JPH0360592B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

産業上の利用分野 この発明は接合強度の良好なクラツド鋼板の製
造方法に係り、より詳しくは母材と合せ材の接合
面間を真空に保持することによつて、酸化スケー
ルが、アルゴン、チツソ等の残存による接合不良
を防ぎ、接合強度の良好な高品質のクラツド鋼板
を製造する方法に関する。 従来の技術 異鋼種等を二層に接合したクラツド鋼板は、化
学プラント機器に多く使用されているが、最近特
に接合強度の良好なクラツド鋼板が要求されてい
る。このようなクラツド鋼板を熱間圧延により製
造する方法として、母材と合せ材を重ねたものを
２組対称に重ねて組立てたいわゆるサンドイツチ
型鋼片を圧延する対称圧延法がある。 第１図はその対称圧延法の組立鋼片の断面の一
例を示すもので、１は母材、２は合せ材、３はス
ペーサ、４は溶接部である。 通常、母材１と合せ材２はその接合面を清浄に
してニツケルメツキ、あるいはニツケル箔等を挿
入して重ね合せた２組の合せ材を、剥離面５に剥
離剤を挿入して重ね、その周囲をスペーサ３で囲
み全周溶接して組立てるものである。この場合、
通常は内部の空気抜きを行わず、内部に空気を残
存させたまま、ないしはアルゴン、チツソ等で置
換した後周囲を完全溶接するか、外部との通気孔
を設け空気抜きを行わずに簡単にはずれる栓を付
けて、そのまま圧延する方法がとられる。 したがつて、このような方法で組立てられたサ
ンドイツチ型鋼片の場合は、熱間圧延時に内部に
残存する空気により接合部に酸化スールが生じた
り、アルゴン、チツソ等の残存により接合不良が
発生する。 この接合不良を防止するため従来、接合面間を
真空に保持してクラツド鋼板を製造する方法が提
案されている。 例えば、特開昭55−100890号公報には、合せ材
と重ね合せた母材の周囲に接合板を密封溶接し、
この接合板に予め取付けた空気抜き用のパイプを
介して内部を真空に排気しながら該パイプを閉塞
切断したものを熱間圧延してクラツド鋼板を製造
する方法が記載されている。 また、特開昭57−134287号公報には、合せ材と
重ね合せた母材間にシール材を溶接し、そのシー
ル材の一部に孔をあけ、この部分に溶接した排気
管を通じて内部の空間を真空に保持した状態で、
母材と合せ材とを拡散溶接し、しかる後排気管を
押潰し拡散溶接して閉塞したものを熱間圧延して
クラツド鋼板を製造する方法と、母材との間に排
気できる隙間が形成されるようにシール材を介在
させ、そのシールの部分をも拡散溶接して密閉し
たものを熱間圧延してクラツド鋼板を製造する方
法が記載されている。 発明が解決しようとする課題 しかるに、組立て素材の内部を真空引き後、内
部と外部を遮断する方法を採用した前記クラツド
鋼板の製造方法において、真空引き後排気パイプ
（空気抜きパイプ）を閉塞切断し内部と外部を遮
断して真空に保持する方法では、気密保持精度を
十分に確保することが困難で、目標とする精度が
容易に得られないという欠点がある。 また、拡散溶接を必須とするクラツド鋼の製造
方法は、工程増を招くばかりでなく、拡散溶接は
比較的時間がかかり、能率を上げるためには加熱
装置を備えた大型プレスを何台も必要とすること
から設備が大掛りなものとなり好ましくない。 この発明は、従来の前記問題点を解決し、拡散
接合を全く必要とせず、比較的簡易な手段で母
材、合め材間を真空に保持できるとともに気密保
持精度を十分に確保できて、接合強度の良好なク
ラツド鋼板を能率よく製造できる方法を提案しよ
うとするものである。 課題を解決するための手段 この発明者は、接合面間を溶接によつて真空に
封じてクラツド鋼板を製造する方法について種々
検討した結果、比較的簡易な方法で母材、合せ材
間を高真空に保持してサンドイツチ型鋼片の組立
てが可能なクラツド鋼板の製造方法を見い出し
た。 すなわち、この発明の要旨は、母材と合せ材の
周縁を囲むスペーサの一端に設けた空気抜き部よ
り真空引きを行い、母材と合せ材の周縁を溶接で
囲み熱間圧延するクラツド鋼板の製造方法におい
て、前記空気抜き部をニツケル、銅、鉄等の薄板
あるいは箔を挾んだスペーサで構成し、このスペ
ーサ部分に空気抜きパイプを取付けて全周溶接し
た後、前記空気抜きパイプを通して真空引きを行
い、その状態でこのスペーサ部分をプレスにて押
圧することによつて空気抜き部を閉塞して内部と
外部を遮断し、空気抜きパイプを切断しその開口
部を溶接にて閉塞した後熱間圧延してクラツド鋼
板を製造する方法にあり、母材と合せ材間を真空
に保持する方法として、溶接部の一部に形成した
空気抜き部にシール用パツキンとしてニツケル、
銅、鉄等の薄板あるいは箔を挾んだスペーサを入
れ、このスペーサ部分をプスで押圧することによ
つてシールする方法を特徴とするものである。 作 用 この発明において、空気抜き部をニツケル、
銅、鉄等の薄板あるいは箔を挾んだスペーサで構
成したのは、これらの金属は比較的やわらかく、
かつ薄板あるいは箔にすることによつて、鋼性を
低下させることができ、プレス加圧で炭素鋼で構
成されたスペーサ間の間隙を容易に密閉できるか
らである。 ニツケル、銅、鉄等の薄板あるいは箔からなる
パツキンを挾んだスペーサで空気抜き部を構成し
たサンドイツチ型鋼片は、スペーサの隙間から空
気抜きパイプを通してのみ内部と外部が連通して
いるので、空気抜きパイプを通して真空引きを行
なつた後で当該スペーサの部分をプレスで押圧す
ると、スペーサが加圧されることによつて該スペ
ーサの隙間が閉塞されるとともに、パツキンの作
用により完全に密閉され高真空に保持される。 内部が高真空に保持されているサンドイツチ型
鋼片を熱間圧延して製造されたクラツド鋼板は、
母材と合せ材の接合部に全く欠陥のない高品質の
ものが得られる。 実施例 第２図、第３図はそれぞれこの発明のサンドイ
ツチ型鋼片の縦断面および横断面を示すもので、
１１は母材、１２は合せ材、１３，１３−１はス
ペーサ、１４は溶接部、１６はパツキン、１７は
空気抜きパイプである。 母材１１と合せ材１３はその接合面を清浄にし
てニツケルメツキ、あるいはニツケル箔等を挿入
して重ね合せた２組の合せ材を、剥離面１５に剥
離剤を挿入して重ね、その周囲をスペーサ１３で
囲むとともに、その一部にはニツケル、銅、鉄等
の薄板あるいは箔を挾んだスペーサ１３−１を挿
入して空気抜き部をつくり、この部分に空気抜き
パイプ１７を取付けて全周溶接部１４を溶接して
組立てる。 このようにして組立てられたサンドイツチ型鋼
片は、パツキン１６を挾んだスペーサ１３−１の
隙間から空気抜きパイプ１７を通してのみ内部と
外部が連通している。この発明では、上記空気抜
きパイプ１７に真空ポンプ（図示せず）を接続
し、該パイプを通して真空引きを行い、そのまま
の状態でパツキン１６を挾んだスペーサ１３−１
の部分を第４図に示すごとくプレス１８で押圧し
て内部と外部を遮断し、真空ポンプを空気抜きパ
イプ１７から外して該パイプを溶接部１４とほぼ
面一になるところで切断し、その開口部を溶接１
４−１にて閉塞する。この作業時、空気抜きパイ
プは外部に開口するが、スペーサ１３−１の部分
はプレス圧により内部との流通が絶たれているた
め、外部の空気が鋼片内部に流入することはな
い。したがつて、組立てられた鋼片の内部は高真
空に保持されている。 故に、該サンドイツチ型鋼片を熱間圧延して製
造されたクラツド鋼板は、母材１１と合せ材１２
の接合部に全く欠陥のない高品質のものが得られ
る。 実施例 １ この発明方法により普通鋼とステンレス鋼のク
ラツド鋼板鋼板を製造した。母材と合せ材および
スペーサの鋼種と寸法ならびに母材と合せ材間に
介在させるニツケル箔の寸法、スペーサ部のパツ
キンの材質と寸法を第１表に示す。 本実施例では、ニツケル箔を挾んだスペーサで
構成した空気抜き部に10mmφの空気抜きパイプを
取付け、真空ポンプにより真空引きを行い、該ス
ペーサ部分をプレスにより10トン／cm²の圧下力を
加えて押圧し、空気抜きパイプを切断してその開
口部を溶接にて閉塞した。このようにして組立て
たサンドイツチ型鋼片を所定の圧延条件（1200℃
加熱、圧延比５）で熱間圧延してクラツド鋼板
（母材7.5mm、合せ材2.5mm、幅3000mm、長さ18000
mm）を製造し、得られたクラツド鋼板を超音波に
て検査した結果を第２表に併せて示す。 また、比較例として、ニツケル箔を挾まないス
ペーサを用いた場合と、従来例として、スペーサ
を除き、母材の周囲に当該母材と同材質の接合板
（厚さ20mm、幅100mm、長さ9600mm）を密封溶接
し、この接合板に空気抜き用のパイプを取付けて
真空引きしながら、該パイプを閉塞切断したもの
を熱間圧延して得たクラツド鋼板（特開昭55−
100890号公報に記載のもの）の検査結果を第２表
に併せて示す。なお、母材および合せ材の寸法、
熱間条件は本発明と同じである。 第２表の結果より明らかなごとく、本発明によ
り得られたクラツド鋼板には欠陥が全く認められ
ず、接着率100％であつたのに対し、同じスペー
サでも、パツキン（ニツケル箔）を使用しない場
合には本発明より接着率が若干低く、また従来例
も同様、高い接着率を示しているが100％ではな
く、工業的生産手段としては問題となる。

【表】

【表】 発明の効果 以上説明したごとく、この発明方法によれば、
組立素材の内部を高真空に保つことができるの
で、接合部に全く欠陥のない高品質のクラツド鋼
板が得られ、しかもその組立素材は冷間にてプレ
スと溶接機のみで密封処理できるので、従来の拡
散溶接を必要とするクラツド鋼板の製造方法に比
べ、簡易な設備で能率よく製造することができる
という大なる効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のサンドイツチ型組立鋼片の一例
を示す縦断面図、第２図はこの発明に係るサンド
イツチ型組立鋼片を示す−線上の縦断面図、
第３図は同上鋼片の平断面図、第４図は同上鋼片
を真空に保持した状態を示す縦断面図である。 １１…母材、１２…合せ材、１３，１３−１…
スペーサ、１４，１４−１…溶接部、１５…剥離
面、１６…パツキン、１７…空気抜きパイプ、１
８…プレス。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 母材と合せ材を重ね合せ、その周縁をスペー
   サで囲み、その一端に設けた空気抜き部より真空
   引きを行い、母材と合せ材の周縁を溶接で囲み熱
   間圧延するクラツド鋼板の製造方法において、前
   記空気抜き部をニツケル、銅、鉄等の薄板あるい
   は箔を挾んだスペーサで構成し、このスペーサ部
   分に空気抜きパイプを取付けて全周溶接した後、
   前記空気抜きパイプを通して真空引きを行い、そ
   の状態でこのスペーサ部分をプレスにて押圧し空
   気抜き部を閉塞して内部と外部を遮断し、空気抜
   きパイプを切断しその開口部を溶接にて閉塞した
   後熱間圧延することを特徴とするクラツド鋼板の
   製造方法。