JPH0340913Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本考案は、構造物を固定するために地中に埋設
して使用するアースアンカーに係わり、特に、使
用後に地中から除去する形式の除去式アースアン
カーに関するものである。

「従来の技術」 アースアンカーは、主として擁壁・土留め等の
抗土圧構造物のアンカーとして用いられており、
地中に埋設されるアンカー鋼材に緊張力を与えて
構造物を固定するものである。

従来、上記アースアンカーのうち、使用後に地
中から除去することを意図した除去式アースアン
カーの一種として、スライデイングウエツジアン
カーがある。このアンカーは、除去用鋼線（PC
鋼線）の周囲に、アンカー鋼材である複数本のア
ンカー用鋼線（PC鋼線）を引き揃える一方、除
去用鋼線の先端に、その半径方向へ張り出す複数
の破砕羽根部を持つ除去ウエツジを取り付けたも
のである。このアンカーは、地盤に掘削した穴に
グラウト材（例えば膨張材入りモルタル）を用い
て埋設されることにより構造物を固定する一方、
除去時には除去用鋼線を引つ張つて除去ウエツジ
を地中から引き上げることにより、破砕羽根部の
作用で周囲のグラウト材を破壊し、アンカー用鋼
線とグラウト材との付着を断ち切つてアンカー用
鋼線を引き抜き易くすることができる。

「考案が解決しようとする問題点」 しかしながら、上記従来のアースアンカーでは
除去ウエツジによりグラウト材を押し広げながら
破壊するため、除去ウエツジを引き上げる時の抵
抗が極めて大きく、かつ、破壊後もアンカー用鋼
線の周囲にグラウト材の破片が圧密に詰まつた状
態となるため、アンカー用鋼線の引き抜き抵抗が
大きいという不具合がある。

本考案は上記の事情に鑑みてなされたもので、
その目的とするところは、構造物固定時における
アンカーとしての耐力を低下させずに、除去ウエ
ツジの引き上げ抵抗、ならびにアンカー用鋼線の
引き抜き抵抗を低減させて、除去作業の高効率化
を図ることのできる新規な除去式アースアンカー
を提供することにある。

「問題点を解決するための手段」 かかる目的を達成するために本考案は、シース
処理を施した鋼管の周囲に複数本のアンカー用鋼
線を引き揃える一方、鋼管内に除去用鋼線を挿通
し、この除去用鋼線の先端に鋼管の内径より大き
い外径の除去ウエツジを取り付け、さらに、各破
砕羽根部には、アンカー用鋼線に対する半径方向
外側において破砕羽根部と交差する補助破砕羽根
部を設けたものである。

「作 用」 本考案によれば、除去用鋼線を引つ張つて除去
ウエツジを引き上げることにより、この除去ウエ
ツジが鋼管を押し上げて鋼管が同時に引き抜かれ
る。従つて、除去ウエツジは鋼管の引き抜き跡の
空洞内を通つて引き上げられつつアンカー用鋼線
周囲のグラウト材を破壊する。このとき補助破砕
羽根部がアンカー用鋼線とその外側のグラウト材
との付着を断ち切りながらアンカー用鋼線を内方
に押しやつて、アンカー用鋼線を空洞内に落とし
込む。

「実施例」 以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説明
する。

第１図は本考案に係わる除去式アースアンカー
の要部の概略を示し、図中符号１…はアンカー鋼
材となる複数本のアンカー用鋼線（PC鋼線）で
ある。これらアンカー用鋼線１…は、各アンカー
用鋼線１の数倍の太さを持つ鋼管２の周囲に一束
に引き揃えられている。鋼管２は、短く寸断され
た多数の短管２ａ…を軟質樹脂等の充填材２ｂで
一本に連結してなるもので、その外面にはシース
処理が施されている。この鋼管２の内部には除去
用鋼線（PC鋼線）３が挿通されており、鋼管２
の先端から突き出す除去用鋼線３の先端に除去ウ
エツジ４が取り付けられている。この除去ウエツ
ジ４は、ほぼ鋼管２と同程度の外径を有するウエ
ツジ本体４ａと、このウエツジ本体４ａの外面か
らアンカー用鋼線１，１の間を通つて鋼管２の半
径方向外方へ張り出す複数枚の破砕羽根部４ｂ…
と、前記アンカー用鋼線１…よりも半径方向の外
側で各破砕羽根部４ｂと交差する補助破砕羽根部
４ｃ…とから構成され、全体としては先端方向
（第１図下方）に向けて漸次外径を増す楔状を呈
している。さらに詳述すれば、破砕羽根部４ｂは
鋼管２の半径方向および軸方向に延びる板状の部
分であり、ウエツジ本体４ａよりも先端方向に突
き出している。また、補助破砕羽根部４ｃは鋼管
２の周方向および軸方向に延びる板状の部分であ
り、ウエツジ本体４ａより先端側に位置している
（第２図参照）。そして、この除去ウエツジ４およ
びその周囲のアンカー用鋼線１…の先端部を覆う
ように樹脂製の保護カプセル５が設けられ、この
保護カプセル５の内部にグリス等の潤滑材６が充
填されている。

上記にように構成された除去式アースアンカー
は例えば次ぎのようにして使用する。

すなわち第３図の如く、地盤Ｇに深穴Ｈを掘削
してこの深穴Ｈ内にアースアンカーを挿入し、ア
ンカー用鋼線１…および除去用鋼線３の基端部を
束にして地上に引き出す。そし、深穴Ｈ内にグラ
ウト材Ｍを注入して硬化させた後、アンカー用鋼
線１…に緊張力を与えてその基端に構造物（図示
略）を固定する。この状態においてアンカー用鋼
線１…の周囲には第４図の如くグラウト材Ｍが強
固に付着してアンカー用鋼線１…がアンカーとし
ての役目を果たす。ただし、第３図においてグラ
ウト材Ｍの注入は深穴Ｈの途中までとなつてお
り、グラウト材Ｍの外で鋼管２は樹脂製パイプ７
に置き換えられている。

一方、このアンカーを地中から除去する際に
は、ます除去用鋼線３をジヤツキ等により引つ張
つて除去ウエツジ４を地上に向けて引き上げる。
すると、除去ウエツジ４が保護カプセル５を破壊
して、鋼管２を押し上げるので鋼管２が除去ウエ
ツジ４の引き上げと同時に引き抜かれる（この鋼
管２の引き抜きはその外面のシース処理により比
較的円滑に進められる）。従つて、除去ウエツジ
４は鋼管２の引き抜き跡の空洞内を通つて引き上
げられつつアンカー用鋼線１…の周囲のグラウト
材Ｍを破壊する。このとき補助破砕羽根部４ｃが
アンカー用鋼線１とその外側のグラウト材Ｍとの
付着を断ち切りながら各アンカー用鋼線１を前記
半径方向内方に押しやるので、アンカー用鋼線１
…は第５図の如く空洞Ｋ内に落とし込まれてその
引き抜き作業に好都合な状態となる。そして、こ
の状態からアンカー用鋼線１…を１本ずつ引き抜
いて除去する。

ちなみに、保護カプセル５内のグリス６は除去
ウエツジ４に付着してその引き上げ時の摩擦抵抗
を減らすとともに、破壊後のグラウト材Ｍの隙間
あるいは空洞Ｋ内に浸透してアンカー用鋼線１…
の引き抜き抵抗を減らす働きをする。また、鋼管
２は引き抜かれて地上に突出した時点で充填材２
ｂの部分で折ることができるから作業スペースを
省略することができる。

なお、上記実施例において破砕羽根部４ｂを四
枚としたが、これに限るものではなく二枚、三
枚、あるいは五枚以上としてもよい。

「考案の効果」 以上説明したように本考案によれば、シース処
理を施した鋼管の周囲に複数本のアンカー用鋼線
を引き揃える一方、鋼管内に除去用鋼線を挿通
し、この除去用鋼線の先端に鋼管の内径より大き
い外径の除去ウエツジを取り付け、さらに、各破
砕羽根部には、アンカー用鋼線に対する半径方向
外側において破砕羽根部と交差する補助破砕羽根
部を設けたので、次のような優れた効果を得るこ
とができる。

除去用鋼線を引つ張つて除去ウエツジを引き
上げることにより、鋼管が同時に引き抜かれ、
除去ウエツジが鋼管の引き抜き跡の空洞内を通
つて引き上げられる。従つて、従来のアースア
ンカーに比べて除去ウエツジの引き上げ抵抗が
小さくなる。

除去ウエツジの引き上げ時に、補助破砕羽根
部がアンカー用鋼線とその外側のグラウト材と
の付着を断ち切りながら、アンカー用鋼線を内
方に押しやつて鋼管引き抜き後の空洞内に落と
し込む。従つて、従来のアンカーに比べてアン
カー用鋼線の引き抜き抵抗が小さくなる。

上記との効果により除去作業の効率を高
めることができ、しかも、アンカー用鋼線の除
去率を高めてアースアンカー工法の適用範囲を
さらに広げることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第５図は本考案の一実施例を示し、第
１図は要部の縦断面図、第２図は第１図の−
線矢視図、第３図は使用方法を説明する断面図、
第４図は第３図の−線矢視図、第５図は除去
ウエツジ引き上げ後の状態を示す断面図である。 １……アンカー用鋼線、２……鋼管、３……除
去用鋼線、４……除去ウエツジ、４ｂ……破砕羽
根部、４ｃ……補助破砕羽根部、Ｍ……グラウト
材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シース処理を施した鋼管の周囲に複数本のアン
   カー用鋼線が引き揃えられる一方、前記鋼管内に
   除去用鋼線が挿通され、この除去用鋼線の先端に
   鋼管の内径より大きい外径の除去ウエツジが取り
   付けられ、この除去ウエツジは、アンカー用鋼線
   の間を通つて鋼管の半径方向へ張り出す複数の破
   砕羽根部と、アンカー用鋼線に対し前記半径方向
   の外側で各破砕羽根部と交差する方向へ延びる補
   助破砕羽根部とを有することを特徴とする除去式
   アースアンカー。