JPH0450110Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は伸縮性を有する編物とシリコーンゲル
多孔体とからなる積層体に関するものである。

特に本考案は乳房を切除した女性の身体整姿を
目的とする人工整姿用乳房や、豊胸用のブラジヤ
ー等に使用される身体整姿用のパツド、肩パツ
ド、ひざ当て、腰パツド等のパツド類などに有用
な柔軟性、弾力性を有する積層体に関するもので
ある。

［従来の技術］ 乳癌や乳腺線症などの手術で乳房を除去した女
性の身体の整姿を目的とした人工整姿用乳房や、
豊胸用のブラジヤー等に使用される身体整姿用の
パツド、肩パツド、ひざ当て、腰パツド等のパツ
ド類に有用な柔軟性、弾力性あるいは衝撃吸収性
を有する積層体は、近年ますますその特性の向上
を要求されてきており、できるだけ人体の肉質と
同様の弾力性や柔軟性、あるいは衝撃吸収性並び
に良好な感触を有するようなものが要求されてき
ている。

かかるパツド類の素材としてシリコーンゲル
（シリコーンゴム）を使用することが試みられて
いるが、その比重は１より大きく非常に重たくな
つてしまい、身体に装着した場合に身体の他の部
分の重量バランスと言う点からも違和感が有り、
また、人体の肉質と同じような感触、柔らかさ、
弾力性、動いたときの動的な挙動、あるいは衝撃
を受けた際の衝撃吸収性の点でもまだ十分とは言
えないものである。

また、ポリウレタンフオーム等は重さの点では
軽いが前述のような特性が、更に一層、人体の肉
質とかけ離れた特性を示すものになつてしまう欠
点があるだけでなく、永久歪みが残りやすく、ま
た、黄変して脆化しやすく耐久性に欠ける問題が
ある。

実公昭61−40728号には、天然ゴムやブタジエ
ンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゲル状物
質の多孔体を用いた人工整姿用パツドが提案され
ている。しかしながら、かかるゲル状物質は、実
用化するには通常プラスチツクフイルム等で完全
にカバー・シールして使用されているが、この場
合にプラスチツクフイルムと内部のゲル状物質の
接着が十分でないため剥離が生じ、プラスチツク
フイルムのカバー内でゲル状物質が移動、変形し
てしまい、型くずれしやすく、またフイルムに大
きなしわが生じて、見栄えの点でも感触の点でも
好ましくないという欠点を有している。

本考案者等は更に検討した結果、シリコーンゲ
ル多孔体が重すぎず、また軽すぎず、その柔軟性
や弾力性、ないしは、触れて動かした場合の動的
な挙動等が人体の肉質、例えば乳房等の肉質と極
めてよく類似する性状を示すこと、また、衝撃吸
収性もよいことがわかつたが、かかるシリコーン
ゲル多孔体は極めて粘着性が大きく、手で触れた
場合も身体に装着した場合もこの粘着性が不快感
を生じてしまい大きな欠点となることがわかつ
た。しかも、シリコーンゲル多孔体そのものは引
き裂き強度の点でも十分でなく、洗濯などの取り
扱いがしにくいという問題点もあることがわかつ
た。

そこでさらに本考案者等は検討をすすめ、あら
かじめ所定の形に成形された前記シリコーンゲル
多孔体を編物等の布帛で覆つて縁を縫い合せるこ
とを試みたが、型くずれの点で十分ではなく、ま
た、内部の多孔体も編物と直接接着されていない
ので、強度の点でも問題があることがわかつた。
そこで、前記シリコーンゲル多孔体と編物等の布
帛を接着剤で接着することを試みたが、接着剤が
介在するとせつかくのシリコーンゲル多孔体の有
する柔軟性、伸縮性、弾力性等の点で風合いや感
触が低下し、衝撃吸収性も低下する傾向があるこ
とがわかり、更に本考案者等は、かかる接着剤に
よる柔軟性、伸縮性、弾力性、衝撃吸収性あるい
は感触や風合の低下を防止するため伸縮性を有す
る編物等の布帛を所望の形状の金型に入れ、更に
その上から直接液状のシリコーンゲル多孔体用原
料を注入して一体成型し、編物とシリコーンゲル
多孔体とを直接一体化積層することを試みた。

しかしながらこの積層体は、編物の表面から触
れた場合でもかなり強い粘着性を示しており、風
合い、感触が大切な身体装着用の積層体として
は、実用性が劣る欠点を有していた。しかも、シ
リコーンゲルが編物表面に露出してくるため、編
物と肌との間の編物の微小な凹凸によつて保たれ
ていた空隙による通気性も失われてしまうという
欠点もあることがわかつた。

以下、第８図を用いてこの点を説明する。

第８図は上記の積層体の一部断面拡大概念図で
ある。

１が伸縮性を有する編物であり、編物を構成す
る繊維を１ａで示してある。１ｂは編物の編目孔
であり、２はシリコーンゲル多孔体、２ａはシリ
コーンゲル多孔体を構成するシリコーンゲルであ
る。

本考案者等が検討したところでは第８図に示さ
れるようにシリコーンゲル多孔体２を構成するシ
リコーンゲル２ａが編物１を構成する繊維１ａの
隙間である編目孔１ｂを貫通して編物表面に到達
しているため、粘着性が生じ、また、編物を構成
する繊維による微小な凹凸を埋めてしまう場合も
生じるので、汗が逃げる通路がほとんどなくなり
通気性も失われるものと思われる。

［考案が解決しようとする課題］ 本考案は、上述の従来品ならびに、本考案者等
の検討、開発中の積層物の上述の欠点を改良し、
人工整姿用乳房や、豊胸用のブラジヤーのパツ
ド、肩パツド、ひざ当て、腰パツド等のパツド類
などとして有用な弾力性や柔軟性、あるいは衝撃
吸収性、感触を有し粘着性等の不快感がなく、永
久歪みも小さく、引き裂き強度も十分で、耐久性
があり、洗濯も可能で軽いなどのすぐれた性質を
有する積層体を提供することを目的とするもので
ある。

［課題を解決するための手段］ 前記課題を解決するため本考案は次ぎの構成を
有するものである。

(1) 伸縮性を有する編物とシリコーンゲル多孔体
とからなる積層体であつて、前記編物の編目孔
には前記多孔体を構成するシリコーンゲルが侵
入しているが前記編目孔を貫通して編物表面に
は到達していないことを特徴とする柔軟性、弾
力性を有する積層体。

(2) シリコーンゲル多孔体の見掛け密度が0.3〜
0.7g／cm³である前記(1)項に記載の柔軟性、弾力
性を有する積層体。

［作用］ 本考案の積層品は、伸縮性を有する編物を用い
ており、かつ、シリコーンゲル多孔体を構成する
シリコーンゲルが、前記編物の編目孔に侵入して
いるが編物表面には到達していない構成をとるこ
とにより編物が伸縮性であるので、シリコーンゲ
ル多孔体の有する伸縮性、弾力性、柔軟性をあま
り低下させることがないし、またシリコーンゲル
が編物の表面にまで到達していないので編物表面
に粘着性の不快感が生じることがない。しかも、
シリコーンゲル多孔体のシリコーンゲルが編目孔
に侵入しているので編物とシリコーンゲル多孔体
が剥離して編物に大きなしわが生じることもな
く、引き裂き強度が高く、耐久性も大きく、永久
歪みも小さい、人体の肉質と極めて類似した柔軟
性、弾力性を有し、良好な感触、風合いあるい
は、衝撃吸収性を有する積層物を提供し得る。

［実施例］ 以下、図面を用いて本考案を更に詳細に説明す
る。

第１図は、本考案の積層体の一実施例の断面概
略図を示す。

１が伸縮性を有する編物であり、２がシリコー
ンゲル多孔体である。この一部断面拡大概念図を
示したものが第７図である。１は編物であり編物
を構成する繊維を１ａで示してある。１ｂは編物
の編目孔であり、２はシリコーンゲル多孔体、２
ａはシリコーンゲル多孔体を構成するシリコーン
ゲルである。

本考案においてはシリコーンゲル多孔体１を構
成するシリコーンゲル２が編物１の編目孔１ｂに
侵入しているが、前述した第８図の如く、この編
目孔１ｂを貫通して編物表面まで到達していな
い。

つまり、本考案の積層体の編物表面が身体に触
れても、直接粘着性のシリコーンゲルが身体に触
れないので粘着感が大巾に軽減される。また、編
物を構成する繊維間の微細な凹凸空隙が残るた
め、平坦なフイルムのように肌にべつたりとつい
てしまい汗の逃げ場がないというような通気性の
欠点も軽減される。

しかも、シリコーンゲル多孔体２を構成するシ
リコーンゲル２ａが編物の編目孔には侵入してい
るので、編物とその下側のシリコーンゲル多孔体
が簡単に剥離することはなく、したがつて編物と
シリコーンゲル多孔体にズレが生じて編物に大き
なシワが生じて見栄えや感触を低下させることも
防止でき、シリコーンゲルを用いているので、耐
久性は極めてよく脆化による耐久性の低下も少な
いので、脆化して洗濯中にぼろぼろになる欠点も
改善され、編物と接着しているので、引き裂き強
度も高められているのである。

第２図〜第５図は、本考案の別の態様を示す実
施例である。

第２図は、編物１がシリコーンゲル多孔体２の
両側に積層された例であり、第３図は、編物１が
シリコーンゲル多孔体２の全面を被覆した態様の
ものであり、特に、シリコーンゲル多孔体が外部
に直接露出する部分を少なくする必要がある場合
の態様を示した実施例である。

第４図は、断面半円形状の人口整姿用の乳房の
実施例であり、シリコーンゲル多孔体２の周囲を
伸縮性編物であるトリコツト編物１′で被覆され
ている。第５図は、断面略三日月状の豊胸用ブラ
ジヤー等に好適なパツドの実施例である。シリコ
ーンゲル多孔体２の周囲を伸縮性編物であるトリ
コツト編物１′で被覆されている。

尚、伸縮性を有する編物としてはトリコツト編
物や各種の丸編（例えば天竺など）等が代表的例
であるが、本考案の目的を阻害しない限り、他の
伸縮性を有する編物を使用してもよいことは勿論
である。織物や、または、織物と同様に伸縮性の
ほとんどない編物を用いた場合には、シリコーン
ゲル多孔体の有する優れた柔軟性、弾力性等、人
体の肉質と類似の感触、挙動が十分に発揮されな
くなるし、衝撃吸収性も低下するので好ましくな
い。伸縮性を有する編物を構成する素材として
は、特に制限はなく、ポリエステル繊維やポリア
ミド繊維等通常使用される繊維が主として用いら
れるが、繊維自体が伸縮性を有するポリウレタン
系の繊維を混合して用いることも好ましい。

また、編物はその表面が起毛されていると一層
感触がよくなり、起毛繊維によつて編物表面が覆
われるので、粘着感防止にはより効果的である。

次に、本考案の前述第７図で説明した編物の編
目孔にはシリコーンゲル多孔体を構成するシリコ
ーンゲルが侵入しているが、編目孔を貫通して編
物表面にはシリコーンゲルが到達してしない構造
を実現するための一つの方法を第６図を参照しな
がら説明する。

まず、第６図Ａに示すように編物１とポリ塩化
ビニルフイルム３を重ね、これをポリ塩化ビニル
フイルムの軟化温度、例えば70℃〜170℃に加熱
して目的とする形状に担当する凹部が形成された
金型を用いてポリ塩化ビニルフイルムが金型に接
するように真空成形する。そうするとポリ塩化ビ
ニルフイルムは軟化していているので編物１の編
目孔１ｂから編物裏側に向けて少し侵入した状態
になつて編物に仮接着される。この状態を示した
ものが第６図Ｂである。

このようになつたポリ塩化ビニルフイルム３
と、編物１の仮接着物を同じ金型か又は、同様の
形を有するシリコーンゲル多孔体成形用の金型に
ポリ塩化ビニルフイルム３側を金型に沿つて密着
させ、次いで編物１の側からシリコーンゲル多孔
体の原料液状組成物を流し込み、必要なら更にそ
の上に前述と同様の編物とポリ塩化ビニルフイル
ムの仮接着物を編物側がシリコーンゲル多孔体の
原料液状組成物に接するように密着させシリコー
ンゲル多孔体をゲル化させて成形し、次いでこの
成形物を取り出して前述ポリ塩化ビニルフイルム
をはがすことにより製造できる。かかる方法によ
ると、加熱、軟化したポリ塩化ビニルフイルム２
が編物の表側から編目孔１ｂに多少侵入するた
め、編物の裏側から液状のシリコーンゲル多孔体
原料が編目孔を貫通して編物表面にまでは到達し
ないが、編物の編目孔には侵入して編物とシリコ
ーンゲル多孔体との接着がなされる。

このように編物とシリコーンゲル多孔体は別
途、接着剤を用いて貼り合せたものではないの
で、風合い、弾力性、伸縮性、柔軟性、衝撃吸収
性などが損なわれずに接着が行われる。

尚、本考案のシリコーンゲル多孔体は、連続気
泡であつても独立気泡であつても、その両者が共
存するものでもよいが、連続気泡を含むものが通
気性の点で好ましい。また、シリコーンゲル多孔
体の見掛け密度は、弾力性、柔軟性、衝撃吸収
性、適当な感触の重さ等の点から0.3〜0.7g／cm³
の範囲のものを用いることが好ましい。

本考案の積層体は前述した人工整姿用乳房や豊
胸用ブラジヤーのパツド等の人工整姿用パツドや
肩パツド、ひざ当て、腰パツド等のパツド類、あ
るいは、サイクリングパンツの臀部、膝当て付き
サツカーのソツクス膝当て部分、保温保冷用サポ
ーター、スキーパンツなどのパツド類として有用
であるが、各種ソツクスの滑り止め、ヘルメツト
の緩衝材などスポーツ関係、便座マツト、家具用
下敷マツトなどのインテリア関係、その他、特殊
メイク用パツトとか幼児用の玩具などへも適用す
ることができる。

［考案の効果］ 本考案の積層体は、伸縮性を有する編物とシリ
コーンゲルの多孔体が用いられており、かつ、シ
リコーンゲル多孔体に編物が直接接着されている
ので人体の肉質と類似した柔軟性、弾力性、感触
を有し、また、良好な衝撃吸収性を有しており、
シリコーンゲルが編物の表面に到達していないの
でシリコーンゲル多孔体を使用することによる粘
着性が防止でき、装着した人の身体に触れても粘
着性による不快感がなく、通気性を保ち、多孔体
であるので重さも適当に調和がとれ、違和感がな
く、耐久性、十分な引き裂き強度を有し、洗濯の
取扱いも容易な積層体を提供し得る。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第５図は本考案の各々実施例の態様を
示す断面概略図。第６図は、本考案品を製造する
工程の一部を示す断面概念図。第７図は、本考案
の積層品の一部断面拡大概念図。第８図はシリコ
ーンゲル多孔体を構成するシリコーンゲルが編物
の編目孔を貫通して編物表面に到達している状態
を示す積層品の一部断面拡大概念図である。 １……伸縮性を有する編物、１ａ……編物を構
成する繊維、１ｂ……編目孔、１′……トリコツ
ト編物、２……シリコーンゲル多孔体、２ａ……
シリコーンゲル、３……ポリ塩化ビニルフイル
ム。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 伸縮性を有する編物とシリコーンゲル多孔体
   とからなる積層体であつて、前記編物の編目孔
   には前記多孔体を構成するシリコーンゲルが侵
   入しているが前記編目孔を貫通して編物表面に
   は到達していないことを特徴とする柔軟性、弾
   力性を有する積層体。 (2) シリコーンゲル多孔体の見掛け密度が0.3〜
   0.7g／cm³である請求項(1)に記載の柔軟性、弾力
   性を有する積層体。