JPH0417269B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この発明は、既設の建築構造物における鉄筋コ
ンクリート柱の補強構造に関するものである。

［従来の技術］ 鉄筋コンクリート柱の補強方法としては、既
に、その補強対象の鉄筋コンクリート柱の外周部
を、鋼板によつてリング状に被包する方法が提案
されている（特公昭53−43259号）。その補強方法
は、鉄筋コンクリート柱の外周部を鋼板によつて
被包し、それらの間の空〓にモルタルを充填し
て、それらを密着させて一体化するものである。
そして、鋼板によつてもたらされるコンフアイン
ド効果により、鉄筋コンクリート柱の圧縮耐力の
上昇を期待している。

［発明が解決しようとする問題点］ ところが、このように鉄筋コンクリート柱と、
それを被包する鋼板とを一体化する補強方法にあ
つては、次のような問題がある。

すなわち、鉄筋コンクリート柱と鋼板とが互い
に密着して一体化されているため、それらは一体
となつて挙動することになる。したがつて、鉄筋
コンクリート柱に作用する軸方向の圧縮力によつ
て、鋼板がその鉄筋コンクリート柱と一体的に軸
方向に歪むことになり、その鋼板が軸方向に大き
く歪んだ場合にはミーゼスの降伏条件を越えた
り、局所的な座屈を生じたりする。そのため、鋼
板自体の軸方向強度の制限から、その鋼板による
大きなコンフアインド効果を期待することができ
なくなり、柱を必要以上に大きな断面としなけれ
ばならない。

この発明はこのような問題を解決するものであ
る。

［問題点を解決するための手段］ この発明の鉄筋コンクリート柱の補強構造は、
補強対象の鉄筋コンクリート柱の外周部に、上下
方向に変位可能に鋼板を被包し、当該鋼板と鉄筋
コンクリート柱との間に構造用充填材を充填し、
鋼板の内周面に、該鋼板と構造用充填材の付着を
なくすアンボンド処理層を設けたことを特徴とし
ている。

［作用］ この発明の鉄筋コンクリート柱の補強構造によ
れば、鉄筋コンクリート柱と、その外周部を被包
する鋼板との間に介在させたアンボンド層によつ
て、鉄筋コンクリート柱の軸方向の圧縮力が鋼板
に直接作用することを回避する。そして、その鋼
板は、鉄筋コンクリート柱にコンフアインド効果
を与える反作用としてのリングテンシヨンのみを
受け、優れたコンフアインド効果によつて鉄筋コ
ンクリートの耐力上昇を充分に果たす。

［実施例］ 以下この発明の実施例を図面に基いて説明す
る。

第１図および第２図はこの発明の第１の実施例
を表す。

図において、１は既設の建築物における補強対
象の鉄筋コンクリート柱であり、円柱状となつて
いる。この鉄筋コンクリート柱（以下、単に
「柱」という）１の外周部は鋼板２によつてリン
グ状に被包されている。この鋼板２は、柱１の周
方向に複数に分割された部材２ａの結合構造とな
つており、本実施例の場合は、柱１の軸線を中心
とする180°の範囲で２分割された部材２ａ，２ａ
の結合構造によつて柱１を被包している。また、
この鋼板２は、同様のもの３つが柱１に対して上
下３段に重ねられている。最上位の鋼板２は、梁
３からの軸方向の圧縮力を直接受けないように、
その梁３から若干下方へ離されている。また、鋼
板２に対しては後述するように柱１の軸方向の圧
縮力が直接作用しないため、３段に連なる鋼板２
の計２箇所の合わせ部分については、その合わせ
箇所を互いに結合するような結合構造を特に採る
必要がなく、単に重ねるだけであつてもよい。

このような鋼板２と柱１との間の〓間には、構
造用充填材４としてのモルタルが充填されると共
に、柱１の外周部と鋼板２との間に介在するよう
にアンボンド処理層５が形成される。このアンボ
ンド処理層５は、柱１側と鋼板２側との間を非付
着状態に保つものであり、本例の場合はパラフイ
ンの層となつている。このアンボンド処理層５を
形成するには、例えば、柱１を被包する鋼板２の
内周面に予めパラフインを塗布しておき、この鋼
板２によつて柱１を被包してからそれらの〓間に
モルタルを充填する。

このような構造によつて補強された柱１にあつ
ては、アンボンド処理層５のために鋼板２が非付
着状態となり、その鋼板２と柱１自体が軸方向に
関して相対移動可能となる。したがつて、鋼板２
に対しては柱１の軸方向の圧縮力が直接に作用せ
ず、柱１が軸方向に歪んでも鋼板２には軸方向の
圧縮応力が生じない。そのため、鋼板２は、柱１
にコンフアインド効果を与える反作用としてのリ
ングテンシヨンのみを受けることになり、それ自
体の軸方向強度の影響を全く受けることなく、コ
ンフアインド効果を充分に発揮する。ゆえに、柱
１はその断面積を大きくすることなく、従来のも
のに比べてはるかに高い耐力が保証される。

第３図は、四角柱状の柱１に対する補強構造の
例を表す。

本例においても、前述した実施例の場合と同様
に柱１を鋼板２によつてリング状に被包し、そし
てそれらの間の〓間に構造用充填材４を充填する
と共に、アンボンド処理層５を形成している。

ところで、アンボンド処理層５の形成材料は何
等グリスのみに特定されるものではなく適宜選定
が可能であり、例えば、鋼板２の内周面に塗布す
るワセリン、またはオイル、もしくは鋼板２の内
周面を被覆するプラスチツクなどによつても形成
できる。また、上述した実施例においては、鉄筋
コンクリート柱１と鋼板２との間の〓間に充填す
る構造用充填材４として、モルタルを使用してい
るが、その他、コンクリートや種々の水硬性材料
などを充填してもよい。例えば、構造用充填材４
として、土、砂、金属粉粒体、ガラス粉粒体、プ
ラスチツク、粘度などを使用することも可能であ
る。

［発明の効果］ 以上説明したように、この発明による鉄筋コン
クリート柱の補強構造は、アンボンド処理層を介
して、鉄筋コンクリート柱の外周部を鋼板によつ
て被包する構造であるから、鉄筋コンクリート柱
の軸方向の圧縮力が鋼板に直接作用することが回
避され、その鋼板はそれ自体の軸方向強度の影響
を全く受けることなく、コンフアインド効果を充
分に発揮して、鉄筋コンクリート柱の耐力上昇を
果たす。この結果、鉄筋コンクリート柱の断面積
を大きくすることなく、従来のものに比べてはる
かに高い耐力を保証することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図はこの発明の補強構造を円
柱状の鉄筋コンクリート柱に施した場合の例を表
し、第１図は側面図、第２図は横断面図、第３図
はこの発明の補強構造を四角柱状の鉄筋コンクリ
ート柱に施した場合の横断面図である。 １……鉄筋コンクリート柱、２……鋼板、４…
…構造用充填材、５……アンボンド処理層。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 補強対象の鉄筋コンクリート柱の外周部に、
   上下方向に変位可能に鋼板を被包し、当該鋼板と
   鉄筋コンクリート柱との間に構造用充填材を充填
   し、鋼板の内周面に、該鋼板と構造用充填材の付
   着をなくすアンボンド処理層を設けたことを特徴
   とする鉄筋コンクリート柱の補強構造。