JPH0324892Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は高温、高圧環境下において使用され
る円筒ころ軸受に関し、さらに詳細には、軸の熱
膨張による内輪の軸方向への移動を許容し得るグ
リース密封型の円筒ころ軸受に関するものであ
る。

（従来の技術） 従来のグリース密封型円筒ころ軸受の一般的な
構造を第３図および第４図に示す。これらの軸受
の密封機構は、外輪ａと内輪ｂとの間の軸方向両
側部分に密封耐ｃ，ｃが嵌着されて、これらの内
部にグリースが密封される構造とされている。

そして、第３図のものは、外輪ａの内径面にこ
ろｄ，ｄ…を案内する案内溝ｅが設けられるとと
もに、内輪ｂの外径面が平坦な円筒面とされて、
該内輪ｂが上記ころｄ，ｄ…に対して軸方向へ移
動可能とされた内輪分離形の軸受であり、また、
密封体ｃのシールリツプ部ｆは上記内輪ｂの外径
面に摺接するようにされている。

一方、第４図のものは、フオークリフトのマス
トローラなどに用いられるいわゆる総ころタイプ
のもので、ころｄ，ｄ…の軸方向の動きを抑える
ために、外輪ａに矩形状断面の止め輪ｇ，ｇが嵌
着されるとともに、内輪ｂの外径面にころｄ，ｄ
…を案内する案内溝ｈが設けられた内輪非分離形
の軸受である。また、密封体ｃのシールリツプ部
ｆは、上記内輪ｂの外径面の両側部分に設けられ
た傾斜状のシール面ｉに摺接するようにされてい
る。

（考案が解決しようとする課題） しかしながら、このような構造では、それぞれ
以下に述べるような問題があつた。

すなわち、第３図に示す構造においては、 内輪ｂが分離する構造のため、高温、高圧環
境下において、軸の熱膨張により内輪ｂに軸方
向の変位が生じた場合でも軸受の摺動抵抗（回
転抵抗）の増大は生じないが、反面、輸送時や
組み込み時においては、内輪ｂが密封体ｃ，ｃ
から外れないように取り扱う必要があり、取り
扱いが不便である。

また、内輪ｂが密封体ｃ，ｃから一旦外れた
場合に、この内輪ｂを再び定位置まで戻すと、
密封体ｃ，ｃのシールリツプ部ｆ，ｆが反転し
たり、損傷する虞れがある。

また、第４図に示す構造においては、 軸の熱膨張により内輪ｂに軸方向の変位が生
じた場合、内輪ｂところｄ…の相対的な軸方向
の移動が不可能であるため、この変位量を外輪
ａ側の軌道部で逃す必要がある。しかし、止め
輪ｇ，ｇがころｄを案内する構造では、該止め
輪ｇ，ｇところｄ，ｄ…の隙間が詰まつてしま
い、これがため、摺動抵抗（回転抵抗）が増大
したり、回転不可能となつてしまう。

止め輪ｇ，ｇによつてもころｄ，ｄ…を案内
する構造であるため、回転時においては、止め
輪ｇ，ｇところｄ，ｄ…との間に常時摺動抵抗
が生じ、高速回転には不向きであり、また、こ
の摺動抵抗による摩擦熱によりグリースが早期
に劣化してしまい、その寿命が比較的短い。

密封体ｃのシールリツプ部ｆが内輪ｂのシー
ル面ｉに摺接するシール形式では、軸の熱膨張
により内輪ａが軸方向へ変位した場合、密封体
ｃの締めしろが大幅に変化してしまう。

そして、締めしろが減少もしくは消失すると、
グリース漏れを引き起してしまい、逆に、締めし
ろが増大すると、密封体ｃのシールリツプ部ｆと
内輪ｂのシール面ｉとの間で摩擦抵抗が増大し
て、摩擦熱が発生し、軸受自身に悪影響を及ぼす
ことになる。

本考案はかかる従来の問題点に鑑みてなされた
ものであつて、内輪非分離形として、輸送時や組
み込み時の取り扱いの容易性を確保しつつ、高い
密封性を安定して確保するとともに、摺動抵抗の
増大を抑えて、高速回転に適した構造を備えたグ
リース密封型円筒ころ軸受を提供することを目的
とする。

（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するため、本考案のグリース密
封型円筒ころ軸受は、外輪の内径面に、ころを案
内するための案内溝が周方向へ全周にわたつて設
けられるとともに、内輪の外径面が軸方向全長に
わたつて平坦な円筒面に形成されて、該内輪が上
記ころに対して軸方向両側へ移動可能とされてな
り、かつ上記外輪と内輪との間の軸方向両側部分
に、グリースを密封するための密封体が嵌着され
てなる構造において、上記内輪の外径面における
上記ころの軸方向両側部分に、止め輪が上記ころ
と所定の軸方向間隔をもつて嵌着され、該止め輪
は、円形状断面を有するとともに、上記ころの端
面に対する接触位置が該端面の平坦面上とされ、
上記内輪の外径面おける上記止め輪の嵌着位置よ
りも軸方向外側部分に、上記密封体のシールリツ
プ部が摺接されていることを特徴とする。

（作用） 内輪の外径面におけるころの軸方向両側部分に
嵌着された止め輪は、内輪ところとの相対的な軸
方向の移動を規制して、内輪がころに対して外れ
ない内輪非分離形とする。

また、上記止め輪ところとは所定の軸方向間隔
をもつて離隔しており、通常の状態における止め
輪ところの接触が防止される。

また、止め輪の断面を円形状とし、かつ、ころ
端面に対する接触位置を該端面の平坦面としてい
るので、止め輪にころ摺接する際の接触状態は線
接触で、摺動抵抗の可及的な減少が図られ、しか
も、ころの端面の面取り部分への止め輪の食い込
みが防止される。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。

本考案に係る円筒ころ軸受を第１図に示し、該
円筒ころ軸受は、具体的には、自動車用スーパー
チヤージヤのフロント側主軸や従軸等に装着して
使用される高速回転用のグリース密封型のもので
あつて、外輪１と内輪２との間に、転動体である
円筒ころ３，３…が配列されるとともに、外輪１
および内輪２間の軸方向両側部分に、グリースを
密封するための密封体４，４が嵌着されてなる。
５は保持器である。

外輪１の内径面（軌道面）１ａは平坦な円筒面
とされるとともに、該内径面１ａの軸方向中央部
分に、案内溝６が周方向へ全周にわたつて設けら
れている。該案内溝６は上記ころ３，３…を案内
するためのものであつて、２列に平行して配設さ
れた環状リブ７，７から形成されている。なお、
上記案内溝６は上記内径面１ａに凹設してもよ
い。

内輪２の外径面（軌道面）２ａは平坦な円筒面
とされて、該内輪２が上記ころ３，３…に対して
軸方向両側へ移動可能とされている。また、上記
外径面２ａにおける上記ころ３，３…の軸方向両
側部分には、嵌合溝８，８が周方向へ全周にわた
つて形成され、これらに止め輪９，９がそれぞれ
嵌着されている。

該止め輪９は、内輪２ところ３，３…との相対
的な軸方向の移動を規制するためのもので、ばね
等からなる。止め輪９は、第２図に示すように、
その断面形状が円形とされるとともに、上記ころ
３の端面３ａと所定の軸方向間隔Ｌをもつて配置
されている。この軸方向間隔Ｌは、内輪２を嵌着
すべき軸（図示省略）の長さが熱膨張により変化
する場合を考慮して、その逃げの分（変化分）程
度の若干の余裕を持たせて設定され、通常の状態
においては、止め輪９ところ３との接触が防止さ
れている。

また、上記止め輪９のころ３の端面３ａ，３ａ
に対する接触位置は、端面３ａ，３ａの平坦面１
２，１２上となるように設計されている。すなわ
ち、第２図に示すように、止め輪９の円形断面の
半径を大きくして、その断面中心から延びる水平
線１３の高さ位置（この高さ位置にある止め輪９
の外径面が接触部となる）が、上記平坦面１２上
にあるように設定されている。

密封体４はゴム弾性体１０と締付ばね１１から
なり、上記環状リブ７の軸方向外側部分に弾発的
に嵌着されている。また、密封体４のシールリツ
プ部１０ａは、上記内輪２の内径面２ａにおける
止め輪９の嵌着位置よりも軸方向外側部分に摺接
されている。

なお、両側の密封体４，４は、上記シールリツ
プ部１０ａ，１０ａがいずれも同一軸方向へ向け
られて、左右非対称に配置されており、軸受内に
必要以上の圧力上昇や圧力低下が生じのを防止す
る構造とされている。

以上のように構成された円筒ころ軸受は、内輪
２に止め輪９，９を備えた内輪非分離形とされ、
自動車用スーパーチヤージヤのフロント側主軸、
従軸等に装着される高速回転用として使用され
る。

しかして、上記軸の高速回転時において、通常
の状態では、止め輪９，９ところ３，３…は、そ
れぞれ所定の軸方向間隔Ｌをもつて離隔してお
り、これら両者の接触が有効に防止されて、円滑
な高速回転が確保される。

また、軸が熱膨張等を起こすと、内輪２も軸方
向へ変位することとなり、この変位が異常に大き
くなると、一方の止め輪９がころ３，３…の端面
３ａ，３ａ…に接触することになる。しかしなが
ら、この場合の接触状態は、止め輪９の断面が円
形状であるため線接触であつて、止め輪９ところ
３，３…の摺動抵抗が最小限に抑えられる。

しかも、止め輪６のころ３，３…に対する接触
部は、第２図に示すように、上記端面３ａの平坦
面１２であり、止め輪９が上記端面３ａの面取部
分１４に食い込むのが防止される。これにより、
ころ３，３…の止め輪９上への乗り上げは起こら
ず、この点からも円滑な高速回転が確保される。

さらに、密封体４のシールリツプ部１０ａは、
止め輪９の嵌着位置よりも軸方向外側において、
内輪２の外径面２ａに摺接しており、よつて、軸
の熱膨張による内輪２の軸方向への移動の有無に
かかわらず、密封体４の締めしろが常に一定に保
たれて、安定した密封性および耐圧性が確保され
る。

（考案の効果） 以上詳述したように、本考案によれば以下に列
挙するような種々のすぐれた効果が得られる。

(1) 内輪の外径面におけるころの軸方向両側部分
に、止め輪が上記ころと所定の軸方向間隔をも
つて嵌着されてなる内輪非分離形とされている
から、輸送時や組み込み時においても、内輪が
密封体から外れるることはなく、軸受の取り扱
いが容易であるとともに、密封体の内部に封入
されたグリースが洩れることもなく、密封性に
すぐれる。

(2) また、内輪非分離形であるから、一旦軸受を
組み立てると、内輪が密封体から外れることは
なく、従来の内輪分離形（第３図参照）におけ
るような、再度の内輪装着時に密封体が反転し
たり、密封体のシールリツプ部が損傷を受ける
といつた問題を生じない。

(3) 止め輪がころと所定の軸方向間隔をもつて嵌
着されているから、通常の状態では止め輪がこ
ろに接触するとはなく、高速回転に適するとと
もに、止め輪ところとの間の摩擦熱によるグリ
ースの劣化もなく、グリースの寿命が大幅に延
びる。

(4) 止め輪が円形状断面を有するから、軸の熱膨
張により内輪に軸方向の変位が生じて、上記止
め輪にころが接触しても、止め輪ところとの接
触は面接触ではなく線接触となり、これによ
り、ころの回転抵抗が小さくて、円滑かつ安定
した高速回転が常時確保される。

(5) 止め輪のころ端面に対する接触位置がころ端
面の平坦面であるので、止め輪がころ端面の面
取り部分に食い込むことが防止でき、ころの円
滑な回転をより確実なものとすることができ
る。

(6) 密封体のシールリツプ部が、止め輪嵌着位置
よりも軸方向外側において内輪の外径面に摺接
されているから、軸の熱膨張により内輪が軸方
向へ移動した場合でも、密封体の締めしろは、
変化することなく、常に一定に保たれる。これ
により、グリース漏れを引き起こしたり、密封
体のシールリツプ部と内輪との間で摩擦抵抗が
増大し、摩擦熱を生じて軸受自身に悪影響を及
ぼすといつた不都合はない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例である円筒ころ軸受
の要部を示す断面図、第２図は同軸受のころと止
め輪との配置構造を示す図、第３図および第４図
はそれぞれ従来の円筒ころ軸受を示す第１図に対
応する図である。 １……外輪、１ａ……外輪の内径面、２……内
輪、２ａ……内輪の外径面、３……ころ、４……
密封体、６……案内溝、９……止め輪、１０ａ…
…シールリツプ部。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 外輪の内径面に、ころを案内するための案内溝
   が周方向へ全周にわたつて設けられるとともに、
   内輪の外径面が軸方向全長にわたつて平坦な円筒
   面に形成されて、該内輪が上記ころに対して軸方
   向両側へ移動可能とされてなり、かつ上記外輪と
   内輪との間の軸方向両側部分に、グリースを密封
   するための密封体が嵌着されてなるグリース密封
   型円筒ころ軸受において、 上記内輪の外径面における上記ころの軸方向両
   側部分に、止め輪が上記ころと所定の軸方向間隔
   をもつて嵌着され、 該止め輪は、円形状断面を有するとともに、上
   記ころの端面に対する接触位置が該端面の平坦面
   上とされ、 上記内輪の外径面における上記止め輪の嵌着位
   置よりも軸方向外側部分に、上記密封体のシール
   リツプ部が摺接されている ことを特徴とするグリース密封型円筒ころ軸
   受。