JPH0327434B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は主として自転車用の多段チエンギヤ、
詳しくは少なくとも１枚の大径チエンギヤと少な
くとも１枚の小径チエンギヤとから成る多段チエ
ンギヤに関する。

一般にピツチ径の異なる複数のチエンギヤを組
合わせた多段チエンギヤは、例えば自転車のクラ
ンクや後輪ハブに装着し、デイレーラーによりチ
エンを前記した複数のチエンギヤの一つに掛換て
変速するのであるが、前記チエンに掛換えによる
変速操作において、大径チエンギヤから小径チエ
ンギヤへのチエン掛換え（以下下り掛換えとい
う）は、小径チエンギヤから大径チエンギヤへの
チエン掛換えに比較して比較的迅速に行なえるこ
とから、下り掛換えについては、その掛換性に対
し配慮されていないのである。

所が、下り掛換えにおいて、チエンが噛合つて
いる大径チエンギヤからのチエンの離脱及び小径
チエンギヤへのチエンの落込みは迅速に行なえる
のであるが、前記大径チエンギヤから離脱したチ
エンが、直ちに小径チエンギヤに噛合う保証はな
く、小径チエンギヤにチエンが落込んだ際、前記
小径チエンギヤに噛合わず歯先に乗り上げた状態
となり、そしてこの非噛合状態のまゝ前記小径チ
エンギヤが回転し、所定角回転したとき、前記小
径チエンギヤに乗上げていた一挙に噛合うことが
生ずるのである。

このため、運転者にシヨツクを与えると共に一
挙に噛合う際に歯打音が生じ、運転者に不快感を
与えているのである。

更には、前記小径チエンギヤに落込む際、前記
小径チエンギヤのチエンラインを越えることもあ
り、このため前記チエンが小径チエンギヤに対し
噛合うことなく離脱する所謂チエン落ちが生ずる
こともあつたのである。

本発明は、以上の如き下り掛換えにおける問題
点に着目し、これら問題点を解決すべく発明した
もので、目的は、大径チエンギヤにおける特定歯
を易離脱構造として積極的に前記特定歯から離脱
できるように構成すると共に、前記大径チエンギ
ヤから離脱して小径チエンギヤに落込むチエンを
捕捉して落込みと同時に噛合わせ、前記チエンが
小径チエンギヤに乗り上げたまゝ駆動され、一挙
に噛合うことによりシヨツクや音鳴りの問題を解
決すると共に、大径チエンギヤから落込むチエン
を、小径チエンギヤのチエンラインに位置できる
ようにして前記した所謂チエン落ちの問題も解決
する点にある。

しかして本発明は、前記大径側チエンギヤにお
ける少なくとも１一つの特定歯を、該大径側チエ
ンギヤに噛合うチエンに対し易離脱構造とし、か
つ、この特定歯に対し前記大径側チエンギヤの駆
動回転方向前方に位置する複数の前方歯に、前記
特定歯からのチエンの離脱を補償する補償手段を
設ける一方、前記小径側チエンギヤを、前記大径
側チエンギヤにおける特定歯から離脱するチエン
を受入れる歯が、前記特定歯に対し、前記チエン
の整数倍ピツチに符合するごとく、前記大径側チ
エンギヤに組合わせたことを特徴とするもので、
下り掛換時、大径チエンギヤから離脱したチエン
を直ちに小径チエンギヤに正しく噛合わせること
ができるようにしたものである。

次に本発明チエンギヤの実施例を図面に基づい
て説明する。

第１図に示したものは、クランクCRに放射状
に延びる取付アームMAをもつアダプターＡを介
して３枚のチエンギヤ１，２，３を取付けたフロ
ント側３段チエンギヤであり、また前記各チエン
ギヤ１，２，３を楕円形に近い非円形としたもの
である。

因みに、大径チエンギヤ１の歯数は50放、中径
チエンギヤ２の歯数は42枚、小径チエンギヤ３の
歯車は32枚となつている。

又、第２図は第１図に示した前記フロント側３
段チエンギヤにおける前記中径チエンギヤ２と小
径チエンギヤ３との関係のみを拡大し、第１図に
対し背面からみたもので、前記小径チエンギヤ３
に対し大径側となる中径チエンギヤ２におけるあ
る二つの特定歯２１，２２、即ち180度の位相差
でほゞ対称位置、好ましくは１ピツチずれた対称
位置にある二つの特定歯２１，２２即ち、チエン
のインナーリンクプレートが噛合う特定歯２１と
この特定歯に対し１ピツチずれ、アウターリンク
プレートの噛合う特定歯２２との歯高を低くして
前記中径チエンギヤ２に噛合うチエンＣに対し易
離脱構造とし、かつ、これら特定歯２１，２２に
対し、前記中径チエンギヤ２の駆動回転方向（第
２図Ｘ方向）前方に位置する二つの前方歯２３，
２４，２５，２６に前記各特定歯２１，２２から
のチエンＣの離脱を補償する補償手段を設け、そ
して、更に、前記各特定歯２１，２２から離脱す
るチエンＣを受入れる小径チエンギヤ３の受入歯
３１が、前記特定歯２１，２２に対し、前記チエ
ンＣの整数倍ピツチnpに符合するごとく、前記
中径チエンギヤ２と小径チエンギヤ３とを組合わ
せて、前記アダプターＡに取付けるごとく成した
ものである。

前記中径チエンギヤ２における特定歯２１，２
２は、前記中径チエンギヤ２における多数の歯の
うち、任意な歯を選択すればよいが、好ましく
は、第２図に示したごとく、非円形とした場合、
ピツチ径が最大となる位置近く好ましくは、該位
置に対し回転方向前方の歯を選択するのである。

これは、第２図のごとくチエンギヤ１〜３を楕
円形に近い非円形として、これらチエンギヤ１〜
３を第１図のごとくクランクCRに取付ける場合、
最大ピツチ径の歯部がクランクアームCAの近く
に位置するごとく取付ける方が、前記クランクア
ームCAを回転してチエンＣを駆動するペダリン
グの１周期における仕事率を向上でき、仕事量に
対する筋出力量（消費エネルギー）を減少し、運
転者に与える肉体的な負荷を軽くでき、かつぎく
しやく感のないペダリングが可能となるのであつ
て、斯かる構成においては、ピツチ径が最大とな
る位置での前記チエンCRに伝達するトルクは最
小となり、前記特定歯２１，２２からチエンＣが
離脱し易くなることによるものであり、また、フ
ロントデイレーラーのチエンガイドとの関連にお
いては、クランクアームCAの近くが、チエン移
動の少ない場所でもあるからである。

尚、前記クランクアームCAと前記各チエンギ
ヤ１〜３との組合せの基本思想は、ペダリングに
際し、運転者の足から出力される足のトルクは、
クランクアームCAが上下死点近くに位置する領
域で最小となり、これら上下死点から駆動回転方
向前方に所定角度（60〜130゜）回転したとき最大
となることから、最大トルクが得られる領域では
ピツチを最小とした方がペダリングの周速を増大
でき、仕事率を向上できると共に、最小トルクし
か得られない領域では、もともと大きなトルクが
出せないのであるから、ピツチ径を大きくして周
速を遅くした方が足の動きがもつ速度パターンに
マツチさせられることに着目したものである。

又、以上の観点から前記チエンギヤ１〜３を円
形とする場合でも、前記クランクアームCAの近
く、即ち上下死点近くに前記特定歯２１，２２が
位置するごとく組合わせることが好ましいのであ
る。

次に、前記した構成において、前記特定歯２
１，２２の前方歯２３，２４、２５，２６に設け
る補償手段を説明する。尚説明の都合上、前記特
定歯２１の前方歯２３，２４についてのみ説明す
る。

これら前方歯２３，２４のうち、前記特定歯２
１に近い第１前方歯２３は、他の通常歯２７…よ
りその歯高を低くするが前記特定歯２１より高く
するのであり、また、第２前方歯２４は特定歯２
１と同じ歯高にするのである。

因みに、前記通常歯２７…の歯高を6.5mmとし
た場合、前記特定歯２１及び第２前方歯２４の歯
高は4.5mmとし、第２前方歯２３の歯高は5.5mmと
するのである。

つまり、第２前方歯２４は、特定歯２１に先行
して、前記通常歯２７に噛合つているチエンＣを
離脱させるべくセンシングする働らきをさせると
共に、第１前方歯２３は前記第２前方歯２４で離
脱しようとするチエンＣを離脱可能な状態を維持
してホールデイングする働らき、即ち、第１前方
歯２４での離脱センシング作用を助長するのでな
く、逆に、離脱作用を抑制する働らきをさせるの
であつて、これら各歯２３，２４の働らきにより
次位の特定歯２１からの離脱を補償するのであ
る。

尚、前記第１前方歯２４でのホールデイング作
用は、通常歯２７…におけるホールデイング作用
における保持力より弱い。これは主として前記第
１前方歯２３の歯高を第２前方歯２４の歯高より
高くするが、通常歯２７の歯高よりは低くするこ
とにより期待できるものであるが、前記第１前方
歯２３は、その歯先位置を第３，４図のごとく小
径チエンギヤ３側に変位させると共に、歯先面取
部分の深さＷを通常歯２７より浅くすることが好
ましい。

斯くすることにより、前記したごとく歯高を第
２前方歯２４より高く、通常歯２７より低くする
ことと相俟つて、前記したホールデイング作用を
より適正に行なえながら、ペダル逆踏みによる逆
転時や、負荷の小さい正転時においてデイレーラ
ーを操作していないのに拘わらず、小径チエンギ
ヤ３に自動的に掛換えられる所謂自動変速が行な
われることを防止できるのである。

即、一般に自転車においてフロント側に多段チ
エンギヤを用いる場合、リヤ側にも多段、通常は
５〜６段チエンギヤを用いるため、フロント側と
リヤ側とに掛設されるチエンＣのチエンライン
は、これら各チエンギヤの選択により変化し、特
にフロント側において大径又は中径チエンギヤ１
又は２を選択している状態で、リヤ側において大
径チエンギヤが選択されると、前記チエンライン
は、傾斜状となり、フロント側において小径チエ
ンギヤ３側に変位することになる。

従つて、前記第１前方歯２３を、第２前方歯２
４及び特定歯２１と同様、例えばその歯高を低く
したりすると、フロントデイレーラーを操作しな
い場合でも、逆転時や、低負荷の正転時におい
て、チエンＣが小径チエンギヤ３側に掛換えられ
てしまう所謂自動変速が生ずるのであるが、前記
したごとく第１前方歯２３を構成することにより
該第１前方歯２３のホールデイング作用でこの自
動変速も防止できるのである。

次に以上の如く構成するチエンギヤの下り掛換
えについて説明する。

以上の如く構成する中径チエンギヤ２にチエン
Ｃが噛合つている状態から小径チエンギヤ３に掛
換える下り掛換えは、図示していないが、フロン
トデイレーラーを第３図矢印Ｙ方向に操作して前
記チエンＣを小径チエンギヤ３側（第２図では紙
面の手前側）に押圧することにより行なうのであ
る。

このフロントデイレーラーによるチエンＣの押
圧により、該チエンＣは、持上げられ前記第２前
方歯２４において離脱し、小径チエンギヤ３側に
変位しようとするのである。

そして、斯く離脱しようとするチエンＣは、前
記第１前方歯２３に離脱可能状態を維持されなが
ら保持されるのであり、前記特定歯２１において
離脱するのである。

そして、前記特定歯２１で離増したチエンＣ
は、小径チエンギヤ３に落込むのであるが、前記
小径チエンギヤ３は、前記チエンＣが落込むとき
に受入れる受入歯３１が、前記特定歯２１に対
し、チエンＣの整数倍ピツチnpに符合している
から、前記受入歯３１により落込むチエンＣは直
ちに噛合うことになり、落込んだチエンＣが小径
チエンギヤ３の複数歯に乗り上がつたまゝ移動
し、一挙に小径チエンギヤ３に噛合うことはない
のである。

その上、前記チエンＣは、特定歯２１において
積極的に離脱させ得るのであるから、前記中径チ
エンギヤ２において持上げられたチエンＣが、直
ちに離脱することなく複数歯において持上げられ
た状態で同時に離脱することにより、小径チエン
ギヤ２に落込む際、該小径チエンギヤ２のチエン
ラインを乗り越えて前記小径チエンギヤ２に噛合
わずに離脱する所謂チエン落ちが生ずることも防
止できるのである。

しかも、以上説明した実施例によると、前記し
たごとく自動変速も解消できるのである。

尚、以上説明した実施例は、中径チエンギヤ２
に本発明を適用したものであるが、図面に示した
３段チエンギヤにおいては、大径チエンギヤ１に
適用することも、大径及び中径チエンギヤ１，２
の両方に適用することも可能である。

また、フロント側多段チエンギヤに限らず、リ
ヤ側多段チエンギヤにも適用できる。

更に、本発明における特定歯２１，２２の易離
脱構造として、その歯高を低くしたが、その他歯
高を通常歯２７と同じとして、前記特定歯２１，
２２を小径チエンギヤ３に対し外側に変位させて
もよい。

また、図面に示した実施例において、前記特定
歯２１，２２及び第２前方歯２４，２６を、通常
歯２７に対し小径チエンギヤ３側に変位させてい
るが、これは歯高を低くする場合、前記特定歯２
１，２２からチエンＣを離脱させ易くできる。

以上の如く、本発明によれば、簡単な構成によ
り、大径側チエンギヤから小径側チエンギヤへの
下り掛換えを、シヨツクや音鳴りなく行なえると
共に、チエン落ちの問題も解消できるのであり、
それでいて逆転時や、負荷の小さい正転時におい
て掛換え操作がないにも拘わらずチエンが掛換え
られる所謂自動変速もないのである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明チエンギヤを適用したフロント
側多段チエンギヤの正面図、第２図は本発明チエ
ンギヤの一実施例を示す背面図、第３図はチエン
の掛換え状態を示す部分拡大平面図、第４図は第
３図−線における拡大断面図である。 ２……中径チエンギヤ、３……小径チエンギ
ヤ、２１，２２……特定歯、２３，２５……第１
前方歯、２４，２６……第２前方歯、３１……受
入歯。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 少なくとも１枚の大径側チエンギヤと、少な
   くとも１枚の小径側チエンギヤとから成る多段チ
   エンギヤであつて、前記大径側チエンギヤにおけ
   る少なくとも一つの特定歯を、該大径側チエンギ
   ヤに噛合うチエンに対し易離脱構造とし、かつこ
   の特定歯に対し前記大径側チエンギヤの駆動回転
   方向前方に位置する複数の前方歯に、前記特定歯
   からのチエンの離脱を補償する補償手段を設ける
   一方、前記小径側チエンギヤを、前記大径側チエ
   ンギヤにおける特定歯から離脱するチエンを受入
   れる歯が、前記特定歯に対し前記チエンの整数倍
   ピツチに符合するごとく前記大径側チエンギヤに
   組合わせたことを特徴とする多段チエンギヤ。