JPH036866B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、水中に於てスタツドを母材に溶接す
る方法及びその装置に関する。

〔従来技術〕

スタツド溶接は周知のように、金属材料からな
るスタツドと母材との間に高電流の溶接電流を流
してアークを発生させ、適当な溶融地が生じたと
きに両者を急速に圧着して該スタツドを母材に植
え付える溶接である。このようなスタツド溶接は
陸上のみならず水中においてもしばしば行われる
が、水中の場合は水密性の維持を必要とする上
に、作業還境が陸上に較べて著しく厳しいという
難しさがある。そこで従来からこのような水中ス
タツド溶接を容易に行うための種々の方法及び装
置の改良が提案されている。（例えば、特公昭53
−62758号、実公昭57−146号、実開昭57−199574
号、実公昭59−50425号等） これら従来の水中スタツド溶接方法は、先端部
が開口されたスタツド収容部を持つたスタツド溶
接装置を用い、先ず、該スタツド収容部の先端の
開口部を母材表面に押圧することによりスタツド
の先端を母材表面に接触させ、次にスタツド収容
部内の水を空気やアルゴン等の不活性ガスで置換
して排水し、次いで溶接ガン本体からスタツド溶
接電流を流して溶接を行うものである。

また、他の従来例として特公昭61−10227号が
存在する。これはケーシングの前端部に弾性シー
ル材を設けると共に、そこに環状の電磁石を設
け、その通電により母材表面にケーシングを吸着
されるものが存在した。

〔発明が解決しようとする問題点〕

このような水中スタツド溶接装置はいずれも、
スタツド収容部内の水を空気やアルゴン等の不活
性ガスに置換して排水し、次いで溶接ガン本体か
らスタツドに溶接電流を流して溶接を行うもので
あり、水中での溶接作業に排水工程を必ず必要と
し作業効率の悪い欠点があつた。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明はかかる問題点を解決した水中スタツド
溶接装置を提供するものである。そしてその目的
達成のために次の構成をとる。

本発明の水中スタツド溶接装置は、スタツドを
収容するスタツド収容部と、該収容部の母材と接
する先端部に設けられ、該収容部を母材に固定す
るための吸着手段と、該収容部に収容されたスタ
ツド溶接電流を供給するための溶接ガン本体とを
有し、前記溶接装置を構成するスタツド溶接部
が、先端を開口した筒状のハウジングと、該ハウ
ジングにその軸方向へ移動自在に内装され、スタ
ツドを着脱自在に支持するスタツド保持体と、該
ハウジングの開口部に設けられ、比較的薄肉の導
電性キヤツプが着脱自在に且つ水密に嵌着される
キヤツプ嵌着部とを具備するものからなり、導電
性キヤツプの前記嵌着により水密に形成された前
記ハウジングの空間内に前記保持体に支持された
スタツド全体が収容でき且つ、前記保持体の移動
によりスタツドの先端部が前記キヤツプ内面に接
離されるように構成されている。

また本発明の好ましい実施態様は前記の筒状ハ
ウジングが溶接ガン本体に着脱自在に嵌着できる
ように構成する。

〔実施例及び作用〕

次に図面に基づいて本発明の水中スタツド溶接
装置の実施例を説明する。

第１図は本発明の水中スタツド溶接装置のスタ
ツド収容部の１例を示す縦断面図である。この実
施例のものはスタツド収容部１の筒状のハウジン
グ２が（後述するように）第４図の如く溶接ガン
本体２３に着脱自在に且つ水密に嵌着されるもの
である。このハウジング２の後端の軸線上に貫通
された孔内には、スタツド３を保持するためのス
タツド保持体４が軸方向に移動自在に挿通され、
両者の摺動部にＯリング５が介装されて水密構造
を形成する。このスタツド保持体４に後端が閉塞
した筒状に形成されると共に、その先端部に放射
方向にスリ割り状の欠切部が形成された割り溝部
６を形成し、それによりスタツド保持体４先端部
を弾性的に拡縮自在に構成して、スタツド３を着
脱自在に保持するようになつている。なおハウジ
ング後端部外周及びスタツド保持体４の後端部外
周にそれぞれ設けたＯリング２ａ及び４ａは、後
述するように溶接ガン本体へスタツド収容部を嵌
着したとき、それとの間に水密構造を形成するた
めのものである。

次にスタツド保持体４の筒状の中間部内には位
置決めボルト７が出入り自在に螺着されている。
また、ハウジング２内面には内筒８及びシールド
グリツプ９がエアー抜き溝を有する支持リング１
０を介して設けられている。更にスタツド３の先
端部周囲を取り囲むようにシールド１１がシール
ドグリツプ９に支持されて取付けられ、該シール
ド１１にはガス抜き溝１２が設けられている。

一方、ハウジング２の母材側の先端は開口さ
れ、その先端部にセラミツク製などの耐熱性材料
で作られた取替自在な開口保護部材１３がＯリン
グ１４を介して嵌着されている。１５は導電性キ
ヤツプであつて前記保護部材１３の内面に設けら
れたキヤツプ嵌着部１６にＯリング１７を介して
着脱自在に嵌着される。なおこのキヤツプ嵌着部
１６はハウジング２の先端部外周に形成してもよ
い。導電性キヤツプ１５は底面が平坦な浅い鍋状
のものであつて、例えば板厚が0.1mm〜1.6mm程の
プレス成形体からなり、外周に抜け止め用の僅か
の突条が環状に形成される。そしてこの導電性キ
ヤツプ１５の取付けによりハウジング２内を水密
または気密に構成できると共に、スタツド先端部
をこれに内接させることにより母材３０と導電的
に接触させることができる。また、ハウジング２
の外周先端には必要に応じゴム製などの弾性のパ
ツト１８が設けられている。

スタツド収容部１を構成する円筒状のハウジン
グ２の母材側先端部には吸着手段１９が取付けら
れている。吸着手段１９は吸着部２０と取付部２
１から構成され、吸着部２０の一面に吸着面２２
が形成されている。この吸着面２２は母材３０の
表面に吸着する面であり、この面を母材表面に吸
着させることにより、スタツド収容部１の先端部
を母材表面に固定する。第２図は第１図に於ける
吸着手段１９のみを斜視図で示したものである。
取付部２１はリング状に形成されており、このリ
ングの貫通孔にスタツド収容部１を挿入して吸着
手段１９を取付ける。

第３図は吸着手段の他の実施例を示す斜視図で
あり、吸着手段１９は２個の吸着部２２の中間に
取付部２１が設けられた構成となつている。更に
多くの吸着部を共通の１個の取付部に結合しても
よい。また、中央にスタツド収容部を装着できる
貫通孔を有する環状の吸着部とすることにより吸
着部に取付部を兼用させることもできる。

別の好ましい実施例によれば、吸着手段の取付
部を分割可能なリング状に形成し、該リングを開
放もしくは分割してスタツド収容部に取り付けた
後、再び閉じたリングを留具で固定する。このよ
うにすれば取り付けを容易にすることができる。

吸着手段１９の吸着方式は金属製の母材に吸着
可能なら特に制限はないが、電磁石や永久磁石に
よる磁気吸引力、真駈パツトによる真空吸引力等
を利用することが好ましい。

吸着力はスタツド収容部及び溶接ガン本体を水
中で保持できる強さとすることが好ましくが、人
力によるある程度のサポートを必要とする程度の
強さでもスタツド設定安定性には十分な効果を発
般揮する。第１図に示したスタツド収容部のよう
な溶接ガン本体に着脱自在な形式のものを使用す
る場合は、少なくとも当該収容部を保持する強さ
が必要である。

第４図は第１図に示したスタツド収容部を母材
に固定すると共に溶接ガン本体に嵌着した状態を
示す。

溶接ガン本体２３の開口された先端部２４の内
側にスタツド収容部１のハウジング２の後端部が
嵌着される。更に図示しない溶接ガン本体２３内
に設けたエアーシリンダーのピストンロツドに結
合されて軸線上を移動自在になされた駆動軸２５
の先端開口部には、スタツド４の後端部が同様に
嵌着される。スタツド収容部１を容接ガン本体２
３へより確実に嵌着するため、スタツド保持体４
の後端部外周に、第１図に示すような係止ピン４
ｂ、及び前記駆動軸２５開口部の内周の入口から
軸方向へ、次いで周方向へ沿つた溝を設け、該ピ
ン４ｂを溝入口に一致させて駆動軸２５内に挿入
した後、回転せしめて嵌着するようにしてもよ
い。

前記溶接ガン本体２３内のエアーシリンダーは
図示されていないスタート用バルブを経由して外
部の流体制御装置２６にエアー配管によつて接続
される。また駆動軸２５は電気ケーブルを介して
外部の溶接電流制御装置２７に接続される。一
方、溶接ガン本体２３の先端部２４とハウジング
２で囲まれた空間には外部から配管２８によつて
圧縮空気等の加圧気体が導入され、マフラー２９
から水中へ排出されるようになつている。

次に第１図及び第４図に示した装置を基に本発
明の水中スタツド溶接装置の使用方法の例を説明
する。

先ず、地上にて第１図に示す如くハウジング２
内のスタツド３を挿入し、その後端をスタツド保
持体４に把持させる。次に、シールドグリツプ９
にシールド１１を支持させる。次いで、導電性キ
ヤツプ１５をＯリング１７、開口保護部材１３、
Ｏリング１４を介してハウジング２の開口に水密
に嵌着する。即ち、導電性キヤツプ１５は前記保
護部材１３のキヤツプ嵌着部１６に着脱自在に嵌
着される。このようにして第１図に示すように予
め地上に組み立てられたハウジング２の内部は、
導電性キヤツプ１５の存在により気密状態にあ
る。次に吸着手段１９の取付部２１の貫通孔にハ
ウジング２を挿入することにより、スタツド収容
部１に吸着手段１９を取付ける。そこでハウジン
グ２の後端部及びスタツド保持体４を第４図に示
す如く溶接ガン本体２３の先端部２４及び駆動軸
２５に嵌着される。次いで先端部２４の配管２８
から加圧気体を流入する。なお、スタツド収容部
１と溶接ガン本体２３との着脱は水中に於て、ス
タツド収容部１を吸着手段１９によつて母材３０
の表面に固定する前後を問わずに行うこともでき
る。次に吸着手段１９によつてスタツド収容部１
を母材３０の溶接すべき点の表面に固定する。吸
着方式が永久磁石による場合はそのまま、電磁石
または真空パツトによる場合は地上もしくは水中
にて電流もしくは流体用スイツチの操作を行い吸
着させる。

このようにしてスタツド３が所定の位置に設定
されたことを確認した後、溶接ガン本体２３に設
けられているスタート用押バルブ（図示しない）
を操作して、エアーシリンダーに外部の流体制御
装置２６から圧縮空気を供給し、駆動軸２５を前
進させてスタツド３の先端部を導電性キヤツプ１
５の内面に接触させる。それと共に溶接電流制御
装置２７から電気ケーブルを通し駆動軸２５、ス
タツド保持体４、スタツド３、導電性キヤツプ１
５を経由して溶接電流を流す。次いで、流体制御
装置２６を介しエアーシリンダーを再び駆動し、
駆動軸２５を後退させると、スタツド３と導電性
キヤツプ１５及び母材３０との間に放電が開始さ
れ該放電部に溶融池が形成される。次にエアーシ
リンダーを再度駆動し、駆動軸２５を前進させて
スタツド３を溶融池内に押圧した後、溶接電流を
停止して冷却させることにより溶着部が形成され
る。

次に、吸着手段１９の吸着を解除させめると共
に、溶接ガン本体２３を後退させてスタツド収容
部１を母材３０から離脱させると、母材３０に溶
接されたスタツド３はスタツド保持体４から外れ
て残り、溶接工程は完了する。スタツド３先端部
周囲のシールド１１は導電性キヤツプ１５の残査
と共に残るが、通常これはハンマー等で必要に応
じて取り除かれる。なお、以上に述べた溶接ガン
本体及びそれと結合されている流体制御装置が溶
接電流制御装置の基本的な構造及び作用は周知の
ものであるので詳細な説明は省略する。

これまでの説明は、水中での排水工程が不要な
カートリツジ形式のスタツド収容部であつて且つ
溶接ガン本体と嵌着自在のものを使用する実施例
について行つたが、本発明の方法及び装置はこれ
に制限されるものではなく、溶接ガン本体に固定
されているスタツド収容部、あるいは先端部が開
口され、スタツド先端が直接母材表面と接触する
ようなスタツド収容部にも適用できることは言う
までもない。

また、本発明は複数個の吸着手段、スタツド収
容部及び溶接ガン本体を用意して、あらかじめ母
材面に固定しておき、１台の流体制御装置及び溶
接電流制御装置により順次個々の溶接ガン本体を
作動させて溶接させることも可能である。

〔発明の効果〕

本発明の水中スタツド溶接装置は、カートリツ
ジ形式のスタツド収容部を有し、排水工程を省略
することができ、効率のよい水中スタツド溶接を
可能とする。特に多数のスタツド溶接を集中して
実施しなければならない場合に本発明の効果は著
しく発揮される。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の水中スタツド溶接装置を構成
するスタツド収容部１及び吸着手段１９の縦断面
図、第２図及び第３図は吸着手段１９のそれぞれ
異つた実施例を示す斜視図、第４図は第１図のス
タツド収容部１を溶接ガン本体２３に嵌着すると
共に吸着手段１９によつて母材３０へ固定した状
態を示す縦断面図。 １……スタツド収容部、２……ハウジング、２
ａ，４ａ，５，１４，１７……Ｏリング、３……
スタツド、４……スタツド保持体、４ｂ……係止
ピン、６……割り溝部、７……位置決めボルト、
８……内筒、９……シールドグリツプ、１０……
支持リング、１１……シールド、１２……ガス抜
き溝、１３……開口保護部材、１５……導電性キ
ヤツプ、１６……キヤツプ嵌着部、１８……パツ
ト、１９……吸着手段、２０……吸着部、２１…
…取付部、２２……吸着面、２３……溶接ガン本
体、２４……先端部、２５……駆動軸、２６……
流体制御装置、２７……溶接電流制御装置、２８
……配管、２９……マフラー、３０……母材。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 水中でスタツドを母材に溶接する装置に於い
   て、スタツド３を収容するスタツド収容部１と、
   該収容部１の先端部に設けられ該収容部１を母材
   ３０に固定するための吸着手段１９と、該収容部
   １に収容されるスタツド３へ溶接電流を供給する
   ための溶接ガン本体２３とを有し、前記スタツド
   収容部１が先端を開口した筒状のハウジング２
   と、該ハウジング２にその軸方向へ移動自在に内
   装され、スタツド３を着脱自在に支持するスタツ
   ド保持体４と、該ハウジング２の開口部に設けら
   れ、比較的薄肉の導電性キヤツプ１５が着脱自在
   に且つ水密に嵌着されるキヤツプ嵌着部１６とを
   具備してなり、導電性キヤツプ１５の前記嵌着に
   より水密に形成された前記ハウジング２の空間内
   に前記保持体４に支持されたスタツド３全体が収
   容でき、且つ前記保持体４の移動によりスタツド
   ３の先端部が前記キヤツプ１５内面に接離される
   ようになされた水中スタツド溶接装置。 ２ 筒状のハウジング２が溶接ガン本体２３に着
   脱自在に嵌着されるように構成されている特許請
   求の範囲第１項記載の水中スタツド溶接装置。 ３ 筒状のハウジング２先端内周面にセラミツク
   製の開口保持部材１３を嵌着するように構成した
   特許請求の範囲第１項又は第２項のいずれかに記
   載の水中スタツド溶接装置。