JPH042768B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は、シリンダヘツドを締付ボルトによ
つてシリンダに締付け固定すると共に、カム軸内
に潤滑油の通路を形成した頭上カム軸式内燃機関
に関するものである。

（発明の背景） 内燃機関においては、シリンダヘツドは締付ボ
ルトによつてシリンダに締付け固定される。ここ
に締付ボルトは通常上方すなわちシリンダヘツド
側から工具によつて締付けられるため、特に頭上
カム軸を有する内燃機関では、この締付ボルトを
締付けるための工具が、カム軸や軸受キヤツプと
干渉する場合が生じ、締付けができないことがあ
り得る。一般に内燃機関ではカム軸や動弁機構を
分解することなくシリンダヘツドの増締めが行え
ることが望ましく、この締付け作業は対角位置の
締付ボルトを順番に均等に締付けて行く必要があ
るため、これらのシリンダヘツドの締付ボルトは
その締付け工具がカム軸やその軸受キヤツプなど
と干渉しないように配置しなければならない。こ
のため締付ボルトやカム軸あるいは軸受キヤツプ
などの配置自由度が減つたり機関が大型化すると
いう問題があつた。

特に２本の頭上カム軸で吸・排気弁を開閉駆動
する内燃機関の場合には、カム軸をこれらの締付
ボルトと干渉しないように締付ボルトの外側へ配
置しなければならず、吸・排気弁の挟み角が大き
くなつて燃焼室形状の選択自由度が減少するとい
う問題もあつた。

一方カム軸により吸・排気弁を開閉する動弁系
を潤滑するために、通常カム軸内に潤滑油通路を
設け、この通路によつてカム軸付近に潤滑油を導
いている。この場合このカム軸内の潤滑油通路に
流入・流出する通路を設ける必要があり、構造が
複雑になつたり、カム軸が長くなつて機関が大型
化するという問題もあつた。

（発明の目的） この発明はこのような事情に鑑みなされたもの
であり、カム軸を保持する軸受キヤツプを取り外
すことなくシリンダヘツドの締付ボルトの締付け
を能率良く行うことができ、締付ボルトやカム軸
あるいは軸受キヤツプの配置自由度を増やし、２
頭上カム軸式とした場合に燃焼室形状の選択自由
度も増やすことができ、またカム軸に潤滑油を導
く潤滑油通路の構成を簡単にしてカム軸が長くな
るのを防ぎ、機関の小型化に適する頭上カム軸式
内燃機関を提供することを目的とするものであ
る。

（発明の構成） この発明によればこの目的は、シリンダヘツド
を締付ボルトによつてシリンダに締付け固定する
と共に、前記シリンダヘツド側の軸受部とこれに
対向して固定される軸受キヤツプとの間にカム軸
を回転自在に保持した頭上カム軸式内燃機関にお
いて、前記締付ボルトを前記軸受部の直下に配設
すると共に、この締付ボルトの締付け工具を挿入
するための挿入孔を前記軸受キヤツプとカム軸と
軸受部とに連続して形成し、前記軸受部側の挿入
孔に潤滑油通路を連通させ、前記カム軸側の挿入
孔にはカム軸の軸芯方向に形成されて他の軸受部
に連通する潤滑油通路を連通させたことを特徴と
する頭上カム軸式内燃機関、により達成される。

ここに、前記軸受部側の挿入孔に連通する潤滑
油通路は、前記軸受部側の挿入孔の周壁に開口さ
せることができる。

（実施例） 第１図は本発明の一実施例の構造を示す断面
図、第２図はその−線断面図である。

これらの図において、ａはクランクケース、ｂ
はシリンダ、ｃはシリンダヘツドであり、これら
三者は位置決め部材１，２を介して位置決めされ
ると共に、複数本の締付ボルト３を介して締付け
固定されている。

４，５はクランクケースａとシリンダｂの各合
い面に対向して形成された凹部、６，７はシリン
ダｂとシリンダヘツドｃの各合い面に対向して形
成された凹部であり、これら凹部４，５，６，７
には夫々位置決め部材１，２が嵌め合わされてク
ランクケースａ、シリンダｂ及びシリンダヘツド
ｃの位置決めがなされている。

一方、前記締付ボルト３には中間に軸部３ａを
はさんで両端にネジ部３ｂ，３ｃが形成され、そ
の下側のネジ部３ｂがクランクケースａに形成さ
れたネジ孔８に螺着され、軸部３ａがシリンダｂ
及びシリンダヘツドｃに形成された挿通孔９，１
０に間隙をもつてゆるく挿通されている。

１１は、前記シリンダヘツドｃの挿通孔１０の
上端に連なつてそれよりも大径に形成された第１
の挿入孔であり、その上端は後記するシリンダヘ
ツドｃ上面の軸受部c′に開口している。この軸受
部c′側の挿入孔１１内には、前記締付ボルト３の
上側のネジ部３ｃが臨んでいる。

１２は前記挿入孔１１内において締付ボルト３
のネジ部３ｃに螺着されたナツトであり、その下
端がワツシヤ１３を介して挿入孔１１の底部に係
合している。このナツト１２は下半部に締付ボル
ト３のネジ部３ｃを螺合するネジ孔１２ａが形成
され、上半部に係止孔１２ｂが形成されている。
前記係止孔１２ｂは断面六角形状とされ、六角レ
ンチ等の工具をこの係止孔１２ｂに係止してナツ
ト１２を締付け或いはゆるめることができるよう
にするものである。このように前記ナツト１２を
締付けることによりシリンダヘツドｃ、シリンダ
ｂ及びクランクケースａが締付ボルト３を介して
締付け固定される。なおこのナツト１２の上方に
は、第１図から明らかなように、このナツト１２
を締付ボルト３のネジ部３ｃから螺脱するのに要
する間隙が設けられている。

一方、前記シリンダヘツドｃの上部には吸気弁
及び排気弁（双方とも図示せず）を夫々開閉する
２本のカム軸１４が設けられる。このカム軸１４
は軸芯が締付ボルト３の軸線と一致するようこの
ボルト３の直上に配置され、その長手方向の複数
箇所のジヤーナル部１４′がシリンダヘツドｃに
形成された軸受部c′と、その上面にボルト１５で
固定される軸受キヤツプ１６との間に回転自在に
保持されている。ここに、シリンダヘツドｃに形
成された軸受部c′には前記第１の挿入孔１１が開
口しているから、カム軸１４のジヤーナル部１
４′はこの挿入孔１１に臨む部分においてそこに
収容された締付ボルト３に対向する。

１７は前記カム軸１４のジヤーナル部１４′に
締付ボルト３と対応する位置に設けられた第２の
挿入孔すなわちカム軸１４側の挿入孔であり、カ
ム軸１４の径方向に貫通してカム軸１４の所定回
転位置において締付ボルト３と軸線が一致するよ
うになつている。

１８は前記第２の挿入孔１７と連絡するよう軸
受キヤツプ１６に設けられた第３の挿入孔であ
り、その軸線は締付ボルト３の軸線と一致して軸
受キヤツプ１６上面に開口され、その開口端が栓
部材１９で液密に閉塞されている。この結果第
１、第２、第３の挿入孔１１，１７，１８は、カ
ム軸１４の所定回転角度位置で、締付ボルト３の
着脱用工具を挿入可能とするように連続する。

２０は前記キヤツプ１６やカム軸１４を覆うカ
バーである。このカバー２０は、ボルト２１によ
り軸受キヤツプ１６に固定され、その周縁はシリ
ンダヘツドｃ上面に当接し、その内面は前記栓部
材１９を上方から押圧している。

なお図中１４″はカム軸１４の中間部において
ジヤーナル部１４′に連なつて形成された大径部
であり、その側面が軸受キヤツプ１６の壁面に当
接してカム軸１４に作用するスラスト荷重を受け
るようになつている。

このように構成された内燃機関において、その
組立後シリンダヘツドｃの締付けを強化する増締
めを行いたい場合は、先ずカバー２０を外して軸
受キヤツプ１６の第３の挿入孔１８に嵌め合う栓
部材１９を取外す。そして、カム軸１４を回動さ
せて第２の挿入孔１７の位置を前記挿入孔１８と
第１の挿入孔１１とに連続するように位置合せす
る。すなわち、挿入孔１１，１７，１８を締付ボ
ルト３と同一軸線上に位置させるわけであるが、
その操作はカム軸１４を直接回動させるか又はク
ランク軸（不図示）を介してカム軸１４を間接的
に回動させて行われる。

本実施例ではカム軸１４を直接回動させ得るよ
うな手段が設けられている。すなわちカム軸１４
には、前記カバー２０を取去ることにより露出す
る部分に工具を係止できるような断面六角形状の
係止部１４ａが設けられている。係止部１４ａを
利用してカム軸１４を回動させることにより挿入
孔１７の位置合わせが行われるが、実施例ではタ
イミングチエーンにより２本のカム軸１４が夫々
連動して回動され、それらの各挿入孔１７が全て
同時に締付ボルト３と軸線が一致するようにして
作業を容易に行えるようにしてある。

このように第２の挿入孔１７の位置合わせが行
われた状態で第３の挿入孔１８及び第２の挿入孔
１７を介して第１の挿入孔１１内に締付工具を挿
入し、この工具をナツト１２に係止してそれを締
付けることによりシリンダヘツドｃが増締めされ
る。

またナツト１２を緩めればこのナツト１２の上
方にはこのナツト１２を螺脱するのに要する間隙
が設けられているので、シリンダヘツドｃをシリ
ンダｂに密着させたままナツト１２を螺脱するこ
とができ、カム軸や動弁機構を取外すことなくシ
リンダヘツドｃを取外すことができる。

一方、前記カム軸１４を軸受する軸受キヤツプ
１６及びシリンダヘツドｃの軸受部は潤滑する必
要があるが、その潤滑はクランクケースａ内から
圧送される潤滑油によつて行われるようになつて
いる。すなわち、クランクケースａ内から送出さ
れる潤滑油はこのクランクケースａとシリンダｂ
との位置決め部材１内に送られ、そこから図１の
左側に示す一方の締付ボルト３の軸部３ａと挿通
孔９，１０の間を通つてそのシリンダヘツドｃ側
の挿通孔１０の内側に開口する通路２２へと送ら
れる。そして、潤滑油は前記通路２２から左右一
対の第１の挿通孔１１，１１の内壁に開口する通
路２３，２４に振り分けられ、これらの通路２
３，２４を介して各挿入口１１，１１内へ送られ
る。

前記挿入孔１１内に流入した潤滑油はこれら挿
入孔１１とナツト１２との間隙から上方へ噴出し
てカム軸ｃのジヤーナル部１４′を潤滑する。ま
たこの潤滑油は、カム軸１４の挿入孔１７内に入
つて、そこからこの挿入孔１７と直交してカム軸
１４の軸線方向に延びる潤滑油通路２５内へ流入
する。そして潤滑油はこの通路２５を介して他の
挿入孔１１へ送られ、その挿入孔１１周囲の軸受
部を潤滑する。

（発明の効果） この発明は以上のように、カム軸を支持するシ
リンダヘツド側の軸受部の直下にシリンダヘツド
をシリンダに固定する締付ボルトを配置し、この
締付ボルトの締付け工具を挿入する挿入孔を軸受
キヤツプとカム軸と軸受部とに連続して形成した
ものであるから、軸受キヤツプを取り外すことな
く締付ボルトを締付けることができる。また工具
とカム軸や軸受キヤツプとの干渉が避けられるの
で締付ボルトやカム軸や軸受キヤツプの配置自由
度が増え、機関の小型化が可能になる。特に２本
の頭上カム軸を有する場合には、両カム軸を接近
させて吸・排気弁の挟み角を小さくし望ましい燃
焼室形状を得ることが可能になる。また軸受部側
およびカム軸側の挿入孔を潤滑油の通路として利
用し、この潤滑油をカム軸内にその軸芯方向に形
成した潤滑油通路に通すものであるから、潤滑油
の通路をこの挿入孔と別に設ける場合に比べて構
成が簡単になると共にカム軸が短くなり、機関の
小型化に適する。

また軸受部側の挿入孔に連通する潤滑油通路
は、この挿入孔の内周壁に開口させれば、締付ボ
ルト内に通路を設けてその強度を低下させたり、
締付ボルトの着座面にこの通路を開口させてこの
着座面積を減少させるなどの不都合がなくなる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す断面図、第２
図は第１図の−線断面図である。 ａ……クランクケース、ｂ……シリンダ、ｃ…
…シリンダヘツド、３……締付けボルト、１１…
…軸受部側の挿入孔、１２……ナツト、１４……
カム軸、１６……軸受キヤツプ、１７……カム軸
側の挿入孔、１８……第３の挿入孔。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ シリンダヘツドを締付ボルトによつてシリン
   ダに締付け固定すると共に、前記シリンダヘツド
   側の軸受部とこれに対向して固定される軸受キヤ
   ツプとの間にカム軸を回転自在に保持した頭上カ
   ム軸式内燃機関において、 前記締付ボルトを前記軸受部の直下に配設する
   と共に、この締付ボルトの締付け工具を挿入する
   ための挿入孔を前記軸受キヤツプとカム軸と軸受
   部とに連続して形成し、前記軸受部側の挿入孔に
   潤滑油通路を連通させ、前記カム軸側の挿入孔に
   はカム軸の軸芯方向に形成されて他の軸受部に連
   通する潤滑油通路を連通させたことを特徴とする
   頭上カム軸式内燃機関。 ２ 前記軸受部側の挿入孔に連通する潤滑油通路
   は、前記軸受部側の挿入孔の周壁に開口している
   請求項１の頭上カム軸式内燃機関。