JPH041160B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は、コンクリート、岩盤等にアンカーボ
ルトを固着するためのアンカーボルト固着用カー
トリツジに関する。 従来アンカーボルトの固着方法としては、コン
クリート、岩盤等（以下、母材という）に穿孔
し、その孔にカートリツジを装填しハンマードリ
ル等に接合したアンカーボルトに回転衝撃を与え
ながら挿入し、カートリツジを破砕しカートリツ
ジに収容された粘性液体樹脂と骨材と硬化剤を混
合硬化させ、アンカーボルトを固着する方法が知
られている。 この方法に用いられるカートリツジとしては、
第１図に示すように粘性液体樹脂１を外側容器４
に封入し、空気による気泡部３を設け内側容器５
に硬化剤被覆骨材２が封入されたものが知られて
いる（特開昭54−139232号公報）。 このカートリツジにおいては、母材の孔にカー
トリツジを装填し、ハンマードリル等に接合した
アンカーボルトの回転衝撃により孔底部に向つて
挿入し、カートリツジを破砕し、内部に収容され
た粘性液体樹脂と硬化剤を被覆した骨材を破砕
し、撹拌混合しても骨材表面の硬化剤被覆層が可
成堅固に付着しているため一定時間の撹拌衝撃で
は、破砕が不完全で破砕された骨材の被覆部分の
みが粘性液体樹脂と反応し硬化剤が不均一に分布
し未反応部分が残在したり架橋反応が充分に行わ
れないまま固化するなど、アンカーボルトを堅固
に固着するための接着力が得られないおそれを生
じる。 前述の様な欠陥を解消するため、硬化剤の分散
効果を目的に一定時間以上撹拌衝撃を与えると粒
状骨材が必要限度以上の大きさまで粉砕細粒化さ
れアンカーボルトを堅固に固着するための骨材と
しての大切な機能の１つであるブリツジ効果が減
衰し、規定の接着力が得られないなどの弊害が考
えられる。又、一定時間以上の撹拌は折角混合さ
れた接着剤が孔口から吐出され、母材とボルトの
装着に寄与しなかつたり或いは、ボルトの先端が
母材の孔底部に到達しているにも拘らず回転衝撃
を継続することにより母材の内壁や孔底を切削
し、その結果、母材の粉末が粘性液体樹脂に混入
し硬化反応を阻害したり粘性液体樹脂のゲル化が
開始しているにも拘らず撹拌を継続するため発熱
温度を分散低下させ、初期硬化反応が充分進まな
いまま固結するなど、いずれもアンカーボルトを
母材穿孔に対し堅固に接着する要因を阻害する欠
点を有していた。 本発明は、これらの欠点をとり除いた極めて早
期に規定の固着力を発現することが可能なボルト
固定用カートリツジに関するものである。 即ち、本発明は、破砕可能な外容器と破砕可能
な内容器とからなり一方に粘性液体樹脂、他方に
骨材と硬化剤を収容してなるボルト固着用カート
リツジにおいて、硬化剤が顆粒状であり、且つ骨
材と実質的に均一に混合されているボルト固着用
カートリツジであり、更に、好ましくは粘性液体
樹脂を収容する容器の空間部を不活性ガスで置換
し熔封されているボルト固着用カートリツジであ
る。 以下、図面により本発明のカートリツジについ
て説明する。 第２図は、本発明の一実施態様を示す断面図で
あり、破砕可能な外容器４と破砕可能な内容器５
からなり、内容器５内に粘性液体樹脂１が封入さ
れ気泡部８は不活性ガスで置換されている。外容
器４には、骨材６と顆粒状硬化剤７が実質的に均
一に混合して充填され、密封あるいは、キヤツプ
９で密栓されている。 容器の形状は、円柱形または三角柱形、四角柱
形、五角柱形等の多角柱形があげられる。製造、
貯蔵、取扱い上円柱形が適している。 容器の材質は、ハンマードリル等に接合された
アンカーボルトの回転衝撃運動で破砕できる材質
であれば特に限定されない。例えば、ガラス、陶
磁器、合成樹脂等があげられる。これらのうち、
熔封が容易に可能であることからガラスが好まし
い。 粘性液体樹脂としては、不飽和ポリエステル樹
脂、エポキシ樹脂、フエノール樹脂等の熱硬化性
樹脂である。 骨材としては、ハンマードリル等に接合された
アンカーボルトの回転衝撃運動を著しく妨げとな
る粒形及び材質でなければ特に限定されないが、
粒形は球状で、大きさは粒径0.5〜9.0mmであり、
容器の間隙に規定封入可能なことが必要である。
材質としては、例えば花崗岩等の自然石及び酸化
マグネシウムを主成分とするマグネシアクリンカ
ー等のセラミツクスである。 顆粒状硬化剤としては、例えば粘性液体樹脂が
不飽和ポリエステル樹脂にあつては過酸化ベンゾ
イル、メチルエチルケトンパーオキサイド等の有
機過酸化物、エポキシ樹脂にあつては、ジエチレ
ントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等
のアミン類を硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等
の無機物で希釈しメチルセルローズ、アラビアゴ
ム等の水溶性バインダーと混和し、網目状スクリ
ーンを通過させ含水顆粒薬とし、乾燥したもの
で、主要な構成は粒径0.2〜2.0mmの範囲が適当で
ある。 内容器においては、粘性液体樹脂を充填し、そ
の気泡部を不活性ガスで置換したのち熔封する。
不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム等の不活性
ガスが使用できるが、価格、作業性から窒素ガス
が適している。 更に気泡部が不活性ガスで置換されているた
め、空気中の酸素による粘性液体樹脂の着色の促
進、ゲル化の促進抑制効果があり、特に高温時に
この効果は著しく、高温曝露の可能性の大きい南
方への船倉輸出に有効である。 外容器においては、内容器と骨材と顆粒状硬化
剤を充填したのち密封する。密封する方法として
は、熔封またはキヤツプによる密栓のどちらでも
よい。さらには、前述の様に粘性液体樹脂を収容
する容器の密封方法は不活性ガスで置換したの
ち、熔封することに特徴があり、顆粒状硬化剤及
び骨材を収容する容器の密封方法はキヤツプによ
る密栓でも製品性能の変化はなく、キヤツプによ
る密栓が適している。キヤツプによる密栓は、熔
封工程が不要なため製造時の安全性が確保され生
産性が著しく向上するなどの利点を有している。
またキヤツプの形状を任意に変えることが出来、
しかもキヤツプに鍔をつけることにより上孔、壁
孔に装填し施工する場合カートリツジの落下防止
も可能である。 キヤツプ材質としては、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリアミド等の合成樹脂または石膏、
モルタルセメント等の無機物が挙げられる。 第２，３図においては、外容器に骨材と顆粒状
硬化剤、内容器に粘性液体樹脂を封入してある
が、第４図に示す様に、この関係を逆にして外容
器に粘性液体樹脂、内容器に骨材と顆粒状硬化剤
を封入してもよい。 次に本発明のアンカーボルト固着用カートリツ
ジの作用を使用方法とともに説明する。 母材に穿孔した孔に、カートリツジを装填しハ
ンマードリルに接合したアンカーボルトは、孔の
深部方向に向つて回転衝撃挿入運動をしながらカ
ートリツジの外容器及び内容器を破砕する。実質
的に骨材と均一に混合されていた顆粒状硬化剤
は、製造時、貯蔵時、輸送時は容易に粉化されず
に存在しているが、アンカーボルトの回転衝撃挿
入運動により容易に粉化され、骨材とともに粘性
液体樹脂中に均一に分散され、極めて早期に硬化
促進剤との反応が均一に始まり、重合開始剤の１
次ラジカルを発生しビニル単量体を励起し、ブレ
ポリマーとの架橋反応を経て硬化が均一に完結し
固化する。前述の様に、ハンマードリルに接合さ
れたボルトの回転衝撃挿入運動により、混合は充
分に行なわれ孔とボルトの間隙のすみずみまで混
合物は充填される。破砕された容器片も骨材の一
部となり、アンカーボルトはしつかりと固定され
る。 本発明のカートリツジは次に述べる特徴も有し
ている。本発明のカートリツジは、硬化剤が顆粒
状であるため取扱いが容易であり、過酸化ベンゾ
イルによる薬傷の可能性も少なくなり、製造上の
安全性が向上ししかも骨材被覆するための有機溶
剤も必要としないため、一段と製造上の安全性が
向上するという特徴も有している。 また、粘性液体樹脂の蒸気は、通常ビニル単量
体であり、引火点も低く容器の熔封作業時発火、
爆発などの危険性があるが、不活性ガス置換する
ことにより発火、爆発の可能性をなくすことがで
き、安全に熔封作業が遂行できる利点も見逃すこ
とが出来ない。 次に、本発明のカートリツジを実施例によつて
さらに詳細に説明する。 実施例 第２図に示されるカートリツジにおいて、外径
10mm、長さ100mmのガラス製内容器に不飽和ポリ
エステル樹脂8.0ｇを密封し、外径17mm、長さ110
mmのガラス製外容器に収容し、外容器と内容器の
間隙に直径1.5〜20mmの酸化マグネシアクリンカ
ー12ｇと硫酸カルシウムで40％濃度に希釈し、粒
径約0.5mmと約1.0mmの顆粒状に造粒した（分布観
察のためローダミンＢで赤着色）過酸化ベンゾイ
ル１ｇをそれぞれ収容し、ポリエチレン製キヤツ
プをして、カートリツジを調整した。振動装置
（飯田製作所製ふるい振盪機）で10分間振動を与
え骨材と顆粒状過酸化ベンゾイルの分布状況を観
察し、その結果を第１表に示す。つぎに圧縮強度
250Kg／cm²のコンクリートに内径19mm、長さ130mm
の穿孔を行い、その孔内に振動試験を行つたカー
トリツジを装填し、外径16mm、長さ300mmのアン
カーボルトを電動ハンマードリルで回転しながら
挿入し５分、15分、30分、60分、180分、それぞ
れ養生後、センターホールジヤツキを用いて油圧
ポンプでアンカーボルトを引抜き、その時の引抜
荷重を測定し第１表に示した。 比較例 １ 実施例と同じ容器で、内容器に不飽和ポリエス
テル樹脂8.0ｇを密封し、外容器に実施例と同じ
骨材12ｇと硫酸カルシウムで40％濃度に希釈した
粉状過酸化ベンゾイル１ｇを収容し、実施例と同
様に振動試験を行い、そのカートリツジにて打
設、引抜試験を行い、引抜荷重を第１表に示し
た。 比較例 ２ 実施例１と同じ容器で、内容器に不飽和ポリエ
ステル樹脂8.0ｇを密封し、外容器に過酸化ベン
ゾイルを被覆した軽量コンクリートモルタル粒体
10ｇを収容し、実施例と同様に振動試験と引抜荷
重を測定し第１表に示した。

【表】 (注) 振動試験 ○…分布が均一
×…分布が不均一(下部にた
まる)
実施例から明らかな様に輸送、貯蔵等で予想さ
れる振動においても骨材と顆粒状過酸化ベンゾイ
ルは実質的に均一に混合しておりしかも比較例の
それに比べて短時間に固着力が得られることを示
した。 本発明のカートリツジの硬化剤は顆粒状であ
り、実質的に均一に骨材と混合されており、アン
カーボルトの回転衝撃挿入運動により容易に粉化
され、撹拌混合され反応を開始し、樹脂と大きく
接触面積をもつ硬化剤が均一に介在するため、短
時間で固着力が得られるものと推察される。この
事は施工者に対して、アンカーボルト埋め込み後
の作業スピードの向上をもたらすことができる。 比較例１では硬化剤が粉状であるため、骨材と
均一に混合されておらず、下部にたまるため穿孔
開孔部近傍が固化せず固着力が得られなかつたも
のと考えられる。 比較例２では、骨材に硬化剤が被覆されている
ため、骨材が破砕されても樹脂との接触面積が小
さく、反応が遅くなり短時間で固着力が得られな
かつたと考えられる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のボルト固着用カートリツジの断
面図、第２図は本発明のボルト固着用カートリツ
ジの一実施態様の断面図、第３図は本発明のボル
ト固着用カートリツジの他の態様の断面図であ
る。第４図は、外容器に粘性液体樹脂、内容器に
骨材と顆粒状硬化剤を封入した本発明のボルト固
着用カートリツジの断面図である。 図中、１は粘性液体樹脂、２は硬化剤被覆骨
材、３は気泡部（空気）、４は外容器、５は内容
器、６は骨材、７は顆粒状硬化剤、８は気泡部
（不活性ガス）、９はキヤツプを示す。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 破砕可能な外容器と破砕可能な内容器とから
   なりその一方に粘性液体樹脂他方に該粘性液体樹
   脂の硬化剤と骨材を収容してなるボルト固着用カ
   ートリツジにおいて、硬化剤が固体顆粒状であ
   り、且つ骨材と実質的に均一に混合されているこ
   とを特徴とするボルト固着用カートリツジ。 ２ 樹脂収容容器の空間部を不活性ガスで置換し
   熔封されていることを特徴とする特許請求の範囲
   第１項記載のボルト固着用カートリツジ。