の支軸４８の先端部にトーシヨンバー５８を
結合すると共にこのトーシヨンバー５８の他端部
をケーシング１０の一部に固定し、前記トーシヨ
ンバー５８の一側面にストレンゲージ６０を取付
け、このトーシヨンバー５８に作用するねじり応
力歪を検出するよう構成する（第１図参照）。な
お、前記ストレンゲージ６０で検出される応力歪
は、これを電気抵抗の変化として、例えばオシロ
スコープやデイジタルカウンタ等の表示器や記録
器等の出力装置６２に出力させることができる。

次に、このように構成した本発明に係るトルク
検出器の作用につき、一般的なねじ締め作業にお
ける場合のトルク検出を説明する。まず、電動工
具のスイツチレバーを操作して電動モータを回転
させれば、その回転力は回転軸２２に出力され
る。従つて、この回転軸２２の回転はピニオンギ
ヤ２４を介して遊星歯車１４に伝達され、円盤１
６に軸支されたこの遊星歯車１４はインターナル
ギヤ１２を内歯と噛合して自転しつつ前記内歯に
沿つて公転し、従動軸２０に減速増強された回転
力が得られ、ねじの締付け作業遂行される。この
ように、従動軸２０によりねじ締め作業が完了に
近づくと、従動軸２０に対しねじ締め抵抗に伴う
反対負荷が加わつてくるが、この反対負荷は直接
前記インターナルギヤ１２に伝達され、このイン
ターナルギヤ１２をケーシング１０に対し回動さ
せようにとする力となつて表れる。しかしなが
ら、初期の段階において、前記インターナルギヤ
１２はクラツチ機構によつてその回動を阻止され
ているが、反対負荷が次第に増大するとこの反対
負荷がクラツチ機構を構成する鋼球３２を介して
トルク検出盤５０に対し支軸４８を中心にこれを
回動させ、トーシヨンバー６２にねじり応力を加
えることになる。従つて、このトーシヨンバー６
２に生じるねじり応力歪は、ストレンゲージ６２
により所要のトルク値として検出することができ
る。一方、前記インターナルギヤ１２に伝達され
る反対負荷が増大すると、クラツチ機構を構成す
る鋼球３２に対し、コイルスプリング４０の押圧
力に抗してスリーブ３６を軸方向を押下げ、イン
ターナルギヤ１２を空転させるに至る。この時、
前記トルク検出盤５０は原位置に復帰し、トルク
値は０となる。従つて、この間にクラツチ機構に
よつてトルク設定された電動回転工具によるねじ
締め作業により実際のねじ締めトルク最大値を測
定することができる。

なお、この場合、第１図に示すように、カラー
４２の内側とスリーブ３６の外側またはこのカラ
ー４２の内側とスリーブ３６とにより画成される
空間内にクラツチ連動スイツチ６４を配設し、こ
のスイツチ６４の操作部をスリーブ３６のフラン
ジ部３８に当接させ、スリーブ３６が軸方向に所
定のストロースだけ押し下げられた際にスイツチ
６４が作動するよう設定しておくことにより、こ
のスイツチ６４により電動モータの駆動を自動停
止するよう構成すれば好適である。

〔発明の効果〕

前述した実施例から明らかなように、本発明に
よれば、トルク制御可能なクラツチ式電動回転工
具におけるトルク検出を簡単な構成で高精度に達
成することができる。このため、それぞれ異なる
トルク値に設定して所要の作業を行う場合、作業
完了時において所定のトルク値が得られているか
否かを直ちに判断することができるので、この種
電動工具の信頼性の向上並びに作業管理の適正化
を容易に実現することができる。

以上、本発明の好適な実施例について説明した
が、本発明は前記実施例の記載に限定されること
なく、例えばトルク検出盤の構成配置やこれに付
随する支軸、トーシヨンバー等の構成配置につき
種々の変更が可能であり、その他本発明の精神を
逸脱しない範囲内において種々の設計変更をなし
得ることは勿論である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る電動工具用トルク検出器
の一実施例を示す電動工具の要部断面図、第２図
は第１図に示す電動工具のトルク検出部の要部切
開平面図、第３図は第２図に示すトルク検出部の
結合構成を示す要部斜視図である。 １０……ケーシング、１２……インターナルギ
ヤ、１４……遊星歯車、１６……円盤、１８……
軸、２０……従動軸、２２……回転軸、２４……
ピニオンギヤ、２６……ボス部、２８……長溝、
３０……ローラ、３２……鋼球、３６……フラン
ジ付きスリーブ、３８……フランジ部、４０……
コイルスプリング、４２……ねじ溝付きカラー、
４４……スプリングキヤツプ、４６……嵌合孔、
４８……支軸、５０……トルク検出盤、５２……
貫通孔、５４……ワツシヤ、５６……通孔、５８
……トーシヨンバー、６０……ストレンゲージ、
６２……出力装置、６４……スイツチ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 電動モータの出力回転軸にピニオンギヤを介
   して遊星歯車を噛合し、この遊星歯車と内接噛合
   するインターナルギヤを円筒状ケーシング内に回
   転自在に構成した遊星減速機構を設け、前記イン
   ターナルギヤの円形底面に対し鋼球を介して弾力
   調整可能なフランジ付きスリーブのフランジ部で
   保持したクラツチ機構を設け、前記遊星歯車を支
   持する円盤に従動軸を結合してなる電動工具にお
   いて、前記インターナルギヤの円形底面と対向す
   るケーシングの一部に切欠を設けてここにトルク
   検出盤を回転可能に遊嵌し、このトルク検出盤の
   一部に通孔を設けてここに鋼球を挿入し、一方前
   記トルク検出盤の支軸にトーシヨンバーを結合す
   ると共にこのトーシヨンバーの他端部を前記ケー
   シングに対し固定し、さらに前記トーシヨンバー
   の一部にストレンゲージを取付けることを特徴と
   する電動工具用トルク検出器。 ２ 特許請求の範囲第１項記載の電動工具用トル
   ク検出器において、トルク検出盤は、その一側面
   においてケーシングに対し摩擦接触することな
   く、またその他側面においてフランジ付きスリー
   ブのフランジ部と摩擦接触しないよう配置し、ト
   ルク検出盤の支軸をインターナルギヤの外周面よ
   り外方に設定して鋼球に加えられるトルクにより
   回動し得るよう構成してなる電動工具用トルク検
   出器。