JPH0318064B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明はベルト駆動機構において、適正なベル
ト張力を保持し、かつベルトの張力変動及び共振
を防止減衰するのに好適なベルト用オートテンシ
ヨナーに関するものである。

（従来技術） 従来より、駆動プーリと従動プーリの間に伝動
ベルトが巻掛けられるベルト伝動装置においては
張力付与手段としてオートテンシヨナーが用いら
れている。一般に使用されているオートテンシヨ
ナーとしては油圧、空気圧、ゴムならびに鋼製ば
ね、樹脂ばね等を用い、圧縮、引張り、曲げねじ
りなどの手段によつてベルトに張力を付与するも
のである。

その手段の具体的な一例を述べると、円筒状ケ
ースにテンシヨナー軸を挿入し、これに先端にア
イドラープーリを有し、内面にボールベアリング
又はブツシユを内挿すると共に、スプリングのス
トツパーを兼ねるテンシヨンアームを取り付け、
円筒状ケースと上記テンシヨンアームとの間の前
記テンシヨナー軸外周面にねじりスプリングを挿
入してスプリングのねじり力によつてテンシヨン
アームが軸のまわりに回転し、ベルトテンシヨン
を付与する構成である。

ところで、一般にテンシヨナーによりベルトに
与えられるべき張力は、ベルト張力が低下した場
合にはベルトの滑りを防止する目的からより迅速
に付加されるべきである。しかし、その一方ベル
ト張力が増加した場合には付加張力の減少は比較
的徐々に行われ、短時間の急減な張力増加には対
応しない方が好ましい。

即ち、ベルトテンシヨナーは張力付与時は迅速
に反応し、張力減少時にはゆつくり動作するとい
う二律相反する性能が要求される。

その他、ベルトテンシヨナーにはベルトの共振
を防止する機能も重要な機能の一つである。

即ち、ベルトをエンジンを駆動源とする装置に
利用する時、特に多数の従動軸を一つのベルトで
動力伝達しベルト周長が比較的長い場合、エンジ
ンには上下死点が存在し、一定周期の角速度変化
があるため、一定回転数域においてベルトは共振
し激しく上下に振動する。そのため、ベルトから
異音が発生したり正規のトルクが伝達されないこ
とがある。

また、ベルトの共振現象は、ベルトの振動によ
つてテンシヨナー自体も激しく振動し、その結
果、ベルト張力の変動、付加変動を起生し、ひい
てはベルトの脱落、偏摩耗などの好ましくない現
象を発生させ、しかもそれにもかかわらず、上記
の如き従来のテンシヨナーにあつては最適張力の
付与及び共振防止機能に関してはほとんど配慮さ
れることがなく、事実上これら防止機能を備えた
ものは皆無に近い状態である。

（発明が解決しようとする問題点） 本発明は叙上の如き実状に対処し、その改善を
図ることを課題とし、特にテンシヨナー内部に皿
バネを含むカム機構を具備せしめることによりベ
ルトの最適張力の付与と相俟つてベルトの共振現
象を防止し、ベルト伝動における優れた張力調整
を可能ならしめることを目的とするものである。

（問題点を解決するための手段） 即ち、上記目的を達成するための本発明の特徴
とするところは、ブラケツトに固定した円筒状ケ
ースに、テンシヨナー軸一端を挿入し、該テンシ
ヨナー軸他端部に、アイドラープーリを先端に有
するテンシヨンアームの基端部を前記テンシヨナ
ー軸に回転可能に取り付け、且つ該テンシヨンア
ームと前記円筒状ケースとの間にねじりスプリン
グを挿入し、その両端を前記テンシヨンアーム及
び円筒状ケースに夫々係止してなるベルトテンシ
ヨナーにおいて、前記ねじりスプリング内周側で
テンシヨナー軸上に、斜め断面を介して相互に嵌
合する一対のカムの第１カム片がテンシヨンアー
ムに一体的に固定され、第２カム片はテンシヨナ
ー軸に対して回転方向には一体的に軸方向には摺
動可能に設けられており、前記第２カム片と円筒
状ケースの間に、皿バネを第２カム片に面接触状
態に介装せしめたベルト用オートテンシヨナーで
ある。

（作用） 叙上の如く本発明オートテンシヨナーは駆動プ
ーリと従動プーリ間に巻掛けられた伝動ベルトの
ベルト緩み側にテンシヨンアームの先端に取り付
けられたアイドラープーリがベルト背面と接触し
て設置される。そして、アイドラープーリをねじ
りスプリングが巻き緩む方向に引つ張り回転させ
た状態でベルトに接触させ駆動プーリを駆動方向
に回転駆動させるとアイドラープーリはねじりス
プリングが巻き締まる方向に働き、ベルトを押圧
しながら回転し、ベルトに所定のテンシヨンを与
える。

このような状態下、次にベルトの張力が緩んで
くると、ねじりスプリングのねじり張力と相俟つ
て皿ばねの圧縮力がカム機構の傾斜面によつてア
ームと一体化している第１のカム片への回転トル
クの分力に置換されて第１カム片が第２カム片面
を滑りながらアームと共に回転移動し、前記ねじ
りスプリングの回転トルクにカム片による回転ト
ルク分力が加わつた合力となつて迅速にアイドラ
ープーリをベルト緊張方向へ押圧移動させ、ベル
ト張力を保持しつつ駆動する。

次に、逆に雰囲気温度が上昇し、ベルトが緊張
する場合、アイドラープーリがベルト張力による
反力を受け、テンシヨナー軸へ回転モーメントと
して伝わるが、前記カムの傾斜面の角度と皿ばね
の反力によりアイドラープーリの押圧が弱まる方
向に作用し、ねじりスプリングによるスプリング
力との合力がアイドラープーリーからベルトに加
わり、自動的にベルト張力を維持する。

（実施例） 以下、更に添付図面に従つて本発明の具体的な
実施例を説明する。

第１図は本発明に係るオートテンシヨナーの一
例であり、図において、ａはオートテンシヨナ
ー、S₁は小径部とこれに連続する中間大径部を有
するテンシヨナー軸、１はブラケツト２に対し固
定された円筒状ケースであり、フランジ部がブラ
ケツト２にボルトV₁，V₂により締め付けられる
ことによつて固定されており、前記テンシヨナー
軸S₁の他端部にはボールベアリング又はブツシユ
４を内挿するテンシヨンアーム５が軸S₁の小径部
に対し回転可能に取り付けられていると共に、該
テンシヨンアーム５の先端にはアイドラープーリ
６がボールベアリング７を介しテンシヨンアーム
の先端軸S₂に挿入されてナツトにより固定されて
おり、更に円筒状ケース１のブラケツト２当接面
とテンシヨンアーム５との間には、テンシヨナー
軸S₁を囲繞してねじりスプリング８が設けられ、
そのスプリング８の一端はテンシヨンアーム５と
一体的に設けられたストツパー９の係止孔１０に
嵌合係止され、一方他端部は円筒状ケース１に設
けられた係止孔１１に挿入係止されてねじりスプ
リング８のねじり力によつてテンシヨンアーム５
が軸方向に回転し、ベルトにテンシヨンを付与す
るように構成されている。

しかして、上記の如き構成において、本発明は
その特徴として前記円筒状ケース内部にカム機構
１２及び更バネ１５が設けられている。

即ち、前記ねじりスプリング８の内周側におい
てテンシヨンアーム５と一体化されて第１のカム
片C₁が前記テンシヨナー軸S₁と同心状に設けら
れており、これに対抗して同じく軸S₁と同心状に
第２のカム片C₂が軸S₁の大径部に設けられたキ
ー溝１４に滑りキー１３を介して前記第１のカム
片C₁と噛合する如く設けられている。

そして、この第２のカム片C₂と前記円筒状ケ
ース１のブラケツト当接面との間に皿バネ１５が
挿入され、第２のカム片C₂を軸方向のみ移動す
るように押圧している。

尚、上記第１のカム片C₁及び第２のカム片C₂
は前述の如く相互に滑り易く耐久性のある材質で
作られ、合成樹脂例えばナイロン製のカム片C₁
と鋼製のカム片C₂の組合せが最も一般的である
が、合成樹脂製カム片同志あるいは鋼製カム片同
志でも勿論差し支えない。

第２図、第３図は上記第１のカム片C₁と第２
のカム片C₂の詳細を示し、第２図に示す第１の
カム片C₁において、F₁，F₁′はフラツト面、Ｈ，
H′は傾斜面、ｆ，f′は前記F₁，F₁′のフラツト面
よりも薄いフラツト面、一方第３図に示す第２の
カム片C₂においてＰ，P′は傾斜突起部、F₂，
F₂′はフラツト部を夫々示しており、これら第１、
第２の両カム片C₁，C₂は第１のカム片C₁のフラ
ツト面F₁，F₁′と第２のカム片C₂の突起Ｐ，P′と
噛み合つており、ベルト張力が変動した時には第
１のカム片C₁のフラツト面F₁が第２カム片C₂の
フラツト面F₂を、又第２のカム片C₂の突起P′が
第１のカム片C₁のフラツト面ｆならびに傾斜面
Ｈを滑りながら移動するようになつている。

又、前記第２のカム片C₂と円筒状ケース１と
の間に挿入介設された中心に穴のある円板を円錐
状に成形した皿ばね１５は、テンシヨンアーム５
の軸方向の変位による圧縮長を変えることにより
カムの回転トルクを変量できるので、これに適し
たバネ定数の皿ばねを用いることが効果的であ
る。

本発明は以上のような構成を有してなり、次に
上記オートテンシヨナーを用いた使用態様を第４
図に従つて説明する。

同図において、Drは駆動プーリ、Dnは従動プ
ーリを示し、それら面プーリ間にＶベルト、平ベ
ルト、リブドＶベルト、タイミングベルト等から
なる任意のベルト２０が巻掛けられており、その
ベルト緩み側にテンシヨンアーム５の先端に取り
付けられたアイドラープーリ６がベルト２０の背
面と接触する如く設置されている。

そこで、このアイドラプーリ６を前記ねじりス
プリングが巻緩む方向に引つ張り回転させてベル
ト２０に接触させ、駆動プーリDrを矢印方向に
回転駆動させると、アイドラープーリ６はねじり
スプリングが巻締まる方向に働き、ベルト２０を
押圧しながら矢印方向に回転している。

そして、次にベルト２０の張力が緩んでくると
ねじりスプリングの弾力と相俟つて別途設けた皿
ばねの圧縮力がカム片の傾斜面によりアーム５と
一体化している第１のカム片への回転トルクの分
力に置換され、第１のカム片が第２のカム片面を
滑りながらアーム５と共に回転移動し、前記ねじ
りスプリングの回転トルクにカム片による回転分
力が加味され、合力となつてアイドラープーリ６
がベルト緊張方向へ押圧移動し、ベルト共振の防
止と共に適正なベルト張力を保持しつつ駆動す
る。

一方、雰囲気温度が上昇し逆にベルトが緊張す
る場合には、アイドラプーリ６がベルト張力によ
り反力を受け、テンシヨナー軸へ回転モーメント
として伝わるが、前記カム片の傾斜面と皿ばねの
反力によりアイドラープーリ６の押圧が強めら
れ、ねじりスプリングによるスプリングとの合力
がアイドラープーリ６からベルト２０に加わり、
自動的にベルト張力を維持することとなる。

かくしてベルト伝動においてオートテンシヨナ
ーとして優れた張力調整と共に、共振防止に寄与
する。

（効果） 本発明は以上の如く、ブラケツト固定した円筒
状ケースにテンシヨナー軸を挿入し、該軸に先端
にアイドラープーリを有するテンシヨンアームを
取り付け、前記円筒状ケースとテンシヨンアーム
間にねじりスプリングを夫々の先端を係止して挿
入すると共にその内周面にカム機構を設け、該カ
ム機構と円筒状ケース間に更に皿ばねを内装せし
めた構成であるから、ねじりカプリングによる回
転トルクへの変換によりベルトの振動が緩和され
ベルト駆動時、問題となつているベルトの共振現
象を防止し常に適正なベルト張力を保持しつつ、
ベルト駆動を行なうことができる効果があり、更
に機構が簡単で皿ばねのバネ定数の適当な選定に
より、広範囲なベルト仕様に対応でき、しかも小
さなたわみで大きなばね圧縮力が得られるのでコ
ンパクト化が可能となり、合わせて高温、粉塵、
水等の悪条件の環境下でも使用可能で、ベルト伝
動におけるオートテンシヨナーとして極めて実用
性に富み、優れた張力調整機能及び共振防止機能
を発揮することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るベルト用オートテンシヨ
ナーの一例を示す要部側断面図、第２図イ，ロ，
ハおよび第３図イ，ロ，ハは上記オートテンシヨ
ナーのカム機構を構成するカム片の各詳細図で、
第２図イ，ロ，ハはテンシヨンアームと一体の第
１のカム片に係り、イはその１部断面側面図、ロ
は正面図、ハはロＡ−Ａの断面展開図、第３図
イ，ロ，ハは第２のカム片に係り、イはその１部
断面側面図、ロは正面図、ハはロのＢ−Ｂ断面展
開図、第４図は本発明オートテンシヨナーの使用
例を示す側面概要図である。 ａ……オートテンシヨナー、S₁……テンシヨナ
ー軸、S₂……先端軸、１……円筒状ケース、２…
…ブラケツト、５……テンシヨンアーム、６……
アイドラープーリ、８……ねじりスプリング、９
……ストツパー、１０，１１……係止孔、１２…
…カム機構、C₁……第１のカム片、C₂……第２
のカム片、Ｈ，H′……カム片の傾斜面、Ｐ，
P′……カム片の突起、Ｆ，F′……カム片のフラツ
ト面。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ブラケツトに固定した円筒状ケースに、テン
   シヨナー軸一端を挿入し、該テンシヨナー軸他端
   部に、アイドラープーリを先端に有するテンシヨ
   ンアームの基端部を前記テンシヨナー軸に回転可
   能に取り付け、且つ該テンシヨンアームと前記円
   筒状ケースとの間にねじりスプリングを挿入し、
   その両端を前記テンシヨンアーム及び円筒状ケー
   スに夫々係止してなるベルトテンシヨナーにおい
   て、前記ねじりスプリング内周側でテンシヨナー
   軸上に、斜め断面を介して相互に嵌合する一対の
   カムの第１カム片がテンシヨンアームに一体的に
   固定され、第２カム片はテンシヨナー軸に対して
   回転方向には一体的に軸方向には摺動可能に設け
   られており、前記第２カム片と円筒状ケースの間
   に、皿バネを第２カム片に面接触状態に介装せし
   めたことを特徴とするベルト用オートテンシヨナ
   ー。