JPH0349936Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ａ 産業上の利用分野 本考案は自動車用後部座席のシートバツクの角
度調整装置に係り、特にバン型車両、ハツチバツ
ク型車両等、荷室と乗員室とが一体となつた自動
車用後部座席のシートバツクの角度調整装置に関
するものである。

ｂ 従来の技術 従来より、荷室と乗員室とが一体となつた自動
車の後部座席は、第４図〜第６図に示すように、
通常そのシートバツク１００がリクライニング装
置１０１によつて前後方向に起倒自在に構成され
ている。そのため、リクライニング装置１０１に
は、例えばゼンマイバネ等の弾性体が設けられ、
該弾性体の弾撥力によつてシートバツク１００に
回転力を与えている。

ところで上記シートバツク１００は、前倒状態
時にその裏面１００ａと荷台面１０２ａとの段差
ができるだけ小さく、かつリクライニング装置１
０１が荷台面１０２ａより突出しないようにしな
ければならない。またシートバツク１００は、後
方傾倒時に最適の傾斜状態が得られるようにしな
ければならない。

ｃ 考案が解決しようとする問題点 しかしながら、上述の如き従来の自動車の後部
座席にあつては、これに適用されるリクライニン
グ装置１０１が大きく、場所をとるので、次のよ
うな問題点がある。すなわち、第４図に示す如
く、シートバツク１００を前倒したときに（図中
鎖線の位置）裏面１００ａと荷台面１０２ａとが
面一となるようにリクライニング装置１０１を設
けた場合には、シートバツク１００の起立状態時
の裏面１００ａと荷台１０２前面との間の間隙が
大きくなり、荷台１０２上に載せた小物が上記間
隙より車体の床に落下することがあつた。また長
尺物などを積載する場合には、突出したリクライ
ニング装置１０１が邪魔になるおそれがあつた。

さらに、第５図に示す如く、シートバツク１０
０を荷台１０２に接近させて配置するとともに、
シートバツク１００の厚さをリクライニング装置
１０１の径と一致させて形成した場合には、シー
トバツク１００の前倒状態時における荷台１０２
との段差が大きくなり、長尺物などの積載に支障
が生じることがあつた。

このような問題点を解決するため、第６図に示
す如くシートバツク１００を配置し、かつ形成し
た場合には、シートバツク１００を後方に傾倒さ
せたとき裏面１００ａが荷台１０２に当たつてリ
クライニングすることができなくなる。

これらすべての問題点はリクライニング装置１
０１が大きいことが原因となつており、車室内の
設計上相当の制約を受けるとともに、荷室のマツ
トに生じる弛みもシートバツク１００の回転中心
の位置により異なり、その処理が困難であつた。

本考案はこのような実状に鑑みてなされたもの
であつて、その目的は、上述の如き問題点を解消
し得る自動車用後部座席のシートバツクの角度調
整装置を提供することにある。

ｄ 問題点を解決するための手段 上記従来技術の有する問題点を解決するため
に、本考案においては、前後方向に傾倒し得るよ
うに構成された後部座席のシートバツクと、該シ
ートバツクの両側部に左右方向へ一定量移動可能
に突設されたストライカピンと、車室両側面に取
付けられ、前記ストライカピンを差込む係合孔が
前記シートバツクの傾倒方向に沿つて所定間隔を
置いて複数配設されたシートバツク支持体と、該
シートバツク支持体の収納部に収納配置した付勢
ばねによつて付勢され、かつ前記シートバツク支
持体に設けた案内部との係合によつて案内される
移動可能な押圧部材とからなり、前記ストライカ
ピンが前記支持体の係合孔に差込まれた状態にお
いて前記シートバツクの前後方向の傾倒を阻止
し、前記ストライカピンが前記支持体の係合孔か
ら抜脱された状態において前記シートバツクを前
記押圧部材およびストライカピンを介して付勢ば
ねの付勢力によつて前方へ傾倒し得るようにして
いる。

以下、本考案を図示の実施例に基づいて詳細に
説明する。

第１図〜第３図は本考案の一実施例を示すもの
で、図において、１はボデイパネル２に固着され
る自動車用後部座席Ａの座部、３は３ａと３ｂの
左右に２分割された後部座席Ａのシートバツク、
４はシートバツク３と対応する箇所のボデイパネ
ル２の両側面２ａにビス５などを用いて取付けら
れたシートバツク支持体である。

上記シートバツク３ａ，３ｂ、それぞれセンタ
ヒンジ６およびサイドヒンジ７を介してボデイパ
ネル２に取付けられ、前後方向に傾倒し得るよう
に構成されている。そしてシートバツク３ａ，３
ｂの外側部には、それぞれストライカピン８が突
設されており、該ストライカピン８は、ばねなど
の弾性体（図示せず）によつて常時車体外方へ付
勢され、図外の操作レバーを操作することによつ
て左右方向（図中矢印Ｂ方向）へ一定量のみ移動
可能となつている。

一方、上記シートバツク支持体４は、車体後方
へ向かうに従つて下方に湾曲するように形成され
ており、車室側の側面４ａにはストライカピン８
を差込むための係合孔９が長手方向（シートバツ
ク３の傾倒方向）に沿って所定間隔を置いて複数
配設されている。そして、上記車室側の側面４ａ
の上縁部には鉤状の突出部１０が長手方向に沿つ
て設けられており、該突出部１０によつて案内溝
１１が形成されている。また支持体４の側面４ａ
の下部には、幅狭溝１２とこれに連成された膨出
溝１３とからなる収納溝１４が長手方向に沿つて
形成されている。この収納溝１４の膨出溝１３に
は、後述する押圧部材を押圧する付勢ばね１５が
収納配置されている。なお、上記シートバツク支
持体４の前面４ｂは、車室側の側面４ａに向かつ
て車体後方へ傾斜して形成され、これによりスト
ライカピン８が支持体４の側面４ａに容易に当接
配置できるようになつている。

また、上記シートバツク支持体４には、案内溝
１１および収納溝１４との係合によつて案内され
る押圧部材１６が移動可能に嵌入配置されてい
る。この押圧部材１６は湾曲状のシートバツク支
持体４と断面略同一形状に形成され、付勢ばね１
５によつて常時前方に付勢されている。押圧部材
１６の支持体４側の上面１７には、案内溝１１と
嵌合するガイドレール部１８が突設されている。
そして押圧部材１６の下部には、幅狭部１９とこ
れに連成された膨出部２０とからなる摺動部２１
が前後方向に沿つて設けられており、この摺動部
２１が支持体４の収納溝１４と嵌合するようにな
つている。膨出部２０は、付勢ばね１５のばね受
け作用をなすとともに、ガイドレール部１８と相
俊つて押圧部材１６の案内作用をなすものであ
る。なお、押圧部材１６の前面１６ａには、スト
ライカピン８に当接させる半円状の溝２２が形成
され、該溝２２によつて係合孔９に差込まれたス
トライカピン８を前方へ押圧してガタ音の発生を
防止している。

さらに上記シートバツク支持体４には、押圧部
材１６が案内溝１１および収納溝１４から抜脱す
るのを阻止するためのストツパ２３が取付けられ
ている。このストツパ２３は収納溝１４と対応す
る形状に形成され、押圧部材１６を支持体４に嵌
入配置してから、このストツパ２３を収納溝１４
内に挿入して支持体４の幅狭溝１２に穿設した孔
２４とストツパ２３のねじ孔２５とを一致させ、
これら孔にねじ２６を螺入して固定される。

上述した部材により構成されるシートバツクの
角度調整装置の作用は次のとおりである。

起立状態にある左右のシートバツク３ａ，３ｂ
の少なくともいずれか一方を前傾させるには、図
外の操作レバーを操作してストライカピン８を図
示しないばねの弾撥力に抗してシートバツク３
ａ，３ｂ側に移動させる。すると、ストライカピ
ン８はシートバツク支持体４の係合孔９から抜脱
して係合が解除される。それと同時に、押圧部材
１６の溝２２と当接しているストライカピン８
は、押圧部材１６を介して付勢ばね１５の付勢力
によつて前方へ押圧される。これにより、シート
バツク３ａ，３ｂは前倒することが可能となる。
なお、シートバツク３ａ，３ｂが前傾状態におい
て、押圧部材１６は付勢ばね１５の付勢力によつ
てストツパ２３と当接しており、支持体４から抜
脱することはない。

次いで前倒状態にあるシートバツク３ａ，３ｂ
を起立させると、ストライカピン８はシートバツ
ク支持体４の前面４ｂの傾斜面に当接しながらシ
ートバツク３ａ，３ｂ側に押し込まれ、その側面
４ａ上に当接配置される。それとともに、ストラ
イカピン８は押圧部材１６の溝２２に当接し、押
圧部材１６を付勢ばね１５の弾撥力に抗して後方
へ移動させながら、図外のばねの付勢力によつて
係合孔９に差込まれる。このストライカピン８と
係合孔９との係合によつてシートバツク３ａ，３
ｂはロツクされ、元の起立状態に保持される。

また、起立状態にあるシートバツク３ａ，３ｂ
を任意の後方位置に傾倒させるには、図外の操作
レバーを操作してストライカピン８を図示しない
ばねの弾撥力に抗してシートバツク３ａ，３ｂ側
に移動させ、シートバツク３ａ，３ｂを傾倒可能
にする。この状態において着座している乗員がシ
ートバツク３ａ，３ｂにもたれ掛かると、ストラ
イカピン８によつて押圧部材１６は付勢ばね１５
の弾撥力に抗して後方へ移動し、ストライカピン
８が適当な係合孔９に差込まれることによつてシ
ートバツク３ａ，３ｂを最適の傾斜状態に保持す
ることができる。

さらに、上記傾斜状態にあるシートバツク３
ａ，３ｂを起立状態に戻すには、上述した操作を
行なつてストライカピン８と係合孔９との係合を
解除する。この状態において、シートバツク３
ａ，３ｂは、押圧部材１６およびストライカピン
８を介して付勢ばね１５の付勢力によつて前方へ
押圧されているから、乗員の背中の前方への動き
に追従してシートバツク３ａ，３ｂを起立させる
ことができる。

以上、本考案の一実施例につき述べたが、本考
案は既述の実施例に限定されるものではなく、本
考案の技術的思想に基づいて各種の変形および変
更が可能である。

例えば既述の実施例においては、シートバツク
支持体４に案内溝１１を形成し、押圧部材１６に
これと嵌合するガイドレール部１８を設けたが、
これらを入れ替えても同様の作用、効果を奏す
る。

ｅ 考案の効果 上述の如く、本考案に係る自動車用後部座席の
シートバツクの角度調整装置は、シートバツクの
両側部に一定量移動可能にストライカピンを設
け、このストライカピンがシートバツク支持体の
係合孔に差込まれた状態において上記シートバツ
クの前後方向の傾倒を阻止し、上記ストライカピ
ンが上記支持体の係合孔から抜脱された状態にお
いて上記シートバツクを押圧部材およびストライ
カピンを介して付勢ばねの付勢力によつて前方へ
傾倒し得るようにしたので、後部座席に着座して
いる乗員の背中の動きを追従してシートバツクを
確実に傾倒させることができ、リクライニング操
作が容易になるとともに、最適の傾斜位置にシー
トバツクを容易に移動させることができる。ま
た、シートバツク支持体は車室両側面に取付けら
れているから、該支持体を変更するのみでリクラ
イニングタイプ、ノンリクライニングタイプに対
応させることができ、車体およびヒンジの共通化
が図れ、従来に比して経済的に極めて有利であ
る。そしてまた、本考案の角度調整装置を用いれ
ば、回転中心部のヒンジ径が小さくなるため、シ
ートバツクの前倒時に荷台との段差・突出が少な
くなり、長尺物などでも支障なく積載できる。さ
らに荷室などのカーペツトの弛みも少なくなるか
ら、弛み処理が容易となり、車室内の美観を高め
ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第３図は本考案に係る自動車用後部座
席のシートバツクの角度調整装置の一実施例を示
すものであつて、第１図はその斜視図、第２図は
シートバツク支持体、付勢ばね、押圧部材および
ストツパとの関係を示す斜視図、第３図は第２図
におけるＣ−Ｃ線矢視断面図、第４図〜第６図は
従来における後部座席のシートバツクのリクライ
ニング装置を概念的に示す側面図である。 ２……ボデイパネル、３……シートバツク、４
……シートバツク支持体、８……ストライカピ
ン、９……係合孔、１１……案内溝、１４……収
納溝、１５……付勢ばね、１６……押圧部材、Ａ
……自動車用後部座席。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 前後方向に傾倒し得るように構成された後部座
   席のシートバツクと、該シートバツクの両側部に
   左右方向へ一定量移動可能に突設されたストライ
   カピンと、車室両側面に取付けられ、前記ストラ
   イカピンを差込む係合孔が前記シートバツクの傾
   倒方向に沿つて所定間隔を置いて複数配設された
   シートバツク支持体と、該シートバツク支持体の
   収納部に収納配置した付勢ばねによつて付勢さ
   れ、かつ前記シートバツク支持体に設けた案内部
   との係合によつて案内される移動可能な押圧部材
   とからなり、前記ストライカピンが前記支持体の
   係合孔に差込まれた状態において前記シートバツ
   クの前後方向の傾倒を阻止し、前記ストライカピ
   ンが前記支持体の係合孔から抜脱された状態にお
   いて前記シートバツクを前記押圧部材およびスト
   ライカピンを介して付勢ばねの付勢力によつて前
   方へ傾倒し得るようにしたことを特徴とする自動
   車用後部座席のシートバツクの角度調整装置。