JPH0348205Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は、硫酸・燐酸などの酸性液の冷却器
に関するものである。

（従来の技術） 第３図は周知の酸冷却器を示すもので、これは
内部に熱交換室１を構成するシエル２を陽極側に
接続するとともに、上記熱交換室１内に陰極棒３
を深く挿入し、熱交換室内に酸性液を供給してこ
れを冷水により冷却するいわゆる陽極防食法を利
用したものである。上記熱交換室１内には固定管
板４で支持された多数本のチユーブ５が挿通さ
れ、しかもシエル２の適当な部所に酸供給管６お
よび酸排水管７が持続されている。また熱交換室
１の一方には隔板８で仕切られた冷却水供給室９
および冷却水排出室１０が構成され、他方には連
通室１１を構成している。したがつて冷却水供給
管１２より供給された冷却水は、上記冷却水供給
室９からこれに開口する何本かのチユーブ５を介
して連通室１１に流通し、更に何本かのチユーブ
５を介して冷却水排出室１０に流れ、冷却水排出
管１３を通して排出されるのであつて、この間熱
交換室１内に供給された酸は上記冷却水と熱交換
し冷却される。なおこの時シエル２と陰極棒３間
に電流を流すと、シエル２の内周面に酸化被膜が
形成され、酸による腐食が防止されるのである。

ところで上記陰極棒としては、防食の観点から
一般にハステロイＣ（化学成分Ni58，Mo17〜19，
Cr11〜14，Mn0.2，Si1，Fe6〜９％）からなる
棒材を適用しているが、このハステロイＣは電気
伝導率が極めて低く、加えて陰極棒として長尺で
あるため電圧降下が大きいものである。したがつ
て上記シエル内面に形成される酸化被膜の電位を
維持することが困難である。そこでこの欠点を排
除するために、耐食性に富むハステロイＣからな
る外筒と、この外筒内に精嵌された銅、銅合金、
アルミニウムなどの電気伝導率の高い内筒とを組
合わせた二重管構造の陰極棒が提案された。

（考案が解決しようとする問題点） 上記従来の酸冷却器に使用している陰極棒にあ
つては、そのメタル温度が熱交換室内の酸性液と
同温度であるために、腐食速度がはやく、しかも
廃熱を有効に利用するため、酸温度が高温化して
いる現在、陰極棒のメタル温度が90℃以上にも達
し、陰極棒の径に対する年間の腐食量は1.5mm前
後と著しく、したがつてその寿命が短いという問
題があつた。

この考案は、この問題を解決するためになされ
たもので、陰極棒のメタル温度を下げ長期使用を
可能とするとともに、先に説明した二重管構造の
陰極棒の機能を低下させることなく、その構造お
よび製作を簡略化できる酸冷却器を提供すること
を目的とする。

（問題点を解決するための手段） この考案は、陽極防食法を利用した酸冷却器に
おいて、陰極棒を密閉した管構造としてその中に
水室を形成するとともに、この水室に冷却水流通
管を挿入し、更にこの冷却水流通管およびその支
持部材を銅又は銅合金をもつて構成したものであ
る。

（作用） この考案においては、陰極棒内に冷却水が供給
され、しかも冷却水は乱流しながら水室内を通過
するので、陰極棒自体のメタル温度が低く保た
れ、更に陰極棒の軸方向の電気伝導度の低下が防
止される。

（実施例） 第１図及び第２図はこの考案の一実施例を示す
もので、陰極棒３は所要長さの管体１４からな
り、その両端に栓体１５を嵌着固定して閉塞し、
中に水室１６を形成している。なおこの水室１６
にはその基端部つまり図における右端部に排水管
１７を接続している。１８は上記陰極棒３の一方
の栓体１５を貫通し、その先端開口を水室１６の
奥部に達せしめた冷却水流通管であり、この冷却
水流通管１８を通して供給される冷却水は、水室
１６の奥部から逆流し排水管１７を介して器外へ
導かれるものである。

なお、１９は上記冷却水流通管１８の支持部材
であり、第２図に示すように一端を冷却水流通管
１８に固定した弯曲支片を交互にその位置を変え
て一定の間隔で配設している。なおこの支持部材
１９は他の実施例として例えば螺旋板を設ける等
適宜なものが選択使用される。

（考案の効果） この考案は以上説明したとおり、陰極棒を密閉
された管構造としてその中に水室を形成するとと
もに、この水室に冷却水流通管を挿入し、更にこ
の冷却水流通管およびその支持部材を銅又は銅合
金をもつて構成したものであり、陰極棒のメタル
温度を50℃以下に保つことができ、年間腐食量を
従来の半分以下にすることができるという優れた
防食効果があり、従来銅等をもつて外筒の内周面
に施していた内張りが省略できることと相俟つ
て、陰極棒の取替えによるメンテナンス費用を大
幅に節減できる。なお陰極棒の軸方向の電気伝導
度を低下させることなく冷却水流通管を支持する
ことができ、また支持部材によつて陰極棒内を流
れる冷却水の流れに対して適度な乱流を生ぜしめ
るので、冷却効率の向上がはかれる等の効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の一実施例を示す縦断面図、
第２図ａは冷却水流通管の支持構造を示す部分拡
大図ｂはその側面図、第３図は冷却器全体の構成
を示す説明図である。 １は熱交換室、２はシエル、３は陰極棒、１４
は管体、１５は栓体、１６は水室、１８は冷却水
流通管、１９は支持部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 熱交換室を構成するシエルを陽極側に接続し、
   かつ上記熱交換室内に陰極棒を挿入し、熱交換室
   に供給した酸性液を冷却する陽極防食法による酸
   冷却器において、陰極棒を密閉した管構造として
   その中に水室を形成するとともに、この水室に冷
   却水流通管を挿入し、更にこの冷却水流通管およ
   びその支持部材を銅又は銅合金をもつて構成した
   ことを特徴とする酸冷却器。