JPH0323773B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、車両用デイスクブレーキに使用する
フローテイング型のブレーキデイスクに関する。

（従来の技術） フローテイング型のブレーキデイスクは、リン
グ状の制動部とハブが別体になつており、両部材
は、僅かの間隙を介在させて連結され、半径方向
及び軸方向に微小相対移動ができるようになつて
いる。

この構成により制動部は、ブレーキ作動時にパ
ツドに追従して密着することができ、摩擦熱よる
熱歪も回避できる。制動部は摩擦熱により熱膨張
するが、ハブで拘束されないため熱応力は小さ
く、制動部自体も単純なリング形のため熱応力は
小さく、これらによつて制動面の平面度が正しく
維持できるという利点をもつ。

このようなブレーキデイスクにおいては、制動
部とハブを連結するため、両部材の対向面のそれ
ぞれに半田形の溝を軸方向に対向して設け、二つ
の溝で形成される円内に丸ピンを挿通して係合さ
せるのが一般である（一例として実開昭60−
3333）。また制動部とハブ部に、半径方向に伸び
る係合凸部と係合凹部を設けて互いに係合させ、
かつ係合部の表裏から連結板を重ね、これらを車
軸と平行に貫通してかしめたリベツトで固定した
ものも知られている（実開昭61−200937）。

（発明が解決しようとする問題点） 前記実開昭60−3333の連結手段を用いると、溝
と丸ピンは円弧面で接触するため、力の伝達方向
から見て傾斜面で接触するようになり、くさび作
用が働いて過大な面圧が生じ易い。

この面圧を下げるために両部材を厚くすると、
デイスクの重量が増加するという問題が生じる。
また両部材の側面から丸ピンの両端が突出するた
めデイスクの厚さ方向の寸法が大きいという問題
がある。

また、前記実開昭61−200933の連結手段を用い
ると、リベツトの頭部とかしめ部が車幅方向に大
きく突出して前記実開昭60−3333のものと同様に
ブレーキデイスクの厚さ方向の寸法が大になり、
ブレーキ設置空間の狭い車両には使用し難いとい
う問題がある。

（問題点を解決するための手段） 本発明は、両部材の連結部を改良して前記の問
題点を解決したもので、その手段は、リング状の
制動部の内側に、車軸に連結するハブを微小相対
移動可能に連結したブレーキデイスクにおいて、
制動部の内周に、半径方向にのびる逆向きの受圧
面をもつ内周係合歯を突設し、ハブの外周に前記
内周係合歯に係合する外周係合歯を突設し、両係
合歯のかみ合い状態で両係合歯内を通り制動面と
平行する一連のピン挿入路を設け、該ピン挿入路
に連結ピンを挿入固定して両係合歯を連結したこ
とを特徴とする。

（作用） 前記の手段により、デイスクに加わる制動力
は、両係合歯の受圧面に垂直に作用し、このため
くさび作用は生ぜず過大な面圧は発生しない。制
動部とボスの相対移動は、両部材間の間隙及びピ
ン挿入路と連結ピンとの間隙により、又は連結ピ
ンの撓みにより許容される。この連結ピンは、デ
イスクの内部に挿入されて厚さ方向には突出しな
いから、デイスクの厚さ方向の寸法を増大させず
狭い取付け場所へ取付けることができる。

（実施例） 以下本発明の実施例を図面によつて説明する。

第１図、第２図において、１はブレーキデイス
クで、２はその制動部、３は車軸に連結するハブ
である。制動部２はリング状をなし、摩擦面に多
数の冷却用の通気穴４と、内周部に複数個の短い
内向きの内周スポーク５とを備える。内周スポー
ク５には、車軸方向から見て凹形をなす内周係合
歯６を設けて第３図に示すように半径方向にのび
る一対の逆向きの受圧面６ａを形成して該受圧面
６ａにより正又は逆方向の制動力を伝えるように
し、更に、回転面内にＵ字形の割溝７を設けてい
る。

ハブ３には、中央に軸穴８と外方の３個の取付
穴９及び複数個の外周スポーク１０を備える。こ
の外周スポーク１０には凸形をなす外周係合歯１
１を設けて第４図に示すように両面に受圧面１１
ａを形成し、回転面内にＵ字形の割溝１２を備え
る。

これらの係合歯６，１１をかみ合せて割溝７、
で形成されるピン挿入路にはピン１３が挿入され
て両スポーク５，１０を車軸方向に連結する。こ
のピン１３は、第５図に示すように小判形の断面
をもつ軸部１４と頭部１５とを備えており、第６
図に示すように該断面の短径を車軸方向にして割
溝７，１２内に挿通し、先端にかしめ部１６を形
成する。

以上の構成であるから、係合歯６，１１の長
さ、したがつて受圧面６ａ，１１ａの長さを充分
に長くすることができ、ピン１３の断面を小判形
としたことにより直線溝７，１２の溝幅を小さく
することができたため、受圧面積を充分大きくと
ることができる。そして制動部２とハブ３の軸方
向の微小の移動は、直線溝７，１２とピン１３と
の僅かの隙間及びピン１３の短径方向の撓みの容
易性により許容される。

次に第７図ないし第９図により別の連結手段を
用いた実施例を説明する。この実施例は、係合歯
６、にＶ字底の割溝２０，２１を設けてピン挿入
路を形成し、これに第８図のピン２２を挿入して
第９図のように組合わせたものであり、ピン２２
は、断面長菱形の軸部２３と小判形の頭部２４を
備え、割溝２０，２１に挿通後先端にかしめ部を
形成する。

このピン２２も車軸方向の寸法は小さいためそ
の方向には撓み易く、該撓みとピンと割溝との僅
かの隙間によつて制動部とボス部の車軸方向の微
小移動は許容されるが、それ以上の移動は該ピン
の剛性により阻止される。

次に、更に別の実施例を第１０図ないし第１４
図によつて説明する。この実施例においても前記
各実施例と共通する構成については同一の符号を
用いて説明する。この実施例でも、制動部２の内
周スポーク５に内周係合歯６を設け、ハブ３の外
周スポーク１０に外周係合歯１１を設けて、第１
０図に示すようにかみ合せてある。

内周係合歯６には、第１２図ａ，ｂに示すよう
にＵ字形割溝３０が制動面と平行に設けてあり、
外周係合歯１１には、第１３図ａ，ｂに示すよう
に丸穴３１が設けてある。

両係合溝６，１１を第１４図のようにかみ合せ
て、割溝３０と丸穴３１によつて一連のピン挿入
路を形成し、該挿入路内にその全長により短い連
結ピン３２を挿入する。そして、挿入路の両端に
溶接具によつて肉盛りして狭窄部３３を形成して
ピン３２の脱出を防止している。この肉盛りは、
溶接棒を溶解して溶着するか、係合歯６のＵ字溝
３０の表面を溶解して盛り上げることにより形成
する。

このような手段を用いることにより、連結ピン
３２として、鋼線を単に切断しただけのものやベ
アリング用のニードルを使用することができ、狭
窄部３３の形成も短時間で行なうことができる。

この無頭の連結ピンと狭窄部による連結手段
は、第１図ないし第８図の実施例における有頭の
連結ピンによる連結手段に代えることができる
し、反対に第１０図ないし第１４図のものに有頭
の連結ピンを用いることもできる。

以上の各実施例においてブレーキデイスクに作
用する制動トルクや軸方向の力は、連結ピンの長
手方向には作用しないから、該連結ピンの頭部、
かしめ部又はピン挿入路に設ける狭窄部等の固定
部分は、端に連結ピン自体の脱出を防止できる程
度の強度があればよく、該固定部分は極めて小型
に形成される。

また、各実施例において内周係合歯を凹形と
し、外周係合歯を凸形としているが、両係合歯の
凹凸形状は逆であつてもよく、受圧面の数の多い
ものとすることもできる。

（発明の効果） 本発明は、以上のように半径方向にのびる係合
歯に受圧面を形成したから、受圧面の寸法を充分
に大きくすることができ、かつ制動力を受圧面に
垂直に作用させるので、くさび作用が生ぜず、低
い面圧に抑えることができるため受圧面に摩耗が
生じない。したがつて受圧面の厚さを小さくする
ことができるから、ブレーキデイスクの板厚を小
さくすることができる。そして、連結ピンは、制
動部とハブの軸方向の分離を阻止するためのもの
で、制動力は作用しないから、細いニードルや線
材を使用することができる。これにより連結ピン
をブレーキデイスクの側面に突出させることなく
ブレーキデイスクの厚さの範囲内におさめること
ができるので、ブレーキデイスク全体の厚さを小
にすることができ、車軸への装着性を良好にす
る。

また、ブレーキデイスクに作用する制動トルク
や軸方向の力は、連結ピンの長手方向には作用し
ないから、該連結ピンの頭部、かしめ部又はピン
挿入路に設ける狭窄部等の固定部分は、単に連結
ピン自体の脱出を防止できる程度の強度があれば
よく、該固定部分は極めて小型に形成されるか
ら、連結ピンの固定部分によつてブレーキデイス
クの厚さは殆ど増大することがなく、したがつて
ブレーキ設定空間の狭い車両に用いることができ
る効果を奏する。更に連結ピンは、簡単なかしめ
又はピン挿入路の狭窄によつて固定することがで
きるから、該固定のための加工量が小さく能率的
に固定できる効果を奏すると共に、かしめ時に大
きな力が作用しないからデイスク部、ハブ部等が
鋳造品であつても該部に破損が生じるおそれがな
い利点を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の１実施例の正面図、第２図は
第１図の−線断面図、第３図ａは制動部の部
分正面図、ｂはａのｂ−ｂ線断面図、第４図
ａはハブの部分正面図、ｂはａのｂ−ｂ線断
面図、第５図ａ，ｂはピンの側面図及び正面図、
第６図は第２図のＡ部拡大図、第７図ａ，ｂは本
発明の別の実施例の係合歯の断面図、第８図ａ，
ｂはピンの側面図及び正面図、第９図は連結部分
の断面図、第１０図は更に別の実施例の部分正面
図、第１１図は第１０図のXI−XI線断面図、第１
２図ａは制動部の部分正面図、ｂはａのXIIｂ−XII
ｂ線断面図、第１３図ａはハブの部分正面図、ｂ
はａのｂ−ｂ線断面図、第１４図は連結
部の拡大断面図である。 ２……制動部、３……ハブ、６……外周係合
歯、１１……外周係合歯、６ａ，１１ａ……受圧
面、１４，２２，３０……連結ピン、１５，２４
……頭部、１６……かしめ部、３３……狭窄部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ リング状の制動部の内側に、車軸に連結する
   ハブを微小相対移動可能に連結したブレーキデイ
   スクにおいて、制動部の内周に、半径方向にのび
   る逆向きの受圧面をもつ内周係合歯を突設し、ハ
   ブの外周に前記内周係合歯に係合する外周係合歯
   を突設し、両係合歯のかみ合い状態で両係合歯内
   を通り制動面と平行する一連のピン挿入路を設
   け、該ピン挿入路に連結ピンを挿入固定して両係
   合歯を連結したことを特徴とするブレーキデイス
   ク。 ２ ピン挿入路におけるデイスク半径方向の長さ
   を車軸方向の長さよりも大きく形成し、該ピン挿
   入路にこれに適合する断面形状をもつ連結ピンを
   挿入したことを特徴とする、特許請求の範囲第１
   項記載のブレーキデイスク。 ３ ピン挿入路内にこれより短い無頭の連結ピン
   を挿入し、該ピン挿入路の両端に肉盛りによる狭
   窄部を形成したことを特徴とする特許請求の範囲
   第１項記載のブレーキデイスク。