JPH0438123Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、剛性の内歯歯車とこれに噛み合わせ
た可撓性外歯歯車との噛み合い運動によつて減速
機構を構成する噛み合い式歯車装置に関する。さ
らに詳しくは、本考案は内歯歯車が並べて配置さ
れた二つの内歯歯車からなるフラツト型の撓み噛
み合い式歯車装置における応答特性の改良に関す
るものである。

（従来の技術） 代表的な撓み噛み合い式歯車装置は、剛性円形
内歯歯車と、内歯歯車の内側に設けられ該歯車に
２個所で噛み合うよう楕円形に変形され、内歯歯
車の歯数より2n枚（ｎは正の整数である）少な
い歯数にされた可撓性外歯歯車と、外歯歯車の内
側に嵌合して該外歯歯車を楕円形に撓ませるウエ
ーブ・ジエネレータとから成り、このウエーブ・
ジエネレータは、内側の楕円形のカム板と、カム
板の外周に嵌合して楕円形に変形して撓められた
ボールベアリングとから成り、ウエーブ・ジエネ
レータのベアリングの外輪が外歯歯車に嵌合して
いる。従つて、この可撓性の外歯歯車は楕円形に
撓んだ状態となつている。

このような構成の撓み噛み合い式歯車装置は、
ウエーブ・ジエネレータのカム板に設けられた入
力軸を回転させると、外歯歯車の楕円形が回転さ
せられ、この楕円形の回転により両歯車がその歯
数差に対応して相対回転し、内歯歯車または外歯
歯車に出力軸を設けると、出力軸は入力軸に対し
て大きい減速比で回転する。従つて、この撓み噛
み合い式歯車装置は、少数の要素で大きな減速比
を得ることができるので精密機械等に多用されて
いる。

この撓み噛み合い式歯車装置としては、カツプ
型およびフラツト型と呼ばれるものが知られてい
る。このうち、フラツト型と呼ばれるものは、環
状の外歯歯車の外側に偏平な内歯歯車を２つ並べ
た構造となつている。これらうちの一方の内歯歯
車の歯数は外歯歯車の歯数より2n枚多くしてあ
り、他方の内歯歯車の方は外歯歯車の歯数と同じ
にしてある。この形式のものは、全体として偏平
であり、占有スペースが小さいという利点があ
り、一方の内歯歯車を入力軸に対して大きな減速
比で回転させることができ、このため、上述した
ように精密機械等の分野で多用されている。

（考案が解決しようとする課題） 上述したように、ウエーブ・ジエネレータは外
歯歯車を楕円形に撓ませる機能があるので、それ
を行うのに必要な剛性を備えていなければならな
い。このような剛性を有する材料でウエーブ・ジ
エネレータが製造されるので、この部分の重量が
増加する傾向にある。この重量の増加はウエー
ブ・ジエネレータの入力慣性を大きくし、これが
装置全体の応答性を低下させる原因となつてい
た。

また、ウエーブ・ジエネレータの楕円形形状に
よつて１回転当たり２回の振動が発生し、この振
動が装置の固有振動数に対して共振することがあ
り、ロボツト等の精密機械では厄介な問題となつ
ていた。なお、この共振は、比較的低い速度の時
に生じていることが経験的に知られている。

従つて、本考案の目的は、ウエーブ・ジエネレ
ータの入力慣性を低減でき、また、低い速度で多
く発生する共振を減少できるように構成されたフ
ラツト型の撓み噛み合い式歯車装置を実現するこ
とにある。

（課題を解決するための手段） かかる目的を達成するため、本考案は、二個の
円形形状をした内歯歯車を並べて配置した構成の
内歯歯車と、その内側の可撓性外歯歯車と、該外
歯歯車を楕円形に撓ませて変形させ、その形状を
回転させるウエーブ・ジエネレータと、このウエ
ーブ・ジエネレータを回転させる入力軸とから成
り、ウエーブ・ジエネレータの回転により内歯歯
車と外歯歯車との間に相対回転を生じさせるよう
に構成されたフラツト型の撓み噛み合い式歯車装
置において、次の構成を備えたことを特徴として
いる。すなわち、上記の内歯歯車のうちの固定支
持された第１の内歯歯車にはその内周面に別個の
内歯部分が形成され、この内歯部分を臨む入力軸
の外周面には、外歯部分が形成されている。ま
た、これら内歯部分と外歯部分との間には双方の
歯部に噛み合つた状態に複数個の遊星歯車が配置
され、これらの遊星歯車は回転可能な状態にウエ
ーブ・ジエネレータのカム板部分の端面に支持さ
れている。

このように、本考案の装置においては、上記の
内歯部分と、外歯部分と、複数個の遊星歯車とに
よつて減速歯車機構が構成されている。従つて、
入力軸の回転力は、この減速歯車機構を介して減
速された後にウエーブ・ジエネレータに伝達され
る。

（実施例） 以下、第１図および第２図を参照して本考案の
実施例を説明する。

本例のフラツト型の撓み噛み合い式歯車装置１
の基本構成は従来のものと同様であり、偏平な円
環形状をした二つの内歯歯車１１，１２を、可撓
性の外歯歯車１３の外周に並べて配置してあり、
外歯歯車の内側には楕円形のウエーブ・ジエネレ
ータ１４を嵌め込んだ構造としてある。上記の二
個の内歯歯車のうちの一方の内歯歯車１１は機枠
等に固定支持してあり、他方の内歯歯車１２は回
転可能としてある。この後者の内歯歯車１２の端
部にはその内周面を半径方向の内側に向けて延長
した円盤状の内フランジ１２１を一体に形成して
ある。この内フランジの部分が、出力軸（図示せ
ず）にボルト結合によつて連結可能となつてい
る。ここに、固定支持した側の内歯歯車１１の内
歯の個数は、外歯歯車１３の外歯の歯数よりも
2n枚だけ多くし、他方の内歯歯車１２の歯数を
外歯歯車１３の歯数と同じにしてある。

上記の外歯歯車１３の内側に嵌め込んだウエー
ブ・ジエネレータ１４は、楕円形の輪郭のカム部
材１４１と、このカム部材の楕円形の外周面に取
り付けた二個のボールベアリング部１４２，１４
２から構成してある。カム部材１４１の内歯歯車
１２の側の部分は、上記の内フランジ１２１を臨
む位置まで延長してあり、この部分の外周面と上
記の内フランジ１２１の内周面とをベアリング１
５を介して連結し、これによつてウエーブ・ジエ
ネレータ１４の軸線方向の動きを制止するように
してある。また、このカム部材１４１にはその軸
線方向に貫通孔１４２を開けてある。この孔内に
は、内歯歯車１１の側から入力軸１６を挿入さ
せ、孔の内周面に取り付けたベアリング１７によ
つてこの入力軸１６を回転可能に支持してある。

上記の入力軸１６には、内歯歯車１１の側の端
部分の外周面に外歯部分１６１を形成してある。
この外歯部分１６１を臨む位置にある、上記の内
歯歯車１１の端部内周面には、内歯部分１１１を
形成してある。これらの外歯部分および内歯部分
の間に形成される円環状の空間に面するカム部材
の端面１４３には、円周方向にそつて等しい間隔
で三個のピン軸１８，１８，１８を固着してあ
り、これらのピン軸によつて、外歯部分および内
歯部分に噛み合わせた遊星歯車１９，１９，１９
を回転可能に支持させてある。

この構成の装置において、入力軸１６が回転す
ると、この回転は三個の遊星歯車１９を介して減
速されて、ウエーブ・ジエネレータ１４に伝わ
る。このようにして減速された回転数でウエー
ブ・ジエネレータ１４が回転すると、この外周に
配置された可撓性の外歯歯車１３の楕円形状が回
転する。この楕円形状の回転が形成されると、こ
の外歯歯車は固定された内歯歯車１１よりも歯数
が2n個少ないので、この固定された内歯歯車に
対して相対回転する。この相対回転運動は、外歯
歯車と同一の歯数を有する他方の内歯歯車１２を
介してそこに連結された出力軸（図示せず）から
取り出される。

ここで、第２図に示すように、本例では三個の
遊星歯車１９を配置しているが、これらは入力軸
１６の回転運動をカム板１４２に均等に伝達する
のに有効である。しかるに、この遊星歯車の個数
は一個以上の任意の個数とすることができる。

このように構成した本例においては、入力軸１
６を介して入力された回転力は、上記の外歯部分
１６１、内歯部分１１１および遊星歯車１９によ
つて構成された減速歯車機構によつて減速された
後にウエーブ・ジエネレータ１４に伝達される。
このために、撓み噛み合い式歯車装置１の入力慣
性の大部分を占めているウエーブ・ジエネレータ
１４の慣性は、前段の減速比を１／ａとすれば、
二乗倍の（１／a²）に減少する。これは撓み噛み
合い式歯車装置全体の入力慣性が大幅に減少する
ことを意味している。従つて、この減速歯車機構
の存在により、高い応答特性を有する撓み噛み合
い式歯車装置が実現されたことになる。

また、一般に、撓み噛み合い式歯車装置では、
ウエーブ・ジエネレータ１４が１回転する毎に２
回の振動が生じ、この振動が系の固有振動数に一
致すると共振を起こすことが知られている。産業
用ロボツト等では、この共振が比較的低い速度の
時に生じており問題となつていた。この問題も、
ウエーブ・ジエネレータ１４の前段で減速される
ので、共振振動数が減速比分の１すなわち速比ａ
に上がることになり、低速時の共振の問題がなく
なる。更に、ウエーブ・ジエネレータ１４のカム
板１４１の回転は低く抑えられるので、撓み噛み
合い式歯車装置の心臓部分となるウエーブ・ジエ
ネレータの寿命が延長され、これにより、撓み噛
み合い式歯車装置全体の寿命も向上する。

さらに、上記の例においては、減速歯車機構を
構成する内歯部分１１１が、内歯歯車１１の内歯
が形成された内周面の一部に形成されている。従
つて、上記の内歯部分１１１を、内歯歯車の内歯
で兼用することができる。

（考案の効果） 本考案によれば、フラツト型の撓み噛み合い式
歯車装置において、そのウエーブ・ジエネレータ
と入力軸との間に減速歯車機構を配置し、入力軸
からの入力をこの機構を介して減速した後にウエ
ーブ・ジエネレータに伝達するようにしている。
したがつて、装置全体の入力慣性を大幅に減少す
ることができ、応答特性が改善され、低速時の共
振の問題がなくなり、また、ウエーブ・ジエネレ
ータの寿命が延長される等の利点が得られる。更
に、このように、ウエーブ・ジエネレータの回転
が減速されるので、ウエーブ・ジエネレータに供
給される潤滑油の撹拌に伴う損失が少なくなり、
このため撓み噛み合い式歯車装置全体の効率が向
上する利点もある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示すフラツト型撓
み噛み合い式歯車装置を示す断面図であり、第２
図は第１図の装置を矢印の方向から見た端面図
である。 符号の説明、１……フラツト型の撓み噛み合い
式歯車装置、１１……固定側の内歯歯車、１２…
…回転可能な側の内歯歯車、１３……可撓性の外
歯歯車、１４……ウエーブ・ジエネレータ、１４
１……ウエーブ・ジエネレータのカム板、１４２
……ウエーブ・ジエネレータのボールベアリング
部、１６……入力軸、１９……遊星歯車、１１１
……内歯部分、１６１……外歯部分。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 円形の剛性内歯歯車と、その内側に設けられた
   可撓性外歯歯車と、該外歯歯車を楕円形に撓ませ
   て変形させ、その形状を回転させるウエーブ・ジ
   エネレータと、該ウエーブ・ジエネレータを回転
   させる入力軸とを備え、前記内歯歯車は前記外歯
   歯車の外側に２つ並べて配置された第１および第
   ２の内歯歯車からなり、前記第１の内歯歯車は固
   定され他方の第２の内歯歯車は回転可能にされて
   おり、前記ウエーブ・ジエネレータの回転によ
   り、前記第２の内歯歯車と外歯歯車と間に相対回
   転を生じさせるようになつたフラツト型の撓み噛
   み合い式歯車装置において、 前記第１の内歯歯車にはその内周面に別個の内
   歯部分が形成され、この内歯部分を臨む前記入力
   軸の外周面には、外歯部分が形成され、これら内
   歯部分と外歯部分との間には複数個の遊星歯車が
   双方の歯部に噛み合つた状態に配置され、これら
   の遊星歯車は回転可能な状態に前記ウエーブ・ジ
   エネレータのカム板部分の端面に支持されている
   ことを特徴とする噛み合い式歯車装置。