JPH0358097B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はＸ線画像の形成方法、特にＸ線フイル
ムと蓄積性螢光体シートの両方に同時に被写体の
Ｘ線透過像（以下レントゲン像という）を記録
し、これから２種の画像を形成する方法に関する
ものである。

ある種の螢光体に放射線（Ｘ線、α線、β線、
γ線、紫外線等）を照射すると、この放射線のエ
ネルギーの一部がその螢光体中に蓄積され、その
後その螢光体に可視光等の励起光を照射すると、
蓄積されたエネルギーに応じて螢光体が輝尽発光
を示す。このような性質を示す螢光体を蓄積性螢
光体と言う。

この蓄積性螢光体を利用して、人体等の放射線
画像情報を一旦蓄積性螢光体のシートに記録し、
これを励起光で走査して輝尽発光させ、この輝尽
発光を光電的に読み出して画像信号を得、この画
像信号に種々の処理を加えて診断適性の良いレン
トゲン像を得る方法が提案されている。（例えば
特開昭55−12429号、同55−163472号、同55−
116340号公報参照） この方法によれば、通常のＸ線写真では得られ
ない種々の診断に有用な情報を得ることができ、
Ｘ線写真による診断効果を大幅に向上させること
ができる。

しかしながら、このような特殊な処理を施した
レントゲン像は、処理の方法によつては従来の増
感紙の発光を直接Ｘ線フイルムに記録して得られ
る像と相当異なつたものになり、この種の特殊な
画像に慣れた医師でないと、その画像の持つてい
る有用な情報を十分に活用できない場合がある。
したがつて、このシステムにおいては、処理の方
法あるいは程度を種々変えた画像を数枚作成し、
これらの画像を対比させながら診断を行なうと、
効果の大きい正確な診断を行なうことができる。
そして、これらの数枚の画像の中には、従来の方
法で撮影したＸ線写真も含めて診断すれば、従来
のＸ線写真に慣れた医師も容易に、正しく効果的
な診断を行なうことができる。

上記、蓄積性螢光体シートを使用するシステム
で撮影し、最終的に再生して得られる画像の他
に、従来のＸ線撮影で得られるＸ線写真を得るた
めには、両システムによつて少なくとも２回の撮
影をしなければならず、これでは被写体のＸ線被
爆量が倍になつて好ましくない。また、２回に分
けて撮影すると、その撮影時の被写体の状態を完
全に一致させることが困難であるため、呼吸差や
位置、角度のずれ等両画像には多生のずれが生
じ、微妙な診断の際には良好な診断ができず、場
合によつてはもう一度撮影しなおさなければなら
ないことも起こる。

そこで、蓄積性螢光体への撮影と、通常のＸ線
フイルムへの撮影を同時に行なうことが要望され
るが、これを行なう一つの方法として蓄積性螢光
体シートをセツトしたカセツテと、従来のＸ線フ
イルムカセツテとを重ねて配置し、この上に被写
体を透過したＸ線を照射して同時に両記録材料に
レントゲン像を記録することが考えられる。これ
は両システムを利用するとともにＸ線照射を一回
で済ませる有効な方法であるが、Ｘ線フイルムと
蓄積性螢光体シートとの間にカセツテのケース、
Ｘ線フイルムカセツテ側の増感紙等があつて両者
が相当離れることになり、この間の距離のためＸ
線の散乱が生じそのためにレントゲン像の鮮鋭度
や解像力が悪化するし、かつ後側（被写体から遠
い方）になつた方では前側の記録材料にエネルギ
ーが吸収されてしまうのでＸ線の強度が低くな
り、十分な情報が得られないという問題がある。

本発明はこれらの問題を解決し、蓄積性螢光体
を使用したレントゲン像と、従来のＸ線撮影によ
るレントゲン像とを同時に両者間にＸ線強度の実
質的な差をなくしてかつ双方とも優れた鮮鋭度お
よび解像力をもつように撮影する方法を提供する
ことを目的とするものである。

本発明の方法は、Ｘ線フイルムと蓄積性螢光体
シートとを密着させて遮光状態において保持し、
この上に被写体を通してＸ線を照射し、前記蓄積
性螢光体シートに前記被写体のＸ線透過像を蓄積
記録すると同時に、照射時に前記蓄積性螢光体シ
ートから発光する瞬時発光によつて前記Ｘ線フイ
ルムを露光して前記被写体のＸ線透過像の写真潜
像をこのＸ線フイルムに記録し、該Ｘ線フイルム
に写真処理を施してＸ線写真を得るとともに、前
記蓄積性螢光体シートを励起光で走査して輝尽発
光させ、この輝尽発光光を光電的に読み出して画
像信号を得、この画像信号に種々の画像処理を施
して診断適性を向上させたＸ線透過像を得ること
を特徴とするものである。

本発明の方法によれば、Ｘ線フイルムと蓄積性
螢光体シートが密着されてカセツテに収納されて
いるから、一回の撮影で両者に同時にレントゲン
像が記録されるのはもちろんのこと、両者間に実
質的な距離はないから、画像サイズの等しいレン
トゲン像が記録される上、蓄積性螢光体シートか
ら発光される瞬時発光によつてＸ線フイルムが感
光されるから、ここでＸ線エネルギーの損失はな
く、十分な情報が両者に記録されることになる。
また、この方法に使用される従来のＸ線フイルム
には、蓄積性螢光体シートが密着して従来のＸ線
撮影における増感紙の作用をするから、ここでは
増感紙が不要となるという利点がある。すなわ
ち、本発明の方法に採用されるＸ線フイルムは従
来のＸ線フイルムのように増感紙に挟まれる必要
はなく、蓄積性螢光体シートが増感紙の作用を有
するので、増感紙なしで直接螢光体シートと重ね
合わせればよい。これにより増感紙の省略という
効果があり、単に２つのカセツテを重ねて同時に
撮影する場合に比して経済的にも有利である。

さらに、本発明によれば蓄積性螢光体シートと
Ｘ線フイルムの両方に同時にレントゲン像を得る
ことができるので、撮影後の処理において、一方
の処理装置（前者はコンピユータ等を含む電気的
画像読取、処理装置。後者は写真の現像、定着処
理装置。）が故障しても他方の処理装置によつて
最終的な診断用のレントゲン像を得ることができ
るので、緊急の場合等に安全度が高いという利点
もある。

以下、図面によつて本発明の実施例を詳細に説
明する。

第１図に示すようにＸ線源１から放射されるＸ
線が被写体２を透過した後到達する位置にＸ線カ
セツテ１０を配設する。Ｘ線カセツテ１０は遮光
性の十分な、本体１１と、この本体１１に開閉自
在に蝶着された蓋体１２からなるケース内に、蓄
積性螢光体シート１３とＸ線フイルム１４が重ね
て密着されて収納されたものであり、両者の密着
性を良くするためケースの本体１１と蓋体１２の
内面にはウレタンフオーム等の柔かく、かつ弾力
性のあるスポンジ状の弾性層１５，１６は貼着さ
れている。ケースの本体１１、蓋体１２はＸ線透
過性のよい金属性のものでもよいし、硬質のプラ
スチツク製のものでもよい。本体１１と蓋体１２
の開閉可能な結合方法は、必ずしも蝶番によらな
くてもよく、分離可能な両者をラツチ等で結合す
る形式のものとしてもよい。また、弾性層１５，
１６は、スポンジ状のものでなくてもよく、例え
ば剛性のある板材料を板バネ等で弾力的に支持す
る構造としてもよい。

蓄積性螢光体シート１３は支持体上に蓄積性螢
光体層を積層したものである。

本発明に使用される蓄積性螢光体としては米国
特許第3859527号に記載されている蓄積性の希土
類付活硫化ストロンチウム系もしくは希土類付活
ランタンオキシサルフアイド系螢光体、米国特許
第4236078号、特開昭55−12143号、同55−12145
号、同55−84389号、同56−2385号、同56−2386
号、同56−74175号に記載されている蓄積性の希
土類付活アルカリ土類金属フルオロハライド系螢
光体、特開昭55−12144号に記載されている蓄積
性の希土類付活ランタンオキシハライド系、また
は特開昭55−12142号に記載されている蓄積性の
銅及び／又は鉛付活硫化亜鉛系、希土類付活アル
ミナ・酸化バリウム系もしくはシリカ・酸化アル
カリ土類金属系の螢光体などが挙げられるがこれ
に限定されるものではない。これらの中でも瞬時
発光効率と輝尽発光効率がともに高いもの、例え
ば蓄積性の希土類付活アルカリフルオロハライド
系螢光体が好ましく使用される。この蓄積性螢光
体シートとＸ線フイルム１４と密着させるときは
この螢光体層の方をフイルム１４に密着させるの
が、Ｘ線フイルム上に記録されるレントゲン像の
解像力を良くする上で望ましい。

なお、Ｘ線フイルム１４としては従来の両面に
乳剤を塗布した形式のＸ線フイルムを使用するこ
とができるが、蓄積性螢光体シート１３側の面に
のみ乳剤を塗布した片面塗布のＸ線フイルムとし
てもよい。また、蓄積性螢光体シート１３と密着
する面とは反対の面に増感紙を１枚密着させて配
置して、Ｘ線フイルムの露光を補強するようにし
てもよい。このような例を第２図に示す。

第２図のカセツテのケースを省略して蓄積性螢
光体シート１３、Ｘ線フイルム１４および増感紙
１７のみを示すものである。この実施例では、支
持体１４ａの両面に銀塩のＸ線フイルム用の乳剤
層１４ｂを塗布したＸ線フイルム１４の片面に、
支持体１３ａの上に蓄積性螢光体層１３ｂを塗布
してなる蓄積性螢光体シート１３の螢光体層１３
ａを密着させ、他面に、支持体１７ａの上に増感
紙用の螢光体層１７ｂを塗布してなる増感紙１７
の螢光体層１７ｂを密着させている。

この上に被写体を透過したＸ線を照射すれば、
被写体のレントゲン像が蓄積性螢光体シート１３
の蓄積性螢光体層１３ｂの中にＸ線エネルギーの
蓄積という形で蓄積されるとともに、この蓄積性
螢光体層１３ｂがＸ線照射時に瞬間的に発する瞬
時発光と、増感紙１７の螢光体層１７ｂが発光す
る光とによつて、前記Ｘ線フイルム１４の両面の
乳剤層１４ｂが感光して、ここにレントゲン像が
写真潜像の形で記録される。

また第３図に示されるように蓄積性螢光体シー
ト１３は、レーザー光等の読取用励起光源３１か
らの光によつて走査され輝尽発光をし、この輝尽
発光を光電変換装置３２によつて光電的に検出し
て蓄積記録されているレントゲン像を電気信号に
変換し、画像処理装置３３によつてこの電気信号
に所望の処理を施した後、画像再生装置３４によ
りこの電気信号を利用して画像を再生（デイスプ
レイ、ハードコピー等）し、診断性能の高いレン
トゲン再生像（放射線写真）を得る。一方、Ｘ線
フイルム１４は、周知の方法で現像、定着、水洗
の写真処理を受けてＸ線写真が得られる。

これらの２つのＸ線写真は、同一被写体の同瞬
間のものであり、両者を比較して観察することに
より、診断を正確にかつ精密に行なうことができ
る。

本発明は前述のように一回の被爆で蓄積性螢光
体を利用したレントゲン像と従来のＸ線フイルム
によるレントゲン像の２種のＸ線写真を得ること
ができ、両者の間には呼吸差等の時間的な差がな
いのみならず従来の増感紙を使用することなく
（両面のものにあつては２枚の中、少なくとも１
枚を省略できる。もちろん２枚とも省略すること
もできる）Ｘ線フイルムに十分な感光ができるの
で、全体として簡単で安価な構成により２種のＸ
線写真を得ることができる。また、２種のＸ線写
真を同時に撮影する際、一方の撮影により他方の
撮影の際にＸ線が散乱したりＸ線エネルギーが損
失するということもないから、実用上極めて有利
である。

本発明は以上詳述したように、従来のＸ線写真
撮影システムに蓄積性螢光体を利用したＸ線写真
撮影システムを効果的に組み合わせたものであ
り、この両者の結合により、実用上際めて有用な
効果をもたらすものであり、医療上の診断におけ
る実用的価値は甚大である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の方法を示す概略図、第２図は
本発明に使用されるＸ線写真カセツテの中に収納
される蓄積性螢光体シート、Ｘ線フイルム、増感
紙の組合せの例を示す断面図、第３図は蓄積性螢
光体シートの輝尽発光を用いたレントゲン像形成
方法の概略説明図である。 １……Ｘ線源、２……被写体、１０……カセツ
テ、１１……本体、１２……蓋体、１３……蓄積
性螢光体シート、１４……Ｘ線フイルム、３１…
…読取用励起光源、３２……光電変換装置、３３
……画像処理装置、３４……画像再生装置。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ Ｘ線フイルムと蓄積性螢光体シートとを密着
   させて遮光状態において保持し、 この上に被写体を通してＸ線を照射し、前記蓄
   積性螢光体シートに前記被写体のＸ線透過像を蓄
   積記録すると同時に、 照射時に前記蓄積性螢光体シートから発光する
   瞬時発光によつて前記Ｘ線フイルムを露光して前
   記被写体のＸ線透過像の写真潜像をこのＸ線フイ
   ルムに記録し、 該Ｘ線フイルムに写真処理を施してＸ線写真を
   得るとともに、 前記蓄積性螢光体シートを励起光で走査して輝
   尽発光させ、この輝尽発光光を光電的に読み出し
   て画像信号を得、この画像信号に種々の画像処理
   を施して診断適性を向上させたＸ線透過像を得る
   ことを特徴とするＸ線画像の形成方法。